説明不要のスーパーテーマパーク。夢の国とは特に関係無い。
物陰
アレクシス【アカネ君…】
ニャル【どうしたの。そんな不審者丸出しで】
アレクシス【ニャル君。いや実はね。カルデアのお誘いを受けてからアカネ君の元気が無いんだよ…心配だなぁ…】
ニャル【そりゃあ悩むか。日常の生活か、波瀾万丈の非日常だもんね】
アレクシス【私としてはアカネ君推しだから頑張って答えを見つけてほしいんだけどねぇ…ハラハラだよニャル君…】
ニャル【見守ろうじゃないか。ヒーローになるか、怪獣のままか…あ、これコーラね】
アレクシス【ありがとうニャル君!奢りかな?】
ニャル【仕方ないなぁ、アレクシス君】
【HAHAHAHA!(CV山寺宏一)】
【HAHAHAHA!(CV稲田徹)】
「ほうほう、なるほど!おおっ!楽園カルデアにはこんなにも素晴らしい人員に施設に環境が揃っているのですか!これはまさしく天啓!僕が定める進路に相応しいです!はい!素晴らしいですっ!!」
フェイト・シー。完全貸し切りの夏草…ひいては千葉県を代表するテーマパーク。風船が飛び交い、ちびノブ達がパレードを行う妙ちきりんな空間にて、ベンチにてパンフレットを読み漁る銀髪の少年と、その隣でトマトジュースに目を落とす紫髪の少女。高橋エルと上田アカネ…リッカの後輩に当たる二人が市長よりもたらされた選択に向き合い、思い悩んでいた。いや、正確には思い悩んでいるのは一人だけで、エルは覚悟をたった今決めたのだが。
「これなら念願の、僕だけのロボットの創作…!いえ、ウルトラマンとのコネクションからULTRAMAN SUITだって作れる筈!僕の発想が、僕のアイデアが世界を救うことに貢献する…!!あぁ、リッカさん!感謝致します!僕は天職を!見つけました!!」
「…テンション高いし、即断即決だし…ホントシンプルだね、君って。あはは、羨ましいな」
エルと対象的に、どこか覇気のないアカネ。エルからしてみれば了承する以外の選択肢などあり得ないので心底不思議そうに首を傾げる。
「おや?何か悩む事がお有りですか?アカネさんの怪獣作成のアイデアやモデラーとしての技術は絶対にカルデアで通用すると思うのですが?」
「それ、世界を救う事に関係するとは思えないよ…。そもそもパンフレットに書かれてることも、集まる人も皆エリートで凄い人ばっかりで…これ…私、いるのかなって…」
アカネの感性は一般人であり、消極的、引っ込み思案に入る。夏草の一連の出来事ではハイになっていたこともあり乗り切っていたが、これから終わりなき戦いに飛び込むとなれば、どうしても身が竦んでしまっていた。
「ははぁ、成程。自身の能力に自信が持てず、行っても役に立てるか解らないと言いたいのですね?」
「…解ってたけど、ホント君ってデリカシー無さ過ぎ…。むしろキミはいいよね。ロボットがあればどこだって天国だし。今回もオリジナルロボット作りたいって理由で行くんでしょ?強いなぁ…」
「え、違いますよ?」
口に含んだトマトジュースを盛大にエルにぶっかけるアカネ。文句一つ言わずタオルで拭き取るエル。彼のカルデア参加は別の…ロボット製作とは別の理念が、信念があるという。
「僕は大切な人の力になるために、大切な人への恩返しの為にカルデアに参加しようと思うのです。自分の趣味はこの際二の次です。僕に才能や、何か異能があるのだとしたら、それは大切な人から受け取ったものですから!」
「…大切な人って?」
「あなたです!アカネさん!」
トマトジュースをいよいよ握り潰すアカネ。茹でダコめいた顔の赤さに気付かず、エルは謳う。
「アカネさん、内海市長、リッカさん、僕という破綻者を受け入れてくれた夏草の皆さん!それら全員が僕の大切な人であり、その方々を護り、未来を掴む為に出来ることがある!それが僕に、無限の勇気とインスピレーションを与えてくれる…!人生に希望をくれるのです!皆さんがくれた、僕の『心』という機関に!」
「大切な、人…」
「はい!人の心に勝る動力源は無いんですよ、アカネさん!ですからアカネさん、悩んでいるのならば思い返してみてください。あなたの心にエネルギーをくれる、大切な何かを!きっとそれが、あなたに正しい道と、一歩を踏み出す勇気をくれるはずですから!」
エルの言葉と視線に揺るぎはない。これは彼が本質的に誰かを、大切な人を護りたいという心を持っている事の証だ。そんな人をなんと呼ぶか、アカネはよく知っている。
「…大切な、人…」
いつでも持っている、空っぽの定期入れ。今は何処かで、この空の下で平和な今を過ごしている親友から貰った定期入れ。日常を、平和な今を…未来を信じている親友から貰ったもの。
「………エルくん、ちょっと…電話するね」
(しー)
ウィンクし、口に人差し指を当てるエル。アカネは電話をかける。唯一無二の、大切な人へ。
『最近になってめっちゃかけてくるじゃん。最初から毎日連絡しなって』
出たのは、六花。彼女を退屈から救った、彼女にとっての…
「あ…六花、その…あのね…」
『ん。言ってみ?』
「あの………、………………」
長い沈黙。六花も彼女の二の句を待ち、静かな沈黙が流れる。パレードの音が、こころなしか遠い。
「……あのね、私…怪獣が好き」
アカネが、勇気と共に言葉を紡ぐ。そこからは早かった。阿吽の呼吸で、会話が運ぶ。
