アダムスキー「という訳で、このカタギに見えねぇお兄さんがゆかなの父!アダムスキー・レイドライバーさんだ!好きなように呼んでくれ!」
リッカ「ゆかなのお父さんって話は聞いてたけど…改めてご対面するとデカい!凄く強そう!」
ルル「う、ぉおぉ…」
ゆかな「筋骨隆々、威風堂々。お前とは何もかもが違うだろう?」
アダム「ほーん?お前さんがねぇ。ほーう?」
ルル「は、はひっ。ルルれす」
アダム「フッハハハハハ!なるほどなるほど!よろしくな!よーし、じゃあ榊原センセ!」
榊原「…なるほど。皆、アダムさんの提案で、懺悔タイムを設けてくださるそうです」
じゃんぬ「懺悔ねぇ…」
アダム「なんでもいいぜ!話しにくい悩み、伝えにくい苦しみ!どーんと来い来な!」
ルル「お、おぉ…ゆかな、お前は聞く側なのか?…あれ?ゆかな?」
〜
ゆかな「あなたもシスターだったのですね」
ナイア「同業者でしたか!では一緒に、教会を清掃して参りましょう!」
ゆかな「はい、よろしくお願いします!」
じゃんぬ「!?!?!?」←偶然通りかかった
「さぁ、どんな罪や悩みでもお兄さんが受け止めてやんよ。ガツンと来やがれ、今をときめく青春ボーイミーツガール共!」
特注の懺悔室…仕切りを加えられた一対一の対面ルームにて懺悔の追体験は行われる。我等がアダムスキー・レイドライバーが、榊原の教え子達に特別に罪の告解の機会を設けたのである。言いたいこと、言いにくい事、そういった類の胸に秘めたる煩悶を、神父は受け止め力になるのだ。無論、懺悔の内容は神父のみが知るものである。
「ゆかなの大切なお友達だ。3割増しで親身になっちゃうぜ!どっからでもかかってらっしゃい!」
普段から神父として絶大な信頼を誇るアダムスキーの3割増しとはもう結婚や姓名判断のレベルで親身である。悩みを懐く学生一行の悩みとは、果たして──
〜高橋エルの場合
「懺悔しますっ!!!!」
「声でけー!そんな選手宣誓のノリじゃなくてええんよ、ゆっくり落ち着いてゲロりなさい若人よ」
トップバッターはロボットこそ我が人生、我が運命な高橋エル。ロボキチバーサーカーな彼が、自らが抱える罪を告白しにやってきた。防音の懺悔室を引き裂くような大きい声で。アダムは優しく彼を諭し告白を促す。
「すみません!僕の罪はスーパーロボット大戦をプレイする際、どのロボットも好きすぎてまんべんなく強化してしまい資金がいつもカッツカツになってしまいついつい強化を後回しにしてしまう機体が出てきてしまうこと!出撃枠でついつい性能の高いロボットを選んでしまうことです!原作で助からなかったキャラクターを助けながらも使わない僕はどうすればいいでしょうか!?」
ゲームプレイスタイルで本気で悩むエル。人のプレイにどうこう言う筋合いは本来無いのだが、懺悔室に来たのなら、そういった類の迷いにも本気で応えるのが神父である。
「エル坊よ…そいつぁ資金やPPにカツカツな一周目でアレコレやっちまおうと思うからだぜ。スパロボってのはなぁ、一周目なんざチュートリアルでしかねぇんだ。いや、正確には改造レベルキャップが開放されるまではチュートリアル。3周目まではチュートリアルってわけだな」
「な、何ですって!?」
ちなみにスパロボを知らない人に補足しておくと、スパロボは平均50ステージでゲームクリア、稼いだ資金を引き継いで周回が出来る。2周目は半分、三週目は7割、4周目は全部、そして改造レベルのキャップが開放され、ボスクラスのユニットすら一撃で倒せる程自軍を強化できるのだ。
「オレはいつもそうやってるぜ。ケチケチやりくりすんなエル坊。愛はやりくりするもんじゃねぇ…どーんと振りまくもんだぜ!!」
「あ、アダムスキー神父!!ありがとうございますっ!一周目でなんとかしようとしていた僕が愚かでした!今度から!周回プレイでまんべんなく愛してみせます!!」
こうして悩みを取り払われたエルは足取り軽く懺悔室を出ていく。アダムスキー神父は満足げに頷き、見送る。
「最近の若い子は知るめぇよ。フィン・ファンネルだろうがイナズマキックだろうが踏み込みが足りんで切り払うエリート兵やニュータイプや聖戦士以外は人に非ずなウィンキー製スパロボをな…好きなロボットで遊ぶのが一番だぜ…」
〜上田アカネの場合
「私も罪を告白します。よろしいでしょうか…」
「よろしいですとも。吐くだけ吐いて元旦年明けパンツ交換した日のようにリラックスしちゃいなさい?」
次の迷える子羊は上田アカネ。内向的な怪獣大好き娘で、こういった施設を利用するのも本来なら憚るような内気な娘である。だが、皆がいるこのタイミングにて一念発起した訳である。
「私、私…怪獣が好きで、ついつい大きなビルとかを見たりすると頭の中で思いきり壊しちゃったり、町並みを吹き飛ばす怪獣を想像したりしちゃうんです…!」
「あー、解る解る、海とか割ってやってくるイメージとかやるよなー。オレも怪獣、大好きだぜ。好きな怪獣はピグモンな」
