人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(感想メッセージ返信は今から行います。メッセージ遅れてすみません!)

マシュ『オルテナウス、全力開放!対終末、対粛清防御モード展開!』

オルテナウス『対終末、対粛清防御モード展開。スプリーム・モード・ディフェンス。全防御ユニット、マシュ・キリエライトの生命維持モードに移行』

リッカ「マシュ…大丈夫だよね」

リッカはあえて、静かにマシュに問う。空を見上げれば、押しつぶされるような圧迫感。空が真っ黒で見えず、辺り一帯に陽の光は差し込みすらしない。

マシュ「先輩。どうか信じてください。あなたの、オンリーワンサーヴァントを!」

『マシュ・キリエライトの意味消失、自己存在定義の消滅を防ぐためのアンカーを設置。反動、退去、破壊対策シークエンス起動。スパルタ、プリドゥエン、全防具展開』

ロマニ『マシュ!?一体何を…!?』

オルテナウス『シークエンス展開。ロード・カルデアス発動。ギャラハッドの霊基、起動。ロード・キャメロット発動。ホーリーグレイルに記憶された最大威力、展開』

マシュ「見ていてください、ドクター!」

『宝具展開規模分類、上昇。対人、対軍、対城、対国。──対界宝具認定。マシュ・キリエライトが想定する宝具の防御確率──5%』

マシュ「オルガマリー所長!貴女の世界を、もう傷つけさせはしません!マスターの皆さんも!」

オルガマリー『マシュ…!』

オルテナウス『全行程、クリア。全機能、オールグリーン。真名開帳、待機』

マシュ「先輩!これが私の、全身全霊です!いっぱい惚れ直してくださいねっ!」

リッカ「──行って!マシュ!」

マシュ「はいっ!!──真名、開放!!」

『真名、開放。宝具名───』


マシュ「『此処に在りき(カルデアス)理想郷(アヴァロン)』ッッッ──────!!!!!」



此処に在りき理想郷(カルデアス・アヴァロン)

ランク

EX

種別 対終末・対粛清宝具

レンジ マシュが護りたいと願う全て

最大捕捉 マシュが護りたいと願う全て


オルテナウス・モード・ディフェンスの最大展開。

彼女が願う、全てを守護する宝具。


理想郷

【こ、れは…】

 

それは、恐怖の大王の想像すら遥かに越えていた。余りにも力強く、雄々しく。それでいて儚く、今にも消えてしまいそうにも見える、その光景。

 

「はぁあぁあぁぁあーーーーーッッッッ!!!」

 

少女が、あらん限りの気迫を吐き出し踏ん張っている。その少女を中心にエーテル…いや、『熱量』が際限なく噴き出し、星を丸ごと覆わん程の規模で全てを庇護せんと猛っている。

 

【人の、形────】

 

地球を覆うかのような熱量は、光帯が如くに少女の眼前に展開される。そしてその光の帯は、人理保証機関のマークを中心に顕している。

 

少女の周囲には城──否。白金色に光り輝く神殿が展開されている事に気付く。少女の身体には鎖、周囲の大地にはアンカーが打ち込まれ不退転の決意を示し、燃え盛る。

 

そして何より──大気圏をゆうに超え、星空へと届かんばかりの魔力のビジョン。少女の魂の具現化の如き超巨大な人物が手を開き、破滅の天体の降臨を受け止め留めているのだ。

 

有り得ない。最後の審判を人が受け止めるなど。

 

有り得ない。僅か、ほんの一瞬でも天体が留まるなど。

 

有り得ない。裁きが、救いが、たった一人に押し返されるなど。

 

【これは…これは───】

 

だが、今それが起きている。遥か辺境。広大な宇宙から比べればあまりにもちっぽけな星で。太陽系という小さな小さな括りの宇宙の片隅で。

 

今確かに──恐怖の大王の予言は覆されている──。

 

 

『カルデアス・アヴァロン…!オルテナウスの全機能、神代の肉体に進化したマシュ、そして聖杯!並びにリッカ君が持つ魔力と令呪を全て注ぎ込んだ、楽園カルデア最大にして最硬の『守護』…!マシュが有する、最大の宝具なのか!』

