人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ニャル【む、着信か】

コヤンスカヤ『家族サービスのところ、失礼致します。お耳に入れたい情報を入手致しましたので…御足労、願えます?』

ニャル【…わかった。家族はエキドナに任せ向かう。時間は一時間で終わらせよう】

『はい、そのように。お待ちしておりますわ』



〜第二カルデア

ニャル【ウルトラウーマン、その情報は正しいのだね?】




宇宙・地球周辺

フィリア『はい!人類文明構造ではない乗り物が今、地球に向かっています!これが恐らく…』

ニャル通信【あぁ。人里漂白の始まり…宇宙飛来物体というやつだ。こちらでは観測できないものをよくぞ…流石、光の巨人だ】

フィリア『えへへ、褒めるとビームが出ます…!どうしましょう?丁重に招き入れますか?』

ニャル通信【そうだな。では…。………】

フィリア『?ニャルさん?』

【───反物質を送る。ブルトンを作り『地球を観測』させないでくれ】

フィリア『!?…わ、解りました!』



コヤンスカヤ「…それはどのようなお考えで?」

ニャル【いいや、思い返したんだが、確か…【Ⅰの獣】が出てきた時点で終末の獣は現れる。ならば【生命体】自体は、最早重要ではないんじゃないか、とな】

「…!」

【まぁ、予想だがな。楽園のため、石橋をいくらでも叩き壊そうじゃないか】




4周年記念〜ベリル・ガット加入クエスト〜

【さて、楽しく嬉しい家族旅行を抜けてきてまで確保した時間だ。全て効率的に、恙無く取り組み終わらせて行くとしようか。なぁ、最後のAチームマスターさん。ガーデニングが趣味なんだってな?人は見かけによらんな】

 

6月の半ば、そして4周年。件の『地球外生命体』の飛来物と搭乗していた生命体を一時的に地球から隔離したニャルは、目の前の脳缶に話し掛ける。ミゴ製の脳格納容器には元Aチーム最後の人員の脳味噌、マイルドに言えばメロンパンが格納されている。そう、魔女の息子ベリル・ガット。その脳味噌に語り掛けているのだ。脳波受信装置から、ベリル・ガットの意思を読み取り言葉を受け取る。

 

『是非とも一緒にやってみたいもんだ。下劣で残酷で無慈悲なアンタがどんな庭を作るのか興味は尽きないよ。皮肉じゃなくてマジな話でな』

 

【残酷ねぇ…。スワンプマン問題にお前を落とさずお前自身を確立させているだけ慈悲深いと思うがね。ちなみにこの会話の前に予告編の前編のやり取りがあったと整理しておくれ】

 

誰に話しかけてるんだよ…とベリルは閉口する。彼は思い知っている。彼の見ているもの、思考回路、生きている世界。それらは全て人の世にあってはならない邪悪なるものだと。彼にかかれば、どんな犯罪者や知能犯、マフィアだろうと子供のままごとだ。そんな彼が──

 

【喜べ。お前にケジメをつける機会をやるよ。前にも言ったが、リッカちゃんにアレコレぶつけたいんだろう?マシュを鮮やかに染め上げた彼女にさ】

 

ニャルの横恋慕を嘲るような声音の言葉に、ベリルは脳波を乱れさせた。彼は死んではいない。紛れも無く、かつてカルデアにいたベリルだ。それ故に。

 

『あぁ、これまたさっき言ったが…もうあの不細工でキレイなマシュはいない。いいさ、それは受け入れた。オレもその事実を今更変えれるとは思っちゃいない。だけどな…』

 

【だけど、なんだ?】

 

『かつて惚れた女を奪われて泣き寝入り、っていうのはしたくないんでね。マシュへの想い、恋慕、執着が本気だったと示す為にもせめて、意思表示だけはしときたいのさ。『マシュを愛した男』が一人くらいはいたって事、リッカとやらに知っていて貰いたくてさ』

 

【これが噂の『傷になりたい』というタイプの恋愛発露か。正直付き合わされる側も堪ったもんじゃないが…】

 

だが、あえて邪神はその気概を買った。楽園にはAチームが揃い踏みしている。マリスビリーが雇った始末屋、汚れ仕事請負人であろうともいなかった事にするのは楽園のスタンスと理念にも反する。虐める理由も無くなったし、飽きた。邪神の本音と建前がどちらかはご想像にお任せする。

 

【良いだろう。なら抑制と制裁はやめだ。喜べ、ベリル。お前に新たなる身体、自由、そして生きる意味をくれてやる】

 

『何だって…身体?そいつは本当かよ旦那!?』

 

ニャルは頷いた。彼がリッカちゃんに殺され…絆を結びに行ってくれるならば好都合。ベリルにもきっちり失れ…気持ちに踏ん切りをつける機会が必要だろう。野に放ち万が一にも敵対されたら責任問題だ。飼い殺すにしても、一つのケジメは大切だ。ニャルはベリルの言葉に頷く。

 

【安心しろ、私は(楽園の)味方だ。(お前の破滅を)助けてやるぞベリル。お前も(第二カルデアの)仲間達と共に楽しく(汚れ)仕事を行う日々を過ごすんだ、いいな?】

 

『旦那…アンタってやつは…悪趣味で残酷で悍ましいだけのクソ野郎じゃあ無かったんだな…!』

 

