人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(ようやく仕事納めが終わったので、メッセージと返信は明日の朝からやっていきます!いつもすみません、ありがとうございます!)


エア「アルク!お誕生日おめでとうー!!」

アルク{……?あぁ、そういえば部員時空では年末であったか。早いものよ…}

エア「偶然にもワタシがエアという自己を貰った日にちがアルクの誕生日と一緒であり、ワタシも情緒がとても発達してきた、はず!ですのでお祝いの側に立ってみました!アルク、月姫リメイク本当におめでとう!」

アルク{フハハ、言い続けて見るものだ。虚仮の一念、岩をも通すというやつだな。しかし、そなたがお祝いか。普段は漂う風船のようなそなたが、こうして誰かを…ふむ…}

エア「えへへ、ワタシだって皆の気持ちを受け取るばかりじゃないからね!ワタシだってワタシを取り巻いてくれる全てが大好きだから!」

アルク{よく分かっているとも。そうさな、では今を前夜祭として、少し対話に興ずるか}

「リッカちゃん案件?」

{そうなるな。ではそうさな、エアよ。そなたが難儀と感じた特異点を3つ述べよ。ランキングというやつだ}

エア「えぇー!?皆が皆楽しかったよー…?」

{気楽に選ぶのだ。余興故な。そら、早く早く}

「わ、解った!えーと、んーとね…」

{マリー達が来るまで、エアと戯れるとしよう…}


誕生日前夜祭特別更新〜エアよんさいと地球様〜

第三位 幻想郷虚空大異変

 

エアがチョイスする、『困難だった特異点ベスト3』。真祖の御祝いの一環として彼女が求めた『転生者の主観』に興味を馳せるアルクが、エアの語らいを促す。そう、奇しくもエアとアルクは同じ誕生日、共に祝おうという流れになったのだ。3位は、グリーザや正邪と大いに競り合ったレクリエーションがチョイスされた。

 

{案外と、最近の騒動から選んだのだな?}

 

「はい、それはもう。何せこの特異点では虚無そのもののグリーザは勿論、グランドマスターや幻想郷の住民の皆様、果てはウルトラマンの皆様の力も借りて乗り越えた壮絶な大異変だったから…!」

 

興奮冷めやらぬ、そんなエアの振る舞いに頬を緩めながらアルクは思い返す。虚空に魅入られた天邪鬼が引き起こした騒動は、文字通り天地を巻き込むほどの凄絶な事件へと発展していった。収まるべきところに収まったのが奇跡だと言ってしまえるほどに。

 

{レクリエーションにおいても大騒動になるのであれば、安らぎを貪る事はどこで行えるのやら。退屈せぬは大いに結構であるが…疲労や気疲れは溜まってはおらぬか?エア}

 

「心配、してくれてるの?アルク」

 

{フフ、我等はロイヤルズたる集まりの同胞であろう?マリーが言うには我等はカルデアのツチノコ。存分に重宝されなくてはな}

 

いつの間にか呼ばれているその括り、アルクも気に入ってくれている事に安堵しながらエアは首を振る。確かに毎日が愉快で絢爛なのは間違いない。だが…そんな

 

「ありがとう、アルク!でも大丈夫、ワタシね、目に映る全てのものが楽しくて、ワタシの周りに起きる全てが素晴らしいと思えて仕方ないんだもの!」

 

{──フフ、そういえばお前は、4歳になるばかりだったな}

 

5歳にも満たぬのならば、その好奇心には頷けよう。得てして子供は餓鬼であるものだが、目の前にいる魂は親しき仲にも礼儀を決して忘れぬ佳き魂だと真祖は太鼓判を押す。

 

{うん!夏草の皆様や土地を知ったら退屈なんて遠い彼方だよ!ギルの庭ってとても素敵!こんな素晴らしいが溢れているんだもん!}

 

{ははは、はしゃぎ過ぎて王やペットの気をもませぬようにするのだぞ?}

 

