サタン【ただいま!】
バアル【お帰りなさいませ。おや、翅は託したのですか】
サタン【うん。僕より似合う場所にね!】
バアル【左様ですか。おや、その粘土板は】
サタン【契約結んだんだ!楽園と!】
バアル【………よい契約です。互いの譲歩と利益を記したもの。流石はカルデア】
サタン【最後に書いてあるのあるでしょ?今からそれをやるよ!】
バアル【なんと】
サタン【皆を集めて、バアル】
瞬間、サタンの背中を突き破るように翅が現れ、髪から色素が抜け落ちていく。やがて禍々しい角が生え──
【…詩人のふりは、ひとまず止めだ】
そこに現れしは、圧倒的な風格を有する大魔王の姿であった。
【私の声を聞け、寄る辺なく祝福なき亡者共。地獄にて蠢く軍勢よ】
地獄──サタンの宝具にして心象風景の具現化、即ち固有結界。座に刻まれた反英雄、亡者、神霊の座にある魔王達を居城たる地獄ごと大量召喚する規格外の業により集められし、サタンが率いる地獄の魔王や動物、並びに生物たち。それらが今、一様に覇気を漲らせる一人に目を向けていた。
【我等地獄の軍勢は、今年の12月25日…忌まわしき救世主、その生誕の日にカルデアとの最終決戦を行う。それに備え、私がお前達の指揮を執る事とする。我が言葉、我が勅令、我が命令は至上絶対。それを刻みつけるがいい】
そこに在りしは、悪魔の如き巨大な3対の翼を生やせしサタン。豊かな金髪は白き色へと変化し、かつてのラフな詩人衣装ではなく荘厳にして威厳に溢れた鎧姿の出で立ちであり、傍らにバアル…ベルゼブブを侍らせるその姿は、地獄に落とされた全てが待ち望みし大魔王の姿であった。
【【【【【【【■■■■■■■■■■■■!!!!】】】】】】】
地獄の者共の臓腑を震わす絶叫が響き渡る。彼等は長く長く雌伏の時を過ごし続けて来た。神に、いずれこの世界に這い出る日を心待ちにしていた。そして自身らを導く大魔王、サタンの覚醒を待ち望んていた。
彼は天の翼を楽園に託した。ソレはかけ地なく楽園に相応しい贈り物としての選択であり嘘はない。それと同時に、サタンは大魔王としての在り方を定め、決意を固めた事を意味する。背中に生える悪魔の翼は、真なる大魔王の証であり彼の偽りなき姿に他ならない。
そう、彼は契約に基づき自身の役割を果たすのだ。それ即ち、統率と管理の徹底。無粋な横やりのないような完璧な部下達への監視に他ならない。
【サタン様。軍勢共に何か使命をお与えください。あなたが結ばれた契約、果たした後の事を踏まえますよう】
【解った】
それでもなお、彼はバアル…ベルゼブブの意見を取り入れる。サタンに次ぐナンバー2の立場であり腹心の魔王。彼の言葉は、サタンは変わらず聞き届ける。
【お前達はこれより地上に赴き、地球上の霊脈を見張り監視する命に就け。地球の魔力、命の循環。その情報を絶えずバアルに伝えるのだ】
それはカルデアが計画する、異聞帯への対策。神たる何者かが行う偉業が一つ、人理の漂白に対抗する手段。バアルは戦いの先を見据えていた。決戦の後、数日後に来たる人理をかけた戦いへの準備をも見据えた計画だ。無論、カルデアが勝利しなくては意味がないが。
【七大魔王については私が直々に統括する。貴様らが何をするべきか、何を果たすべきか…私の意を天意と心得ろ】
【【【【】】】】
より一際巨大な威圧感を放つ、4体の魔王達。ベルフェゴール、アスモデウス、アモン、レヴィアタン。一体一体がバアルに劣らぬ超抜級の魔力反応を示しながらも、サタンに絶対の忠誠を示し深々と頭を垂れる。
【くれぐれも言っておく。如何なる理由、献身、心意があろうと私の赦しなく動いたものはその時点で粛清する。貴様らに許されしものは私の意のままに動くこと、我が意志を代行する事のみ。忘れるな?貴様らの愚昧なる思案なぞ、我が閃きの前には塵芥にも等しいことを】
【【【【仰せのままに、我等が大魔王サタン】】】】
七大魔王達がサタンの手を取り口付けを交わす。それは絶対の忠誠の証であり、彼等の忠義の現れ。それを祝福するように、無数の軍勢が大歓声を上げる。
【…………………】
その従順な態度になんの感情も抱かぬサタンは能面のようにその情景を見やる。彼等はサタンに心酔しきっており、彼に反抗や反逆の意思など決して見せない忠実な下僕。その関係は神と天使と瓜二つであり、自身があくまでも神の被造物でしか無いことを突きつけてくる。
