人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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モルガン「ケルヌンノス…かの神にはとても気の毒な事を妖精達が行いました。せめて歓待の宴でも…」

マーリン♂「おーい、もしもし?無視しないでくれるかーい?モルガーン?」

キャストリア「ケルヌンノス…ケルヌンノスかぁ…あの神様には申し訳ないけど、あまりいい思い出がないんだよね…」

マーリン♀「そうだよねー。すっごい厄災だったもんねー。でも汎人類史の彼を見たらそう言えなくなるよ?」

騎士王「聖剣を鋳造した妖精と友達の善神…是非お話を伺いたいですね」

ギル「であろう?さぞかし良い対談になるであろうよ…む?」

モルガン「ん…?」←異聞帯出身

キャストリア「あ…」←サーヴァントユニヴァース(元異聞帯、サーヴァントユニヴァース漂流)出身

騎士王「…?」←汎人類史出身

御機嫌王「ク、ク…フフ…!」←転生者の魂と随伴

マーリン♂「あー」
マーリン♀「出会っちゃった?」

ギル「ふふふははははははははははははは────!!!!」

珍妙すぎる世界の交錯に、今年最後の大笑いをかます御機嫌王であった。

──くぅ…

エアは夜更しできずギルの器にて眠っていた。



言祝の祝祭〜ノス〜

『ヌーン!ノス、ヌーン!ヌーン!』

 

(おぉ…ここからでも非常に喜んでいるのが伝わるぞ!ぴょんぴょんしてるぞもさもさケルヌンノス!)

 

ルイノスと共に、高天原にてケルヌンノスの様子を見にやってきたフォウ。そこにはイザナミ監修にて作られし祭神ケルヌンノスの社が建てられており、その前で狂喜乱舞するもさもさ神の姿と喜びの感情が満ち溢れている様子を見据える。まるで遠くから見ていても確認できる程に雄大かつ、勇壮なモフモフで…

 

(というかなんか…本当に大きくなってないかなあの神様!?)

 

というより、大いに巨大。気の所為ではなく。向こうの山がちょっと見えないくらいには大きくなっている。ケルヌンノスは喜びと共に大きくなる神格なのだろうな。呪層ならぬ祝層なのだろうか。

 

『ヌーン!!ヌーン!!』

 

こちらに気づいたケルヌンノスが、ズシンズシンとやってくる。目測十メートルはありそうな巨体が迫りくるのはフォウの体躯的にも圧巻であり、ルイノスの肩からずり落ちそうになる。

 

「ケルヌンノス様!皆様の祝福を受けて、大きくなったのですね!」

 

『ヌーン!!』

 

「ケルヌンノス様にお渡ししたいものがございます!どうか庇護を授けてはくださいませんかー!」

 

巫女の言葉に、ケルヌンノスは大きく頷く。そして身じろぎと共に、そっと腕を足場と見立て差し出す。おいで、と言っているかの様だ。

 

「さぁ、参りましょうフォウさん。ケルヌンノス様の庇護から見る景色は雄大なのですよ?」

 

(お、お、おう、うん…落とさないでね?落とさないでね!?)

 

胸に埋まるのはエアのエビフ山と誓いを立てたフォウは、ルイノスの肩にしがみつく。そっとルイノスを乗せたケルヌンノスの手は、エレベーターのように見る見るうちに二人を地上から離していく。

 

『ヌーン!』

 

「えっ、まだまだ大きくなれる?祝福が凄い?それは何よりです!フォウさん、どうでしょう?」

 

(できればこれくらいでお願いします!!)

 

ちょっと生身では怖いものは怖い。プレシャスミンチにならないため、ケルヌンノスの頭上に収まるまで、フォウは決死の想いでしがみつき続けるフォウでありましたとさ…。

 

 

「フォウさん。かつて、世界を収穫しにやってきた白き巨人…それらを討ち果たす為に鋳造された星の聖剣をご存知ですか?」

 

高き景色にて、ケルヌンノスの頭上から高天原を見下ろすフォウ。軽く日本大陸の面積はありそうな高天原、イザナミの固有結界に類する世界に感服しながら巫女ルイノスの言葉に耳を傾ける。

 

「星の聖剣、エクスカリバー。人々の理想を束ねた究極の剣。それは…楽園の妖精の情報を、アヴァロンの炉に入れることで完成するのです。妖精の生体情報を注ぎ込んで、星の内海にて鍛え上げられる神造兵装。それがエクスカリバー…究極の神秘の形」

 

(それは…さっき言っていた六人の妖精に関係あることなんだね?)

 

「…はい。この世界に伝わる聖剣、それは六人の妖精…ケルヌンノス様の楽園における朋友たちの命と引き換えに鋳造されたもの。この人類史を救わんと願った、六人の命が産み出したものなのです」

 

『ヌ…ヌン…』

 

ケルヌンノスは哀しげに呻く。どうやら彼は、本当に妖精たちとかけがえのない存在だったことが伝わってくる悲しい嗚咽だった。

 

「妖精たちは気まぐれで、ケルヌンノス様が見張らないと辛いことをしたくないと怠けるような悪い癖があって。ケルヌンノス様の諌言でしぶしぶ働き出すような方々だったようです。でも、そんなやりとりをお互いに楽しんでいて…」

 

ルイノスは言う。彼等を動かしたのは、かけがえのない友達の涙を晴らしたいが為だったと。自分の恐怖と、友達の涙を見て彼等は勇気を奮い立たせたのだと。

 

「この世界を終わらせたくないと、六人は決断してくださいました。聖剣の輝きは、あの六人の妖精達の想いと願いが輝いているのです。彼等の、炉に飛び込む最後の願いが今でも…」

 

