人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「マスターの女子力を上げるための初心者のデコレーションのやりかたと、簡単なスイーツ入門のブック、エプロンとかもこしらえて・・・」



『リッカケーキ』

「できたわ!作り方もシンプルだし、作るのに支障もないはず!これを足掛かりにスイーツ作りに興味を」 


「ジャンヌパイセーン。配達終わったぜー?お、ケーキじゃねぇか!どれ一口」


「んんんんんんん!!!」


「うめぇ!!やるじゃねぇかパイセン!ん、どうした?」


「あんたたちが!!あんたたちがマスターの女子力を――――!!!」

「ブッ――!!!(友愛は有効)」 



「こうなったら――!!」




『チラシ マスターの女子力アップのための協力者募集』

「これを配りまくるしかないわ!マスターはこのままじゃ――」

『はちまき、たすき装着』

「行き遅れの火刑に処される――!筋肉に呑み込まれる!!いけないわ!マスターの為になら恥くらいいくらでもかいてやるわ!私がマスターを救うのよ!!」←コイツあべんじゃぁです


「チラシは持ったわね私!!行くわよォ!!」←コイツあべんじゃぁです


人間観察――女の話は最後にしよう。格闘技と引き換えに、女子力を捨てた主人公の話を

「さて、こうして巡りあったのもくだらぬ縁だ。涙がでるほど面倒だが、自己紹介で字数稼ぎでもするとしよう」

 

 

 

ガン、と机に脚を投げ出し、頬杖をつく少年

 

 

「俺の名はアンデルセン。ハンス・クリスチャン・アンデルセン。いくらかは俺の書いた著書が世に出回ったことがある程度の他愛ない童話作家だ」

 

 

「ハンス・クリスチャン・アンデルセン・・・!凄いです!先輩!英雄王!彼は三大童話作家の一人!人魚姫やマッチ売りの少女を書き上げ世界中を魅了した偉大な童話作家の一人です!」

 

 

 

いつになく興奮した様子でマシュが語る。

 

――そうか。マシュは読書が好きだから、紛れもなく彼は憧れの存在な訳だ

 

 

「こんなガキがぁ?英霊ぃ?マジかよ?なんだ、ペンで片っ端から刺し殺したのか?」

 

 

「発想が野蛮人のそれだな。貧困な食生活で頭の中にたっぷりとポテトが詰まっていると見える。左の耳から指を突っ込み右の耳から膿と共にひりだせ。そのままだと頭ごと腐り落ちるぞ?」

 

「あぁ!?」

 

 

「そうか。マシュめは童話を好んでいたか。ならばこやつと話すのは止めておけ。理想が壊れた幻想となり死にたくなること請け合いだぞ」

 

 

「えっ・・・!?」

 

 

「童話作家。作劇には書きたいものと書くべきものがあるといったな。作者が自由に創造力をはたためかせ書き上げるのが書きたいもの。締め切りと理性で縛り上げがんじがらめにするのが書くべきもの、だったか」

 

「ほう。俺が語った言葉をしっかり覚えているとは感心だ。報われぬプロポーズの言葉を覚える手間に比べれば造作もないか」

 

「貴様は語りはつまらぬが、人を見る目は一流だ。その言の葉には覚えるだけの味があったにすぎん」

 

 

「光栄だ。サーヴァントとしても英雄としても話にならん英雄王?」

 

 

――凄い

 

 

何が凄いかだって?決まっている

 

 

これだけの罵詈雑言を受けながら涼しげに流す器も勿論だが

 

 

――一言一言に自分の生命を懸け、全身全霊で相手を評価する、目の前の英雄の在り方こそが何よりも凄い

 

 

王も、腹を立てようと先に腰をあげるわけには行かないのだ

 

何せ、自分の総てを懸けて、王と言う存在を『物語っている』のだから。先に手を出しては、自らを彩る優秀な作家を手にかけた愚王の烙印を押される

 

――これが、作家の英雄・・・ペンと想像力だけで世界に召し上げられた文化人の極致・・・!

