人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ママ牧場

南房総国定公園内の丘陵地にある観光牧場。広大な敷地には四季折々の花が咲き、牛、馬、羊、アルパカなどたくさんの動物たちと触れ合える。餌やりや乳しぼり体験などのほか、陽気なガイドとトラクタートレインで巡るマザーファームツアーに参加するのもおすすめ。味覚狩りやファームジップ、遊園地など1日たっぷり遊べる施設が揃う。


堪能!ふれあいママ牧場

「アルジュナ。どうやらここではアルパカや動物達にエサを与えることが出来るらしい。カルデアの地理上、中々お目にかかれない動物達と思う存分触れ合えるというのだ、素晴らしいと言う他無い。リッカの故郷、オレ達も存分に楽しむとしよう」

 

気持ち陽気にアルジュナに語りかけし日輪の化身、インドのカルナさん。施しの英雄、売店で買ったインディンジョーンズ風味な服装に身を包み、無言の圧を発しながらやってくるアルパカの大群の前に立つ。

 

「それはいい、最早貴様のマイペースには突っ込むまい。慣れしたんだ、慣れてしまったからな。しかしなんだその格好は…!馴染みすぎている!」

 

「御者の子であったが故、こういった奔放な装いの方が気が楽になる。アルパカというのはこの様に大群で迫りくるのだな。餌を求めている様だ。応えぬ訳にはいかん」

 

晴天の下、ずらりとカルナを取り囲むアルパカの大群。無言の圧をものともせず餌を施していく施しの英雄。なんというかこう、パーンダヴァ5兄弟とかクルクシェートラの戦いとかどうでもよくなるほのぼのインドの光景がそこにあった。

 

「見ろ、アルジュナ。このアルパカ達は礼儀正しい。我先にと餌を求めるのではなく、静かに自身の時を待ち続けている。なんと静謐で、礼節に富んだ生き物なのだろう。やはり彼女の善性はここから育まれたのだな…」

 

(カルナを完全に包囲するとは…只者ではない。もしや、ヴィシュヌのアヴァターラか聖仙の転生体か…?)

 

 

●●●●

●●○●

●●●●

 

上記の様な包囲網にも全く動じないカルナに呆れながらも、アルジュナはパンフレットを開く。インドの真面目な方もまた、外界の散策を無下にしたい筈もなく。

 

「…カルナ、私は少し赴きたい場所に行く。ここにいるんだぞ」

 

「迷子にならぬよう、気を張っていけ」

 

アルジュナは心持ち清廉に構え、気合を込めてとある場所に赴く。そう、それはインドの英雄にとって行かなくてはならない大切な場所であった。

 

「ブモー」

「ブモー」

 

「おぉ、ナンディ…やはり我等がマスターの故郷を守護なさっておりましたか」

 

恭しく黒毛和牛に頭を下げるアルジュナ。インドにおいて牛とは神聖な生き物であり交通を妨げられても危害を加えてはいけない事になっている。絶世の美男子が牛に跪き祈りを捧げる姿は否が応にも目を引くと言うものだ。しかし、アルジュナはただ黒毛和牛にのみ意志を向けている。アーチャーならではの隔絶した集中力がこんな場所で発揮されているのだ。勿体無い。

 

「おぉ、アルジュナ!君もこちらに来ていたか!やはり牧羊さは心の癒やしに繋がるものだからな!」

「こんにちは、アルジュナさん」

 

そんな彼の集中を解いたのは、赤毛の夫婦ラーマにシータ。二人がただそこにいる。比類なき奇跡に流石のアルジュナも笑みを浮かべる。

 

「えぇ、牛は皆ナンディの眷属なれば敬意を払うは必定…パールヴァティ女神の親類となれば尚のこと」

 

「ふふふアルジュナ、輝く王冠よ。ここではその眷属からアムリタを授かることができる事を知っているか?」

 

「…なんですと?」

 

ラーマの言葉に、アルジュナは片眉を上げる。このナンディ達から神聖なるアムリタを?夏草とはニルヴァーナだった?アルジュナ、予想外の授かりにびっくりである。

 

「ふふっ、あちらでなんと乳搾りができるのです!アルジュナ様もよろしければ、御一緒になさいませんか?とても繊細かつ楽しいですよ!」

 

「なんと…!ナンディからの恵みとはそういったものでしたか!このアルジュナ、授かりにおいてはほとほと大量に受け取っておりますが自身から授かりに行くというのは稀!よろしい、神聖なる行としてそのお誘いに参加させていただく!」

 

ピシリといつもの弓矢放ちポーズを取るアルジュナに苦笑しながらも、ラーマはしっかりとシータと手を繋ぎ先頭を行く。

 

「では行こう二人共!楽園と、勇気あるマスターたるリッカの故郷に祝福あれ!我等の前途に無上の喜びよあれ!」

 

「もう、ラーマったら大袈裟なのですから…」

 

(見ていろカルナ。お前が圧の強い珍妙な動物と触れ合っている間に私達はナンディの神秘の最奥に触れ、さらなる高みへと登ってみせるぞ…!)