 

ロマニの驚愕が響く。それはさぞ驚きだろう。その防御の理論的硬度は『対粛清・対終末』の領域に達していたのだから。それは、マシュがかつて夢見た領域の階梯。

 

『マシュの身体に宿る英霊、ギャラハッド。彼女はギャラハッドの能力と力を完全に受け取っている。それはつまり、デミであるが故に人が思い描く理想の防御にして概念に到達する資格を持つ』

 

『師匠…』

 

『そしてギル君に組み込まれた聖杯の効果で、マシュとオルテナウスは防いだ攻撃、宝具の威力を記憶蓄積が可能となっている。そして彼女の防いだ最強の攻撃とは、ゲーティア第三宝具。『誕生の時きたれり、基は全てを修めるもの』。銀河の逆行を行うための燃料確保。人類史の全てを焼き、エネルギーに変換した大偉業。それを──』

 

それを、マシュとオルテナウスは防御に転用。エクスカリバー数億本の熱量を全て防衛に使った人類の歴史と、熱量の顕現。それらを束ね、盾として…否『概念宝具』として昇華した宝具。それこそがこの『此処に在りき理想郷(カルデアス・アヴァロン)』なのだ。

 

『実態無き盾。破壊される形のない防具。魔力と人類史、いや…人類が積み上げてきた全ての熱量。ロマニ、この理論はね。ゲーティアが遺したノウハウなんだぜ?』

 

この地球上に、かの光帯に比肩する熱量は存在しない。地表を一掃したところで、時間旅行に至る燃料は確保できない。ならば人類史を遡り、今日に至る全てを燃料にして変換する。紀元前、西暦。今までとこれからの全て。人類悪として悪用されたそれは人理焼却として大偉業となった。

 

しかし、人類悪とは人類愛なのだ。人を愛する願い。人を救うという祈り。かつて英雄姫に昇華されし彼等は、カルデアに尊き祈りを託したのだ。姫には自らが生きた証を。そして、定められた命を持つ『普通の女の子』には。

 

『──彼女が護りたいと願うもの、護りたいと思うもの。それを…ゲーティアは、彼等は遺して逝ったのか…』

 

「はい、ドクター!この護りは、この祈りは、私一人のものではありません!」

 

リッカは腕組みし、マシュの後ろにて見守っている。目の前に迫る審判に抗う少女の背中を、微塵も揺らがず見つめている。

 

「積み重ねてきた人類の歩み!願いを込めて突き進んできた仲間たち!そして──私が護りたいと願う全てに捧げる誓い!その全てが、今こうして形となっているんです!」

 

表面が焼き払われようと、マシュの心と魂から無限に焔と魔力、勇気の熱量が補填されていく。この防御の真髄こそマシュの心。リッカと出会い、溌剌に育っていた勇気と自信の顕れ。どこを探してもいない破天荒で型破りなマシュ・キリエライト。しかし、そんな彼女にだけ赦された対粛清防御。煌めき燃え盛る、猛き雄々しさと健気なる献身の両立。

 

「やらせはしません、絶対に護ります!だってここは私達が生きる世界!先輩が…藤丸龍華先輩が幸せな人生を送る星!そして私が!そんな先輩の傍にいる事ができる世界だから!」

 

「マシュ…」

 

思えば、彼女を象った魔力は手を開いている。それは傷つけ、拒絶する為ではないのだ。護るために広げ、祈るために重ね、愛しく手を繋ぐ為に開かれているのだろう。

 

「だからこそ…!!この星は絶対に終わらせません!私が絶対に護ります!!これは誰かからの使命でなく!誰かからの運命でもない!私自身の、願いなのだから───!!」

 

天体との拮抗は苛烈を極める。オルガマリーの心象たる景色にすらヒビと、激震が広がっていく。

 

「私の大切な人も!大切な世界も!何より私と先輩の生きる場所も!何一つ!!誰にも渡しませんっ!!」

 

マシュから溢れ出した魔力が、それらの解れや罅を瞬時に修復していく。誰も傷つけない。攻撃力など皆無に等しい。

 

だからこそ、この宝具は全ての『害意』と『攻撃』を遮断する。何も失わせない、何も奪わせない。マシュの心そのものの体現。

 

──いつか、王への誓いを果たすための。彼女が有する最大にして最強…否、『無敵』の宝具。

 

「私は先輩のオンリーワンサーヴァント!!マシュ・キリエライトです─────!!!!!」

 

天地を終わらせんとする審判に、マシュは高らかに自身の真名を叩きつける──!

