人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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義経「……………」

景清【よい音色だ、義経よ。その旋律を奉じるのだ…】


義経「─────」

【我等の怨敵、我等の悲願。我等の果たすべき夢に捧げるのだ、義経…】


第二局面、サモンフェスティバル!

「というわけで、幻想郷の重役たる妖に危害を加え、良からぬ事を企むモノを討たねばならぬ。楽園のマスター達よ、これもまた祭りの醍醐味としてサクッと対処してくるが良い!」

 

ギルの玉音司令が発揮される。先程幕張メッセに現れし義経、そしてそこに宿っているとされる景清。彼等は既に紫に狼藉を働き、秘宝を奪取した。それに習い別の場所に特異点反応も発生している。夏草を害する気概が見受けられないのは、果たして英霊たる挟持であるのか。

 

「ロマニに千里眼で見通して貰ったところ、義経たるサーヴァントは特異点最奥にて沈黙。ソロモンの力をふるい、そこにはリッカをピンポイントで向かわせるわ」

 

「他のマスターの皆さんには別のサーヴァント反応に相対してもらう行動方針を願います。多分これ、カルデアに縁を結べるサーヴァントを扇子の時空干渉でかっさらった形ですので。しっかり縁を結んでおかないと!」

 

特異点の中心に最高戦力を転移させるという荒業にしてリアルタイムアタックめいた戦法と、戦わなくてよい相手も縁を結ぶためにマスター派遣する。徒労と最適解を両方展開できる層の厚さと人員が楽園の強みだ。オルガマリー、シオンの提案に異議を唱える者はいなかった。

 

「私は夏草の地脈と霊脈を見てくるから前線はパス。しっかりやんなさいよ、あんたたち」

 

「治癒の術式は、ロマニさんを経由して贈っておくからがんばってね!」

 

アイリスフィール、ヒナコは義経が夏草の霊脈に悪さをしていないか調査を行う。御祓や浄化はイザナミが行うためこちらの心配は誰もしていない。日本はイザナミの掌の上だ。誇張でもなんでもなく。

 

「無粋な物言いはオレの役目、っと。ロマニの旦那、アンタのソロモンとしての力なら、一気に全員退去なんて芸当もできるんだよな?」

 

「まぁね。どれだけ強い存在だろうと、どれだけ位の高い存在だろうと、サーヴァントは魔術の上に成り立っている。人類が解析できない法則で現れない限り、そういった手段は常にソロモンは有しているといっていい」

 

それを聞いて安心、とベリルは引き下がった。リッカという正攻法、ギルガメッシュという電車道、そしてソロモンのちゃぶ台返し。自分達なら大丈夫という危うい自信の上の作戦でないことを確認する腰の引けた役割を彼は担った。

 

「僕達はサーヴァント戦を行う訳だが、カルデアに招かれるようなサーヴァントに三流や二流の存在がいるとは考えにくい。僕達マスターも、単体オペレーションってわけじゃないんだよな?」

 

「もちろんだともカドック・ゼムルプス。お前たちマスターは常にカルデアで行動を把握している。助けられる余力のあるもの、一人では手に負えぬようなサーヴァントを認めれば即座にサブメンバーを投入するとも。祭りで死人出しましたとか洒落にならないからね!」

 

ゴルドルフの言う通り、祭りであるとはいえ油断はない。オペレーション、特異点是正となれば全力を出すのが当たり前だ。無論逐次戦力投入などしない。最大何面作戦でも可能な質量で慎重に大胆に戦うのが楽園流だ。助かる、とカドックは頷く。

 

「安心して、カドック。いざとなったらアタシでもキリシュタリアでもデイビッドでも呼んでちょうだい!」

 

「ヒマワリの絵を速達する。心が落ち着くぞ」

 

「ぺぺはありがたいんだが…デイビッド、頼むから絵だけを渡したから大丈夫とかはやめてくれ…」

 

「何、心配はないさ。我等グランドマスターズに序列はない。カドックはむしろ私達を助ける想定もしていなくちゃダメだぞ?ワンチャンス的にテュポーンとか招かれたらゼウスがいてもやや辛いかもしれないからね!」

『とても辛いです』

 

「そんなのポンポン出てたまるか!どんな終末だよ!…解ったよ。僕もキリシュタリアがピンチのときは必ず駆けつける」

 

「あぁ、私も遠慮なく君たちに助けを求めるよ。助けてくれ!ギリシャの英霊が私達を憎んでいる!何故!?とね!」

 