世界を尊重する真理を宿せど、煌めく瞳は幼子が如く。自らと対等の地位にあるもう一人の姫を彼女は慈しみの瞳で見つめていた。

 

第二位 異聞帯〜禍肚大攻略戦〜

 

{うむ、確かにこれは難問だったと同意する。あり得ざる獣、まつろわぬ者らに四凶、都市の浄化に堕ちた創造の女神…壮絶に過ぎたな}

 

「グランドセイバーの桃子さんに尊さまや、グランドバーサーカーの温羅さん、最後にはイザナミ御祖母様まで全力を発揮した凄まじい攻略戦でした…!四霊の皆様がいなければどうなっていたことか…!」

 

イザナギの世界に殺意を懐いたイザナミの、殺意と殺気に溢れた異聞帯攻防戦。敵も味方も超抜的ビッグネームが飛び交うカルデア総力戦の体を取った大攻略戦をエアはチョイスする。

 

{ビーストイフですら前座でしか無かった大盤振る舞いぶりよ。生まれた親子の絆がなければ黄泉の女神と真っ向勝負であったのは、中々に際どかったのではないか?負ける筈はないにせよ、勝算は中々か細かったであろうな?}

 

「…そうだね。禊やけじめではない、本気の殺意をあのイザナミ様が向けてきていたら、果たして皆がちゃんとこうしてここにいれたかどうか…」

 

初めはイザナミの手駒でしか無かったアマノザコが、汎人類史に興味を持ち交流してくれたからこそ、彼女は親子の在り方を学びその暖かさがイザナミの心を解き解した。裁定として雌雄を決したものの、もうかのイザナミには戦い、倒す意志は宿っていなかったのだ。あったのは──娘を後顧の憂いなくカルデアに託す為の思慮。

 

「彼女達に勝ったもの、優れているものがあったとするならば。それは人類の皆様が築き上げてきた親愛です。ワタシ達はいつだって、人類の歩みと築いてきた歴史に助けられているのだから」

 

{伊達に霊長を名乗ってはおらぬ、という事か。ならばこれよりも目を離すなよ、エア。人間というものは確かに多様だが、我が身をよじれば容易く滅ぶ儚いモノ故な}

 

「うん…!だからこれ、チョイスしてきたんだ。はいこれ、プレゼント!」

 

{…これは?}

 

「反重力ドーム式ベッド!これなら寝苦しさや寝返りとか気にしなくて大丈夫!反重力空間で浮きながら眠ることが出来るんだ!宝物庫の最新区画にあったものだから見つけるのに苦労したよ〜。これでアルクも安眠確実!だよ!」

 

満面の笑みでプレゼントを託してくるエアと、そのセンスに思わず笑みを零すアルク。そうかそうか、こやつは祝われるのも祝うのも好きでたまらぬというわけかとアルクは得心する。

 

{礼を言うぞ、エア。それではいよいよ一位を聞き及ぶとしようではないか。…とはいえ、ある程度予測はできるがな?我等はいなかったが、ほら、アレだろう?}

 

「うん!苦戦した、困難だった…それ以上に楽しかったと言ったらあそこしかないよね!」

 

 

第一位 絢爛英雄記ギルガメッシュ

 

{知ってた〜。というのだなこういう場合は}

 

「見て!アルク見て!凄いよこのタイトル!もう絶対ぜったい負ける気がしないもの!マルドゥーク神やウルクの皆さん、部員の皆様、あの地にあるもの全てを総結集して挑んだティアマトお母さん…!凄かったなぁ…!」

 

炬燵にて脚を絡め合いながら、エアはしみじみと振り返る。ちょうどアルクは人理修復後の参戦だったため、伝聞や記録でしかその地の事を知らない。それがちょっと気がかりな真祖である。

 

{あの黄金の英雄神…第七特異点を見据えた最終兵器だったのだろう?となると既に。ギルガメッシュめは対策を考えていたと言うわけか}

 

