マリー「ヴィヴラフラーンス!誕生日おめでとう、ふたりともー!」
エア「マリー!皆も!ありがとう!」
ネフェルタリ「もう4歳になるのね、シャナ。月日が立つのは、ラーメスの舟よりも速いわ…」
式〈祝える人生があるのはとてもいいことよ。本当におめでとう。心から祝福させてもらうわね?〉
エア「うん!本当に──ありがとう…!」
マリー「うふふ、でも言葉だけではつまらないでしょう?というわけで!」
エア「?」
マリー「開催!お誕生日!5番勝負〜!!」
エア「お誕生日…」
アルク{5番勝負…?}
〜二人羽織
「二人羽織とは二人一組になって、後ろの方が腕を目隠しして動かし、熱々の鍋から具を首だけ出した前の方に食べさせるチームワークが問われるとても困難な芸!アマデウスとサンソンが盛大に顔を火傷した危険で楽しい競技よ、エア!アルク!」
そんなわけで始まったクリスマスパーティー5番勝負。ロイヤルズの王妃マリーの提案でアルクをエスコートしながら自身の奮闘を見せねばならない状態に陥ったエア。真祖の姫たるアルクェイドに星をも恐れぬ余興をしなくてはならない現状に顔色が忙しない事になるエアを楽しみながら、アルクェイドはエアの肩をぽんぽんと叩く。
{だ、そうだ。王妃の催し…後に引けぬな?エア?}
「あわわわわわわわ、あわわ…」
(そうだった…!マリーはその自由さと奔放さで輝いた王妃様!確実にワタシ達と楽しむために企画を考えてくる御方だった…!親しき仲にも礼儀あり、アルクェイドのかんばせに火傷なんてさせたら…!)
グランドヒロインの別格さを痛感しながら動悸が偉いことになるエア。しかし断ることはできない。何故ならこれは、ロイヤルズが考えてくれた催しだから…!
(やるしかない!!絶対に皆と楽しいクリスマスを、アルクェイドの誕生日を過ごすんだ!!)
ゲーティアに激昂を示した時のように気合を入れ直し、エアは立ち上がる。そう、世界を背負い立つ背中はいつだって見つめている。手本はいつだってそこにある!
「お願いします!アルク!!」
{うむ、気楽に楽しもうぞ?}
今ここに、エア決死のパーティーが幕を開けた!!
〜二人羽織開始!
エア「…………」
アルクェイド{いつでもいいぞ、エア。好きなタイミングで私におでんを運べ}
(熱気、湯気、気流、位置予測、距離計算、算出、再設定、さっき見た、目測した距離からルートを割り出して…!)
「──見えた!そこだぁっ!」
ネフェルタリ「シャナの手が動いたわ…!凄い!左手でおわんを、右手で箸を完璧に!」
両儀式〈まるで見えているかのよう…いいえ、王の財宝の選定の基準で見出したのね。最短最善のルートを、法則を。見て、あの手の動かし方を〉
アルクェイド{ほう、ちくわにはんぺんか。ふーふーしなくてはいささか危ないな?}
マリー「受け皿を左手で用意して、ふーふーしやすい位置に!?凄いわ、エア!見えていなくても視えているのね!」
エア「美味しく召し上がってください!アルク!」
{ん、いただきます。ふー…ふー…あー、むっ。んむ…ん、美味しいな}
(やった!このまま全神経を集中させて…!アルクにおでんを堪能してもらうっ!)
その後も、常軌を逸したエアの精密な動きによりアルクはおでんを存分に堪能。拝見者三人の拍手が鳴り響いたのは言うまでもない。
二番目 神経衰弱
マリー「トランプを使って、同じ役目を揃えてより多くのトランプを獲得するゲーム!エア、準備はいい?」
エア「お、お手柔らかに…」
アルクェイド{エア、エア。私はストレートオール獲得が見たい。そなたなら出来ると見たが…どうだ?}
「!?!?」
(それって…組合わせを完璧に合わせろ、ってコト!?)
アルクェイド{エア…私、パーフェクトゲームが見たいのだ。だめか?}
エア「だっ───めなんかじゃないよ!任せて!アルク!」
(ギルは仰った!自己の限界に挑むのが人間!ワタシもリッカちゃんやマシュちゃん、オルガマリーちゃんのように…やってみせる!!)
ネフェルタリ「じゃあ、シャッフルするわね?」
エア(──宝具開帳!『全知なるや全能の星』!並びに千里眼を発動!ギル、その大いなる威光をお借りします!)
エアは己の、つまり女体ギルガメッシュの身体に宿る宝具を発動する。それは、一瞥しただけで物事の本質を見抜く彼の聡明さを支える宝具。この宝具の助けにより、エアは無限膨大極まる財を一息に選別する事が出来るのだ。そこに未来を見通す千里眼を発動すればどうなるか?
