ニャル【お疲れ様、リッカちゃん。人払いもして、完璧なわからせだったね】
リッカ「首から上は残したけど、これで大丈夫だった?」
ニャル【問題ない。必ず蘇生させよう。本当に、ありがとうね】
リッカ「もう、マシュを傷つける気にはならないと思う。…あ、ニャルパパ」
【ん?】
「一つ、頼みがあるんだけど…」
【───わかった。必ず届けるよ。それと…】
「?」
【やはり、君はマシュのマスターだよ。誰かの為に本気で怒れる。そんな君はやはり、楽園のマスターだ】
リッカ「──ありがとう、ニャルパパ!」
【分かりきった結末とはいえ、徹底的にやられたものだ。どうだ?触れてはいけないものに触れ、怒らせてはならないものを怒らせた感想は】
ケジメは終わり、リッカとの対決を終えたベリル。ニャル特注の医務室に運ばれ、全身の骨を砕かれた惨状を邪神に晒し、全身ギプスのミイラ男状態にされ呆然と項垂れる狼男の隣で、愉快げにシャクシャクとリンゴを切っている。邪神にとって、こんなものは分かりきった結末であるからだ。むしろ怒りに任せ首を粉砕しなかったリッカの理性を称えたい。
「……旦那。どうして、教えてくれなかったんだい…」
【教える理由が分からん。最初から望んでいたのはお前の敗北であり無念のケジメだ。私が入れ込んでいるのはリッカちゃんの方だったのさ。誰もお前の勝ちなんぞ望んでない。私も含めてな。二度とイキリなんて言葉を使うなよ。首から上の骨を残してくれたリッカちゃんに涙を流して感謝しろ】
鎮痛な訴えをどこ吹く風、事も無げに受け流す邪神の邪悪悪辣ぶりに、最早乾いた笑いすら出てこないベリル。はじめから彼が望んでいたのはこの結末だった。自身への期待は唯一つ。こうして完膚無きまでの醜態を晒す事のみだったのだ。つくづく信じる相手を間違えたと、彼は呆然と笑い続ける事しか出来なかった。
【いーい顔をするなぁ。惨敗した負け犬と言うものは滑稽で無様で愚かで愛おしいものだ。まかり間違っても楽園カルデアの皆のそんな顔は見たくないからな。お前という自他共に認めるクズが仲間になってくれて助かったよ。これからの【邪神っぽい】アレコレは全て、お前にだけ見せていくからな!よろしくなベリル・ガット!喜べ、お前の加入で楽園に【無様さ】と【滑稽さ】が加わったぞ!お前の存在が、ますます楽園を盤石なものとした!ありがとう人狼!一つ歌でも歌ってやろうか?それくらいに気分がいいからなぁ!】
「…へ、へへへ…」
おや、やりすぎかと少し平静を取り戻すニャル。脳味噌だけでも自分に憎まれ口を叩いてきたヤツが随分としおらしくなったものだ。余程リッカちゃんは恐ろしいものを見せたのだろうと剥いたウサギりんごを自分で食べる。楽園菜園リンゴは愉悦の味がした。尊さと同じくらい、人の不幸は蜜の味がするものだ。
【おいおい、そんなに泣くこと無いだろう。私はお前が苦しんで嬉しいし、お前は私を楽しませて嬉しい。ウィンウィンの関係じゃあないか?】
「…………うがぁっ!?」
【どうなんだ?人が聞いているんだ。はいかイエスかで5秒以内で返答しろ】
身体の砕けた骨を内蔵に突き刺すニャルの操作の前に血反吐を吐くベリル。何度も言うが、邪神は楽園の皆以外は等しく玩具であり玩弄物だ。自分を楽しませない玩具なら、自分なりに楽しませるまでである。
「チクショウ!オレの負けだよ!何から何までオレが悪かったよ、クソッタレ!」
【反省したか?自分がどれだけ破綻していたかを理解したか?】
「もう分かった、二度とマシュにあんな真似はしねぇ!負け犬として、カルデアに尻尾を振り──ぐぁあぁあぁ!!」
【まだ反抗の意志が見えるぞ。カルデアに尻尾を、なんだって?】
「せ、誠心誠意お仕えさせて、いただきます…!」
最初からそう言え、チンケなプライドばかり育てた人間はこれだから困る。徹底的に残り滓を踏み躙り、ひとまず満足したとリンゴを食べる。別にベリルの為に剥いていた訳ではない。自分が食べる為だ。
【そんないい子な狼さんになったお前にプレゼントを与えよう。あれ程想いを寄せていた女性に会わせてあげようじゃないか】
「は…?」
『すみません、ベリルさん。起きていますか?私です、マシュ・キリエライトです』
ベリルの顔が動揺するのが見て取れた。笑いを噛み殺しながら、ニャルは消え去る。いなくなった訳ではないが、姿を消したのだ。突然の意中の相手の来訪の表情を堪能する為に。
「あ、あぁ…わざわざ来てくれたのか、マシュ。嬉しいね、よくここがわかったな?」
「キリシュタリアさんが教えてくれました。そして、リッカ先輩から花束と、メッセージカードを。これから仲間入りするベリル先輩へと」
ひとまずそれを脇に置き、マシュは言葉を紡ぐ。ベリルがかつて行った、自分への行いを。
