しゃーない
もう一本、メンテの暇潰しにどーぞ
苛立っていた
憤っていた
「――――」
これ以上ないほど憤慨していた
器たる英雄王ギルガメッシュが、マイルームにてこれ以上ないほどイラついていたのだ。かきむしるようなもどかしさが伝わり非常に気持ち悪い
あのレフを名乗る何者かを見たときなど比較にならない怒りだ。憤怒が力を為せば一人や二人殺める事ができそうだ
そして――
「……――――!!!」
ブチり、と英雄王の堪忍袋がぶった切れた
「――なんだこの水桶はァ――!!!!」
英雄王の天雷を思わせる雄叫びが、完全防音のマイルームに響き渡った
――
「オルガマリー貴様ァ!!」
「ひっ、英雄王なにご――ひぃいぃい!!?」
怒号をあげてギルガメッシュが憤怒のままに、カルデアのライフラインをメンテナンスしていたオルガマリーを怒鳴り付ける
あまりの威圧と剣幕に二度ほど失神したオルガマリーが、顔を真っ赤にして断末魔をあげる
「いい加減海より深い我の忍耐にも限度があるぞ!この我の怒りを買うとはよい度胸だ!」
「ご免なさいごめんなさいゴメンナサイごめんなさいごめんなさいでもでもでも前前前前えぇ!!」
……あ、と無銘が天恵にいたる
器の怒りのままに出てきてしまったが
――水浴びしたままの一糸まとわぬ姿で出てきてしまった。全裸だ自分
オルガマリーはまた気絶したのだった
~
「フー……――――」
深呼吸をし腰を下ろして怒りを静める
「我としたことが我を忘れるとは。すまぬなマリー。笑顔で流せ」
ガタガタと顔面蒼白になって震えてるオルガマリーに声をかける。カルデアスに引き寄せられる時より顔に絶望を浮かべるとかどれだけ怖かったのだろう
「レフ、レフ助けて……殺される、殺されるわ私……」
「ふっ。やはり我の裸体は凡俗にはあまりに刺激的すぎてもはや毒か。我が肉体の黄金律が怖い。ははは」
何にここまで器が怒り狂っていたかというと
ずばり、マイルームへの不満だ。あまりの質素たる有り様に英雄王の海より深い忍耐は5秒でギブアップしたのだ
「身体を包み込むことのない質素な布切れ。頭蓋を弾く無礼な枕!味気ないシミまみれの壁!それはよい!良くはないが些末だ!」
「許せぬのは――水浴びの間取りだ!あの家畜小屋にも劣る個室で何を清めるというのだ!全く赦しがたい……!汚物に至宝を抜けとほざいた優雅並に赦しがたい!!」
吐き捨てる器。自分はそこそこ快適だったのだが……まぁ、皆はどうかは解らないが
「だ、だってだって……!カルデアは、レジャー施設じゃないんですもの……!資金はほぼカルデアスとシバに費やしたって話だし……」
「雑種が……高尚な天文台と観測機に費やした程度で尽きる財で見栄を張るなと言うのだ!」
「施設は運用する人員あってのもの!人員のメンタルケアを怠る頭が率いる組織に大成ないものと知れ!」
「はっ、はぃい!!」
いつになく荒れている器に、というか絡まれるオルガマリーに同情する
年齢的にカルデアの設計はオルガマリーの父か祖父の所業であると思うのだが……
凡人の眼から見ても、確かにここの設備は味気無いと思う。寝らればいい、休めればいいといった最低限のものばかりだ。コストダウンの苦悩が見てとれる
……平時であれば別に誰も構わないのだが。今はカルデアの職員一人一人に人類の未来がかかっている
激務で栄養ドリンクチャンポン二撤三撤当たり前なんて漫画家みたいな真似をしていたら、遠からず過労死する人が出るだろう
ハイパフォーマンスの秘訣は質のいい休息から
なんとかしてあげたいと、素直に思う
――いや
なんとかしよう。どうせカルデアの外は地獄なんだ
人理焼却が終わるその日まで――ここに『楽園』を立てても問題はあるまい
「オルガマリー。我にカルデアの見取りを寄越せ」
「えっ、見取り……?な、何をする気、ですか……?」
「我はかつて城塞都市をデザインしウルクを歴史に残した建築王……!」
「その才気溢れる手腕を見せてくれるわ!」
――
その日から、カルデアの衣食住を徹底的に改善、ギルガメッシュが改修を受け持つことになった
