人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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サタン【今回からは少しだけ時間軸や時系列を弄って、楽園の皆に色々してもらおうと思うんだ。これが僕等のプレゼント!】

ベルゼブブ【クリアした数だけ、聖杯を贈ろう】


サタン【節目、楽しんでね!それじゃあ早速、行ってみようか!】


リクエスト〜コラボ特異点巡り〜
特異点来訪〜征夷大将軍、神室町に立つ!〜


「ここが神室町!来ちまったぜ…大将軍が来ちまったぜぇ!このネオンと明かりの飛び交う土地によぉ!!ワクワクが止まらねぇぜぇ!」

 

せっかく世界を救った訳だし、外の世界をもっと味わいてぇ!と彼、坂上田村麻呂は一人夏草とは違う地へと降り立った。リッカの世界とは微妙に違う地理、そう。『神室町』である。リッカの世界では新宿歌舞伎町である地理に存在する、ヤクザとギャングや欲望と歓楽渦巻く活力に満ち溢れた街である。様々な事象が巻き起こっており、前述の反社会組織のチャカやハジキ飛び交う抗争はいつもの事。ゾンビが大量発生したりヤクザが大量発生したりガタイのいいおじさんたちがバイクを持ち上げたりタワーが爆発したりなどとはいつもの事である。最近では渋谷がゴーストタウンにもなったらしいが神室町の人間には関係ないため平常運転である。

 

「夏草は綺麗で皆が良くあろうとするすげぇ都市だったが、ここは全員が上に行こうとギラギラしてやがるな!男を磨くにゃ丁度いいぜ!」

 

そんな世紀末な街に、田村麻呂は裸一貫で降り立った。歓楽なら夏草が一番なのだが、あちらにはない『ギラつき』を求めた武者修行である。そして東京のお土産をリッカや鈴鹿に用意するためでもある。つまり、暴れん坊大将軍ということだ。

 

「軍資金は鈴鹿が持たせてくれたが、嫁の金で遊び呆けたくはねぇ。さぁて、遊ぶ金と食う金が欲しいとこだが…」

 

そう、田村麻呂は自分の稼いだ金でしか歓楽する気概がない。鈴鹿的には大人しくしてほしいため多く持たせたのだが、田村麻呂はそれも全てお土産に回すという愛妻脳にて痛恨の真意スルー。治安が悪いとだけ聞いていたので一人で殴り込みをかけるいきあたりばったりの極み。だが、それを彼がやれば紛れもなく日本一の破天荒。将軍とはそういうものだ。

 

「ねぇ、オッサン」

 

「あ?」

 

日雇いバイトでもすっか!とボジティブに考えていたところ、田村麻呂に声をかける者がいる。夏草のように新入りを歓迎する優しい現地民、ではあれど微妙に違う。

 

「オッサンさぁ、俺達今金欠なんだよねぇ」

 

「チラッと見えたんだけどさ、メチャクチャ金持ってんじゃん。ちょーっと俺達に貸してくんない?」

 

声をかけられ顔を上げてみれば、今どきの格好に身を包んだいわゆる『チンピラ』や『半グレ』のような連中に因縁を付けられていることに田村麻呂は気付く。どうやら自分は今、助けを求められているらしい。

 

「なんだお前ら、金が無いのか?なら俺と同じだな!実は俺も今金が無くてな!だがそれなら仕方ねぇ、心ばかりだが受け取れ!ほら!」

 

弱者を見捨てない。そしてチンピラ達に手を出させ、掌に置くのは500円玉。彼が持っていた、自分用の全財産だ。

 

「それでなんとか凌ぎきれ!じゃあな!」

 

自分はこれから稼ぐので大丈夫だ!じゃあな!そんな爽やかさと豪快さで神室町に乗り出さんとする田村麻呂。お土産代の財布を懐にしまい、鼻歌交じりに去らんとする。

 

「は、ちょ、おいオッサン!」

 

当然子供の駄賃などで満足できないチンピラ達は田村麻呂を取り囲む。中にはバットや角材で武装する者もちらほらと現れ始める。

 

「ん?どうした?悪いがそいつが全財産でな。もう渡せるもんは無くてな、後は自分で稼いでくれ!」

 

「オッサン嘘言っちゃだめでしょー。そっちの財布にいっぱいお金、入ってるんじゃん」

 

「これか?悪いがこれは嫁と今生の主への土産代なんだ。オレも使えねぇ大事な金だ。こいつはくれてやれないんだ、ごめんな」

 

「でもなー、俺達凄く金が欲しくてさー。そのお金すっごくほしいんだよね、っと!!」

 

瞬間、田村麻呂の背後からチンピラがビール瓶で田村麻呂を殴りつける。サーヴァントには神秘が無い攻撃は効果がないが、神室町はヤクザの街なので神秘や魔術は通らない(?)。流血と酒まみれとなる田村麻呂。

 

「ひゃっはっは!ナイススイング!」

 

「言うこと聞かないからこんな目にあっちゃうんだよ?オッサン」

 