 

 

【こんな、事が…】

 

壊せなかった。害せなかった。あの気高く、儚く、雄々しき少女の魂が破壊できなかった。天体は少しづつ削られていき、燃えていき、あの白き無垢な魂を粉砕することが敵わなかった。

 

【これが、人間の…罪業だと…?】

 

やがて天体は完全に停止する。あと一歩、あと一押して星は跡形もなく消し飛ぶ筈なのに。その一歩は、たった一人の人間に…否。『人類史』そのものに押し返された。

 

【これでは…】

 

これでは、裁きと赦免は果たされない。恐怖の大王、アンゴル族が有した奥義は尽く弾き返された。人間と、それに力を貸した神たちの手によって。

 

「オルテナウス!ウルティメイト・モード・オフェンス!!」

 

【!】

 

そして、留めただけに収まらなかったのだ。人類に裁きはまだ不要。それを示す一撃は、更に明確に高らかにこの宇宙に打ち上げられる。

 

「『今も煌めく、楽園の旅路(ロード・シャングリラ)』───!!!!!」

 

…少女から放たれた眩き光の一撃は、天体を包んだ。全てを照らすかのように眩しく、この宇宙を輝かせるかのような輝きに、恐怖の大王がもたらした裁きは全てが消し飛んだ。

 

【これでは…もう…】

 

もう、人類は許されない。おのれの裁きでは彼等の罪を祓う事はできない。アンゴル族に託された使命を、果たすことが叶わなくなってしまった。

 

【あの人達は、赦されないというのか…?】

 

あの懸命に生きる生物は、弱くも自身を跳ね除ける強さを見せた彼らは、永劫の罪を背負わなくてはならないというのか。

 

【……、…………】

 

そのあまりの罪深さ。そして、それを背負いながらも生きていかなくてはならぬ彼らのこれから、そして彼等の行く先を、行き着く果てを思い偲んだ恐怖の大王は。

 

───宝石のような、涙を流した。




オルテナウス『オルテナウス、機能98%低下。熱量超過、全部位ブラックゾーンに突入。ホーリーグレイル、自己修復開始。所要期間、一ヶ月以上。メンテナンスを行ってください。至急メンテナンスを行ってください』

マシュ「無茶をさせてしまいました。ごめんなさい、オルテナウス…!今です先輩!モアさんへの対話を!私は見ての通り、瀕死なすびですので!」

リッカ「いいんだね?行っても」

マシュ「はい!先輩がいてくれたからこんなに力を出せました!ですが勘違いしないでくださいね!これは先輩のためでなく、私がやりたいと願ったからこその行動なのです!ですので、私がマシュに無茶させちゃったとの気遣いは杞憂ですからね!」

リッカ「ふふ、分かった!──ね、マシュ」

マシュ「はい!」

リッカ「いつもは言わないけど、ずっと思ってるよ。──マシュは私の、自慢のパートナーだって!」

マシュ「!!!!!ほっ、おっほ!!??」

リッカ「ホントにありがと!じゃ、行ってくるからね!お姫様抱っこしたげるからね、マシュ!」

そしてリッカは飛び立つ。仲間が繋ぎ、後輩が示した勝利の道筋に。

マシュ「せんぱーーーーい!!ほっぺにちゅーもよろしければお願いしまーーーーーす!!!」

人類史を、星を、全てを護りきった少女の俗まみれの願いを受けて。

リッカ「ピア!!アンゴル・モアちゃん!!」

恐怖の大王【……!】

「お邪魔しまぁあぁあぁあぁあーーーーーす!!!!」
はくのん『のりこめー』

渾身の力と女子力を込め、プログラムを込めた右手を恐怖の大王へと叩き込む。

今こそ───星の命運を懸けた女子会が始まる──!!!

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