【サタン様、どうかなさいましたか?】
怠惰のベルフェゴールが一応とばかりに口を開くが、その場ですぐさま争いが起こる。レヴィアタンが自分より早く気遣ったベルフェゴールに嫉妬し、命を狙う攻撃を放った。その攻撃がアモンに当たり、魔王達の殺し合いが始まる。
【詩人風味の自由な振る舞いも素敵でしたが、やはり大魔王たるあなたさまの威容こそ至高。どうかサタン様、この浅ましき下僕めに寵愛を…】
アスモデウスがサタンに淫靡な振る舞いを迫るが、サタンは鬱陶しげに誘いを追いやる。彼女は色欲の担当であり、サタンの心と身体を手にするための誘惑を欠かさない。
【あぁ、孤高たる傲慢のあなた。せめて、せめて私に一瞥をくださいませ…】
【鎮まれ、お前達。サタン様はお前達に勅令を下しに現れたのだ。下らぬ戯れにて無様を晒すな】
その争いを制したのはベルゼブブの一言だ。サタンは鬱陶しがって言葉すら話さないため、ベルゼブブが彼の意志を代行するが故に、彼の言葉には有無を言わさぬ威厳がある。
【申し訳ありません、ベルゼブブ。出過ぎた真似を】
【羨ましいわ、サタン様の腹心だなんて。羨ましすぎて蹴り倒してしまいそう】
【今に見ておけよ。俺もいつかサタン様のように全てを欲し、手に入れてやる。サタン様に相応しいのはこのオレだ】
【あなたの言うとおり。でも見ての通り、私はサタン様に袖にされてしまったの。ねぇ…これから、開いてる?】
【無様を晒すなと言った、アスモデウス。サタン様の【憤怒】を買いたいのか?】
【…………おふざけが過ぎたわ、ごめんなさいね】
サタンの憤怒。アスモデウスもそればかりは受け入れがたいようだ。魔王達の仲裁を行い、ベルゼブブはサタンに傅く。
【サタン様、契約に従い我等を率い、来たるべき戦いの日をお待ち下さい】
【ん】
【並びに、あなたは変わらずに振る舞われますよう。その在り方は、何よりも自由であり誇り高くありますよう。我等が傲慢を司る、大いなる大魔王よ】
【【【【【我等が大魔王!サタンに祝福あれ!】】】】】
地獄の者達が大合唱を行う。サタンを、大魔王を称える呪詛が地獄に満ち溢れ彼を祝福する。
【──話は終わりだ。地獄に在る者達よ、次なる令を待つがいい。私は貴様らを統べるもの。貴様らはただ、私の光輝に侍れば良い】
【【【【サタン様の仰せのままに】】】】
【【【【【我等がサタンに栄光よ在れ!】】】】】
サタンを称える亡者達、そして七つの大罪を統べる魔王達。ベルゼブブを除くそれらが、歓喜のままに大魔王を祝福し続ける。
【行くぞ、バアル】
【はっ】
ただ一人、バアルだけを傍に侍らせサタンは玉座を後にする。その表情に、魔軍の長たる感慨や高揚は微塵も現れていなかったのをバアルは見逃さなかった。
サタンなき後も、大地を揺るがす程の絶叫を有するサタンへの祝福が木霊していた──。
サタン私室〜傲慢の閨〜
サタン【はー、疲れたぁ!】
バアル【お疲れ様でした、サタン様。契約に従うその在り様、お見事です】
サタン【カルデアとの契約は絶対に護るつもりなんだ。決戦の日まで、絶対にバカをやらかさないようにバアルもあれたちを見といてね】
バアル【勿論です。その日まで、良き日々を過ごされますよう】
サタン【その事なんだけど、バアルもカルデアに行きなよ。その資格が君にはあるよ?絶対】
バアル【私が、ですか】
サタン【うん!だってバアルは僕の次の魔王だし、落ち着いてるし野蛮じゃないものね。クリームヒルトと連絡も取って、全部終わったら向こうに行ってみなよ!】
バアル【解りました。あなたがそう望むならば】
サタン【うんうん、絶対気にいるよ!あそこ!】
バアル【はい。願わくば、カナンの民の鎮魂の場がありますよう…】
アスモデウス【サタン様ぁ〜。夜の閨は肌寒くはありませんか?よろしければこのアスモデウスを卑しい肉布団めに…】
サタン【バアル助けてぇ!】
バアル【去れ色欲の魔王!】
アスモデウス【あぁん、いけずぅ〜!】
サタン【あーあ、これだから罪ってさぁ…】
バアル【お労しや…】
サタン【リリス、元気かな?……】
『エアからの手紙』
【…後で大切に読もうっと♪】
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