随分とイキるなこの脳缶野郎、培養液比率変えてやろうかと片眉を上げるが逸りを抑える。彼を破壊するのはここではない。破壊するのは肉体ではない。尊厳だ。故に白々しくニャルは告げる。

 

【勿論さベリル・ガット。私は楽園に住む者には嘘はけしてつかない。君の居場所を必ずや楽園に作ろう。その為にも、君は身体とリッカちゃんに挑めるだけの力を手に入れるんだ。いいな?】

 

『その厚意に感謝するよ邪神さま。悲劇九割恵み一割はマジで神様って感じするわ!』

 

元気が良くなったベリルに愛想笑いを浮かべながら、マテリアルボディ、即ち脳を収めるベリルの肉体を生成する準備に入る。魂の定着を試みさせると錬金術の禁忌に触れるが、精神と脳の移植の為の入れ物などバイオ技術でいくらでも制作できる。本来は五体不自由な方、植物人間の治療目的の技術を、身体の制作に踏み切ったのだ。

 

【身体を手に入れたならすぐにリッカちゃんとの戦いを行う為の準備をしてもらうぞ。4周年というイベントの一角を担う大役だ。生半可な働きは断じて許さんからそのつもりでな】

 

つまらん催しは認めぬニャルの釘刺しに、脳だけのベリルは返答を行う。

 

『あぁ…勿論だ。さっきも言ったが、オレは本気の本気でマシュを愛していたんだぜ。自分なりの愛の形で、本気でマシュを護ろうとしていた』

 

【……】

 

…本来ならば愛を語る生命など心の底から侮蔑し嘲笑う存在であるが、彼はそれらの言葉を茶化すことなく受け入れている。マシュへの思いは、命と引き換えの大令呪を刻ませなかった事から一目瞭然であるのだから。

 

『その気持ちが嘘じゃないと証明するためにも、『泣き寝入り』だけはしちゃあダメだろうと脳みそだけで考えていたわけさ。そしたら願ってもいない意地の通す機会と失恋のケジメの機会をまとめてくれた。旦那には感謝してるつもりなんだぜ?これでようやく、身の振り方を決められるってもんさ』

 

どれだけ破綻した行為であるのか、どれだけ倒錯していた好意であるのかは皮肉にも自身が行われた事で理解した。そういった意味では、因果応報にして神罰が与えられたのだと納得している。クズな自分に相応しい報いであったとスッキリしている程だ。

 

『後はもう、意地の問題なわけだ。そんなわけで最後の協力をお願いするよ旦那。もう二度とない恋慕、大失恋で終わったこの想い…どうか見届けちゃあくれないか』

 

【〜…】

 

やはり解らせには苦痛と拷問が一番だと思い至る邪神。余計な思考や自由を剥奪したことで、彼の純真な部分がより一層前へと現れているのを感じ取る。少なくとも彼は今、最後まで自身の恋心に殉じようとしているのだ。その気持ちは、決して嗤うことも嘲ることもすまい。幸いな事に、その感情は自身も理解できるものであるからだ。

 

【全く受け取る側の事を考えず、自分本位のどうしようもない感情の発露ではあるが…その想いを笑うことはするまい。男の子はそういう、理屈や理性を抜きにして生きるものであるべきだからな】

 

『わかるかい、旦那』

 

【非常に良く解るとも。だからこそ、私はお前に力を貸そう。お前が皆と笑い合える日をメイキングする為に、力を貸してあげようじゃないか】

 

ニャルの言葉に、脳波を乱すベリル。おそらく喜んでいるのだろう。脳みそだけでつける虚偽など存在しない。無駄を削ぎ落とした、の究極系であるのだから。

 

【と言うわけで、お前のケジメを応援しよう。さぁ、まずはその力を磨くところから始めよう。身体も改めて取り戻してもらおう。お前の新たなる門出…心から応援するよ】

 

『あぁ、頼むぜ旦那。フラレた男の再起…見守ってやってくれ…!』

 

クズな部分を体ごと漂白した事で、とても純真な狼と図らずもなったベリル。令和に流行るであろうクズ改心の先駆けの到来に、ニャルはそっとほくそ笑む。

 

(まぁ…『ケジメ』をしたいのはお前だけじゃないからな。精々自身の異常性を呪っておけよ、ベリル)

 

…失念しているであろう、恋愛対象への行い。それがどれほど浅はかなものであったか彼が知る結末の為に。彼はベリルへの惜しみない協力を約束するのであった




そして予告のアレコレを得て…

ニャル【お前にはいくつかの臓器を得る機会をやる。リッカちゃんとの戦いの為、4つは獲得するんだぞ】

『グリフォン』

『マンティコア』

『サーペント』

『フェンリル』

ベリル「名だたる怪物達じゃないのかい旦那。ホントに用意できるのか…?」

ニャル【コネクションはある、心配するな。後はお前の奮起次第なんだからな。死んでくれるなよ】

ベリル「…勿論さ。精一杯、やらせてもらうぜ?」

ニャル【その言葉…忘れるなよ?】

そうして、名だたる魔獣神獣の再現に死物狂いで挑むベリル。邪神の監督の下…

『グランドマスターのゲテモノ枠』

という唯一無二の立ち位置への仕込みは着々と進んでいくのであった──

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