モルガン「私が本気を出すための準備です。プププランドの防衛戦…私も力を奮います」
デデデ大王「おぉ…!」
モルガン「それに…私達の世界の不始末は、私がつけます」
「「「「わにゃー!」」」」
モルガン「ありがとう、デデデ大王の忠臣たち。では──始めます」
カービィ「ポヨ…!」
モルガン「安心なさい。──全力で、行きます」
「聖杯は、私達の世界より紛れ込んだ異物。そしてそれは願いを叶える願望機。誰もが、届かないからこそ願いをなにかに託す」
モルガンはワドルディ達が整えた玉座に座り、空を見る。そこには、呆れ返るほど平和なる国を乱した無粋極まる杯に歪められてしまった二人の住人が叫んでいる。
「ですが、渇望も妄念もこの国、この星には似合いません。願いはきっと、自分で彼等は叶えられる。だからこそ──」
だからこそ、自身がかの聖杯を処理する。モルガンの妖精眼は全てを見抜いていたのだ。彼等はカービィを裏切り、敵対したもの達。その戦いの禍根を、大なり小なり気にかけていた事を。ゆえにこそ彼等は、どれほど辛い仕事もやり遂げようとしていた。
罪には赦しが必要。あの忌々しい、もう一人の楽園の妖精が言いそうな言葉だ。そう──赦されぬ罪など、破滅に通ずるものだ。
「──ここで、私が力になりましょう。赦しを求めると言うのなら、おまえ達の望む形の免罪…そのきっかけを」
【【カァァアビィィーーーーーッ!!!】】
眼球から無数のビームを放つマルクソウル。身体中から幽鬼のような炎を無差別に撒き散らすマホロアソウル。それらは平和なるプププランドを焼き尽くす破滅の業火。
「『最果てにて輝ける槍』──起動」
かつて、呪厄の祭神と成り果ててしまったモノへと用意していた対処兵装。ロンゴミニアドの砲門を開き、マルクとマホロアを真っ向から迎撃する。紫電、漆黒、そして蒼き焔がぶつかり合い、凄絶なる爆破をもたらす。
「これは…地球人類のテクスチャを繋ぎ止めていると言われる槍、ロンゴミニアド!モルガン陛下はこれらを防衛兵器として振るうことが叶うのか!」
「ポヨイ!?」
「魔術のみで、神造兵装なる星の武器を自在に操る。モルガン女王…彼女の魔術は遥かなる高みにあるということだ。カービィ、あれがお前の仕える女王の姿だ」
メタナイトの瞠目に、カービィは頷く。モルガンは同時に、ただ一人も傷つけないよう、プププランド全域に魔力障壁を張っている。戦いの被害、二次災害、それらすべてを抑えきり、同時にマルクとマホロアを無力化せんと奮起している。それは右手と左手で全く違う作業をしながら戦っているようなものだが、モルガンの神域の魔術は容易くそれを可能にしている。
「プププランドはやらせません。マルク、マホロア。聖杯は渡してもらいます」
【ギャアァァァァァァーーーッ!!!】
【ァァァァァァァァァーーー!!】
絶え間なく叩きつけられる無数の攻撃に、両者の大絶叫が響き渡る。玉座に座ったモルガンは、ブリテン島を全て管理すら叶う程の力を発揮する。いくらカービィにとっての強敵でも、陣地作成を完遂した魔術師を突破するのは容易ではない。プププランド全域をカバー出来るほどの武力、火力。それらを発揮できるモルガンの上を行く魔術師など、ただの一人しか存在しない。
そして、モルガンが二人を圧倒できる理由はもう一つある。
【カー…ビィ………!】
【ゴメン…ヨォ…アァァアァァ!!】
目的が違い、裏切ったとしても完璧に情が消える訳ではない。彼等は心のどこかで悔いており、ずっと侘びたいと思っていたのだ。心の底から、生粋なる邪悪などカービィの周りにはそうはいない。彼等は、妖精達よりもずっとずっと誠実なのだから。
(あの聖杯…願いに回す魔力量が尋常でない。魔力リソースたる聖杯ではあれほどの変化は齎さなかった筈)
モルガンの見立てからして、あの聖杯は大聖杯に届きうるほどの完成度を誇っていた。あの器は間違いなく根源の穴、万能の聖杯に届きうる。それほどまでに完成されたものなのだ。神域の魔術師でなくば扱えるはずがないほどの。
(だからこそたちが悪い。あれほどのものを無節操にばらまき、あまつさえ誰の願いも汲み取るなど)
