人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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その頃 夏草市〜明皇教会〜

懺悔室


?【───主よ】

?「えっと…誰だっけ?やーいぇーさん?」

ニャル【赦せるものなら、私の罪を赦してみてください──】


今ここにいる光

「なんと!辺境極まるこの地球にこんな広大なショッピングステーションがあるとは驚きです!リッカちゃんの故郷とはいえ、極東の島国と馬鹿にしていた自分を恥じなくてはなりませんね!くー、貯めに貯めた遊びの資金と有給休暇はこういう時に使ってこそ!ですね!」

 

マイティモールにいるのは当然リッカ達だけではない。夏草市民も、もちろん楽園のメンバーだって個別行動で気ままに遊んでいるのである。この様に感激を顕にしているのは楽園所属宇宙刑事謎のヒロインXX。傍らにはマップを睨みつけている闇の狩人、ナイアも一緒である。二人は互いをバディと思っていたりそうでなかったりする関係な為だ。なんとなく、一緒になるのである。

 

「えぇと、ホームセンターにガンショップ、ピザ専門店は…と」

 

「相変わらず妙に血腥いですねー。不条理海産物の始末が生業となれば仕方ないのですが。御家族はどうなさったんです?」

 

「お父さんはお母さんと一緒に教会に行きました。【聖職者と後ろの神をドン引きさせる懺悔をしてやる。赦してみろよ】なるチャレンジ精神を発揮したようです」

 

「楽園で監視していないと一挙一足が嫌がらせと嘲笑に走りますねあの銀河愉快犯は…まぁ何かあったら私とナイアで始末するから構いませんね!」

 

「その為にも殺傷能力の高いアイテムは必要です。神秘は年代物や一点物が多いのでオーダーメイドが大半なので、やはり魔力を込めた消耗品で仕留めるほうが後腐れなくてよろしいので。あと、ロザリオを吊るすチェーンや家族写真を入れるペンダントも欲しいです」

 

「極端な品求めですねホント…それでは!楽園に楽しい思い出と物資を持ち帰ると致しましょう!セイバーを見つけたら私が!フォーリナーを見つけたら二人で!正気を失った輩は介錯をお願いしますね、ナイア!」

「お任せを。苦しませず安らかな眠りを…あ、お父さんのお土産は何にしましょうか…」

 

自由かつ余裕のあるOLと、光ある世界の新人狩人。二人が挑むモールライフ模様は、果たしてどんな様相を見せるのか──

 

 

〜食品コーナー

 

「おおぉ!これはかの有名な東京本店舗ラーメン屋松治郎メーカーのカップラーメン!ノンフライ麺とは格の違う麺のモチモチぶりとスープの香りがパッケージから漂ってきます!こちらは汁無しラーメン!?ラーメンなのに汁が無し!?攻めていますね…!」

 

カップラーメンコーナーにてテンション高く騒ぐOL、XX。楽園では最高品質の料理が無料食べ放題だからこそ、時にはこういう俗に染まった食品も恋しくなる…というのは、XXの持論である。

 

「お父さんはこういったものに否定的でした。【そんな毒物チャンポン食べるくらいなら、そのラーメンの手作りを食べさせてやるよ】と、美味しいご飯を手掛けてくれたものです」

 

「大事にされていますね、本当に。その優しさを知る存在は宇宙で数える程しかいないのがアレらしいというか。ややっ!新発売!この響きは反則ですよねー!」

 

テンション高くカップラーメンを吟味する姿を微笑ましく眺めていると、ふとナイアの耳に聞き覚えのある声が届く。聞き耳を立てると…

 

「美味しいわ…凄く美味しいわこのウィンナー。食べ放題で、お金も取らないだなんて本当にいいの…?」

「試食、だもの。試しに食べてもらって、買ってもらえたらそれでいいのよ」

 

(アビゲイルさんに、ラヴィニアさんですか。食品コーナーに来ていたのですね)

 

試食コーナーでウィンナーを頬張る二人。魔女コンビの二人の微笑ましさに頬を緩ませるナイア。すると──

 

「いっぱい食べたわね。さぁ、御礼としてウィンナーを買っていきましょう」

「お姉さん。無くなってしまったわ…ごめんなさい、全部食べてしまって…」

 

「いいのいいの。可愛い子にはサービスするし、観光者さんにはうんとサービスしてリピーターになってもらいたいものね?」

 

「えぇ、でもこれでは他の人が食べられないわ。沢山の人にこの美味しさを知ってもらいたい。このままではお客さんがウィンナーを食べられないわ」

 

「え?それは…確かに…そうだね…?」

 

「だから、ほら。追加のウィンナーを焼きましょう?きっと開いた分だけ、焼いたタコさんの分だけお客様が来てくれるわ。ほら、袋を開いて──」

 

「そう、ね。沢山の人に食べてもらいたいから…」

 

「そうそう、だから──あいた!?」

 

その時、アビゲイルの頭に衝撃が響く。無論、エイボンたるラヴィニアの小突きである。

 

「止めなさい。すみません、そちらも買い取りますので…」

「えっ?あ、はい!ありがとう!レジはあっちね!」

 