「はいっ!はいっ!はいはいはいはいはいはいはいはいはいはい!」
ネフェルタリ「凄いわ、エア…!伏せられたカードがまるで見えているかのよう…!」
まるでではない。視えているのだ。彼女がどこに配り、どうシャッフルし、どう展開するべきか、どう並べるのか。今のエアには全てが見透せているのだ。それこそ英雄姫の眼識。彼女は今、真剣衰弱を完全に見定めていた──!
「ラスト!スペードの、エェースッ!!」
「「〈おぉー!!〉」」
全てを一息でめくりきり、パーフェクトゲームをやりきったエアに拍手喝采が鳴り響く。エアは歓喜と、それ以上の疲労を跳ね除け手を挙げる。
「や、やった!やりきった…!」
{見事だ、エア。やはりそなたはかの王の至宝と呼ばれるに足る存在よな}
楽しげに手を叩くアルク。その表情にはエアの奮闘を称える表情がありありと浮かぶ。楽しんでくれている事が見て取れる様だった。
(ワタシはこの誕生日に…どこまで自分を超えられるのかを試されているのかもしれない…!)
安堵すると同時に、気合をみなぎらせるエア。彼女はさらなる催しへと挑む──!
〜宝具当てクイズ
マリー「てんしん!かしょーざんまーい!」
エア「清姫ちゃん!転身火生三昧!」
次なる催しは宝具当てクイズ。誰の宝具の口上かを、口頭で聞き及び判断するカルデアの皆の熟知が試される余興である。エアは思考速度を極限まで高速化し、それに対応していく。
式〈邪悪なる竜は失墜し、世界はいま洛陽に至る〉
エア「ジークフリートさん!バルムンク!」
ネフェルタリ「ですが、私のせいではありませんっ」
エア「クレオパトラさん!ディアエウス・アストラペー!」
アルクェイド{斬刑に処す。その六銭、無用と思え}
エア「(!?えっと確か皆でやったメルティブラッドの…!)七夜志貴さん!今のはちょっとずるくないかなぁ!?」
マリー「うぉおぉーっ!ぐぉーっ!!」
エア「ヘラクレスさん!ナインライブズ!」
ネフェルタリ「うぉおぉお、ぐわわわわわわー」
エア「エイリークさん!ブラッドバス・クラウン」
両儀式〈あー、さー♪〉
エア「ランスロットさん!ナイトオブオーナー!」
「「〈{原初を語る!元素は混ざり!固まり!}〉」」
「万象織りなす星を産む!英雄王ギルガメッシュ!エヌマ・エリシュ───!!」
知恵とタイミングを総動員して、ロイヤルズの無茶振りモノマネをエアは捌き切った──!
〜格付けチェック
マリー「さぁ、どちらが最高級のお肉か解るかしら?しっかり味わって召し上がれ!」
作られた料理、どちらが素晴らしい食材を使ったものかを当てる格付けチェック。片方がベオウルフが焼いたドラゴンの肉ステーキ。片方がエミヤが焼いた変哲もない肉である。しかしエミヤのカンスト料理スキルが市販を最高級品に匹敵する料理に昇華させていた。失敗すればエアはランクがギルの至宝からギルガメッシュ二世にランクダウンし、アルクェイドは真祖からあーぱー吸血鬼にランクダウンする。
エア「えぇ……えぇえぇ……?」
(ど、どっちも美味しいしか解らない…!どっちも美味しい…!)
エアは贅沢をして最高級品のものばかり口にしている訳ではない。食堂に顔を出すし、売店に行ったりもする。それ故、この情熱に満ちた二つの料理を正確に見極められるほど選り好みした舌にはなっていないのだ。かつてなく難航する吟味に、エアは苦戦に苦戦を重ねる。ちなみにアルクは一口ずつ食べて待機室へと向かった。
(落ち着け、落ち着け、落ち着け…見極めるんだ。料理人の微妙な癖を。食材の味付けのクセとかを…!)
どちらも美味しい事には変わらない。ならば『どう美味しい』のかを見極める。エアの口の中で溶ける肉。片方のA肉は極めて緻密で繊細。片方のB肉は豪快で、隅々まで火の通っている…
(──わかった!!)
