人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ゼウス(チラ)


廊下部

(((((物質肉塊達の群れ)))))


ゼウス「一歩外に出たらえらいことだね」

キリシュタリア(しかし、攻めあぐねるわけにはいかやい。進まねば)

ニャル【うむ、脱出路は正邪やベリルに任せてある。ここは、勝負をかけようか】
女性「敵が少ないルートは教えてあげるわ」

リッカ(うん!行こう!)

ピア「あ、あのさ」

(?)

「あ…なんでも、ない」

(…?)

(メッセージは今から返します。余談ですが『作者様の呪術廻戦が読みたい!』というありがたいメッセージをいただきました。おかしい…愉快痛快な小説を書いているはずなのになぜ…?)


超神話統合マンションオガワハイム

【来ましたわよ!皆様、気合を入れて対処なさいませ!私達家族も勿論奮起しますわ!!】

 

エレベーターを抜け、セーフティエリアを抜ければ其処は四階の万魔殿。核心に近付いているからか歪みぶりが最早異界と化している。窓から見える景色には血染めの月が浮かび、血のようなヘドロが空から滴り落ちている。漆黒の星達が外界を照らし、余すことなく悍ましい景観を示している。そして、通路の変化もまたそれらに劣らぬものとなっており、最早まともに歩ける道すら肉塊と屍を切り倒し、踏み潰す他は無いのだ。ハデスとキリシュタリアが前線を維持し、アナーヒターとペルセポネーの援護が二人をサポート、アフラ・マズダ、アクアが懸命に守護と浄化を行い侵食を阻み、アジーカとアンリマユが引き合う道筋を示していく。拘束されし女性は浮かび上がり、幻影や幻覚を打ち払う。

 

【最早固有結界と似て非なる魔術行使とも言うべきか…キャスタークラスでなければ説明のつかん器用さだな】

 

(でも大丈夫!キリシュタリアや皆はこんな陰気な場所に負けないよ!絶対に中核に行って解決しよう!)

 

【勿論さ、リッカちゃん。さぁピア、絶対に離れるな…って、どうした?】

 

見ればピアの動きに精細がない。戦闘経験は無いだろうが、いうなれば覇気が感じられないと言ったところだ。

 

「あの、さ…あたし、思うんだけど…リッカはその、戻ったほうが良くない?ここは、あたし達に任せてさ」

 

(えっ!?)

 

ピアはリッカの退去を提案したのだ。まさかの戦力外通告と衝撃を受ける彼女に、ピアは根拠を告げる。

 

「だって、お父さんだってあんなに辛かったんだよ!?お母さんがいる場所だってもっともっと辛いことになるかも、なるかもしれないじゃん!皆強いんだから、任せてくれたらやってくれるでしょ、多分…いや絶対!」

 

(ピア…)

 

「任せちゃえばいいじゃん…!辛いことととか、見たくないものとか、わざわざ見に行かなくたっていいじゃん!なんで自分のこと、出来損ないとか呼ぶやつの片割れに会いに行こうとか思えるわけ!?意味分かんないんだけど!」

 

それは、僅かにでも先ほど感じ取った悪意から感じるさらなる悪意への抵触。彼女の知る家族とはかけ離れた相手からの悪意へ、知人を晒すことへの抵抗であった。

 

「家族で殺し合ったり、何度も殺したりするのってどう考えてもおかしいし、やっちゃいけないんじゃないの!?どうしてわざわざ、自分のことをなんとも思ってないヤツにわざわざ会いに行ったりするワケ!?そんなの…メチャクチャ辛いじゃん…!」

 

ピアは僅かな時間でも、ニャルやエキドナ、ナイア、息子や娘同然の者達との触れ合いを好ましく感じていた。それに迎えられた事に感謝していた。だからこそ、家族同士の憎み合いという概念に強い拒否反応を起こしたのだ。

 

「辛いことから、嫌なことから逃げたりしたりも出来るじゃん…!私達がそういうの、引き受けたりできるし!なんでわざわざ親殺しなんて傷付いちゃうような事をしちゃうの?出来ちゃうの!?マジ、よくわかんないんだけど…!」

 

(………)

 

リッカは…その叫びと心に深い感銘を覚えた。何故なら彼女は、血の繋がらない家族である邪神の在り方を良しとし、血が繋がっていただけの自分たちの事をおかしいと言ってくれた。形や生まれでは、家族は家族となりえない。遥か宇宙から来た彼女にすら、家族にとって本当に大切なものは何なのか…それが伝わったのだ。

 

(…あなたのお父さんが言ったみたいに、家族って色々なんだ。血の繋がりが呪いになったり、血よりも強い絆で結ばれたり、本当に色々あるんだよ。あなたたちや、ハデス様やペルセポネー。ティアマトママやマルニキとかだって家族だし、血の繋がらない家族だったら私にだってとってもたくさんいる)

 

そう、今更の話だ。もう彼女の繋がりは二つの血の呪いだけではない。沢山の、金の糸が如き縁が魂に繋がっている。

 

