人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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うたうちゃん「七日目…リッカさんたちが南極に行く前に、なんとしても形にしなくてはなりません」

ディーヴァ(所長に相談したら、滞在を夜まで伸ばしてくれたわ!無駄にしちゃだめよ、うたう!)

うたうちゃん「はい。では今すぐ協力してくださる皆様の場所へ…!」

オーマジオウ【ならば、これを使え】

「(おじいさま!?)」

『ディケイドコンプリート21ライドウォッチ』

【オーロラをくぐるのだ。協力者達への道は、既に開いてある】

(ありがとうございます、おじいさま!)

「この御礼は、必ず!行ってきます!」

オーマジオウ【フフフ…孫娘を可愛がるのは、老人のサガだからな】

ウォズ(流石我が魔王…)

【選べ、AIたち。己自身の未来を。──寂しい時は、寂しいと言う、か】

「?」

【いや。…おそらく今回も、同じ事なのだろうな】


七日目〜平穏に触れる最後の日〜

「コホン。おはよう未来と希望あふれる新たなるカルデアスタッフ志望のフレッシュな若者達。私はカルデア副所長、ゴルドルフ・ムジークである。どうかよろしく頼むよ。そしておじさん呼びは控えるように。まだ私は29だからね、本当に頼むよ?」

 

 

七日目。いよいよリッカが帰参する段階へと至った滞在最後の日時。仲間達がカルデアへ参ずる意志を見せたため和やかな観光ムードは終わりを告げ、各々神妙な面持ちで副所長ゴルドルフの挨拶を聞き及んでいる。オルガマリーは今席を外しているため、威厳を示すために彼が立候補したのだ。

 

「君達はリッカ君と同じで留学という形でカルデアへと来てもらうこととなる。そしてその肩書に相応しい学力をカルデアでも身に付けてもらうからそのつもりでいるように。学生の本分は勉強。世界を救った先で学がない、なんて恥ずかしい事にはさせないから安心し給え。強制送還、といった措置は無いが、怠け者には補修に課題地獄であることは覚悟するように!」

 

(がーん…!!南極に行っても勉強しなくちゃいけないんすか…!?私の怪獣ライフがぁ…!?)

 

アカネは出来る子だが勉強が嫌いなので学生の本分に打ちのめされる。世界を救って終わりではなく、これからの人生をも保証する厚遇の価値を知るには、高校生という人種はやや幼かったのだ。

 

「御両親には境遇を説明し、君達のカルデア参加を容認していただいている。君達の身柄を預かる為にカルデアから配偶者両方に2億円、合計4億円を口座に振り込んである故生活に心配はいらん。必要ならば通話もできる為、離れ離れという感覚は薄いかもしれんが…秘密を口外したりはしないように!」

 

(二億!?両親いるだけで四億!?なによそれ、あたし親いないから損しかしてないんですけどぉ!?)

 

天空海が半泣きで地団駄を踏み、黒神がそっと背中を叩く。楽園ではそれくらいのお金はボーナスで付くことを彼女は知らなかった。月給は一ヶ月スタッフ一人あたり5千万程なので、一年働けば容易く稼げる額である。無論支払いは王の宝物庫だ。

 

「君達はこれからカルデアが有する秘密…即ちリッカ君が関わり続け戦い続けた旅路を共有する立場に至るわけだが、その境遇において、お節介ながらもこの私から一つだけ伝えさせてもらうとしよう」

 

再び咳払いを行い、ゴルドルフは告げる。楽園カルデアにおいて、最も自身が心構えている一つの事を。

 

「くれぐれも、自分は選ばれた特別な存在などと増長する事の無いように」

 

「「「「!」」」」

 

それは、彼自身が戒めている事であった。才覚に溢れていても、優れていても、選ばれた事を誇示する理由にしてはいけないのだと。

 

 

「確かに君達は選抜された。自負や自信を大いに持ってもらってもいい。最近ようやく私も副所長として自覚を持てた様な気がしているからね。これは驕るな、という戒めでもあるし、君達の有する自信や自尊心を重んじ、そして歪むことのないようにというお節介であることを先に告げておこう」

 

(副所長…)

 

「結論から言わせてもらうが、楽園には私達より凄い人達、歴史に名を刻んだ者達…歴史に名を刻んだ英雄や、リッカ君を始めとした崇高極まる善人と偉人の巣窟だ。何かを一つ取ったとして、君達よりも何かを一つできる者は数多無数にいる。断言してもいい、今の楽園に、君達より劣っている存在は一人としていないだろう。私も君達と同じ中途参加だった故、確信に近い物言いで言わせてもらうよ。…藤丸龍華はそんな組織の中核を担っていることから、どれほどの存在となっているかは推して知ってほしい」