『いつかきっと、笑えるといいね』。彼等は世界の全てを祝福し、希望を信じ、願いを託しその使命を全うした。その聖剣の輝きが何にも侵されないのは、その願いが聖剣の中核となっているが故かもしれないとルイノスは頷く。

 

(マーリンから聞いてるよ。妖精は気まぐれで、善にも悪にも染まりやすい純真無垢だって。それはきっとケルヌンノスの…君達の善性が影響を与えたんじゃないかな)

 

「ケルヌンノス様と…私の?」

 

フォウは頷く。何故ならば自身が最も理解できるからだ。尊いもの、輝かしいものが悪を、獣を至尊の存在へと変えてくれる。心とは見えずとも、必ずや世界に影響を与えるものだからだ。

 

(うん。君はケルヌンノスが助けたいと思ったいい娘だ。ボクもそれは理解してる。そしてケルヌンノスは君を助け、滅びゆく世界に涙を流した。善にも悪にもなる妖精達が世界を救ったのは、君達がいる世界を護りたいと思ったからだよ。君達の世界が未来に続いてほしいから…その未来の為に、命なんて惜しくないくらいの献身に繋がった。ボクはそう思うよ、心から)

 

『随分とロマンチストだねぇキャスパリーグ?』

『なんだか柄じゃなくない?』

 

黙れぃ!!人知れず牙を剥くフォウに気付かず、ルイノスは頷き、顔を上げる。

 

「それは、とても素敵なお考えです。ケルヌンノス様と六人は、善性でこの世界を肯定してくださった。そして私は…そのケルヌンノス様に助けていただいた」

 

『ノス…ヌン…』

 

善意の連鎖。汚濁の嵐にかき消されない星の如き輝き。それが紡がれた今の歴史に、巫女は祝ぐ。

 

「…ありがとう、フォウさん。そのお言葉があれば迷いなく伝えられます。ケルヌンノス様の巫女として、今を生きるあなた方に伝えたい言葉を」

 

彼女は、かつての厄災…先史文明の生き残り。即ち、始まりの人に近い。その者から見た、彼女の言葉を。

 

「フォウさん。あなた方の生きる世界は素晴らしいものです。悪意と善意が両方備わる心を持ち、最後の最後で善を選べる…自らの大切の為に悪を選ぶ覚悟も備える。そんな自由と理性を持つ人々が紡ぐこの世界を、私は…ケルヌンノス様は。素晴らしいと思うのです」

 

『ヌン!』

 

(ふたりとも…)

 

それは、汎人類史に生きる者たちへの暖かい祝福。ケルヌンノスの心を表すかのような、優しい肯定。それは生きとし生けるもの達への柔らかい後押しだった。

 

「だから、どうか負けないでください。あなたたちが紡ぎ上げる素晴らしい歴史を。あなたたちが生きるこの世界を。──彼等が託した今をどうか手放さないで。あなた達の世界こそは…」

 

気まぐれで、臆病で、サボりぐせが酷くって。それでも──最後に善を選んでくれた彼等が生きていた歴史なのだから。世界なのだから。ルイノスも、ケルヌンノスも。この世界とこの世界に生きる人々を祝福してくれていたのだ。あの時から…1万を越えるあの日から、ずっと。

 

(──勿論だよ、ルイノス。そしてケルヌンノス。安心して見ていてほしい。愉快な王様と、ボクの世界で一番大切なお姫様がいる限り。世界が無くなるとかはありえない。ボクたちの旅路は、人々の歴史はいつまでも、どこまでも広がっていくよ)

 

フォウは揺るぎなく答える。旅路を見つめ続けた星の獣として…彼は人々に、太鼓判を押す。

 

(なんたって、ギルもエアも人間が大好きだからね!いつまでも見つめていくし、価値を示すまでずっと見ているだろうさ!この旅路は、彼と彼女が中心の叙事詩なんだからね!)

 

この歴史と願いを、ずっと紡いで守り抜いていく。そう改めて楽園の使者に揺るぎなく誓うフォウの姿に、巫女と優しき善神は優しく微笑むのであった──。

 




フォウ(なら、その証拠を見せなきゃね。始まりの妖精達を思い出して嘆くんじゃなく、笑顔になれるようにしてあげよう!)

同時にフォウが肩から飛び降り、一般的な獣の形態…至尊の守護者としての姿を表す。

『これがボクの、新年においても変わらぬスタンスさ!』

フォウは奮い立ち、身体から虹色の粒子──超純度の真エーテルにして因果律に干渉する運命力である『プレシャスパワー』を放出する。プレシャス・ガーディアンとなった彼は、あらゆる不条理と悲劇、涙を喰らい尽くす獣となったのだ。

『さぁ、新年の抱負でも語り合うといいよ!これがボクが用意する、鎮魂さ!』

高天原の夜空に、オーロラが満ちる。その輝きがケルヌンノスを包むとき──奇跡が起きる。

ケルヌンノス『ヌ…ヌン!?ノス!ヌーン!?』
ルイノス「皆様は…皆様方は…!」

そこに現れしは──美しい翅てまあり、勇壮な牙であり、利発的で神経質めいた土であり、風のような美女あり、快活な鏡であり、堂々たる王であった。二人が忘れるはずもない。忘れられるはずもない。

それは──

『『『『『『どう?ちゃんと笑えてる?』』』』』』

ルイノス「あぁ…あぁ…!」

ケルヌンノス『ヌ──ヌーン!!ノスー!ヌーン!ヌーーーーン!!ヌーーーーン!!』

…それは、至尊の獣が年の瀬に行う厄落としであり。

フォウ『ふふ。ボクたちの旅路に関わったなら…涙は喜びに満ちたものじゃなくっちゃね!──君達も、よいお年を!』

年始を華やかに彩るための、ほんの少しの笑顔の祝祭──。

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