人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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甲児「結論から言わせてもらえば…俺は今、この世界の在り方に大きな変革を感じている」

オルガマリー「変革?」

甲児「この世界、仮に異能に視点を絞ってみよう。この世界における異能の主題は『魔術』だ。魔力を使い、神秘が満ち、聖堂協会や時計塔といった輩が日常の裏で幅を利かせている。その上でサーヴァントや聖杯戦争といった異能が成り立ち、それが世界の在り方。少なくとも俺はそう考えている。あんたもアニムスフィア家の君主だものな」

オルガマリー「…えぇ」

甲児「だが、夏草のアンドロマリウス…それらの元締めが起こした『人理焼却』。それを境に、世界は魔術や魔力の及びのつかぬ奇跡が満ちる事となっている。創作に過ぎなかった仮面ライダー、ガンダム、光子力、そして…」

オルガマリー「マジン、カイザー…」

甲児「こいつは今の俺じゃ、構想と薄ぼんやりとした設計図しか用意できなかった。だけど…設計図を書き上げた瞬間、ドックにこいつは現れていたんだ。似てると思わないか?レイシフトに」

オルガマリー「カルデアに…随分ご詳しいのですね」

甲児「マジンカイザーが教えてくれたんだ。この世界で、未来と正義の為に戦える『可能性』を有する善良な人々。それが、あんたらカルデアだってな」

オルガマリー「マジンカイザーが…カルデアを…」

甲児「新しく作るのは結構だ。だが、力はあくまで力だぜ、所長。そんなに身構える必要はないと俺個人は思う。…このマジンカイザーの力を、正しく使うか悪のために使うかと同じように、大事なのは心だぜ。所長」

オルガマリー「甲児さん…」

甲児「それでも不安だってんなら…俺とマジンカイザーが手本を見せてやるよ」

「!」

甲児「あんたは信頼できるが、マリスビリーとやらの目論見はまだ判らん。カルデアに対する抑止力として、光子力の悪用対策として。あんたらに力を貸してやる。うたうちゃんを立派に育ててくれたお礼も兼ねてな」

オルガマリー「あ…ありがとうございます!」

甲児「おう!……」

マジンカイザー『……』

(きっとお前も、カルデアを…いや。善き人々を助けるために来たんだろ。マジンカイザー…)


真実に至る者達!全てを救え!

【結論から話そう。今君たちが戦った相手…ボレアスマスクは彼女本来の姿ではない。悪の竜【ヴリトラン】に歪められてしまった姿であり、邪悪なる龍【ミラボレアス】に変質してしまった姿なのだ。彼女は本来、このような侵略戦争をする程度の低い存在ではない。神の如き存在であるのだ】

 

従者ニャルニャルが事の概要を説明する。先程戦った龍、ボレアスマスクは歪められてしまった姿であると。そしてそれは、自分達には元に戻せぬ姿であると語る。それを知ったニャルニャルは、オニキュアに救援を要請しようとしたのだという。だが…

 

【ヴリトランも最大の障害が何であるかはよく解っとった。我らが動く前、いや…乗っ取る前に他のオニキュアを無力化させていたのじゃ。マジカルシンペンキドクを悪用したのもまたヴリトランよ。その悪龍めがあまりにも悪辣であり、我等が龍は純真無垢に過ぎた】

 

予め天敵を全て排し、それを隠し同じ龍としてミラアンセスに近付いた。それを止めるべきだったと悔やむが全ては遅かった。長らく巡り合わなかった同胞との再会を喜んだ彼女はそのまま…

 

【永らく仕えた私達が保証する。今の彼女は彼女の本心ではない。本当の彼女は…命の調和と世界の均衡を愛するちょっとアホめな愛くるしいドラゴンなんだ。だからこそ、今の姿は私にとっては…】

【愛娘が狂わされておるようで、いたたまれないのじゃ。どうか…我等の家族を助けると思って、力を貸してはくれんかのう?】

 

跪くニャルニャルと、黄色き外套の従者。彼らは仕えた彼女を愛しているのだと告げた。それは、彼等にとっての親愛の現れだと。

 

「──そういう事かよ。納得だぜ、道理で言ってることが含蓄に溢れてるわけだ」

 

「キュアオンラ!」

『大丈夫…?』

 

その言葉を聞き、ゆっくりと立ち上がるキュアオンラ。彼女はまだマジカルシンペンキドクを飲まされてはいない。単に圧倒的な力で叩きのめされただけだ。心はまだ、挫けておらず折れてもいない。

 

「なぁに、困った相手を助けるのはいつもの事だ。まぁ、アタシは鬼はもちろん人も助ける変わりもんだが、だからこそできる事があるってもんだぜ」

 

『……大丈夫なダメージには見えないがな』

 

それは心配を含んだ声音であった。実際、龍の本気かつ全霊で叩きのめされのだ。ショーでなければ立ち上がらせる事すら憚れるダメージなのは明白である。

 

「あぁ、正直マジでしんどい。操られてるのか乗っ取られてるのかは知らんが、今まで受けてきたどんな一撃より効いたぜ」

 

『なら、どうする』

 

アマノザコの問に、キュアオンラは息を吐く。

 

「…数人の最強が幅を利かせるほど、世界は甘く無い…か。ならアタシも、アタシらも。戦い方を変えなきゃなるめぇよ」

 

それは、龍の啓示と受け取った。ボレアスマスクの告げた言葉を、自分よりも遥かに生きる先達の言葉を。だからこそ…

 

 

「茨木、カグツチ。アタシらに…オニキュアに力を貸してくれねぇか?アタシに、アタシらに出来ないことをやってもらいたいんだ」

 

