人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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サイの花屋「年甲斐もなくはしゃぎやがって。…好きなだけ暴れるといいさ、桐生」

スズカ「二ー!」

?「ほう…ならば私はまとめて奴らをいただこう」

「何?お前は…!?」




桐生「招待状、受け取ってくれたみたいだな。田村麻呂」

田村麻呂「カズマくんが伝説…!どうりで色んなプレイスポットに名前があるわけだぜ!」

桐生「伝説…。人ってのは生きていくと色んなものを背負っちまう。俺も、背負ったり託されたりの繰り返しだ」

田村麻呂「…」

桐生「だが、たまには…一人の男として、ただ喧嘩したくなる日もある。それも、とびきり気持ちのいい男とな。田村麻呂、あんたはまさにピッタリの男だ」

田村麻呂「…へへ。互いにまだまだやんちゃって事だな」

桐生「フッ…」

田村麻呂「いいぜ、カズマくん。そういう事なら…俺も全力でやらせてもらう!どっちが勝っても、うらみっこなしだぜ!!」

桐生「あぁ、勿論だ」

田村麻呂「へっ──行くぞぉ!!カズマァァ!!」
桐生「来ぉい!!田村麻呂ぉ!!」



     東 城 会 四 代 目
       桐 生 一 馬


生ける伝説

「うぉおぉおぉお!!!」

「らぁあぁぁあぁっ!!!」

 

 

最早言葉は不要。高まりに高まりあったオーラを放つ二人の男が、逃げ場のないリングにて真っ向から殴り合う。意地も見栄も、ともすれば勝敗すらも関係のない究極の殴り合い。二人だけの、喧嘩が始まったのだ。

 

(ぐっ、とんでもなく拳が硬くて重ぇ!一発一発が鉄球を打ち込まれてるみてぇに響きやがる!)

 

真正面から拳を殴りつけ、叩きつけあう男の喧嘩。桐生の拳を一発一発受けるたびに軋む霊基を痛感しながら田村麻呂は感嘆する。この現代に、アテルイを思い起こさせるような力を持つ人間が実在しているその事実にだ。

 

「だが、こちとら大将軍!これくらい耐えなきゃ英雄なんて名乗れやしねぇんだよ、カズマくぅん!!」

 

「ぐおおっ…!」

 

田村麻呂の反撃に、マットに叩き伏せられる桐生。鉄拳とすら呼べるそれ。耐えられる人間などまともにいるかどうかのその拳にも、真正面から殴り返してみせる田村麻呂。桐生からしてみても、その拳の重さは規格外だ。

 

(重く、そして強い…。これが、大将軍の拳か…!)

 

桐生はダウンを奪われつつも、爆発的に闘気を高めている。今の彼は気合と根性の喧嘩スタイル。一度や二度のダウンなどにかまける事などない。

 

「んのやろぉおぉおぉおぉおぉお!!!」

「ぐぁあぁぁっ!!?」

 

素早く起き上がると同時に猛烈突進。そのまま倒れ込むような渾身の頭突きを田村麻呂に喰らわせダウンを奪い返す。桐生の喧嘩スタイルの極み、『超反撃の極み』だ。

 

「おら、どうした。かかってこい!」

 

「ぶはっ…伝説って聞いたからどんなもんと思えば、ガチガチのチンピラファイトも出来るんだなカズマくん!それでこそだぜ!!」

 

ぶっ、と血反吐を吐き出し起き上がる田村麻呂。そして桐生と田村麻呂は拳のみでも超絶速度のラッシュを展開する。ノーガード、お互いに全く引く気配の存在しない血飛沫舞う超絶ラッシュの応酬だ。

 

「うぉおぉおぉおぉお!!」

「だらあぁああぁあぁ!!」

 

それは先程のチンピラスタイルとは違う、ボクシングのラッシュのような素早い打撃音と破壊音が巻き起こるものだ。一撃を返せば二撃。二撃返せば四撃と倍になって帰ってくる手数の極み。残像すら見せるようなラッシュ。