そう、豪快なのだ。Bの肉はドラゴンの肉を信じきっているからこそやや過激な火の通しが見られる。Aは逆に、平々凡々な肉を極限まで研磨した努力と創意工夫が見られる。ギルが見定めているものは、きっとこれなのだ。
{おや、そなたもこちらか。結果が楽しみだな?}
「アルク!」
同じ待機室にいるアルクの姿を見た瞬間、勝利を確信するエア。その答えを祝福するかのように──
「結果はっぴょーーー!!」
「やったぁーっ!!」
{はははっ。よい舌効きだったぞ、エア}
マリーの祝福と同時に、エアはアルクと抱き合い喜びを分かち合う。二人の格は、けして変わらずそのまま。尊厳は護られたのだ──。
〜ポーカー
〈よろしくね、エア?〉
(ダメかもしれない…)
エアの心がへし折れる寸前となるもう一人のグランドヒロイン、式との対決。最強のお姉さんとのグランドバトルに、流石の英雄姫も空を仰ぐほかなかった。
〈私はこのままでいいわ。勝負しましょう〉
「え…?式、手札は見ないの?」
ネフェルタリの指摘どおり、式は手札を見ていない。余裕綽々な態度は、周囲に混乱とエアに多大な重圧を与える。
〈えぇ、このままで。エア、あなたは好きにコールなさって構わないわ?〉
「えっ…!?このまま…!?」
(な、何を考えているんだろう!?見ない…見ないで…?はっ、まさか…!もうすでに、私に勝てる手札を仕込んで…!?)
今のエアの手札はスペードのロイヤルストレートフラッシュ。どう足掻いても負けない手札だ。だが、式は容易くファイブカードを揃えるなど容易く行なう。それで負けてきたのだ。エアの思考は、完全に空白となる。
(まさか、あれはファイブカード…!?ファイブカードならロイヤルストレートフラッシュだって倒せる無敵の手札…!式なら普通に揃える!危険、危ない戦い…今、追い詰められているのはどっち…!?)
〈さぁ、コールかドロップか。どちらも好きな方をどうぞ?〉
「はぁ、はぁ…はぁ…!」
式の実力を何よりも知っている。知っているからこそ手が震えるほどに警戒するエア。勝負に出る事が、その言葉が出ない。エアは今、式に畏怖している。式に呑まれているのだ。
(負けるわけには…負けるわけにはいかない…!なんとしても、絶対に…!)
式の術中に嵌まり、決死の表情を浮かべるエア。進退窮まった…そう、式が判断したその時だった。
{案ずるな、エア。我は信じているぞ、そなたの勝利をな}
エアの背後から、アルクは静かに背中を押した。自分の命運は、そなたに託している。だから思うがままに進むがよいと。
「!…式。ワタシは…」
〈どうするのかしら?〉
「──勝負する!コール!!」
場に出す、自身の最大の手札。式の手札と、最後の一騎打ち。その、結果は──
〈…お見事。初めて、負けちゃったわね〉
「──あ…あ…!」
示されたのはエアのロイヤルストレートフラッシュと…式の、フォーカード。9が揃い来た、今考えられる最大の手札だ。それでも、エアは勝った。その手札で、式に──勝利したのだ。
{最後の一押しは、未知へ挑む勇気。見事であったぞ、エア}
「や、や──やったぁーーっ!!初めて、初めて式に勝ったよー!!」
「やったわ!やったわね!凄いわエア!」
「本当に…重圧を跳ね除けたわね…!おめでとう!」
感極まった涙を流し、皆に抱きつくエア。誇張抜きで、エアは式に勝利したのだ。その勝利を、存分に仲間たちと分かち合う。
{…気の利いたプレゼントよな、式}
〈なんの事かしら?そちらこそ、エアに最後の一歩を踏み出させて、お優しい事。ふふっ…〉
「「「ばんざーい!ばんざーい!!ばんざーい!!」」」
クリスマスの夜に、歓喜の万歳三唱が響く。主役の喜びの顔を見定め、静かに微笑む式とアルクであった──。
マリー「ふふっ。どうだったかしら?楽しかった?」
エア「うん!とても、とても楽しかった!」
ネフェルタリ「それなら良かった。今日も、これからもずっと…仲良しの皆でいましょうね。私達」
エア「うん!ありがとう、皆…!アルク、式も!これからもどうか、よろしくお願い致します!」
アルク{うむ。今日は実に有意義であったぞ、エア。また祝う理由になる程にはな}
式〈そうね。次は私も仕掛け人になろうかしら。もっともっと楽しいことを考えて…ね?〉
5人は笑い合い、今日という日を祝い抜く。また新たな節目に、辿り着けるように。
マリー「さて!じゃあ皆でお風呂に入ってしめましょうか!洗いっこで決まりね!」
エア「賛成!アルク、最後までよろしくお願いします!」
{うむ。我が玉体、浄める栄を与えよう。では征くぞ、皆}
〜
フォウ『オマエも空気、読むんだな?』
ギル《フハハ、たまにはエアにも羽目外しは必要だからな。我等は見守るも時には良かろう。行くぞ珍獣、これよりはマリオカートだ!エルキドゥとな!》
『エルキドゥ、ホント容赦ないんだよな…まぁいいや、とことんまで付き合ってやるよ!』
こちらもなんだかんだで仲良しな王と珍獣は、男同士の愉快な集まりに向かう。今年のクリスマスも、互いに得難い日々を過ごすのであった──
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