人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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光の神・ルー「遂に…遂に来た…!」

『楽園召喚くじ引き○』

「クー・フーリン…コンラ…私は、御爺はやったぞ…!」

(苦節だった…あまりにも苦節だった…バゼット・フラガ・マクレミッツ殿はマナナンと波長が合っていたためあちらに譲った、故に宙ぶらりんになった私の召喚…!)

「これでようやく、ようやく人理を護りつつ彼等を見守る事ができる…!最近ゾロアスターの御仁も参戦したと聞くし、遅きに失した気がしないでもないがようやく…ようやくなのだ…!」

(コンラ…クー・フーリン…!待っているのだぞ!必ずや、そなたらを後ろから暖かく見守ってみせようぞ…!)

「しかし、神霊単体ではカルデアに迷惑をかけてしまうは必至。タカマガハラなる場はあるようだが、この老骨にそこまでしてもらうのはちょっと…」

(…検索してみよう。この私がなんとか波長を合わせられる御仁を…)

『依代ならここが熱い!あなたも擬似サーヴァントになろう! 著・イザナギ』

「えーと、光の神ルーの依代…」

『検索 ケルト神話 光の神 依代』

「流石に一件くらいは…あってほしい!」

『一件ヒットしました!』

「成し遂げた!さて、失敬ながら私がお借りできる方の素性を少々拝見して…」


光の神と日の依代

元祖親バカ神、光の神ルー。コンラの御爺、クー・フーリンの父たる彼は今パソコンの前に向かっていた。彼は今、念願叶ってカルデア参列の競争に勝ち、資格を得たからである。

 

しかし、彼は神霊。そのままでも楽園は構わず召喚できる準備はあるのだが、彼は慎ましく良識的な神であるため、いきなり神そのものが来るのってなんか感じ悪い…と自らを律し、イザナギが著している依代検索の神霊サイトを使って、自らがお邪魔できるような相手を検索したのだ。そして今、彼を宿せる傑物の素性を確認しているところである。

 

「なになに…名前は日向晶…年齢は29才、奥東京市在住の敏腕編集者…」

 

記されたデータには、彼女の半生が記されていた。日向晶。血の繋がらない二児の母。楽園カルデアのメンタリスト、榊原の先輩であり、親交を今も続けている女性であるという。

 

「榊原処凛とは、今でも仲良しだとされる、か」

 

榊原との出会いのきっかけは、その類まれなる感受性と才覚、精神性から飛び級にて晶のクラスに編入された事から始まった。榊原は当時、自分自身すら手に余るほどの能力、異能を持て余し気味であり周囲から孤立していた。何しろ欺瞞や策謀、人の飾らない感覚が常に受信できてしまうのだ。一般社会における負の感情、劣等感などを常に感じていた彼女は人の交流というものに辟易していたのである。

 

「そうか、彼女は人を越えた感覚を有していたのだったか…」

 

そんな彼女に屈託なく話しかけたのが、日向晶だという。彼女は距離を置かれる彼女にも構わず交流を求め、そして友誼を結んだのだ。

 

榊原はその干渉を当時は鬱陶しがっていたが、好奇心旺盛で細かいことを気にせず、それでいて細やかな気遣いを自分に振る舞い接する彼女を無下にできず、段々と心を開いていったという。

 

その技能はまるで正反対であり、榊原は勉学、論文、講義といった勉学にて無類の傑物に対し、晶は類まれなる身体能力を有していたという。瞬発力、持久力、体幹、柔軟性、センス。それらを全て兼ね備え、互いは互いに存在しない長所を称え合ったのだと記録には記されている。

 

「互いに無いものを妬まず、嫉まず認め合う。美しく麗しいものだ…」

 

榊原は、歪みかけていた自身の人格と精神を矯正してくれた彼女を親愛を込めて『晶先輩』と呼んでおり、それに対し年上である晶は榊原を『処凛ちゃん』と呼んでいるという。その関係は未だ良好なようである。

 

彼女らの友好を示すエピソードとして、晶は動物が非常に苦手であったようなのだが、榊原が動物の心や触れ合い方をレクチャーしながら練習したところ、自身が騎乗する動物と心を重ね合わせる事に成功したのだという。精神的な部分で彼女を助けた後、晶はいつもバイクの後ろに榊原を乗せ首都高をかっ飛ばしていたなんていうエピソードも散見され、ルーは思わず笑みを零す。

 

「この破天荒さ、まさにケルト適性と言わずしてなんなのか」

 

実家は夏草であるのだが、今は奥東京市に住んでいるという。夏草を離れた理由は、仕事の他に二人の娘にもあるという。

 

「血の繋がらない二人の娘…一体どのような経緯を有しているのだろうか。知りうる限りで調べてみよう」

 

ルーは引き続き、晶のパーソナリティを調べる。彼女が引き取った二人の娘。それは通常の生い立ちとは明らかに違う、数奇な運命があった。

 

「日向千和、日向智子。…共に夏草超人養成機関にて製作されたデザインベビー…!?」

 