「受けるー!リーマンかなんか?毎日毎日ご苦労さまですってか?ATMとしか見られてない癖にな!」

 

リーダー格につられて笑い出す一同。田村麻呂は頭から流れる血を見やる。

 

「…いてぇじゃねぇか、ガキ共。初対面の人にはビール瓶振り下ろすなって学舎で学ばなかったのか?」

 

「学舎とか古風ー!カビ臭い人間かよ、アンタ」

 

「習ってませーん。僕達中退でーす」

 

そんな見るに堪えない醜態を晒しながら、次々と手にした武器を振るい襲いかかるチンピラ達。

 

「死なない程度に半殺しちゃってー。財布から金抜きとりゃそれでいいから」

 

その指示の下、容赦なく打撃や武器などで田村麻呂を打ち据えていくチンピラ達。

 

「オラッ死ね!死ね!」

 

「金寄越せコラッ!」

 

多勢に無勢の圧倒的な蹂躙。チンピラ達は最悪路地裏にでも捨てておけば問題ないとたかを括っていた。多少痛めつければ音を上げるだろうと。

 

「………………」

 

しかし、田村麻呂は腕を組んで微動だにしない。ただなすがままに攻撃を受け続け、静かにそれを受け止めている。どれほど殴ろうが蹴ろうが切ろうが、微塵も動じないのだ。

 

「な、なんだこいつ…マジ?」

 

「うっ、うわぁっ!?」

 

「ひぃい!?」

 

すると、殴っていたであろう側のチンピラが恐怖の声を上げる。へし折れたのだ。バットも角材も、武器にしていた道具全てが。

 

「ギャァァァ!腕がぁあぁ!?」

「脚が、脚がァっ!?」

 

それだけに留まらず、一方的にリンチしていた筈のチンピラグループの素手の輩たちの拳や脚があらぬ方向へとへし曲がっているのすら見受けられた。田村麻呂はただ受けていただけであるにも関わらず、だ。

 

勿論、本当になすがままであった訳ではない。打撃の瞬間、身体中に力を込め頑強なる肉体強度で、衝撃をそのまま跳ね返したのだ。戦う領域にすら至らない相手が、無闇に牙を突き立てた結果がこれである。

 

「……………」

 

だが、血を流しながら歩み寄ってくる田村麻呂の迫力は尋常では無かった。殴っていた筈がチーム壊滅という憂き目にあったその意味不明さに、腰を抜かして田村麻呂から逃げ果せようと後ずさる。

 

「あ、あの、すみ、すみませんでした…!あの、これ、お詫びです…!」

 

あまりにも人間として、レベルが違いすぎる事を痛感したリーダーは、田村麻呂にあるものを差し出す。それは金で作られた皿であり、売れば中々の値段が付く代物だ。

 

「どうか、どうか命だけは…!すみませんでした…!!」

 

遂に土下座まで晒し、田村麻呂に赦しを乞うリーダー。そんな彼に、田村麻呂は声をかける。

 

「おい」

 

「は、はいっ!!」

 

すると田村麻呂は金の皿を『献上品』として受け取り、顔を上げさせた後に告げる。

 

「あんま親に心配かけんな。若いうちから人生諦めるんじゃねぇよ」

 

「ぁ…」

 

「お前らの人生はこっからだろうが。こんなとこでくだらねー事やってる暇なんかねぇだろうが、アホ!!」

 

「ごべぇっ!!」

 

心配と親身のアドバイスからの、悪い事をしたお仕置きとしてのフルパワーヘッドバット。凄まじい勢いの頭突きに顔面が陥没する程の衝撃と共に倒れ伏すチンピラ。

 

「オラ散れ!バカども!ゲンコツ欲しいのか!!」

 

「「「「す、すみませんでしたぁー!?」」」」

 

田村麻呂の迫力に、散り散りとなって去っていくチンピラ達。同じ日本でもこうも違うかよ、と驚愕を顕にしつつも立ち上がる。

 

「神室町…噂以上に楽しめそうじゃねぇか!」

 

だが、なんだかんだで神室町の洗礼を期待していた田村麻呂。その意志に恥じないイベントに心を弾ませる征夷大将軍なのであった──。




質屋えびす

店員「金の皿は100000円になります」

田村麻呂「マジかよ!?そんなたけぇの!?」

店員「はい。金ですので」

田村麻呂「なんでこれを後生大事に持ってたんだよ…売れば良かったじゃねぇかバカヤロー!?」

(…?待てよ?良い年こいてカツアゲなんかするには理由があったって事か?こりゃあつまり…)

田村麻呂「…この神室町じゃあ…ガラの悪いやつをブチのめして金を稼ぐのが普通なのか!?」

店員「?」

田村麻呂「たとするなら仕方ねぇ…心を鬼にして、遊ぶ金を稼がせてもらう!悪く思うな、ヒヨッコ共よ!」

(修行も込めて、とことんまでやってやらぁ!サーヴァントとしてスーパーになってやるぜぇ!!)

こうして、田村麻呂での遊ぶ資金稼ぎ(?)が神室町にて幕を開ける──!

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