義経『…………』
「…あぁ、そうだ。案ずることなどない。不可欠なのは時間のみだ。そして縁と座標あらば、境界を歪め目的は果たされようぞ、義経」
『………』
「サーヴァントなる人理の影法師、歴史が変わるわけではあるまいが…少からずとも、何か変わるものもあろう。義経、悲運と裏切りの将よ」
『………』
「おまえが愛し、そして憎んだ者は必ず来たろうぞ。今少し、そう、今少しであるのだ…」
「やぁ、お前さん方。少しこの爺に付き合ってはくれんかね」
デイビッド、並びにゴッホが降り立った場所に在りし者。それはサーヴァントに相違ないはずなのだが、通常の風味とは何かが決定的に異なっていた。彼等に言葉をかけた老人、或いは初老の田舎者の老人としか見えないような風貌だ。見目麗しいという訳ではなく、ただただ冴えないと言っても差し支えない程の。
「ま、マスター…どうしますか?ゴッホ、なんだか面食らい気味…」
「戦いでないのなら、話を聞くのもいいだろう。俺達で付き合えることならば」
デイビッドは別段変わることなく、ゴッホと共に随伴を快諾する。周りを見渡せば、湖と草原に青空しか存在しない普通そのものの空間だ。
「これは実にありがたい。さぁ聞かせておくれ。君達が取り組む戦いや、人生における何かを。なんでもいい、この爺は聞き取り上手なだけが取り柄でね」
「解った。ではまず人理焼却の始まりから話すとしようか」
「ウフフ…企業秘密ナニソレ案件…」
乞われた通り、デイビッドは話し始めた。人類史を襲った最大最悪の殺人事件。それらを乗り越えたカルデアの話を。
「おぉ…人の歴史が焼き払われるとは。わしもとんと考えが及ばなんだ。人の身で乗り越えるには、様々な艱難辛苦があったじゃろうに」
「そうだな。悪夢のような事件ではあったが、人類はこれを乗り越えた。藤丸龍華という存在が、我々の不備を乗り越えてくれた。凡人、一般人とはもう呼べない彼女が導かれたのはある意味で必然だったのではないかと俺は思う」
「そうか…わしの知る旅路とはおおいに様変わりしとったのだのぅ。どうりであのいたずら好きな混沌が帰って来ぬわけよ」
「俺も予測はできてはいなかった。そしてこの世界の続きと結末が一体どこに着地するのか…それはきっと、誰にも予測は叶わないだろうな」
デイビッドと老人、それはなんの取り留めのない会話であった。だがそれは同時に、とても大きな視座よりの俯瞰をも示唆するかのような物言いを互いに有していた。
「穏やかな風靡…そして語り合う老人とイケメン、ゴッホのマスター…ウフフ、今日もゴッホは絶好調…」
そんな中、変わらず夢中になって絵を書き上げるゴッホに老人は興味を示す。その変わらぬ発想力と生み出される絵画に、興味を示したのだろうか。
「ほう、これは…なんとも素晴らしい腕前の絵ではないかね」
「ゴッホは絵書きであり、俺のサーヴァントでもある。もっぱら戦闘をこなす機会は少ないが、関わるものの心を豊かとするぞ」
「ウフ、エヘヘ…ゴッホ、褒められ上手を目指しています…おじいさんも良かったらどうですか、ゴッホのイラスト…現代にはスケブなんていうものもあってとてもイラストが身近なのです…しがない絵師に一枚の依頼、素晴らしい…ウフフ…」
老人は頷きながら、ゴッホのイラストを一枚受け取る。それは、狂気を孕みながらも前向き、快活といった何かしらのアンバランスさと比類なきパワーを感じさせる独特な絵だ。
「ほうほう。これは確かに見るものを強く惹き寄せるだろう。サーヴァントとは成長しないものと聞いていたが、変化流転しないものはこの世にないように、君もまた新たな境地を臨んだと言うわけだね」
「ウフフ…大体そんな感じ…ゴッホフィーリング…」
「それでは、一枚いただく事にしようかね。まぁわしは一応サーヴァントなので持ち帰れぬから、デイビッド君が持っていてほしいのだがよろしいかな?」
「解った、いいだろう。確かに預からせてもらう」
