人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(ごめん、無銘。君に謝らなくちゃいけないことがある)

「?」

(裸エプロンが文化と言うのは、嘘なんだ・・・ごめんよ、悪ふざけが過ぎた。これを・・・お詫びとして)


『キャスパリーグマフラー』

『服装セット』

(部員のみんなからのプレゼント、割烹着やメイド服。Yシャツ、ブレザー、スーツ、シスター服諸々。個人的なせめてものお詫びとして、毛を剃って作ったマフラーだよ。親しき仲にも礼儀あり。ボクはそれを忘れていた。・・・許してほしい、我が友よ)


「フォウ・・・」


オレの名は

「この霧、深いッ!!」

 

 

 

マスターの所感と、自分の感想は全く一緒だった

 

 

 

都たるロンドンは、深い深い霧に覆われ、一メートル先がやっと見渡せるような有り様であった

 

 

 

「なんだこの濃霧は。霧の都とは言うが限度があろう」

 

吐き捨てるように呟く器 

 

 

「おまけに魔力を感じ取れる。紛れもなく人体に有害な代物だ。現状を報告しろ、ロマン」

 

『わ、解ってるよ!おかしいな、確かにロンドンはその大量に排出された排気ガスとかなんとかで発生された霧が大変な問題になった事もあるけど、そんな人を直ちに殺すようなおぞましいものじゃない筈なんけど・・・』

 

『恐らく、聖杯か、宝具か。外的魔術要因で発生されたものでしょう。・・・サーヴァントのマシュやギルはともかく』

 

 

「人間には毒、か。だが――」

 

ちらり、と

 

 

「なーんにも見えないよ・・・」

 

 

ぼんやりと呟くマスターを見やる

 

 

「この通り、我等がマスターは意に介しておらぬようだが?」

 

 

「マリー所長、これは?」

 

――体質か何かか?にしても、余りにも効かなすぎている。不思議なほどに

 

 

『そうね。おそらくマシュ、貴女の影響を受けているのよ』

 

「私の?」

 

『正確には、君の中のサーヴァント、だけどね。余程穢れや災厄に強いサーヴァントだったんだろう。マスターとサーヴァントの契約パスを通じて、その守護の力が働いているんだ』

 

 

「ふむ、擬似的な耐毒スキルか。勇者程ではないが、便利なスキルを手に入れたな、マスター」

 

 

「うん!ありがとう、マシュ!」

 

深々とお辞儀をするリッカ

 

 

「そ、そんな。私ではなく、私の中の・・・」

 

 

「関係無いよ。マシュがいるってことが大事なの」

 

 

「・・・先輩」

 

 

「うむ。マスターとサーヴァントは一蓮托生。ただ盾を振るう以外にも守護のしようはある。早速学べたな、マシュ?」

 

「は、はい!」

 

 

――少なくとも、マスターが昏倒するなんて最悪な事態にならなくて助かった

 

そうなったらなったで対処は取るが・・・マスターもマシュも、無事であることが一番大事だ

 

 

「さて、では探索といくか。山も谷も崖もない。もしや最も容易い特異点やもしれぬな。ふははは」 

 

笑い声に若干艶がない。先程から、どうもイマイチノリが悪い器だった

 

――最悪、英雄姫となり、王の代わりに戦うことも考えなくては。姫とは言うが、傷つく事を恐れる箱入りになる気はない

 

 

『油断は禁物ですよ、ギル』

 

 

「む?」

 

ハキハキとした、快活な少女の声

 

 

『あぁ、けして油断は許されない。私達に敗北は許されないんだ』 

 

続く、揺るぎない自信に満ちた声

 

 

「なんだ。今回の水先案内は貴様らか?随分と手厚いものよ」

 

 

ヒロインX、そして、アーサー・ペンドラゴンの声が、ウィンドウと共にこちらに寄越される

 

 

『ご明察。形は違えど、そこはロンドン、ブリテンの地。アーサー、そして最高のセイバーたる私が最適なのです』

 

『僕も彼女も、直感のスキルを持つ。眼前に現れた相手を敵か、味方か見分ける事はできる。・・・どうかな、英雄王。バックアップをさせてもらえるかい?』

 

「構わぬ。我は気乗りせぬゆえ、割りとどうでもいい。マスター達の守護以外は程々に気を払ってやるさ」 

 

『むむ、たるんでいますよ、ギル。闇討ちをする卑劣な騎士がいないとも限りません。なるべく油断は控えなさい』 

 

「油断も慢心もしておらぬ。ただやる気がないだけだ。もう一周回って初手エアを抜くくらいにはやる気がない。つらい」

 

 

『ほ、本当だ!もしかして今まで一番やる気がないかもだこの王様!?』

 

「卵を抱えたゴキブリを守護せよと言われたようなものだ。せめて建造や景観を期待してみればこの始末。今の我に笑顔を期待するなよ」

 