 

「ぐお、っ…!」

 

ただ、スーパーアーマーめいた肉体の頑強さには田村麻呂が軍配が上がる。ラッシュの打ち合いに一歩を差を付けられ、たたらを踏み下がる桐生。それを見逃す田村麻呂ではなかった。

 

「カズマくぅうぅん!!貰ったァァァ!!」

 

猛烈な速度と力を込め、よろけた桐生に田村麻呂が迫る。しかし、桐生は素早く気迫を込め、予想外の反撃に出る。

 

「───!!」

 

「なっ!?」

 

なんと田村麻呂の拳を真正面から受け止めたのだ。いや、それだけではない。そのまま片手で、掴んだ拳を支点に田村麻呂を高く高く持ち上げる。

 

「おるぅうぅあぁあぁ!!」

「ぐぁあぁぁあーっ!?」

 

まるで人間が木っ端のように振り回される規格外の剛力。田村麻呂は為すすべなく振り回され、そして放り投げられ金網へと叩きつけられる。人体など軽く破壊できる壊し屋が如き攻撃に、田村麻呂は大打撃を受けたのだ。

 

「おんんんぬぁ!!」

「いっ!!?」

 

反射的に飛び退く形にて回避した田村麻呂は、その規格外の伝説に息を飲む。アイアンクローにて頭を掴まんとした桐生の手が空を切り、そのまま金網をむんずと掴む。

 

「…………──────」

 

絶句という他ない程に呆気にとられる田村麻呂。なんと桐生はそのまま金網を素手で引きちぎったのだ。人間どころか獣すらも閉じ込められるような頑強な金網を、ただの人間である筈の桐生がである。田村麻呂は、何故彼が伝説であるのかの意味をまざまざと痛感していた。

 

「神代に先祖返りしてんのか…?いや、なんか特別なトレーニングかなんかでもしてんのかよ…!?」

 

「特にはしていない。生きること、それがトレーニングだからな」

 

「へへっ、めちゃくちゃカッコいいなそれ!流石だぜカズマくん!だがまだだろ、カズマくんの強さにはまだ上があるはずだ!」

 

田村麻呂は全身全霊の構えを取った。先程まで帯刀していた刀、坂上宝剣に手をかけ、抜き放ったのだ。

 

「生身相手に、なんて言うつもりはねぇ。アンタは紛れもねぇ伝説だ。人の形をした龍…。そんな相手に、全力で行かねぇのは失礼に当たるからな」

 

「あぁ、勿論構わねぇ。自分に有利な条件だけじゃ、対等な喧嘩とは言えねぇからな。光り物を使って全力ってのは、よく経験してる」

 

田村麻呂の本気を前に、桐生もまた構えを変える。青と赤い焔を立ち込めさせる彼本気の構え──『堂島の龍』の本領だ。

 

「田村麻呂。大将軍のあんたとこうして真っ向から殴り合える幸運に感謝する。リッカに、御礼を言っといてくれ」

「なんなら自分で伝えてやれよな?絶対喜ぶぜ、カズマくん」

 

「あぁ──なら、行くぞ!田村麻呂ォ!!」

「来やがれ!桐生一馬ァァァ!!!」

 

他愛のない一言を交わし、そこからは再び魂をかけたぶつかり合い。刀を抜いた田村麻呂、蒼き闘志を全開に滾らせる桐生。真なる戦いが此処に始まった。

 

「おぉおおぉおおぉおおぉお!!」

「はぁぁあぁあぁあ!!!」

 

無数の斬撃を掻い潜り、一瞬の隙間に拳を捩じ込む桐生。それは我流ではない。師匠より授かった『虎落とし』『挟み撃ち』『無刀取り』といった奥義の全投入だ。素手でありながら田村麻呂に真っ向から渡り合う、無手の極みを見せる桐生。