そして、また穏やかな時間が流れ行く。ゴッホがひたすらに絵を描き、老人とデイビッドがポツポツと話をする。そして釣りを進め、釣れた魚に一喜一憂し、流れる雲をぼんやりと眺めゆく。
「この世界は、様々な者達が生きている。そこに生きる我々が、時には世界をも動かす。全は一であり、一は全であるとはきっと、そういう事なのじゃろうな」
「カルデアは、世界を変える者たちが集う場所なのだろうな」
「ふぉふぉ、違いない。これからも奮起しなさい、若人とその従者たちよ。こんな老人が、ただのんびりと生きそして死に逝くような。そんな当たり前で平和な世界を護っていってくだされよ」
「尽力しよう。オレもまた、グランドマスターズの一員なのだから」
「できました!ゴッホワンドロスケブ、完成です!」
他愛のない話と共に、ゴッホのイラスト完成の報が響き渡る。そこはいつまでもいつまでも穏やかだった。波風も立たないほどの平穏だった。
「おぉ…うむ、希望と鮮烈に満ちたよい絵画よ。お主も、主をよく支えよく励むとよいぞ。この希望の筆が如くに」
「もちろん、もちろんです…デイビッドさん、カルデアの皆さん…ゴッホが大切にすべき、素晴らしき…素晴らしき…」
言い淀む彼女を、優しく制する老人。そして彼はゆっくりと立ち上がり、歩き出す。
「さて、わしはそろそろ行くとしよう。何かの間違いで呼ばれた場違いの爺の出る幕じゃ、無いだろうしのぅ」
「そうか。…波乱万丈がカルデアの持ち味であるが故、こういった時間は貴重だった」
「是非また、イラスト依頼に来てください。支援サイトなんて言うのもあるので、月額100QPでゴッホのイラストを全部見れちゃいますから…ウフフ…イラストで金稼ぐいい時代…」
「それはよいの。我等を縁が手繰り寄せるその日に、また会うとしよう。それまで健勝でな、星見の勇者たちよ」
その老人は立ち去ろうとして…思い出したようにそれを伝える。
「あぁ、そうじゃ。名乗っとらんかったな。わしは荘周。クラスはフォーリナー…だったかな?まぁ、それほど大した存在でもない。頭の片隅にでも残しておいてくれ」
「フォーリナー、降臨者だったのか」
「奇遇ですね、ゴッホも同じでありました…また逢いましょう、フォーリナー同士!」
「うむ、ではさらば。日々をのんびり、確かな歩みで生き抜くのじゃぞ」
そうして、不思議な老人との一時は終わりを告げる。ゴッホとデイビッドは、なんとも穏やかな時間を過ごしたとリラックスしながら歩き出す。
…不思議な点があるとすれば。デイビッドとゴッホは少しの間完全にロストしており、どこにもその存在が確認されていなかったこと。
そして、荘周たる存在が特異点にいた記録がどこにも無かったということ。そのあまりの不可解さに、デイビッドにゴッホは顔を合わせ首を傾げる。
存在不明、証明不能。残されたのはゴッホが、間違いなく誰かの為に描いた一枚のイラストのみであったという…
ペペロンチーノ「まさかあなたとツーマンセルだなんて。サーヴァントもいないのに大丈夫?」
ベリル「オレはちょっち特別な方面での戦闘をするのが仕事なんでね。脚は引っ張らないからよろしく頼むわ」
アシュヴァッターマン「なんでもいいが、死ぬのだけはやめろよ。俺等は無敗の誓いの上に戦うんだ」
ペペロンチーノ「もちろんよ。じゃあ私達の相手は…」
「──ほう、知らぬ顔ではないな」
そこにいたのは、獅子の剣と虎の槍を構えし、麗しき美丈夫。
「我がドゥルガーの前に至りし者らよ、よくぞ来た。これより、偽りなく我に対するのだぞ」
ペペロンチーノ「────」
ベリル「───」
アシュヴァッターマン「ドゥルガー…様…?」
インドに伝わる戦いの女神。鎧を着込んだその人は、見定めるかのように三人を見据えていた。
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