「マジですか今度一緒にウルトラマン見ましょう!で!でですよ?私はよりにも、よりにもよって夏草でそういう事をしてしまって…詳しくは言えないんですが、最近凄い郷土奉仕活動に勤しんだので…凄い罪悪感がするんですぅ!皆と一緒に夏草を護ったのにこれは裏切りに当たるんじゃないでしょうか!?頭の中で何回夏草が滅んだかわからないんですぅー!!」
【うんうん、ろくでなしだねぇ】
なんだかイケボな妖精がいたような気がするが、気を取り直してアダムは突っ伏すアカネに救いの言葉をもたらす。
「愛情は…止められねぇんだ。なんか最近は愛は世界を滅ぼすみてーな扱いになってるっぽいし、それに比べりゃ健全健全。寧ろ都市一つで済んでるだけ健全だ健全」
「愛こっわ!!」
「だからよ…次はドーンと、東京行ってみようぜ!怪獣王はいつも東京ぶっ壊してたからな!目指せゴジラ!目指せ怪獣キングだ!!どうしても我慢できないならミニチュア自作するとかどうよ。好きを形にしようぜ?」
「そ、その手があったかぁーー…!!」
悩める怪獣娘に道を示したアダムスキー。早速アカネはモデルに必要な材料を集めに向かって行ったという…
〜うたうちゃん
「私の誕生により、産まれることのできなかった数多の姉妹機、兄弟機がいます。そんな彼等に報いる事はあるのでしょうか」
「軽いジャブからとんでもねーヘビーブロー飛んできたな…」
電子の隣人、夏草のAIうたうちゃん。迷いを振り切ったと言え、それは全てを忘却したという事ではない。有り得ざる仲間達は、今も彼女の中にいるのだ。
「その手の話題、口にするにも勇気がいるもんだ。一応の踏ん切りは付いてるんだろ?」
生き方、起源、カルマに通ずるものは中々口に出せないものだ。例え懺悔であろうと、聞かれる事が憚れるものなのだ。それを口にできた事そのものが、答えのきっかけを掴んだ証。
「はい。ですが彼等の事を忘れた、というわけではありませんので、私はどう向き合うのかと…」
「そりゃあ君、決まっている。生まれてこれなかった奴等の分までうんと幸せになる。これしかねぇよ」
「生まれてこれなかったみんなの分まで…」
そう、神父は告げる。確かに生まれたもの、産まれることの出来なかった者の違いはある。だが…共通しているのは『産まれてきた者は皆祝福されている』という事である。
「悼むのはいい。だが、囚われちゃいけねぇ。サバイバーズ・ギルトって病気もそうだが、『誰かの為に、自分は何かをしなきゃいけない』ってのは良くない思考だからな。人生は、幸福は自由なんだ。お前さんは動いているのか、生きているのか?」
「私は、私達は生きています」
「なら、幸せは自分達の為に追い求めるこった。陰ながら、お前さんが幸せになる事と、幸せになれることを祈ってるぜ。迷ったらいつでも、ここに来な。なんだって受け止めてやるぜ?」
彼にとって、悩めるならば人間だろうとロボットだろうと怪獣だろうと怪物だろうと関係ない。彼が信じた普遍の愛、無償の愛とはそういうものだからだ。
「──人々のお悩みだけでなく、私の様な相手にも親身になってくださるのですね。最近まで私は、心というものが希薄で、こういった施設を利用する事もしなかったのですが…」
「そういやここに来たのも初めてか。どうだい、少しは力になれたかい?」
「はい。誰かにお話を聞いてもらうと言うのは…気持ちが、心が軽やかになるものなのですね。これからも、積極的に利用させていただきたいと思います」
それを聞き、アダムスキーは笑う。どうやら自分のようなろくでなし神父も、悩めるAIの道標にくらいはなれるようだ、と。
「それは何より。いつでもおいで。神より親身に、具体的に。それが、オレのモットーだからな」
…こうして、彼は一人一人に親身に悩みを聞き届け、帰る時間になるまで役割を全うし続けた。
──その姿は、彼が信じた、在ってほしいと信じた神の在り方である。彼は決して、彼の信仰を喪ってはいないのだ──。
アダムスキー「お疲れさん。今日の懺悔はオフレコだ、プライバシーはバッチリ護るからよ。明日は今日より幸せになれるといいな!」
榊原「ありがとうございます、アダムスキー神父じゃあ皆。日も落ちたし、皆帰りましょうか」
ゆかな「ありがとうございます、パパ。皆の為に時間を割いていただいて」
アダム「おう、気にすんな。お前さんは良かったのか?なんでも聞いてやるぜ?」
ゆかな「私は…いいんです」
アダム「うん?」
「皆と一緒にいられるだけで…ルルや、パパと話せるだけで幸せだから…」
アダム「フッ…そうか。オレと一緒だな。ならリッカちゃんがいる間、きちんと思い出作っておいで」
「うん。ありがとう、パパ…じゃなかった。感謝するぞ、お父さん」
物陰
ルル「……ゆかなを迎えに来てみれば…」
(お、俺はっ…とんでもないものを見てしまった…!!?)
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