まずカルデア職員名簿に目を通し数を把握
アンケート用紙を配り速やかに趣味嗜好要望を把握し対応した原典を財から出す
配給されている一人一人の支給品を徹底的に改善、粗末な材質のモノは全て財から最高級のモノに取り替える
布団は羽毛に、枕は低反発に。部屋はカーペットを敷き天井壁は一人一人の要望に逢わせて張り替える、
個室の大きさはどうしようもなかったので、別空間に繋がる入り口を用意する。シャワー室は軒並みバスルームへと改築した。ちなみにシャワーの形はウルクの狛犬、ラマッスを象っている
ライブラリから直接データを引き出せるオーディオ、TVも完備。就寝する際には自動で安眠ミュージックを流すように設定した
ハンモック、布団、ベッドの選択は事前報告。対応した財を取りだし設置する
食生活も改善だ。まず厨房にある機材を全取っ替え。きらびやかに輝く最古の道具一式に変える
ドリンクバー、スープバーを完備させ、願うだけで料理ができるテーブルクロスを敷き詰め。和洋中に完全対応した食堂を作り上げる
一人一人の体調に合わせた献立メニューを出力する機材も設置。不足しがちな栄養を重点的にとるよう促す資料も部屋に配布。従わなければ連日青汁の刑だ
甘味はロマンが日本に来たときに食べたという情報に任せ監修を任せる。きっとロマンなら的確にいい感じのスイーツを用意してくれるだろう
「君の負担でスイーツ食べ放題!やったぞ!頭に栄養が沢山巡る!」
「働きを見せねば処断だがな。これは貴様らの旅の先行投資と心得よ!」
「やるやる!わぁい、他の皆も大喜びだ!君がこんなに気前がいいなんて!」
「我は万事に妥協しない王だ!森羅万象何事も!我が満足できねば無価値と知れ!」
「さぁ――ついてこれるか――!!」
……別に間違った事はやってないので止めないことにする
カルデアの皆はここから出られないのだから、……ここで戦い続けるのだから。
堕落しない程度の娯楽は、赦されるべきだろう
――このあともカルデアは英雄王怒りの大改装が続き、度外視されていた職員の負担を一切鏖殺する至高のリゾート施設へと姿を変えていった
完成したカルデアの様相に職員たちは涙を流さんばかりに歓喜の声を上げ
「こんな贅沢していいのだろうか」
「俺はカルデアに永住する」
「絶対人理救う」
「ギルガメッシュ王、万歳!」
といった声で、極寒の山頂を埋め尽くしたという――
ちなみにこのカルデアリゾートを利用するには契約書にサインを書かねばならない
内容は――『人理修復を完遂すること』ただ一つのみであったとさ
その日からカルデアの事務効率は10倍を上回る右肩上がりの大暴騰
自主的に休日返上職務に立候補する、オルガマリーが立てたシフトを完璧に護る統率された集団が出来上がったのだった
そしてそれらの負担はギルガメッシュが全額負担。管理と調整はラピスラズリを叩きつけ雇ったダ・ヴィンチちゃんに丸投げした
――後に、どんなリゾートホテルも看板を下ろす至高のレジャー天文台カルデアと呼ばれる施設の爆誕である
~
「ふはは!やはり水浴びとはこうでなくてはな!わくわくざぶーんには及ばぬがまあ良かろう!我の黄金律に、不可能は無いということだな!ふはははは!」
上機嫌で自分専用の異空間大浴場に浸かるギルガメッシュ
「よし!事がすめばカルデアも我が財に加えてやるとしよう!」
オルガマリーが完全にひきつった笑みを浮かべ、ダ・ヴィンチちゃんが笑いをこらえる姿を思い浮かべる
美味しいご飯を食べるマスターとマシュ、甘味を頬張るロマン
「我は至高の贅沢王!我に不可能という言葉は無いと知れ!ふははははは!ハハハハハハ!ハーッハハハハハハハ!!」
高らかに笑う英雄王。
――機嫌がなおったようなので、よかったよかった
カルデアよいとこ いちどはおいで
交通費自己負担 生命保証なし
粘り強く人理を救う意志のある方大歓迎
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