 

そして田村麻呂も、刀に注力させつつも組打ち、掴み、投げ、打撃などを混ぜた実戦刀術にて桐生を圧倒する。殴られようが、蹴られようが微塵も勢いを衰えさせない大将軍の気迫。それが、堂島の龍の攻撃を弾き返しているのだ。

 

「だらぁあぁあぁあっ!!」

「っ!すぁあっ!!」

 

機会は動いた。田村麻呂の唐竹割りを、桐生はなんと真剣白刃取りにて受け止めた。そしてそのまま流れる無刀取りにて、刀を天井の金網へと吹き飛ばす。

 

「うぬぅあぁあぁあぁ!!」

「ぐぉおっ!!」

 

だが、桐生ならばやってくると踏んだ田村麻呂は倒れ込むように桐生からマウントを奪い、浴びせるようなラッシュを浴びせる。見栄も体面も介在しない、男のゲンコツの壮絶なラッシュだ。

 

「はぁあぁあぁっ!!」

 

桐生も為すがままではない。素早くマウントを取り返し、拳を田村麻呂の顔面に叩きつける。お互い精悍な顔立ちを血に染めて殴り合う、男の戦化粧を彩る極限の対決。

 

「カズマァァァァァァ!!」

「田村麻呂ぉ!!」

 

マウントから、首相撲への膝蹴りの打ち合い。互いのダメージは重篤であるが決して勢いは衰えない。

 

「ぬぐぁ!」

「ぐうっ…!!」

 

やがて、渾身の頭突きと共に二人がよろけて距離が生まれる。二人の闘志は微塵も衰えていない。故に取る選択肢は一つ。

 

「うぉおぉおぉおぉおぉおらぁあぁあ!!」

 

田村麻呂の、渾身の気迫と気合を込めた左拳。

 

「はぁああぁあぁあぁあーっ!!」

 

桐生の、全身全霊の右拳。必殺の一撃がぶつかり合う、渾身のクロスカウンター。決着を告げる一撃。

 

「「はぁあぁあぁあぁあーっ!!!!」」

 

その一撃同士が、真っ向よりぶつかり合う。その衝撃は、地下闘技場全体を揺らすほどの衝撃を放った。

 

 

「く、ぁ…ぐうっ……!」

 

桐生の一撃をカウンターで食らった田村麻呂が、ふらふらと後退する。後ろのフェンスがなければダウンは免れない程の大ダメージだ。

 

「ぐっ…ぬぁ……!」

 

そしてそれは桐生も同じこと。辛うじて立っているといった様相の、ボロボロの姿でフェンスにもたれかかる。

 

「ッ、へへ…神室町に来て良かったぜ…!最高だぜ、カズマくん…!」

 

「それは、何よりだ。俺も…こんな気持ちのいい喧嘩は久し振りだ…」

 

お互いの健闘を称え合うも、勝者は一人。その決まりは覆らない。大将軍か、伝説の龍か。決着は付けねばならないのだ。

 

「さぁ、決着を──ッ!?カズマくん!!」

「何ッ!?」

 

瞬間──リングの外から漆黒の如くに現れた影。桐生を真っ直ぐに狙ったそれを、田村麻呂は間一髪で弾き返す──!




?「ほう、弱っていても流石は征夷大将軍。今のを受け止めるとは」 
田村麻呂「この感覚、テメェ…サーヴァントか!」

桐生「サーヴァントだと…?」

?「如何にも!この特異点の聖杯、最強のチカラを得るためいただきに参った!我がクラスはアサシン!幕末の英霊!」

桐生を庇い立つ田村麻呂。サングラスをかけたサーヴァントは告げる。

「亜門!亜門玄丈斎なり!我が野望の為に糧となるがいい!現代の龍馬!そして征夷大将軍よ!!」

田村麻呂「亜門だぁ…!?」

突如の水入り。次回、神室町の戦いクライマックス──!


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