人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ジャンヌ姉ちゃん!

明日って今さ!!

というわけで、マテリアルに甘えてばかりもいられない!更新も同時にどうぞ!


深夜一時半


ルル「ちぃ、まさか寝ている際にトイレに行きたくなろうとは…夜のホテルは怖いものと相場が決まっていると言うのに…」

(さっさと済ませて寝るに限る。リッカ達の思い出作りについていけない、などあってはならないからな…)

「…ん?食堂に明かり?誰かいるのか?」

(夜食は太ると言うに…。早苗かアカネだな。全く天性の豊満体型と言うやつは。様子を見て諌めてやらねば)

?「お疲れ様、母上。お茶どーぞ」
?「えぇ、ありがとう。リッカ」

ルル「…母上…?」

(リッカの配偶者は、確か…)

「…様子を見てみるか…」


二つの故郷に思いを馳せて

「夏草…リッカの故郷。えぇ、とても良い所ですね。巡回警邏の最中に沢山の方に話しかけられましたが、老若男女みな親切に地理を教えて下さいました。不埒な者は見当たらず。将軍の膝下が如き規律…お見事です。本当に」

 

「夏草の皆が親切なのもあるけど、それ母上が美人すぎるから近くで見たくなったとかじゃない?もうホント、美人だしスタイル凄いし…!」

 

「あらあら、ふふっ。ありがとうリッカ。あなたの親愛、とても嬉しく思います」

 

(なっ…なんだあの、リッカの隣にいる絶世の美人は…!?)

 

トイレの最中に見つけたリッカと、親しげに話す類まれなる紫髪の美女。館内着を纏った色気と、リッカがまるで幼児体型に見える程の圧倒的ボディラインに、漏れかけた声を必死に抑える。

 

(それに、母上だと…!?カルデアとは養子縁組も見つけられる場所だと言うのか…!?)

 

驚愕のまま思考が混濁し、動けずにいるルル。敵意もなく、またリッカと隣の美女──源頼光たる女子二人が周囲の警戒レベルが著しく下がっているため、彼に気付かずに話を続ける。聞くところによると、母上と呼ばれた女性はずっと、夏草を巡りながらパトロールをしていたらしい。無慙は悪でなければ構わないため、ブッキングはしなかったのだろう。お茶を飲みながら、二人は話に花を咲かせる。

 

「高校生の御学友ともとても仲良くしているご様子で、母は大変安心いたしました。私のリッカ、あなたの口から友達の事を教えてはくれませんか?」

 

「勿論!あのね、えーとね、うーんとね。どこから話そっかなぁ…」

 

そうしてリッカが話し始めた態度と口調に、ルルは少なからず驚きを懐く。いつも快活で真っ直ぐ、はきはきとエネルギッシュである彼女が、その女性には言葉拙く、懸命に話しかけているのだ。まさに、母に一日を報告をする少女の様に。

 

(リッカとは思えない気の緩みぶりだ…あの御方は一体何者だ…?)

 

リッカの近況と、夏草での出来事を相槌を打ちながら、慈愛の瞳で以て聞き及ぶその女性。顔立ちも、姿形も似ていないはずなのに。ルルの目にはその交流が嘘偽りない──親子の様だと思えた。

 

「ルルやゆかなたちは変わってなかったし、天空海先輩もパワフルで、後輩も二人とも可愛くて、頼りになって。榊原先生も、皆カルデアに来る前と同じくらい、ううん…ずっとずっと良くしてくれたんだ」

 

「確か、生命を宿した絡繰もいらっしゃったとか?」

 

「うたうちゃんの事だね。実はね、遠い縁の親戚にあたる仲間が増えるかもしれないんだよ、これから!うたうちゃん、これで寂しいと感じる事は無さそうで良かったぁ…」

 

「ふふふ、左様ですか。リッカ、実は私、夏草を巡り春は桜が、夏は新緑が芽吹く公園を見つけたのです。手隙の際は是非、金時や皆と一緒に、ね?」

 

「うん!家族で行こうね、母上!」

 

(そうか…彼女は、母なのか。血が繋がっているばかりが親ではない。絆で通じる家族を見出したんだな、リッカ)

 

ルルは父や母とはあまり一緒にいられていない。父と母の教育は厳しく、義務教育を終えた後は妹と共に社会の荒波に負けぬ子に育てと学費と仕送りのみを渡され別居している。会うにしても、誕生日や結婚記念日、年末元旦やお盆といった行事のみだ。おかげで自炊は完璧になったので感謝はしているが、せめて妹とは一緒にいてやってほしいとも思うし、放任が故に距離を感じ寂しく思う時もあるが為、リッカと女性の親子という関係を彼はすんなり受け入れた。

 

「皆全然、いい意味で変わってなくて。でもすっごく立派になっててね。さっきの事件も力を合わせて乗り越えて…一緒に戦ったんだよ、皆で」

 

「えぇ。本当に素晴らしい御学友に、土地に恵まれましたね。中学の蠱毒の忌まわしい記憶を癒やす程の、素晴らしい方々に」

 

「うんっ。良かったぁ…皆私のこと、ちゃんと覚えててくれたんだよ母上。皆、お帰りって歓迎してくれて…すっごく、よくしてくれてね……………っ…」

 

リッカは血の繋がらぬ母にそっと抱き寄せられた。感極まった、誰にも見せない歓喜の涙をそっと包み込んだ。

 

「護れて、良かった…皆の未来を、今を、明日を…護れて良かったよ、母上…」

 