『むぅ。ま、ギルもたまには小休止が必要と言うことですか。よろしい。ではこのブリテン直感コンビに任せておきなさい。的確で最適なナビゲートをお約束いたします』

 

「任せる。くぁ・・・では行くとするか、マスター、マシュ」

 

アクビを噛み殺しながら歩き出す器

 

「うん!よろしくね、アルトリア、アーサー」

 

『はい!いいですね、この気安い感じ!円卓にはなかった雰囲気です』

 

『そうだね。油断なく、しかし気負いせずいこうか』

 

「はい。では、この時代の探索を始めます」

 

「さて、何が待っているのやら・・・実を言うとインナーが湿って不快だ。無性に帰りたい」

 

――ファイトです、王よ。自分も精一杯頑張りますから

 

「――よし。気を入れるとするか。財の放ち甲斐のある相手と出会えればよいが」

 

 

 

 

少し歩みを進めても、あるのは霧、霧、霧・・・

 

 

道路をいく車はなく、道を歩く人はない。あるのは有害な霧とどんよりとした雰囲気のみ

 

閉塞感と静寂に満ちた、死の都のような有り様を見せるのみだ

 

「・・・・・・」

 

「ギ、ギル?」

 

「なんだ。空を行く竜や地を行く獅子でも見つけたか?」

 

『いるわけないでしょうそんなの』

 

『いや、ブリテンには沢山いた。僕・・・私達もしょっちゅう駆り出されたものさ』

 

「そんなに!?」

 

『はい。ブリテンは閉ざされ、神秘を残していた土地。その手の怪物はいくらでも。マッシュポテト食べて怪物斬って昼飯食べて怪物斬って夜寝る前に怪物斬ってました』

 

『斬った斬った。大きいのばかりだけど、蛮族にも悩まされたっけ』

 

『そうですそうです。FGOでチラ見せされたアレはなんだったんでしょうね?』

 

二人の騎士トークに花が咲く

 

 

「ブリテン怖すぎない?」

 

「はい・・・アーサー王が凄まじいのも納得です・・・」

 

「ウルクも負けてはおらぬがな。神の嫌がらせで世界が滅ぶなど日常茶飯事よ。まぁ三日あれば再建するがな」

 

 

『ウルク凄すぎない!?』

 

「あの駄女神め・・・特異点で見えたなら必ず仕留めてくれるわ」

 

 

――そんな他愛の無い会話は

 

 

「む、前方にサーヴァントの気配がするな、構えよ」

 

 

器の言葉で遮られる

 

『早いな!?』

 

「無いのはやる気だけと言った。サーヴァントとしての役目は果たしてやる。マシュ、マスター。迎え撃つか対話かは貴様らに任せるぞ。そろそろ我の教導など要らなくなる頃合いだ」

 

 

「そんなこと無いと思うけど・・とにかくマシュ、やろっか!」

 

「はい、先輩!」

 

 

『安心してください。敵か味方かはこちらが見抜きます』

『私達の直感は完璧なんだ!なんてね』

 

「此度は大人しいな、アルトリア」

 

『当然です。裏方に回っても優秀アッピルは欠かしません』

 

『来るぞ!』

 

霧の向こうから、姿を現す

 

 

 

「――おい。俺の質問に答えろ」

 

 

ハスキーな声。白銀と深紅の意匠の鎧

 

 

「無駄口は叩くな。俺の問いにだけ簡潔に答えろ。嫌なら死ね。今すぐ斬り殺す」

 

 

「斬り殺・・・」

 

 

「――ほう?」

 

顔のみを露出し、右手には白銀の剣を握る

 

 

金髪、その髪を後ろで束ねていて、碧い眼は獣の様にぎらついている。獰猛ながら気品を漂わせる不思議な剣士・・・

 

 

「我が名はモードレッド。てめぇらは敵か?味方か?どっちだ?」

 

 

放たれる、殺気と警戒。銀の切っ先が突きつけられる

 

 

「見ての通り、善良な一般市民だが?」

 

からかうかのように器が返す

 

「ほざけよ。そんな趣味のわりぃ格好した市民なんぞブリテンにいるか」

 

「ははは、こやつめ」

 

「怒らないの!?」

 

「一々狂犬に青筋を立てていられるか。大方、自らの都市の危機に駆けつけたはぐれだろうさ」

 

「・・・ほー。中々いい見識してんな、成金」

 

ガシャリ、と肩に剣をかける

 

「ま、対話に応じる、襲いかかってこない。・・・敵じゃないってのは確かか・・・」

 

 

「そうだよ!私達は」

 

 

『マスター、今そちらに参ります!』

 

タタタタと走る音が耳に入る

 

『待った――!!!』

 

『アーサーがスライディングした――!?そしてヒロインXを止めた――!?』

 