 

ゴルドルフは若さ故の全能感を諌め、過ちを防ぐ為に自分なりの言葉で語りかける。その持論はともすれば反発をも招きかねない語りだが、誰一人反論する者はいなかった。

 

「だから雑用に甘んじろ、というわけでは決してない。私が君達にしてほしいのは教えを『請う』事であり、『学ぶ』事であり、『育つ』事なのだ。これまた断言するが、人生において凝り固まった選民思想やエリート意識は人生を腐敗させる毒となる。今のうちに、ここで出来得る限り小さくしてもらいたいのだ。何を言いたいかと言うとだね、つまりは…」

 

大丈夫かね、長話とか思われてないかね?と不安げに見渡してみれば、一同は極めて真面目に聞き入っており、次の句を静かに待っている。流石は藤丸の同朋であるなと感心し、彼はかつての自身の二の舞いにならぬよう、誠実に警告する。

 

「どうか、目上の人や自分より秀でている人間、存在への『リスペクト』を忘れないでいてほしいのだよ。自身より上の存在を見つけた時、嫉妬や劣等感ではなく、尊敬と向上心を以て接する事を心がけてほしい。若い身空の君達にはピンとこないかもしれないが、人間歳を取れば取るほど誰かに乞うことや、価値観を改めるという事が難しくなる。高校生にして、才能溢れる君達がそんな歪みを抱えるのはあまりにももったいない。リッカ君はね、常に周りの皆を頼りにしてくれていたし向上心を忘れなかった。そんな彼女が友人と呼ぶ君達がまさか、そんな小さな人間ではないと信じるからこそこんな事を言うのだよ私は」

 

ゴルドルフもまた、イアソンとの操舵の腕前を競う事により新たなる領域へと開眼したことから、れっきとした実体験としてそれらを語る。楽園は、自身の在り方でいくらでも素晴らしい場所へとなりうるのだ。

 

「自身より秀でたものを見出したなら、躊躇わず教えてほしいと言える君たちであってほしい。自身の限界を、皆で超えていける君たちであってほしい。今から君たちが行くカルデアという場所に君達の敵はいない。偉大な先達と、共に戦う仲間と、自身を高める出逢いしかない場所なのだ。副所長として、これだけは言わせてもらいたい」

 

かつて誰にも頼りにされなかった、愛してこなかったが故のどん詰まりを、絶対に彼ら彼女らにはしてもらいたくない。その一心で、彼は副所長としての令を告げる。

 

「どうか素晴らしい人生に向かって、楽園での日々を過ごしてほしい。分からないこと、できない事があったら誰にでもいいから相談なさい。頼りないかもしれないが、私達大人が全力で力になることを誓うとも。君達が大人にどんなイメージを懐いているかは分からないが、少なくとも楽園の皆は君達を蔑ろにはしないと保証する。安心…してほしいのだが。どうかな?上手く伝わったかね?大丈夫かね?」

 

精一杯ひり出した威厳も結局は長くもたず、不安げな表情を出すゴルドルフ。しかし──それこそ杞憂であるというもの。

 

「それでは、会長としてあなたに返答をお返ししよう」

 

「ひぃ!?」 

 

自身の百倍は覇気のある黒神がゴルドルフの前に歩み寄る──が、当然敵対の意思などではなく。

 

「──ありがとうございます。我等一同、心より楽園の皆さまを尊敬し参列の栄に預かれた事を光栄に思う所存です。貴重な先達のお言葉に、深い感謝を。ゴルドルフ副所長」

 

「あ、あぁいいのだよ、それくらいは副所長として」

 

「気を付けッ!!礼ッ!!」

 

「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」

 

(…リッカ君。君の故郷と友人達はあまりにも真っ直ぐで眩しいのだがね…)

 

軍隊もかくやの号令を眼前に叩きつけられ、圧倒されながら。加入してきたリッカの友人達の勢いにただ圧倒されるゴルドルフでありましたとさ──。

 




オルガマリー『副所長、誠心誠意の籠もった挨拶は終わったかしら』

アカネ「あ、所長さんだ!」

オルガマリー『おはよう、皆。オルガマリー・アニムスフィアよ。彼は人情と気遣いに溢れたカルデアの良心…その心を堪能して貰えたかしら』

スザク「えぇ、心より信頼できる方です」

オルガマリー『良かった。ではカルデアがどんな組織か…実際に皆様には体験していただきます』

ルル「体験…!?」

オルガマリー『幕張メッセへとお越しください。そこで皆様が所属する組織が如何なるものか…存分に披露いたします』

オルガマリーは告げる。カルデアの存在意義を示す…その言葉を受け、一行は心構えを強めるのであった──

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