『知ってる』
「レパートリーいっぱいで、強くて、可愛くて、素敵で、ヒーローに負けてばっかりで、でもたまに勝って、いっつも夢中にさせてくれる怪獣が大好き」
『知ってる』
「私…怪獣が好きだから。でも、それって自信がなかったからでもあるんだ。私に、ヒーローなんて無理だからって…どうせ自分にはなれないって…」
『ヒーロー、嫌い?』
「嫌いだよ…。怪獣を倒して、やっつけて、いっつも皆にチヤホヤされて、どれだけピンチにしたって、インチキみたいに立ち上がってきて、キラキラ輝いてて…すっごくカッコよくて…でも、でもね」
『ん』
「…不登校から勇気を出して学校に行った私に声をかけてくれた六花のお陰で…ホントの、ホントのホントは…本当は…」
『……』
「……ヒーローに、憧れたんだ。私を助けてくれた六花みたいに、私もいつかヒーローになれたらいいなって。でも自分なんかが、ヒーローになれるわけないんだって。怪獣を作ってる時も、ヒーローの事を考えない様にして…でも、憧れは捨てられなくて…」
『意気地なし』
「はっきり言うなよぉ…ばかぁ…!」
『ごめんごめん。でもさ…なりたいんでしょ?ヒーローに。誰かを助けるヒーローにさ』
「…………………うん」
『辛いことも、痛いこともたくさんだけど。でも、誰かの為に一生懸命頑張れる。そんなヒーローに、アカネはなりたいんでしょ?』
「………うん。……なれる、かなぁ…?」
『なれるよ』
「バカで、ドジで、マヌケで、ドン引きするくらい部屋が汚くて、高校生の同級生がマジキチロボオタクで、女子あきで、小遣い全部怪獣グッズに注ぎ込むオタクな私でも…ヒーローになれるかなぁ…!?」
『なれるよ。親友が保証したげる』
「!……っ……」
『ヒーローになりたいって、そう思ったら合格だよ。誰かの為に何かをしたい。何かをしてあげたい。そう考えられるようにアカネはなったんだね。それ、ヒーローで一番大事な心じゃん』
「っ、ぐすっ…っく……わたし、わたしは…」
『教えて、ヒーローさん。あなたは誰の為に、何をしたいの?何を護りたいの?』
「わっ、わだじはっ!ヒーローになって、ヒーローになっで…!六花の生きる、この世界を!六花の幸せを!まもりたい!大好きな親友の未来をまもりたいでずっ!!」
『………アカネ』
「ぐすっ、えぐっ。ぐすっ…ひっく…えぐっ…」
『すっごい耳キーンってなった』
「ごめんなざぃいぃい…!!!」
『でも、…ありがと。ホント、立派になったね。素敵な高校行ったじゃん?お互い』
「うぇへぇぁ…!ぅいっ、ひっ…うぉおん…!(ガブリアス)」
『じゃあ…私の素敵なヒーローさん。私のお願いを聞いてくれる?』
「おがねはっ…がぜまぜんっ…かつかつなんでっ…!」
『借りるか。…私のヒーローが、いつか沢山の人を助けてくれますように。沢山の人達の未来を護れる、素敵なスーパーヒーローになれますように』
「〜〜〜っ…!!」
『私のヒーローが…絶対、この願いを叶えてくれますように。──大好きだかんね、アカネ』
「り…りっがぁあぁあぁ!うほぉおん!あひぃいぃい!ふへぁあぁあぁぁ〜〜〜っ!」
電話を握り締め、泣きわめくアカネ。エルは後方司令官面を行いながら、そっと汚い泣き声を撒き散らすアカネに寄り添い続けた…──。
数分後
アカネ「見苦しいところをお見せしました…ちーん」
エル「見事なヒーローアカデミアオマージュでしたね!」
アカネ「違うし!?あ、でもあれもヒーローか…うん。合ってた」
エル「…もう、大丈夫ですか?」
アカネ「うん。…お願い、受け取っちゃったから。リッカ先輩の頑張りも、六花からのお願いも…もう私に、見て見ぬ振りなんて無理だよ!」
エル「はいっ!それでこそヒーローですっ!」
『空の定期入れ』
アカネ「…ありがとう、六花。見つけたよ。私の行きたい場所」
空の定期入れに、アカネはそっと入れる。──カルデアス職員ネームプレート。名前を入れた、自身の行き先。
「行こう、エル君!私達に出来ること、見つけに!」
エル「はい!夏草昇揚一年生!最強タッグの結成です!!」
二人は立ち上がり、自分の脚で駆け抜ける。自身の決めた行き先へ。自分達の未来へ──。
〜
六花「…通話切ってないし。大丈夫かー?私のヒーロー…」
?「六花?」
六花「ん、あ。親友と話してた。じゃ…行こっか?」
「あぁ!内海が待ってる!」
六花(…頑張れ。私のヒーロー)
〜さらなる余談
アレクシス【立派に…立派になったねアカネ君…!!】
ニャル【環境ってやっぱ凄いわ…アカネ君これグリッドマンルートだ】
アレクシス【元ネタの藤堂武史くんもグリッドマンシグマになったし、リスペクトだねぇ…!この情動、これがエモーショナルか…!素晴らしい味だ、よし!アカネ君をサポートしてこの情動で心を満たそう!】
ニャル【ようこそプレシャスの世界へ。…ん?でもグリッドマンにアカネ君がなったらヤバくね?】
アレクシス【あ、そっか。私新条の方のアカネ君に酷いことしてたんだったね。まぁそこはほら、呉越同舟みたいな感じで。後回しにしようじゃないか】
ニャル【皆で支えていこうじゃないか。新しいヒーローと、才能の塊をな…】
この後レストランでメチャクチャ乾杯した。
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