「はっきり言います。私はここに来る数分前まで、あなたの所業を忘れていました。あなたに指を折られた事、無菌室の出来事を綺麗サッパリ。そして同時に、あなたが私を好きで、愛してくださっていた事も」
「…そうかい。あぁ、分かったのか。オレがやった事の意味を。そんで、忘れてたか…」
その意味を以て、マシュの伝えたい事を理解しながらもマシュは告げる。楽園にて、たくましくのびのびと育ったマシュはキッパリと告げた。
「何故忘れていたか。それはあなたの行いが、愛だと解らなかったからです。あなたの愛は、きっと誰にも解らない。私にも、誰にも。あなたの行いは…私の中では愛を求められた事だと解りませんでした。そしてこれからも、その愛を受け取るつもりはありません」
「……そうか。あぁ、そうか…」
はっきりと告げられた、拒絶と失恋。彼の愛は、理解不能であるものとマシュ自身に一刀両断されるという末路を迎えた。思えばこれが、邪神の懐いた結末なのだろう。
肉体や力、マスターとしての力量とプライドをリッカに砕かれ。
異常性や恋心を、マシュ本人に砕かれる。
ニャルが脚本を描いた時点で、まだ『外様』でしかない自分には破滅の結末しか用意しない。そんな当たり前のエンドマークを、今こうして付けられた。
「……いいさ。よく分かったからな。むしろ、モヤモヤしたままじゃなくて助かったよ。悪かった、マシュ。怖がらせちまって」
彼自身、その行いのもたらす残酷さを文字通り骨身に染みて理解した。もう二度と、マシュに求愛する事はあるまい。
破綻者の愛は、破綻したままに破れたのだ。
「──ですが!」
…だが、ケジメを乗り越え、これから仲間になっていく相手にはただの曇らせで終わらせないのも頭プレシャスな邪神の本領。悪趣味なままでは、叙事詩にシミができてしまう。
「過去の恋愛はごめんなさいですが!今のこのマシュ・キリエライトを好きになってくださった際のアプローチ、アタックならどしどしウェルカムしています!女性として、リッカ先輩のように真正面から受けて立ちますよ!勿論!ベリルさんのアタックだって例外ではありません!遠慮無く、私に挑んでいただければ!」
「は?…真っ当なアタックならいいってか?」
「勿論です!ただし私の理想はリッカ先輩と同じくらいの魅力を持つことが最低条件なので、今のベリルさんはアウトオブ眼中ではありますがそれでもと言うならシミュレーションルームに行きましょう!自身に向けられた想い!このマシュ・キリエライトはいつでも受けて立ちましょう!!」
鼻息荒く、そしてマシュっと力こぶをつくるマシュの溌剌たる再アプローチドンと来いな姿勢。まさか一度振った後に真っ当なアタックなら話だけはききマシュ!(ふんす)と言われるとは思ってもみなかった。
「───クク、ハハ。ハハハハハハ!あっはははははははは!!」
「ど、どうしました!?私は何か、おかしい事を言いましたか!?」
「何から何までおかしいだろ!全くお前さんにリッカは、本当におもしれぇ奴等に育ったもんだぜ!あははははは!あっはははははは──!」
その破天荒、気まずさや面倒な後腐れすら微塵も残さぬ選択を示したマシュの成長ぶりに、ベリルはともすれば今までで一番笑い転げる。
「わかった。オーケーだ。なにはともあれ…これからよろしく頼むわ、マシュ」
「はい!何かやらかしたなら思い切りブッ飛ばしていいとキリシュタリアさんから聞いています!お覚悟をよろしくお願い致します!!」
【──良かったなぁ。ベリル】
やはり笑顔で終わらなくちゃあな。そんな楽園の邪神は人知れず笑うのであった──。
キリシュタリア「ベリル!ベリル!生きてるかい!?上から来るぞ、気をつけ給え!」
カドック「何がだよ…一応お見舞いだから静かにな」
ぺぺ「リッカちゃんに喧嘩売るとか蛮勇キメたわねー…でも刺戟的だったでしょ?間違いなくね」
ヒナコ「暫く見ないうちに、随分と馬鹿になったわねベリル。気は確か?」
オフェリア「ひとまず、リッカはもう怒っていないそうよ。ただし…あなたには聞きたいことがあるわ」
デイビッド「ヒマワリバスケットだ。気が安らぐぞ。Tシャツもある」
ベリル「お前ら…」
マシュ「先輩が、元Aチームで積もる話もあるだろうと皆さんを!」
ベリル「…味な真似するなぁ、俺らの後輩はよ。じゃあ──改めてこれからよろしく頼むわ──」
ニャル【───フッ】
〜
ロマン「ありがとうね、リッカ君」
リッカ「どういたしまして!」
オルガマリー「マシュには黙っておきましょう。ますますなすびぶりに磨きがかかるだろうから」
リッカ「──同感!」
ベリルが 仲間になった!
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