人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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子ギル「どこまでやれると思います?」

エルキドゥ「マシュの事?」


子ギル「はい。マシュさん、頑張ってましたからね。君に師事するなんて自殺行為をよく続けていたものです。エアさん程ではありませんが気になってしまって」

エルキドゥ「大丈夫。出来なければ死ぬだけだから」

子ギル「それでは困るんですよね…」

エルキドゥ「解ってるさ。負けられない、砕けない理由は一番マシュが解ってる」

子ギル「え?」

エルキドゥ「リッカはマシュと、ギルのマスターだよ?」

子ギル「…あぁ〜、なるほどぉ〜」

子ギル(そういう事なら…あなたは負けませんね。マシュさん?遠慮なさらずやっちゃってください、エアさん!)


戦争たる概念

──英雄王の力を目の当たりにした者の評価に、端的ながらも正鵠を得たものがある。

 

『戦争そのもの』

 

そう称される程の物量、質量、圧倒的な圧力にして財力、使い切れぬ程の財が織り成す黄金の鉄風雷火。彼と相対した者は例外なくそれに晒される事となる絶望的な事実を如実に表した定評と言えよう。

 

…しかし、その言葉でもまだ足りない。黄金の王の力を示す、或いは称える際には世辞にもなり得ぬ貧困な語彙である。

 

戦争とは無論、個人が起こすものではない。最低単位でも軍隊、最高位にて国家間が引き起こすものだ。戦車、戦闘機、軍艦、歩兵、機雷、迫撃砲、固定砲台、地雷、補給、侵略、防衛。戦争が織り成す事象、費やされる資源と人材、浪費される命は途方もなく膨大である。そしてそれは『国家』や『軍』に与える為の痛打であり、個人に戦争武力が向けられることは皆無であろう。

 

もしも上記の兵器が、全て個人に向けられたなら。戦場の全てが個人を滅殺するために動員されたなら。それは最早蹂躙でも殲滅でもない。死そのものである。どのような英雄であろうと、英雄だからこそ知る。個は、数には勝てぬと。

 

──だが、英雄王とは。英雄達の王とは。その絶対の不文律を敵対者に賜わす唯一無二の例外そのものであり。

 

その傍らに在る魂は、戦争そのものを全て必殺の奥義に変えることの出来る王の有す至宝であった。

 

 

「─────!─────!!」

 

最早、マシュの言葉もリッカの言葉もかき消され届かない。戦場、3人の間に横たわる空間にはあまりに苛烈であまりにも絶対的な黄金の破滅が巻き起こっている。

 

天空には、綺羅星のように空を覆い尽くす黄金の砲門。最早数えることすら無意味な、全てが財を打ち出す為の発射台。そこからは先の武器を投げ出すだけでなく、魔術により編まれた最新近代兵器の数々や、オーパーツたる光学兵器すらも総動員する金色の裁きの具現が絶えず降り注ぐ。

 

地上には無数の銃火器に飽き足らず、戦車やレールガン、人間が積み重ね発展させてきた対歩兵、対人兵装が総動員され絶え間ない弾幕を放ち続けている。

 

ギルガメッシュは獰猛かつ愉快げな笑みを浮かべ腕を組む。指一つ動かさず形成するはその黄金の財宝の大盤振る舞い。至宝たる魂に選定とパターンを委ね、自らが裁定する二人を静かに見据えている。

 

マシュはオルテナウスの全勢力を以て、国をいくつも焼き払う黄金の嵐からマスターたるリッカを守り抜く。かすり傷どころか流れ弾一つで生身の人間が爆散する逃げ場のない死地に、自らの傍らに絶対安全権を作り、マスターを守り抜く為の陣を敷く。

 

(これが──ギルの本気の弾幕…)

 

先の武具のみの投擲はまさしく児戯だ。あんな幼稚で稚拙な、しかし英雄など容易く穿つ弾幕など比べることすら烏滸がましい。

 

戦争が起きている。たった一人の王が、何千、何万と人を集めてようやく人が為せる最大単位の戦闘行為を引き起こしている。指の一つも動かさず。ただそこに在るだけで、眼前の全てを蹂躙し君臨している。

 

恐ろしい…否。最早悍ましい事実をリッカは理解していた。この飛び交う弾幕、ただの一つも無駄玉はない。全てが、最適解でない行動を取った者を詰ませる一手へと昇華されている。天空から放った一撃が、地表に埋めた地雷を打ち抜き爆発させ、煙の中にあるマシュを戦車隊がその砲弾を以て打ち据える。そして釘付けになったマシュの上空から、無数の爆撃が叩き込まれ離脱すら許さない。

 

(エア姫様の選定…もうこれ、戦場の武装や武器の一つ一つ全部把握してるレベルだ…!)

 

先を読む、等では温い。未来を見る、等では甘い。『全てを見下ろし理解している』。王の傍らにいる魂はそういった領域で戦場を俯瞰しているのだ。王の本気を、正しく示す為に。敬愛の数だけ、姫の選定は無限大に精度を増していく。

 

(それでも)

 

だがリッカは確信している。王に勝利せんとする敵ならば誰もこの嵐を越えられない。王に敵対する全ては、この鉄風雷火に消し飛ばされる。疑う余地もない、楽園において『最強』を超える『無敵』の領域にいる頂点の力だ。

 

だが──王が戦争、攻撃において無敵であるように。マシュもまた、自分が信じるもう一つの『無敵』であるのだから。

 

(マシュの成長、こんなもんじゃないよ!ギル、エア姫様!)

 

戦場の只中に普段着一つで放り込まれながらも、リッカは微塵も揺らがない。最早彼女は一般人などではない。楽園が鍛え上げ育て上げた、世界を救うマスター達の頂点の一角なのだ。

 

故に彼女は信じるのだ。自らのサーヴァントを、パートナーを。どんなに絶望的な状況であろうとも…!