 

そんなこんなで夏草のママ牧場を堪能していくインド夫婦にインド兄弟。楽しそうに牛から恵みをいただく夫妻と、仏頂面で真言を唱えながら牛の乳搾りに勤しむ黒肌の青年のコントラストは見るものの語り草となったという。

 

「アッハハハハハハハ!見たかカルナ!ナンディは私にこれ程の恵みをくださった!これぞまさに撹拌された乳海…!クッフフフ、あはははは!」

「ブモー」 

 

「お牛さんもとても楽しそうでした。アルジュナ様は本当になんでもできるのですね」

 

「輝く王冠とまで謳われたその実力、牛の乳搾りにてなんら遺憾なく発揮されたようだ!素晴らしいな!」

 

「ふふ、あなた方がいたからこそ私もリラックスして行えました。二人の変わらぬ愛と絆に、祝福を」

 

「ありがとう!しかし一人の妻を5人で共有だけは絶対に理解できないぞ、僕は!」

 

「そこは、そこは触れないでくれ!色々複雑な事情があったんだから…!」

 

「あははっ。それでは二人共。この国ならではの動物に会ってみませんか?」

 

「「この国ならでは…?」」

 

そう告げ、シータは二人を導く。そこには二匹一組で佇み、うさぎのようなカンガルーのような不思議なフォルムの動物が在る。

 

「このような生き物は初めて見るぞ、シータ!二匹寄り添って、まるで…その…こほん!」

 

「ラーマ殿やシータ殿のようですね」

 

「アルジュナ!」

 

「ありがとうございます、アルジュナ様。パンフレットに載っていましたが、この動物は一生伴侶を変えず、ずっと二人で支えあう素敵な動物のようなのです。大きな瞳を護る為にまつげは長く、毛皮はふわふわ。時速40キロで走る事もできる凄い子達なんです」

 

「素晴らしい。妻の不貞を疑うことも無さそうですね」

 

「ぐうっ!?」

 

「フッ、先のお返しです」

 

「これが因果応報か…もう二度と愚にもつかない真似はしないぞ!しかし可愛らしい、どれ…あっ!?」

 

ラーマが触れようとした所、ピューと逃げてしまう件の動物。相当な怖がりであることは存分に見て取れた。

 

「あぁ、ダメよラーマ。ゆっくり止まっているときにそっと背中を撫でてあげるの」

 

「す、すまない…逸ってしまったな。しかしとても可愛らしい動物だな。名前はなんと言うんだ?」

 

「ふふ、そこで問題よ。この動物の名前はなんと言うでしょう?驚くわ、きっと」

 

「ふふ、動物の名前で驚くなど。モハメドくんでしょう」

 

「オンコットくん!」

 

「ぶぶー、外れです二人共。それでは正解を発表しますね?」

 

(フッ、シータ殿が可愛らしいのは事実だが正解のリアクションまで合わせる義理はありません。知ってましたが私?的なテンションで乗り切ってしまいましょう)

(うわー、そうだったのかー!の準備はできているぞ!しかしどんな名前なのかな?)

 

「正解は、マーラでした!」

 

「「マーラ!?」」

 

よりにもよってインドにおける最高クラスの魔王の名を冠していたこの愛くるしい生き物に驚くと同時に、それらを物怖じ驚きなどせずに伝えることのできるシータの芯の強さに感心しきる二人。

 

「アルジュナ、手持ちの餌を全てあげた為補充に戻るがお前はどうする?」

 

「帽子はどうしたのだカルナ…!」

 

施しの英雄の本領を発揮し、餌と身ぐるみを捧げてきてしまったカルナと合流し、インド別働隊はほのぼのとした時間を過ごすのだった──。

 




カピバラ「…………」

デイビッド「…………」


カピバラ「…」「…」「…」

デイビッド「……」

ゴッホ「マスター、動物と触れ合うイケメンという題材で一つ…」

「…」「…」「…」
デイビッド「……」
「…」「…」「…」

「ハウッ!?」

メチャクチャ囲まれていた。

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