 

 

 

「ちなみに人魚姫は書きたかったものだ。頭の湯だった恋心に浮かされて、絶世の美声という宝を捨てて下らん恋に殉じるお姫様!書いていてたまらなく楽しかったぞう!沸き立つ蕁麻疹を堪えながら、リア充爆発しろというのを堪えてな!」

 

 

「――――・・・そ、そうなの、ですか・・・」

 

 

「マシュの目が死んだ!!」

 

「この顔には覚えがあります。カムランの丘で召喚を待ちボーッとしている私の顔と同じです」

 

 

「だから言ったであろうが。こやつは作家の英雄。そんな輩がまともな筈はあるまい」

 

 

――今までのどんな苦境より絶望している気がする・・・!しっかりするんだマシュ!傷は深いぞ!

 

 

「――しまった。いつものノリで企業秘密を愛読者に聞かせてしまった。俺を誘導させたな、英雄王!愛読者を一人作るのにどれ程の心血を注がねばならんと思っている!」

 

「王たる我に不遜の口を叩いた報いだ。貴様から一人の愛読者を奪っておいてやろう。高くついたな、アンデルセン」

 

「――――たかが一時の談話で、我が身を削る大損害を被るとは・・・やはり貴様など書き手にとっての最大のタブーだ。味方にも敵にも扱いにくさが過ぎる!」

 

「ほう?理由を聞いてやろうではないか」

 

 

「『なんでもできるから』に決まっているだろうが!敵に回せば設定と描写が食い違うと叩かれ、ふざけた物言いはヘイトを稼ぐ!感想欄がお前への誹謗中傷で埋め尽くされるのは目に見えている!倒すにしても納得と説得力のある設定と描写と弱体化の理由を二重三重にも考えねばならん!台詞を喋らせるのも一苦労だ!書き上げるのに一般キャラ何十人分の労力を使うのがお前だギルガメッシュ!御都合主義や主人公補正に頼らねば下せぬ敵など言語道断、作者すべての悩みの種だお前は!」

 

「フハハハハハハハハ!!言うではないか!!」

 

 

「味方としてはどうか?これもまた話にならん!出過ぎた何かをすれば『チート乙』『最強厨』などとやはり批判の嵐、『なんでもできる』という事を理由に作者に限界まで想像力を担わせる三次元キャラ!理由は決まっている!『敵を倒す』という描写を普通なら10でいいところを100も千も要求される!読者の想像を越え、作者の限界を常に越えることを要求される、誰もが貴様の描写を忌避する全作家最大最悪の厄ネタがお前だ!」

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハ!であろう!この我を題材にした物語だ、読み手にも書き手にも雑種の手などに収まるものか!だが、今我はこうして物語の中心に立っているぞ?」

 

 

「何かの間違いとは思いたいが・・・読者に恵まれ、ファンに恵まれたようだな。しかしそれだけではあるまい。お前が読者に媚びを売るようなタマか。物語があればかきみだし引っ掻き回すのがお前自身の在り方。それが改善され、お前が主役に抜擢され、皆に愛される痛快娯楽作品に昇華されているのだとすれば・・・」

 

 

「だとすれば?」

 

 

「――お前自身を全身全霊で『愛し』『憧れ』心から惚れ込み『期待』している『誰か』がいるのだろう」

 

――――!