「凄いよね!その頃のワタシは無銘だったから、器を動かしてくださったギルの目論見がチンプンカンプンだったの!まさかこんな凄い奥の手を講じていたなんてやっぱりギルは凄い!ワタシの一番の王様は何よりも凄いのだっ!えっへん!」

 

まるで自分が褒められているかのように胸を張るエアに、微笑ましげに肩をすくめるアルク。どれほど時を重ねようと、その敬愛は微塵も揺らぎはしないことを再確認する。

 

{よもや生命の母を星から飛び出させるとはな。我が身体より生まれた最大級の生命が一足先に星を離れる…幼年期の終わりとはよく言ったものだ。かのフォウも粋な計らいをしていたな?}

 

「星に描くありがとう、だね!ワタシの親友はね、とっても優しくて頼りになるんだよ!可愛いし、愛くるしいし!モフモフでいつもワタシの事を大切にしてくれて…嬉しいなぁ…」

 

そしてそれは、フォウに対する態度においても同じだった。ギルに対するものが敬愛ならば、フォウに対する感情は親愛だ。エアは二人を、何よりも深く愛している事は瞭然だ。

 

{博愛とは得てして、何も愛さぬと同義。その個への愛をけして忘れるなよ、エア}

 

「それでね、あのね!…ん?今何か言ったかな?ごめん!ワタシばっかり話しちゃって…!」

 

{よい、他愛ない事だ。それよりも続きの話を聞かせよ。ギルガメッシュから聞いた話ではあるが、そなた天の鎖を千切られた際にべそをかいていたそうだな?}

 

「だ、だって!まさかエルキドゥが遅れをとってしまうだなんて夢にも思わなかったんだよ!?ギルの親友にして、人の心を持つウルクの優しい緑の彼…そんな彼すらも打ち破ったティアマトお母さんの愛の深さと迫力が本当に物凄くて…!」

 

…こうして、エアとアルクは心ゆくまで話し込む。アルクはエアの語るがままに耳を傾け、静かに聞き及ぶ。

 

{祝われる側も勿論だが、祝う側にいるそなたは随分と活き活きとしているものよ。故にこそ──なのだな}

 

己が立場の優位性を歯牙にかけず、ありのままの自分を決して見失わない。故にこそ──彼女は尊重の真理を懐くことが叶ったのであろう。

 

「今度はアルクのお話を聞かせてほしいな!ちょくちょく話す死徒カリー・ド・マルシェと神々の決裂の危機ってどんなもの?」

 

{フフ、知りたいか?よし、ならば特別に教えてやろう。描く神がカリードマルシェなる死徒の情報を紡ぐ神に聞いたところ、そんなもんいないと断じた為に永年のコンビに亀裂が入った不和の存在が何を隠そう──}

 

真祖たる彼女もまた、愉快げにエアとの一時を楽しみ続けた。一年に一度の日柄を迎える、愉快な催しとして──

 

 




エア「あ、もうこんな時間…」

アルク{うむ。あと5分で我等はまた一つ時を刻むな。我には些末だが、そなたには大切な節目だ。良き日を過ごすがいい}

エア「うん!勿論!──ねぇ、アルク。これはワタシの気持ちなんだけどね…」

アルク{ん?}

「ホントなら、ワタシが及びもつかない星の触覚たるあなたとこうして親しげに話せることができて、本当に嬉しいよ!ワタシと仲良くしてくれて、本当にありがとう!」

{…フフ、何を今更…}

エア「これからも仲良くしてくれると、とっても嬉しいです!ずっとずっとよろしくね、アルク!」

アルク{うむ。そなたに退屈など感じはすまい。我の身元から離れ旅立つその日まで、私はそなたを見ているぞ、英雄姫。期待している}

「うんっ!それではグラスを持ってー!」
{ワインか?酒気はまずかろう?}

「天空神のお酒ー!はい、せーの!かんぱーい!」
{フ…乾杯}

高らかに打ち鳴らされる聖杯の器。また一つ、エアがこの世界に足跡を刻んだ瞬間であった──。

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