人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「やぁ。僕はどこにでもいるランサーだよ。イシュタルは死ねばいいと思うよ。具体的には身ぐるみ剥がされて槍に滅多刺しにされてそして漏れ出た腸と血飛沫で自分を彩ればいいと思うよ。全然綺麗じゃないし汚いからグガランナの前肢ぶつけて深淵に投げ捨てるけど。控え目に言って塵に還って?そして皆、メリークリスマス。・・・ふふっ。兵器が誰かの生誕を祝うのはおかしいかい?でも多目に見てくれると嬉しいな。ボクの心は、とても弾んでいるからね」




「なににだって?決まっているよ。彼が見初めた『姫』の事さ。――あぁ。本当に素晴らしい。君は、自分勝手に押し付けた僕の願いを、二つも叶えてくれた」



「民でなく、臣下でもなく、共犯者でもない。残念ながら友でもない。君だけの何かになってほしい。そして、キミのやり方で彼に寄り添ってほしいとかつてボクは君に言ったね。身勝手で、一方的ではあったけれど・・・」



「――君は・・・『姫』となり。彼の新たな神話に寄り添うものとなった。あぁ、そうだ。叙事詩に『神』や『人』『怪物』そして『友』はいても・・・彼に寄り添う『姫』はいなかった。キミが決めた魂のカタチは、紛れもなく唯一無二のものだ」



――ありがとう、エア。英雄姫ギルガメシア。これからも、我が友を宜しく頼むよ。



――これで僕の過去の過ちは。君の矜持に傷をつけた僕の罪は



――贖えたと言ってもいいのかな?君はどうだい?バカな兵器と笑うかい?ギル――


ロンドン・エピローグ1/3姫と獣、かけがえのない当たり前

「これでよし。忘れ物は無いよね。ちゃんと掃除はしたし、確認はしたから・・・大丈夫」

 

 

 

レイシフトの帰還を前にし、自分の部屋であったアパルトメントの一室を整頓し、身の回りを整理する

 

 

 

――あのすさまじい王の本領を発揮した器に、全く支障がなかったのは驚きを通り越して笑ってしまった。

 

 

あの程度、苦労のうちにも入らぬわ!という王の言葉が聞こえてくるようだ

 

 

「――ありがとう。英雄王ギルガメッシュ」

 

 

感謝を呟く

 

 

忘れない。監獄から自分を助け出してくれた友と、王の言葉を

 

 

忘れない。魔術王を圧倒した英雄王の全身全霊を忘れない

 

 

忘れない。自分に名前を、器を、肉体を賜せし王を忘れない

 

 

 

――この特異点で起こったことを、自分はけして忘れない

 

 

「――よし!」

 

 

ぱちん、と頬を叩く

 

 

王の期待に、皆の祝福に、あまねく世界の総てに

 

――感謝と敬意を抱きながら、自分は進もう

 

 

新たなる『愉悦』を。未知なる喜びを探しにいこう

 

 

――いつか、王に胸を張ってお話ができるように

 

 

それが、ワタシ。『エア』の定めた生き方なのだから

 

 

(準備は終わったかい、エア?)

 

 

名前を呼ぶは、大切な親友、フォウ

 

(さぁ、胸を張って楽園に帰ろう!)

 

「うん!――ふふっ」

 

 

思わず笑みがこぼれてしまう

 

 

(ん?どうしたんだい?)

 

「ふふっ、ごめん――名前を呼ばれるって、嬉しいんだね」

 

 

自分の名前、魂の銘

 

 

それを呼ばれるということが、こんなにも喜ばしいなんて・・・思いもよらなかった

 

 

(そうだろうそうだろう!ボクも嬉しいよ!無銘、なんて味気無い名称、さっさと卒業するべきだと思っていたからね!・・・でも)

 

 

「ん?」

 

フォウが、見上げてくる

 

 

(・・・いいのかい?名前も肉体も正式に貰ったんだ。もっと目立ってもいいんだよ?まだ、器の主導権は握らないのかい?)

 

 

――そうだ。自分は、けしてギルガメシアの姿のままでいるつもりはない

 

いつも通り、器に主導権は任せ、器の回復の際のみ、英雄姫の姿を取ることにしている

 

 

(唯一無二のキミが漸く総てを得たんだ。本当なら、世界を挙げての祝辞にするべきなのに。またソイツの中に引っ込むなんてもったいない・・・) 

 

「フォウ・・・」

 

(せっかく貰った名前を、誰にも呼んでもらえないなんて、哀しいじゃないか・・・)

 

――フォウは本当に優しい。本当に、自慢の親友だ

 

 

そっと、フォウを抱き上げる

 

 

「キミがいるよ」

 

(え?)