(だからこそ、呪いになるような縁は私が何度でも絶たなきゃいけないの。どれだけ歪んでいても、いびつでも、捻れて狂っていても。繋がりがあるならそれは家族だから。アジーカとお父さんの間に絆が生まれたように…代替品としか思われていなくても、出来損ないだと思われていても。それでもお父さんとお母さんとは繋がっているから)

 

だからこそ、家族が織りなす悪縁は自身で断ち切る。最早縁がないものと目をそらし拒絶するのではない。それは家族から逃げただけに過ぎないからだ。

 

【……】

 

この廻る呪いを断ち切るのに必要なのは親が自分を微塵も愛していない辛い現実や、自身の血縁が世界や大事な人達に仇なす真実から逃げず、その絆や呪いの全てを受け入れた上で、なお諦めないことだ。絆や信頼できる仲間たちにそれを任せてしまっては、本当の意味で終わりは来ない。

 

それは『光に縋り影や真実から目を背けた』事に他ならないからだ。自身の出生や、誕生に微塵の祝福がない事実から目を背けず、血の繋がりを有する血縁たる者達との確執から永劫向き合っていく。それが、彼女が行う『自身から逃げない』という生き様の本質なのだ。その答えと試練を実行する彼女を、かつて、どこかの世界で誰かにぶつけた事のあるニャルは感慨深げに目を細める。

 

(辛い事や哀しいことから逃げるのは間違ってないんだ、きっと。でも私のはちょっと、逃げ道がない悩みってだけ。どこにもない道なら、まっすぐ突き進んで道を作るしかないから。そのために立ち塞がるのが親二人なら何度でも蹴散らして進むってだけの話!)

 

「…何それ…メチャクチャ生き辛くない…?」

 

(そうでもないよ。ほら、前を向いて!)

 

リッカの精神体が、ピアの顔を上げる。そこには、道を切り拓かんとする大切な仲間たちの奮闘。

 

『もうリッカは、誰の代わりでもない』

【寝付きが悪いってんなら無理矢理寝かし付かせてやらぁ!】

 

『頑張ってる子供を、親が邪魔するなっての!』

『子は所有物ではないわ。そして死の安寧もまた然り!』

『とりあえず!帰ったら花鳥風月いっぱいやったげる!』

 

『リッカちゃんの人生に幸あれ』

(支えよう、マスターとして!友として!)

 

【生者の邪魔を、死者がしてはならないからね】

【死の安寧が嫌なら砕け散りなさいませ!】

【【【アォーン!】】】

 

『いつか祝福はめぐりくる。ううん、今、確かに此処に』

『産まれながらの罪なんて、もううんざりなのよ』

 

(辛い事なんてちょっとだけだよ。今私に力を貸してくれる、奇跡に比べたら!だから、ピア!私に…)

 

そう。彼女がいるのもまた奇跡なのだ。ならばこそ、リッカは願う。

 

(私に力を貸して!私に、辛いことから目を背けない力を!)

 

【ピア、君は己の意志でここにいるはずだ!私も支える、自身を貫くんだ!彼女に纏わる罪人を裁く力を!】

 

ニャルの言葉に、ピアは深く頷いた。最早解らぬものはない。きっと、辛いことは立ち向かって乗り越えなくてはいけないのだ。そしてそれは、みんなでやるべきことなのだ。

 

「…やるよ、あたし。あんたの力になる!リッカ、あんたの家族、止めてやろう!」

 

(うん!ありがとう、ピア!)

 

【よし──目的地はそこの廊下だ!皆、飛び込め!】

 

ニャルの指示と同時に、怪魔と肉塊ひしめく通路に風穴を開ける。

 

【【【アゥン!】】】

 

素早くその風穴にケルベロスが巨体を割り込ませたスキに、かつての中心へと至る一行。最早迷いは無く、ただ後は進むのみだ。

 

──呪詛の根源にして万魔殿の中核。何者かが待つ祭壇へと。

 

 

 




中核・入口前

キリシュタリア(無事に辿り着けたね!皆、無事かい!?)

アフラ・マズダ『ケルベロスちゃん、ハチミツー』

【【【クゥーン】】】

ペルセポネー【まぁ!この子達ったらもう3週間分のハチミツを!卑しいこと!】
ハデス【まぁまぁ、とても頑張ったからいいじゃないか】

ゼウス『微塵も乳揺れしないね…せっかくのバストが…』
女性「女性のアピールポイントは全封印なの。ごめんなさい、おじさま」

ニャル【…もう、大丈夫かい?】
ピア「ん。…エキドナ母さんやナイアねぇ、まいさんに胸張って合うためにも、頑張んなきゃ!」

ニャル【頼むぞ、我が娘よ】

そうして一同が決意を固めた、その時だった。

『あ、えーと。変なこと聞くがカルデアの連中だよな?手助けに来たはぐれサーヴァントなんだが』

そんな彼らに、新しき出会いが来たる。それは──

リッカ(え…)

赤髪の少年『オレはルドラ。インド神話の神様で、クラスはアーチャー。疑似サーヴァントだ。この特異点の黒幕を潰しに来たんだが…せっかくだから一緒にやらないか?ここはなんていうか、残しちゃいけないって思う』

アンリマユ【──マジか】
アジーカ『インドも来た』

赤髪の弓矢持つ、インドの神が待ち構えていたのであった──

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