「えぇ、本当に。本当によく頑張りましたね、リッカ。本当に、一生懸命。必死に」

 

(リッカ…今は言葉にできんが、俺からも礼を言わせてくれ)

 

カルデアの奮闘は、ロマンから朝のミーティングでかいつまんで聞いている。一年の空白、それは人類が焼き払われて滅びていたのだと。そしてカルデアは、リッカは、自分たちの未来を取り戻す戦いに勝利したのだと。

 

「辛くなかったよ。皆がいたから。凄い皆が、私をずっと支えてくれたから。でも…でも、ちょっとだけ、ちょっとだけね…?」

 

「えぇ、言ってごらんなさい。私のリッカ」

 

「…忘れられてないかなって。平和な世界に、私の居場所はあるかなって。あって…いいのかなって、怖い気持ちと、不安な気持ちがあって。でもそれを夏草の皆が、夏草そのものが消してくれて。皆、私の事を覚えててくれて。待っててくれて。…嬉しかったなぁ…」

 

(…違うな、リッカ。間違っていたぞ)

 

そう、その認識こそは間違いだった。誰が忘れるものか。誰が忘れられるものか。君の様な鮮烈な存在を。君の様な頑張り屋を。

 

(感謝を告げねばならないのはこちらの方だ。お前は…また戻ってきてくれたのだ。俺達を大切に感じてくれたのだ)

 

カルデアは今や、楽園と呼ばれている程に充実している。あらゆるものが揃い、この世のどんな場所より居心地がいいのだと聞かされ、渡されしパンフレットにて否応に理解した。世界が滅びようと、万全な生存環境が用意されている程の。極論から言えば、利便さや快適においてならリッカは帰ってくる必要など無かった。

 

(お前は、ここにしかないものを愛した。夏草の民や、他愛のない知人や知己を愛してくれたんだ。ここにしかない、平和や生活を慈しんでくれたんだ)

 

この世の全てを揃えた楽園から飛び出して、また自分たちに会いに来てくれた。その意味と、その誇らしさを深く噛み締めながら、ルルは声なき感謝をリッカに送る。

 

「では…リッカ。あなたはこのまま平和な生活を望みますか?もし、あなたが望むのならば私はそれを重んじます。楽園の皆を説き伏せ、あなたが平穏な日々に戻る事を納得させてみせましょう。えぇ、いくらでも頭を下げて」

 

(!…それはつまり、夏草に戻ってくるという事か…)

 

ある意味でこれは禁断の問だった。リッカが夏草に滞在する事を望むなら、かの女性はそれを押し通さんと告げた。彼女の意思こそ、世界よりも大切と言い切ったのだ。その深い慈愛に、ルルは感服と戦慄を同時に懐く。

 

(リッカ、君はどうだ。君はどんな答えを…)

 

「ありがとう。でも母上、私は楽園を離れたりしないよ。だって私にとっての故郷はもう、二つあるから」

 

故郷は二つある。リッカは曇りなき瞳で答えた。そこに迷いや躊躇いは、微塵も介在していなかった。

 

「送り出してくれた皆と、受け入れてくれた皆がいる場所。夏草とカルデアが、私の生きる場所だから」

 

自身に未来を夢見る時間をくれた夏草。自身に数多無数の奇跡と尊重、縁をくれたカルデア。どちらも大切だからこそ、どちらも蔑ろにしないと彼女は誓った。

 

「これからも私は戦うよ。母上や皆と一緒に。私は私と、皆が生きてるこの世界が…エア姫が愛して、マシュの未来が待ってるこの世界が大好きだから!」

 

「──素晴らしい答えです、リッカ。母は本当に誇らしい。未来の果てで、こんなにも立派な娘を授かれたのですから」

 

「血の繋がりなんて、関係ないよ。私はちょっと授かり方が違っただけ。母上がそう呼んでくれる限り、私はあなたの娘だから!」

 

「あぁ、リッカ…。母は幸せです。ありがとう、我が最愛の娘…」

 

「残り2日、母上も愉しんでね。私の故郷、凄いんだから!」

 

肩を寄せ合いながら、そっと美徳を語り合う。ルルはその光景を、背中越しに見守り続けたのだった──。




ルル(…二人は入浴に行ったか。下世話にすぎるが最後まで立ち聞きしてしまった…これがアカネのいう、エモいというやつか…)

「…帰ってしまうのだな。あと二日で。そうすれば、またいつ会えるともしれぬ別れか…」

(引き止めるなどすまい。それは無粋だからだ。だが彼女には…ゆかなとの一連の縁を運んでくれた恩がある)

「我等はマスターではないから、共には戦えん。しかしお前は孤立無援でないことを知ってもらうことはできる筈だ。…七日目までに、できる事を見つけねば!」

ルル(リッカよ、一つ訂正するならば…我等はただ守ってもらうばかりの愚民ではないということだ!)

エリザベス「おいお前。なにしてん──」

ルル「〜〜〜!!???」

エリザベス「あ、おい!?」


女性浴場

リッカ「?ルルの声?」

頼光「御学友?悲鳴が聞こえたような…?」

眠るうたうちゃんの代わりに警備していたエリザベスの想定外の声かけに、ぶっ倒れるルルであった──。


翌朝

ゆかな「だ、大丈夫ですよルル。誰にも言いませんから、ね?」

ルル「殺してッッッ!!!!」

エリザベスが部屋に運んだため、ルルは布団にブリタニアを描きましたとさ(秘密裏にゆかなが処理しました)。

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