自分たちを、何よりも信じ応援し支えた相手を頼ることを選んだ。これはショーであり、何よりも演劇だ。伝えるメッセージも含められている。彼女らもまた、その脚本の一部なのだろう。

 

「わ、吾らがか?」

『救援要請…オニキュアが、私達に』

 

「あぁ。もし助けて貰えたならすげぇ助かるんだが…どうだ?手を貸してはくれないか?」

 

画面の向こうの存在からの、完全無欠のヒーローからの手助けの要請。ソレはともすれば解釈違いや幻滅を招きかねないものであったが、キュアオンラは躊躇わずそれをした。

 

助け合い、支え合う大切さを伝えるために。その願いは…確かに届いた。

 

「わ、解った!オニキュアがピンチだというときに、ふぁんとしては黙っていられぬぞ!」

『うん。ヒーローを支えるのは、応援する私達の使命だから』

 

「…そうか…!ありがとう、いつも応援してくれるお前さんら!力を貸してくれ!」

 

その願いは聞き届けられた。誰かを救い、護り、誰かのために戦い続けた。その戦いを無益、不毛と呼ぶものもいるかもしれない。

 

だが、正しき道を選んだ者には、揺るぎなく進んだ者には祝福が齎されるのだ。本当に自らが困っている時、必ず手を差し伸べる者が現れる。それこそ、自らが誰かを助け続けて来たように。

 

(いい脚本だ。メッセージ性と、分かりやすさと没入感を上手く混ぜ合わせている)

 

温羅が書いていない事は早期に看破していたアマノザコが、顔も知り得ぬ脚本家を称賛する。

 

【茨木とカグツチが参加することも考えて脚本書かれたのか?ふむぅ、大したものだ。凄い】

 

そうだ。茨木やカグツチが頷いてくることも見越した物語の進みよう。参加型とはともすれば脚本通りに進まない危険性を孕むだろう。それを計算して脚本を描けるもの…一体何者なのであろうか。脚本家にとって嫌なものは、想定外と脚本を覆されることだろう。ニャルかとも考えたが、彼は今役者に甘んじている。それもまた計算に織り込まれていると言うのなら…

 

(ここは、保護者である我等の判断もまた含まれているだろう。ここは積極的に参加するか)

 

そうすることが、正しい結末に行く事だと予測を立て、伊邪那美に合図を送る。

 

【?】

 

『子だけを行かせるわけにはいくまい。我々も行動を共にしようぞ』

 

【あ、あぁ!なるほどなるほど!よし、それもそうだ!よしニャルニャルよ、妾達もその問題に参加させてもらおう!】

 

伊邪那美も黄泉の神である自負から創造神時代の明るさを取り戻しつつある。まぁ汎人類史のアレになるのかどうかは解らないが…皆が、良き方向に変わっていく物語なのだろう。それをただ、信じるのみだ。

 

【感謝する。だが察しの通り、我等には戦力が足りない。囚われたオニキュアを助けると同時に、ヴリトランを討果すための力を手にする必要がある】

 

『当てがあるのか?』

 

【あぁ。ヴリトランに反旗を翻し、アンセス様を取り戻すために戦い、封印されたドラゴン達。それらを開放し、助力を乞えばあるいは】

 

ニャルニャルが言う、アンセス配下のドラゴン達。それらもまた、調和を護らんとする存在だと語る。それらは必ずや正しい行いに力を貸してくれるだろうと。

 

 

【では決まりじゃな。チーム分けは如何とする?ドラゴン、オニキュアを開放する役割が必要じゃが、確実にボレアスマスクは嗅ぎつけるぞ】

 

「そこは大丈夫だ。アタシがもっかい、ボレアスマスクに真正面から突撃かます!」

 

『……正気か?あれほど打ちのめされたと言うに』

 

それは一見やぶれかぶれではあるが、オニキュアとしてのプライドでもある。誰よりも強くあるがオニキュアであり…

 

「やられっぱなしは趣味じゃねぇのよ!オニキュアってのはそういうもんだ!」

 

【ではチームに分けよう。キュアオンラがもう一度決戦を挑む間、私とこいつがオニキュアを助ける。その間、諸君は封じられしドラゴン達を解き放ってくれ。アンセス様を救えるかは…君達にかかっている】

 

【言動は粗暴じゃが、情に厚く真っ直ぐな者ばかりじゃ。誠心誠意頼めば必ずや力を貸してくれよう。よいな、誠心誠意じゃぞ】

 

黄色の従者は、アマノザコと伊邪那美に水晶を渡す。それは封じられし竜の間へと導く道標だというのだ。

 

【…頼む。アンセス様を救ってくれ】

 

最後に告げたその言葉は…先程見せた恐ろしき威圧とは似ても似つかぬ程に優しき、親愛の響きを孕んでいた──。

 

 

 

 

 




キュアオンラ「んじゃあ皆!また会おうぜ!!」


茨木「必ずや、必ずや力を集めて戻ってくる!」
カグツチ『だから無事で…!』


キュアオンラ「──おう!」


別れの間際、心配するなとばかりに…キュアオンラは満面の笑みを見せ、そのまま分かれる。




キュアオンラ「オラァ!!」

ボレアスマスク【むー?】

「リベンジに来たぜ、ボレアスマスク!!」

ボレアス【ありゃ?ニャルニャルがいるのによく生き延びたねぇ】

「鬼はしぶといのよ。さぁ…第二ラウンド始めようや!」

そして…あらゆるものを取り戻す戦いが始まる!

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