「どういうつもり?アビゲイル…あなた今、深淵へ誘ったわね?真面目に働いているお人よ?」

 

「だ、だって…もっと食べたくて、タダで食べられるなら沢山食べた方が…あいた!?」

 

「つべこべつべこべと言い訳ばかり。なぜごめんなさいと言えないの…!」

 

「ご、ごめんなさい…悪い子だったわ、ラヴィニア…」

 

「次にやったらエイボン暗黒天体をぶつけるわ、アビー。…自分の魔女を開き直るのは止めなさい」

「…はい…ありがとう、私の大切な友達…」

 

「…私が、ヨグ・ソトースウィンナーにしてあげるから。一緒に食べましょう?」

「!わぁい!大好きよ、ラヴィニア!」

 

(ふふ、仲睦まじいようで何より…)

 

「ナイア!ぼさっとしていないで手伝ってください!カゴに入れますよー!」

 

その後ナイアは、買い溜めしたカップラーメン段ボールを運搬する羽目になったという…決まり手は、保存性とコストだったとか。

 

 

〜アーミーショップ

 

「チェーンソー、電動ノコギリ。こう、肉を刳り進めるタイプの武器は重宝しますね。ダンテさんの持つ日本刀は憧れますが、如何せん扱いが難しそうで」

 

うって変わってナイアの目的は、闇に潜む輩を仕留めるための武器選び。清楚な女性に似つかわしくない血腥い機器の前で、顎に手を当て吟味する狩人たる美女は唸る。

 

「アーティファクトが心臓格納は中々に不便な気がしますね。ロンゴミニアドは振り放題、撃ち放題ですから!」

 

「魔具のサブウェポンとして、左手に持つにはやはりチェーンソーがいいかもしれません。首を落としても再生する肉塊は、やはり抉り進んで心臓を潰すのが一番です」

 

基本的に闇の眷属は不死身であり、必要なのは生きる意志を折ることなので可能な限りの苦痛と残酷さが求められる狩りのスタイルであるナイア。死ぬまで殺すスタイルに、現代工具は好印象なようだ。

 

「一番難儀した相手とか、覚えていますか?上位者は一旦置いておいて、ですよ?」

 

「そうですね…人の脳神経に寄生し、擬態するタイプの生物でしょうか。本体は小さいですが、文字通り人に乗り移るので始末に手間取りました」

 

淡々と彼女は告げる。闇を狩る生業に、華美や誉れは微塵も無かったと。

 

「憑依された者は死に、精神と肉体を乗っ取られます。それらが一度、大量に繁殖し村の全てを乗っ取って…」

 

「…どうしたんです?」

 

「殺しました。外界に出せば、奴等はそれだけ文化や文明を支配してしまう。根絶やしにする必要がありました。老若男女、何故殺されるかもわからないままに、私が身体を引き裂き、心臓や脳に寄生したゴミ虫をこの手で…」

 

父のリサーチにより、その種族は宇宙から根絶された。闇の生物に寄生された自覚のない村人を虐殺する指示を出せたのは、彼女の父であり。光あるものを手に掛けた外道を狩るのは彼女の生業。それだけの事。

 

「私が間に合った、助けられた事のある人間は片手で足ります。大抵は、介錯か、暴走の鎮圧。…いまここにいる私は、そうならない為に万全を期さねば」

 

「大丈夫です。あなたは今、わたしという頼もしいバディがいるのですから!」

 

「ありがとうございます。まるでアテにはしていませんがいないよりはマシですね」

 

にゃにおぅ!?激するXXに、今の彼女ならではの一言を添えて。

 

「──もちろん、冗談ですよ」

 

こうして商売道具調達を見せるほどのスキを晒せるパートナーを、柔らかな笑みでいなすナイアであった──




休憩コーナー

XX「買いましたねぇ!今回は大量、大量です!」

ナイア「楽園にはワープホールで送るようです。便利ですね」

XX「これで暫くは嗜好の品に困りませんね!夏草様々です!その土地ならでは、というのがミソです!」

ナイア「購入したのは醤油では?」

XX「そうじゃなく!…大丈夫ですよ、きっと」

ナイア「?」

「楽園では…トラウマは増えないと思います。きっと。だからあまり気負わず、勝ち組ライフを満喫です!いいですね?」

ナイア「…えぇ。頼りにしていますよ。XX」

任せてください!と胸を張るXX。彼女もまた、狩人の理解者の一人なのだ。

楊貴妃「ハオハオ〜♪熱い友情に熱い肉まんはいかがー?」
ヒロインXオルタ「明太子クレープ、中々にイケました。二人もどうですか?」

ヒロインXX「危険人物にえっちゃん!どこから湧きましたか!?」

ナイア「ふふ──いただきます!」

アビゲイル「皆さん!先ほどウィンナーを買ったの、いかが?」
ラヴィニア「自販機…凄いわね。欲しい物を一本だけ、お金をきちんと…凄くいい国だわ…」


周りに満ちる光。その光が狩人に笑顔を齎す。皆が護った、平穏の世界の中で──

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