 

「フォウがいる。エアと呼んでくれる親友がここにいる。キミだけじゃない。部員の緒先輩方だって、自分をエア。ギルガメシア、ギルガシャナと呼んでくれる」

 

――そう。それだけでいいんだ

 

誇示も、偉容も、威光も、天地鳴動も必要ない

 

 

「自分は、それだけでいいんだ。一人でも、こうして自分を『祝福』してくれる人がいてくれたなら、ワタシはそれだけでとっても嬉しい」

 

 

(――――)

 

「大好きなキミが、こうして名前を呼んでくれるだけで――ワタシはそれで幸せなんだよ。フォウ」

 

――名前を貰えた

 

それだけで――自分の転生には、有り余るほどの意味と成果があるのだから

 

 

「それに、この物語の主役は王とマスターの皆。自分は脇役だよ。脇役がでしゃばったら、物語は台無しだろう?」

 

 

そうだ。自分は脇役でいい

 

 

未来へ進むマスターと、それを導く英雄王

 

愉快痛快な冒険譚。自分はその脇にいる役で構わない

 

 

――この物語に参列できている。王に寄り添えている

 

 

それに勝る、喜びなどないのだから――

 

 

(・・・もう、キミは本当に欲がないな)

 

ぺろり、とフォウが頬を舐めてくる

 

(キミが脇役?冗談じゃない。キミみたいな光輝き、総てを魅了する脇役なんているものか。総ての台本が台無しになってしまうよ。客が脇しか見ないんだからね!)

 

 

「そ、そう?」

 

(キミは主役、ヒロイン!物語を彩る大輪の華だ!その美しさ、無垢さは、ソイツの輝きにだって劣らないとも!ボクが保証する!)

 

 

グリグリと顔を押し付けてくる

 

(キミだけだ。『比較』、霊長の殺戮者たるボクを一人で倒せるのはキミだけなんだ、エア)

 

フォウ!と鳴き声をあげる

 

(だって――キミの持つ輝きと無垢なる魂は唯一無二で、どんな世界の、どんなモノにも『比較』できないんだから!)

 

 

「――」

 

――フォウ・・・

 

(だから・・・ありがとう。本当にありがとう。無数の次元で出逢えた、只一人の友よ。キミの存在は、ボクの救いだ。『醜く変わってしまうかも知れない』というボクの不安を、キミは優しく浄化してくれる。だから――)

 

 

きゅ、と身を寄せてくる

 

(キミがこのままの姿で、本当に良かった。ボクの大切なキミが、あいつらに汚されないで本当に良かった。――キミが、醜悪な魔神になることを選ばなくて・・・本当に良かった・・・)

 

 

「フォウ・・・」

 

(ボクの、大切な大切な『尊さ(キミ)』を奪われなくて。本当に良かった――)

 

フォウが、微かに震えている

 

 

――そうか。怖かったのはフォウもなんだ

 

 

自分がフォウをかけがえなく感じているように

 

 

フォウも、自分をかけがえなく感じてくれていた

 

 

だから・・・自分を奪われてしまうかもしれないと・・・怖かったのか・・・

 

 

「・・・ありがとう」

 

きゅっと、震えてるフォウを抱き締める

 

 

「大好きだよ、フォウ。無銘を愛してくれたキミが。自分の名前を呼んでくれるキミが」

 

(エア・・・)

 

 

――そうだ。誰かが誰かを思いやる

 

 

獣と、魂だって解り合える。この世には、そんなかけがえのない『当たり前』で満ちている

 

そんな世界が素晴らしい。そんな世界がいとおしい

 

 

そして――

 

 

 

「大好きだよ。キミがいる、この世界総てが」

 

 

 

――これが『愉悦』だ

 

 

世界には、かけがえのないものが満ち溢れている

 

 

 

けして、滅んでいい無価値なものなど一つもない

 

 

 

だって――かつて無価値だった自分にだって

 

 

「だから、大丈夫。ワタシは、キミを一人になんてさせないよ」

 

 

かけがえのない、価値が生まれたのだから

 

 

「これからも宜しくね。世界を必ず救って、必ずツーリングに行こう!一緒に世界に『愉悦』しに行こう!」

 