日向千和。ナノマシンや睡眠学習により近接格闘術や運動神経全般を極限まで強化された、黒神愛生に一歩及ばぬ及第点の個体と判定を受けた実験体。6歳の頃に日向晶に保護される。

 

その後は中学生まで現夏草メンバーと一緒であったが高校生の際に奥東京市へと引っ越し。鈴村飛鳥と特に親交が深く、彼女のデザインアイデアを服に仕立てるのがもっぱらの趣味だとされる。

 

日向智子。降霊、星見、サイキックやテレキネシス全般といった精神的人類能力のアプローチを目論見製作されたデザインベビー。同じく黒神愛生に及ばぬ及第点の個体と判定された実験体。5歳の頃に日向晶に保護された。

 

神秘や世界の秘密を感じ取り、それらを暴く事を目的に製作された事もありその感性は人間離れしており、世に出回っては通説を覆す文を独りでにいくつも書き上げた実績を持つ。当初は異常とも呼べる才覚、才能を有しており、担当分野では黒神すらも上回るアプローチを誇っていた。

 

しかし、そのままでは地球に残る全ての神秘を暴き立ててしまうことへの懸念による機関からの刺客、世界からの抑止といった危険要素を大いに招いてしまう事の危惧から、彼女は脳に厳重なプロトコル処理を受け完成度をいくらか低下させ輩出されたのだという。資料によれば、彼女は世界の外に蠢く神性の一柱一柱を正確に言い当て、開けてはならない啓蒙の一端を垣間見てしまったのだと記録を残している。

 

『這い寄る混沌は、いずれ温もりと輝きを知り人類を愛すだろう。そして永劫、罪過の炎に焼かれ続ける』

 

そう残した彼女は、見てはいけない何かに触れた異端として処分されかけたのだが、榊原が感応にて彼女を見出し、晶に託したとされる。それが経緯であった。

 

今は彼女は一般女子高生として奥東京市の学校に通っている。その世界への啓蒙は鳴りを潜めているが、本気で怒った際にはかつての見てはならぬ世界を垣間見た慧眼の片鱗を見せるのだとか。

 

血の繋がらない家族。蓋を開けてみれば、彼女は二人の製作された命を引き取っていたのだ。通常の生まれ方ではなかった彼女らを引き取り、真っ当に育て上げた苦難と苦労は果たして如何ばかりか。

 

そしてルーは、彼女が依代候補に呼応してくれた事に確信めいたものを感じたのだ。

 

「血の繋がらない者であろうと、生まれが通常とは異なる者であろうと。愛し育む。…楽園における邪悪なる神にも通ずる女傑であるのだな」

 

彼女はその在り方で三人を救った。暴力ではなく、光輝くような人間性で。そこがきっと、自身に波長が合ってくれた要因なのだと思い至る。

 

「クー・フーリンの妻、そしてコンラの母を思わせる気丈さと芯の強さ。うむ…私が助力を乞う女性に相応しい」

 

性別は異なるが、問題ない。自身の力と霊基を託し、事情を話して自分は普段眠りについておればよい。自身がコンラとクー・フーリンの近くにいれば、在り方に拘りはない。

 

きっと…母の愛も父の逞しさも知らなかったコンラを受け入れてもらえるだろう。彼女には、そう感じさせる強さがあった。

 

「…む!?更に縁を見出すものがあると…?」

 

そう、なんと晶の近くにはルー本人が使っていたスリングの欠片が有されていたのだ。針を通すような可能性にて、彼女が選択された理由にはこういった事情もあったのだろう。

 

(こ、これは最早悩んでいる場合ではない。彼女を見落としてしまえばこれほどまでに合致した人間など現れる筈もない!)

 

大慌てで準備に入るルー。これはもう運命にほかならぬと感心した光の神は、彼女に交信する為の準備を大急ぎで進める。

 

(近々大規模な召喚も起きると言うし、今すぐにでも許可を取らなくては!人理よ、我が愛しき子らよ、今しばし待っていてくれ…!)

 

意気揚々と、今度こそ召喚されんと息巻くルー。そう、夏草にて開催される大規模召喚回。その時に間に合えば、きっと邂逅を果たすことは叶うだろう。

 

──しかし、彼は思いもしなかった。その類まれなる依代の候補がもたらした資格は、一つではないことを。

 

同じく彼女と共に召喚されんとされる神性があることを…彼は、失念していたのだ──。




日向千和「…あ、最近よく更新してくれる。調子いいのかな、飛鳥…」


(頑張れ。プロになれ、飛鳥…)


日向智子「やっぱりガス爆発は何かの隠蔽の隠語なんだ!何者かが組織ぐるみで、儀式かなにかの被害を隠蔽した結果出来た事象なんだ!」

生徒「また言ってるよ、智子…」

生徒「めちゃくちゃ可愛いのに変人奇人扱いなの、あーいうところだよねー…」


日向晶「処凛…元気にやってるかしら。あ、ボツで」

作家「そんなー!?」

「いい?キャラクターや設定の噛み合わせがうまくいっていないのに設定ばかりを盛ったら肩透かしの印象を読者に…」

(南極…クマとかペンギンと触れ合えたりするのかしら!)

再会は、間近…?

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