 

 

──流石はマシュちゃん。これだけの攻撃でも微塵も防護が揺らぐ気配を見せません。お見事すぎるカチカチ具合です。

 

戦場の把握、宝物庫の選定、王への打診。並列に全てを処理しながらエアは告げる。ギルもまた、マシュの奮闘を喜ばしげに評価する。

 

《威嚇射撃で足が竦まぬ程度には肝を据えたか。身体は柔らかくとも意志と決意は城壁のそれよな。あれほどマスターに入れ込むサーヴァントというのはまさに希少であろうよ》

(サラッとセクハラ言うなオマエ)

 

ギルガメッシュは無論、余裕の極みである。当然であろう、彼にとっては自ら裁定した財を、宝物庫を解き放ちエアと眼を共有しているのみなのだから。王が汗水垂らし戦う理由など何処にもない。ただ、王道を進むのみだ。

 

とはいえ無論、これは敵対者を滅する戦いではない。財の輝きと質を査定する鑑定の場だ。故にこそ──それはある意味、戦いよりも容赦がない。

 

《エア、マシュのさらなる力の深奥を見極める》

 

──!

 

《『矢を構えよ』》

 

それは、エアに託した号砲の合図。エアは二つ返事で頷き、バビロニア──ウルクの賢王につながる単願をタブレットにて打診する。

 

《フォウ、宝物庫の扉を限界まで開け。合体宝具というヤツよ》

(マシュをとことん信じてるんだなオマエ。解ったよ、任せな!)

 

──誉れ高き賢王よ。人の極地たるウルクの民の皆様よ。どうかその決意と至高の護りを此処に!

 

 

空中に城塞都市ウルクに繋がるゲート。王の周囲に、至高の財を放つ特注の扉が展開される。エアにより、弾幕がぶつかり合わぬ計算され尽くした展開位置をフォウに共有し、準備が整いたるは御機嫌王にのみ許された超絶圧殺弾幕。

 

《その奮い立つ決意を以て、どこまで凌ぎきれるか!さぁ──見せてみよ、マシュ・キリエライト!!》

 

そして装填され、賢王の合意の下に放たれし弾幕が裁定の階位を引き上げる。それこそは──!

 

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!!』

──『王の号砲(メラム・ディンギル)』!

 

天空より降り注ぐ、大地を濡らす王の決意。ウルクの民の総力を結集し大城塞防御砲台。ティアマト戦においても役目を果たしきった賢王の集大成して、姫の願いに応えるウルクの全て。

 

人の黎明、その際に全てを手に入れた王が放つ財宝の一斉掃射。原典であり解放する真名がない宝具たちではなく、彼の有する黄金の宝物庫そのものの真名解放。

 

それら二つを折り重ねた驚天動地の大発射。本来ならば決して同時に持ち得ない暴君たる王の豪奢にして圧政の究極と、民を、国を導く賢明にして国力の究極の弾幕を一斉に放つ御機嫌王ならではの掟破りの超ゴージャス弾幕。どのような敵も意味を成さない。どのような英雄も意味はない。国そのもの、国家そのものを殴り倒せる英傑など存在しないのだから。

 

その一斉掃射は間断なく続き、時間にして十分もの間降り注いだ。慢心、油断の言い訳の一切介在しない、王と姫と、王の治めた総力の結集。マシュの進歩と決意を汲んだ、生涯あるか無いかの大盤振る舞い。ティアマトクラスの脅威を想定していた未だ初披露の戦術であるが……。

 

──……!!ギル、フォウ!見てください!あれを、あの輝きを!

《フッ──はしゃぐなエアよ、存分に見えておるわ》

(出たなぁ!マシュの十八番!待ってました!)

 

───その必殺に、変わらず聳えしは。全ての疵、全ての怨恨を癒やす彼等の故郷。

 

「───全ユニット、直列展開…!」

 

顕現せしはリッカを──否。あらゆる次元、あらゆる時空の『マスター』を庇護し守護する、白亜の城。けして揺らがぬ、決意の円卓。

 

「顕現完了…!『今は遥か理想の城(ロード・キャメロット)』!!」

「細やかながら令呪を三画添えております!」

 

無敵の攻撃、無敵の防御。至高の矛盾、決着は付かず。なんと皮肉な事か。個人が巻き起こした最大最強の攻撃に──。

 

 

《ふふ、ふはははは!ふははははははは─────!!!!!》

 

凌ぎ、守り抜きしはまた、個人が見出した護り。そう──マシュの防御は今、ただ一人を守り抜く為に王の領域にすら踏み込んだ。

 

その事実に、王はひたすらに腹を抱えて笑う。それは嘲笑でも失笑でもない。雛鳥が大翼を広げ飛ぶのを見据えた、感慨の呵々大笑。

 

──マシュちゃん…リッカちゃん…!

(やるじゃなぁい…)

 

そして、破顔一笑を浮かべるはエアとフォウ。その成長は、二人にとっても胸を満たす最大の吉報であるのだから──。




マシュ「ありがとう、ございました。マスター。流石に持続時間だけは、助けがないとどうにも…」

リッカ「主従は助け合いでしょ!…さ、マシュ。前を向いて。来るよ」

マシュ「はい!」

ギル「ふふはははははははは────……………マシュ・キリエライト」

マシュ「はい、英雄王ギルガメッシュ」

ギル「──良く奮い起った」

そして、王は示す。エアに託せしは、王律権バブイル。


「貴様を、守護者と認める」

そして手にせしは…紅き刀身を持つ、真紅の乖離剣。


王は認めたのだ。この盾の英霊が…至宝を示すに値する英霊であると。

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