 

「無垢なる憧憬と視線を足蹴にするような英雄(ヒーロー)などいまい。絶滅危惧の純真な読者。次は何を見せてくれるのだろう?次はどんな活躍をするんだろう?と目を輝かせ夢中でページを捲るもの。設定や下らん辻褄合わせなど気にもとめず、心から物語と主役の活躍『のみ』を心待ちにし楽しむ。単純明快な雑じり気の無い『愛読者』が、お前を愉快な主役足らしめているものの正体だ」

 

・・・腹だたしそうに眼鏡を上げる

 

 

「――俺達作家が作り上げたキャラクターに、一人得られたらそのキャラに大成功の太鼓判を押す、喉から手が出るほど欲しい『愛読者(ファン)』だ。精々大切にしてやるがいい、ヴァカめ!」

 

 

 

――この評価は、もしかして・・・

 

 

「――さて。そんな清純無垢な魂なぞ、この薄汚れた世界に在りはすまい。もしそんなものがあるのならば、この我の上機嫌にも納得がいくのだがな」

 

「そうだろうそうだろう。精々出所の解らない敬意と憧憬に答えてやるがいい――だが」

 

 

キラリ、と目を光らせる

 

 

「一つ忠告を残すぞ、英雄王。無垢とは危うい献身が形を成したものだ。敬意が強くなればなるほど、憧憬が強くなればなるほど、その献身は際限なく強くなっていく。窮まった献身、窮まった心酔が行き着く先など決まっている」

 

「――――」

 

 

「精々・・・『手放さない』ようにするんだな。そこまでの愛読者は代えがけして利かん。喪ってから気付いては総てが遅い。お前の積み上げた英雄譚と栄光と同じ数、悲嘆と後悔の涙で――物語の最後のページを濡らすことになるぞ」

 

 

――それは

 

童話作家としての、本心からの警告であった

 

 

 

 

「・・・フン。覚えておいてやろう」

 

 

「そうしろ。・・・喋りすぎたな。見ろ、奴等の豆鉄砲を食らったような顔を。さっさと引率し、元凶を倒しに行け」

 

 

「――む?元凶はここにいるのか?」

 

「二階の書斎だ。そこに力なく浮いている」

 

 

「――そうか。マスター」

 

 

「はいっ?」

 

「貴様も来い。童話作家もだ。アルトリア、マシュ、モードレッドは待機せよ。すぐに終わる」

 

 

「は、はい」

 

「なんだよ、抜け駆けかー?」

 

 

パチンと、波紋からテーブルクロスを出す

 

「腹ごしらえでもしておけ。――マスターと幻影の査定といこう」

 

 

「随分と優しいな。それも愛読者の影響か?」

 

「かもしれぬな。少なくとも、悪い気はせぬのは確かだ」

 

――童話作家の偉大さを、突き付けられた思いだった

 

 

 

 

 

 

 




「ねぇねぇ、私は?私も評価してほしいな!」



「なんだ?くたびれた売れ残りキャリアウーマンの悲哀でもご所望か?」

「違う――!!ほら!ラブコメとか、ラブロマンスとか!!」

「どう考えても貴様の物語は英雄譚か熱血バトルモノだろうが。一万歩譲ってプリキュアだ。映画館でちびっこの応援を背負い巨悪を打ち倒すスーパーヒーロー以外のどんな役柄を期待していた。鏡をみろ」

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

「笑いすぎぃ!!」

――自分も力の限り応援する。がんばれー!キュアリッカ――!!って絶対応援する

「私のラブロマンス世界線は焼却されていたのか・・・!!黒幕絶対許さねぇ!!いつか胴体を貫通する我が生涯最高の一撃を叩き込んでやるぅ!!」

「骨の髄までヒーローだなお前は。・・・ただ」


「?」


「そこに至るまで、どれほどの葛藤と苦悩に溢れていたかは見れば解る。下手をすれば見るものの目と魂を腐らせる発禁モノのおぞましき邪本か、語るも憚れる肉欲と退廃の下劣本に堕ち果てていただろう。『それはいかん』と命を懸けて路線変更を成し遂げさせた、最高の編集担当がいたのだな。お前には」


「――――――――――」

「だからこそ、見出だしたその路線を無闇に・・・待て、なぜ泣く。俺はそこまでの批評をした覚えは・・・」


「・・・ううん。嬉しいの。嬉しいから・・・泣いているの」

「――そうか」


「・・・えへへ、最高だって。作家の英雄に褒められたよ。――グドーシ・・・」

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