赤ん坊や小学生にモンスタートラクターのシートを任せるようなものであり、あいうえおをブラックキャッシュの音声認識のパスワードにしているようなものだ。あんなものをなんの制約もなくばらまくなど、正気など一片もない狂気の所業だ。すなわちドン引きである。
【ギャアァァァーーー!!】
【アァァアァァアァァ!!】
言わば願いを【叶え過ぎている】のだ。過ぎた薬は毒となる。過ぎた富は魂を腐らせる。甘やかしの極地、全肯定の極み。豚を肥え太らせ、狼の牙を抜く。あれは、そういう類の聖杯だ。輝かしき、おぞましい聖杯。
(サタン…敵対者。一体何者なのです)
絶叫に悲愴が交じる。オーバーロード、メルトダウンが近い。このままではマルクとマホロアは魔力で弾け飛んでしまう。ならば──。
「デデデ大王。カービィを投げられますか?動きを止めるので、聖杯を抜き取るのです」
「なんですと!?」
「ポヨイ!?」
モルガンの精神状態は、救世主時代に戻り始めている。元々小細工など面倒ではあるのだ。力任せで済むならそれが一番である。
「カービィの力ならやれます。大王、あなたの力も備われば。かっこいい所を見せてくれますか?」
デデデ大王はモルガンの言葉に、頷く。女王に任せきる治世など有り得ない。自分達の国は、自分で護るのだ。
「カービィ!やってやるぞい!ワシとお前ならば絶対にできる!」
「ポヨイ!」
喧嘩するほど仲がいい。それは、彼らの為にあるような言葉だ。
【【ァァァァァァァァァァァァァァァ!!!】】
不気味に胎動し始める二人。限界が近いのだ。聖杯を炉心にした大爆発など、果たして星そのものが堪えられるのか。
「駄目で元々人生はギャンブル!だがワシはここぞというとき絶対にしくじらない大王ぞい!」
「ポヨォオォオォオォオォオイ!」
「行けぇーー!!カービィーー!!」
大回転にて、カービィはぶん投げられる。ピンク色の流星と化したカービィは、かつての敵にして大切な友を助けるために渾身の力を込め、飛翔する。
【【ァァァァァァァァァァァァーー!!】】
迎撃するように、無数の光線が襲う。今方向を変えることはかなわない。カービィは危険と知っていても、突撃するしかないのだ。
「フッ!!」
瞬間、メタナイトが猛烈なる速度で飛翔し、カービィに襲い来る全てを斬り落とした。神速の斬撃、目にも留まらぬ、いや映らぬ斬撃。
「行け、カービィ!」
「うぉおぉおーーーーっ!!!」
普段とは想像もつかない気合にて、カービィは突撃する。二人を狂わせ、迷わせている聖杯をぶんどるために。
【【あ、アァァ…!】】
「ポヨォオォオォオイ!!」
【【アァァアァァアァァアァァー!!】】
かすめ取る、ではなくそして力づくでぶんどるピンク玉。拮抗し、そして二人を狂わせている輝ける純悪の秘宝に手を伸ばし───
「どおぉおおりゃあぁあぁあぁ!!」
カービィ渾身の雄叫びと共に…聖杯は引っこ抜かれた。力の根源を。急激に膨張し、歪んでいく純悪の姿。
「カービィ!」
カービィの身柄を素早く回収し、飛翔し離脱するメタナイト。
【【アァァアァァアァァアァァーー!!!】】
耳を切り裂くように大絶叫を起こす両ソウル。そのおぞましい姿に似つかわぬ、美しき光を溢れ出させ──
「防御壁!」
モルガンの防御壁の内側に来るのと、大爆発はほぼ同時に巻き起こる。その輝きは、もたらした者の思惑が如く。皮肉なれど美しかった──。
カービィ「ポヨヨ!ポヨイ!」
マルク「う、うぅん…」
マホロア「こ、ここは…?」
「ポヨイ…!ポヨー!」
メタナイト「悪夢は終わった」
デデデ「やったぞい!やったぞーい!」
モルガン「ふぅ…」
マルク「ごめんよ、カービィ…」
マホロア「許してほしいヨォ…」
カービィ「ポヨイ…ポヨ?」
モルガン「なんだっけ?と言っています」
「「そんなぁー…!?」」
モルガン「英雄は細かいことを気にしないということ、流石ですね」
(さて…あの聖杯を回収しなくては。ソロモンならば扱えるでしょう)
モルガンが聖杯に手を伸ばした、その時──
「…ん?」
その聖杯に───一匹の、蝶が止まった。
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