 

――いつか、世界に挑むときが来たのなら

 

 

それは、胸に収まる小さな親友と共に

 

 

「ワタシは、生まれて良かった!大好きだよ、フォウ!」

 

 

ずっとずっと、傍にいてくれる事を

 

 

そして、自分も彼の傍にいることを、魂に誓って

 

 

(――――あぁ。ありがとう、エア)

 

黄金の粒子として爆散し、そして復活する

 

 

(キミに、英雄姫に――いつものようにボクは倒された・・・)

 

「フォウ――!?」

 

(大丈夫だよエア。ボクも学習した!キミに討伐される度に、ボクはキミから尊さを貰って貯蔵魔力を増やす!筋肉の超回復と同じさ!ボクは、キミに倒される度に尊く、美しくなる!多少プライミッツゲージが溜まったって、完全にビーストになる前にキミが倒してくれればリセットだ!キミこそ『ビーストスレイヤー』に相応しい!おめでとうギルガメシア!キミこそはこの世で最も獣を討伐せし英雄姫!ソロモンごっこしてる、あの憐れみ鹿なんかより名乗るに相応しいグランドクラス!『グランドプレシャス』だ!あぁ――ボクは本当に、尊いものを見た――)

 

 

「解ったから!解ったから消滅と復活を繰り返しながら話さないで!フォウ!フォウ――!」

 

――英雄王の姿に戻るまで、フォウは爆散と復活を10回ほど繰り返した・・・




「あ、ちなみにエア。FGOに参加するならレア度は何がいい?ピックアップされたら、今までマーダーしてきた生命の数だけ課金するけど」


「自分は配布がいいな。レア度は4で、報酬交換で必ず貰えるの」


「どうしてだい!?キミならセルラン一位なんて余裕だし、確実にウン十万課金は当たり前なのに!?」


「ううん。自分は、自分に注ぎ込んでくれた金額の量より『自分を求めてくれた人達』の場所に必ず行きたいんだ」

「――――」

「配布なら、手に入れたい人には必ず手にはいるし、興味のない人は無視できる。スペックとかが弱くたって、必ずマスターと契約できる事のほうがずっとずっと大事だと自分は思うよ。あ、でも・・・」

「――――」


「・・・戦闘力より、マイルームで周回とかで疲れたマスターを癒してあげたいな。ほら、それなら英雄王とうまく差別化できるでしょ?『性能はイマイチだけど、マイルームにいてくれると安心する』なんてサーヴァントに、なれるとしたらなりたいなぁ・・・なんて、ね。ふふっ」


「・・・」

「・・・や、やっぱりダメ?じゃ、じゃあ星2!フレンドポイント召喚とか・・・」

「もうだめ、もうだめ――聖杯捧げる・・・宝具レベル5にする・・・ボク全部キミに食べさせる――とうとい・・・キミが、直視できない――」


「フォウ――!!?」


「ボクは本当に――尊いものをみた――」

「フォウ――っ!?」



「フン、まさか我が至宝の名を賜すとは酔狂なものよ(ドレスを用意しながら)」

「おぉ、素晴らしいぞエア!その麗しき姿、我が腕、我が胸に抱かせてくれ!(ブーケ作りながら)」

「無垢ではあるが無知ではないとはよくいった。だがまるで足らぬわ!あれでは詐欺、詐称、アバンギャルドな誘いに容易く着いていってしまうではないか!まずは身を護る術を、一般貞節を身に付けなくてはならぬ!獣臭い狐に嗅ぎ付けられ頭からバクリといかれては遅い!器の愚かな我め何を考えている!我がいるからへーきへーきとでも言うつもりか!一児のパパか貴様は!その在り方が慢心だと言うに!!えぇい、5、6の特異点など半日でクリアし早くウルクに来いというのだ!そこで我が最低限の教育を――(天命の粘土版用意しながら)」

「む?」

「ん?」

「――――」


・・・・・・・・・・・・・・・



「さぁ目覚めろエアよ!!」

「天を見よ!滅びの火は満ちた!」

「矢を構えよ我が赦す!!!メラムディンギル!!!」

「「フライングか貴様――――――!!?」」


「フハハハハハハ貴様らの対処など・・・ん?」


『どの王を援護すればという旗』


「何ィイィイ――――!!?しまった、総て我だったわ――――!!」


「あぁ・・・エアさん・・・ギルガメシアさん・・・あぁ・・・尊い・・・護ってあげたい・・・」


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