何故というか当然だろ、という周囲の空気。だがそれは和気藹々としたゆるい弛緩であった。要するに、これはマスター達の連携強化の一環でもあるというわけだ。

 

「俺達カルデアスタッフも常に皆さんの動向を見守ります。戦闘不能、霊基に一定以上のダメージを受けたサーヴァントはこちらで回収、帰還させますのでご了承ください」

 

「流石にそこまでピンチに追い込んでくるようなヤツはいないだろうけど、念の為ってやつだな。所長の神代魔術も支援として撃ったりできるから背中は任せとけ!」

 

ルル、ムニエルが頼もしく応える。つまるところ支援における体制は盤石という事だ。

 

「リッカ君、こちらの推察と結論を話して構わないかな?」

 

「ふぁ?」

 

経営顧問たるホームズが、リッカに声をかける。楽園において勿体ぶる必要は無いため、彼の推理もあっという間に答えが齎される。ただしそれは、リッカのみに話すというのが取り決めの一つだ。

 

「源義経、そして平景清。どちらが主導かは少し難しいが、目的は『頼朝の召喚』だろう。源頼朝を招き入れ、討ち果たすのが彼等の目的との結論を得た」

 

「…復讐を果たすため、ってことなのかな」

 

「おそらくはね。そしてこの目的は二人が合一している理屈にも当てはまる。つまるところ、平景清という怨霊、源義経という英霊。互いに頼朝憎しで利害が一致しているのだよ」

 

ホームズの言葉に、リッカはさらなる答えを導き出す。

 

「つまり、景清が乗っ取ったんじゃなくて…義経が受け入れているってことなのかもね」

 

「そして、景清が義経の願いを叶えたいと願っているのかもしれない。過去の記録を見ても、義経に景清は同情的だからね。故に…」

 

故に、頼朝と義経、両方と敵対する羽目になるかもしれないと危惧する考えを、リッカは礼と共に受け入れる。

 

「ありがとう。いつもみたいに真正面から訪ねてみるね!」

 

「よろしく頼むよ、リッカ君。いくらマスターが増えようと、いくらサーヴァントが増えようと、この組織の中核にして中心は君だ。君の存在は皆に比類なき力を与える。だが…」

 

それは裏を返せば、リッカが倒れれば全てが終わるという事でもある。こうした真相を伝えるのもネタバレという観点では好ましくないが、リッカというマスターは如何なる場面でも敗北は赦されぬ切り札でもあるのだ。ホームズは彼なりに、リッカを心配しているのだろう。

 

「大丈夫だよ。皆がいるなら私は負けない。人理が、カルデアが私を必要としてくれる限り絶対私は勝って帰ってくるから!」

 

「ふふ…ならば君は常勝無敗だ。モリアーティにおける私のように。事件を前にする探偵のようにね」

 

『ホームズゥ!当てつけみたいな私のネガキャンは止めてくれないかナ!私言っとくけど一回お前に勝ったからね愛娘と一緒に!』

 

(聞こえないフリしてパイプを吹かす)

 

『ムカつくぅー!!』

 

「あはは、大所帯になったらブリーフィングも大賑わいだねリッカ君!それでは、無事を祈っているよ諸君!楽園にまた、新たなる縁を結び付けてくれたまえ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

一同が力強く頷き、コフィンにへと配置される。リッカは単独顕現の使用の為、その場でよい。レフボンバーにおける万が一の対処であり配慮だ。一同はレイシフトを開始する。

 

「夏草召喚祭りは第二局面へ移るわ。部員の皆様提供がされたマテリアルのサーヴァントを想定し気合いを入れなさい!」

 

オルガマリーの激を受け、それぞれの場所へレイシフトを果たす。そのオルガマリーの言う通り、祭りはさらなる盛り上がりを見せる第二局面へと移ったのだ──。

 

 




アタランテ「マスター、レイシフト完了した。動けるか?」

カドック「あぁ、問題ない。サーヴァントを打倒する…今日もよろしく頼む、アタランテ」

アタランテ「任せておけ。対獣魔術、あてにしているぞ」

カドック「…至高の狩人の君の前で振るうには気恥ずかしいけどね」

そして、二人は対峙する。

甲冑の武者「────」

カドック「あれか…日本のサーヴァントか?」

アタランテ「慎重に行くぞ。然る後首を取る」

そして即座に、戦慄をもたらす。

武者「──、──」

カドック「─────ッ!!!」

彼は聞いてしまったのだ。武者が呟いた一言。絶望の言葉…

『雷位、開帳』…と。

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