『あいったぁ!!何をするのですアーサー!!』

 

『君こそ何をしようとしていた!?いや、直感的に理解してしまってはいたけど!だから止めたんだけど!』

 

『決まっています!窓を片っ端から叩き割り、呼び掛けには中指で応えた憎たらしい不良息子を八つ裂きにしに行くに決まっているでしょう!』

 

『私怨はいけない!今は捨て置くんだ!マスター、英雄王!ここは僕に任せて対話を進めるんだ!モードレッドは円卓に連なる騎士!断じて悪には荷担しては・・・!』

 

『モードレッド!モードレッドです!!モードレッドでしょう貴方!!首とセイバークラス置いてけぇ!!』

 

 

「は、・・・は?父上?は?」

 

 

キョトンするモードレッド

 

 

――今だ!

 

「真理を語ってやろう。我等は狂い果てた歴史を正すために現れた大義ある軍団。アーサー王伝説にその名を輝かせる反逆の騎士よ、我等は貴様の敵ではない」

 

 

「お、おう。そうなのか?」

 

「我等はこの地に降り立ったばかり。右も左も解らぬ新参者だ。モードレッドよ、貴様の歪みながらも故郷に馳せ参じたその気概に問おう。我等と行動を共にし、土地勘を我等に貸してはくれぬか」

 

「お、おうおう!なんだ、そういうことか!早く言えよ!警戒しちまったじゃねぇか!そういうことなら、このアーサー王伝説に名を輝かせるモードレッドに任せとけ!アーサー王に名を輝かせる!モードレッドにな!」

 

 

「よし。肉壁と露払い、一挙に獲得したな」

 

 

――混乱しているうちに言質は取った。直感する。この騎士はまともに話したら絶対気難しい。交渉は一気に畳み掛けるに限る

 

 

「ギル・・・!」

 

「言ったであろう。やる気が無いのと仕事の出来は別の話だとな。そら、後は貴様の仕事だぞ」

 

 

「うん!はじめまして!私は藤丸リッカ!マスターやってます!よろしくお願いします!モードレッドさん!」

 

「おうっ!元気がいいやつは嫌いじゃないぜ!気に入った!お前ら纏めて面倒見てやる!俺の事はモードレッドでいいぜ!」

 

 

「マシュ・キリエライトです。よろしくお願いいたします」

 

「おう、盾ヤロウ!で、そっちの成金は?」

 

「口の減らぬ騎士よな。我はギルガメッシュ。レアクラス、ゴージャスのクラスを持つ、アンニュイな英雄王よ」

 

 

「レアッ、クラス・・・!?なんだそれカッケェ!俺もあるか!?レアクラス!?」

 

「知るか」

 

「何がいいかな、レッドサンダー?クラレント?まぁなんでもいいか!俺もレアクラスだ!」

 

 

『ギル!正気ですか!?そんな反抗息子を迎え入れるなど!?』

 

「貴様の私情は捨て置け。円卓の騎士が敵に回ると面倒だ。味方に引き入れられるならそれに限る」

 

『そうだ。それでいいんだ!アルトリア、ステイ!ステイ!』

 

『ぐ、ぬぬ・・・ま、まぁ・・・後ろからバッサリ行くチャンスが出来たと考えれば・・・』

 

「私には解る!その兜!変形するよね!カッコいい!」

 

「解るか!?そうなんだよ!見とけよ見とけよ!――そら!」

 

ガシャリ、と兜を纏う

 

「カッコいい――!!」

 

「だろ!?だろ!?よぉし!テメェら!このモードレッド様についてきやがれ!!」

 

 

「解りやすい猪武者よ。・・・マスター、マシュ」

 

「?」

「はい?」

 

(我の見立てでは、ヤツは女だ。しかしけして口にするな。面倒だ)

 

(・・・解りました)

(はいっ)

 

 

「おーい、何してんだ?はやく行くぜー!隠れ家行くぜー!」

 

 

「はーい!」

「はい!」

 

 

『・・・ギル、貴方はアレを頼りにしないでくださいね』

 

「?何か不都合があるのか?」

 

『・・・別に。反抗息子なんかより、セイバーの中のセイバーがいるんですから』

 

「解った解った。そら、行くぞ」

 

『・・・良かった』

 

 

 

モードレッドが なかまになった!

 

 

 

 

 




「ううん、構わないよ」


(え?)

「友達だもの。嘘や軽口の一つや二つどうってことは無いでしょ?自分は気にしない。それくらい、さらりと流せず何が友達って事」

(・・・許してくれるかい?)

「許すなんて上からじゃないよ。君の『教えた』事は嘘でも、『教えてくれようとした』気遣いと想いは本当でしょう?」

(・・・!)

「マフラーや服。大事にするね。いつもいろんな事を教えてくれて、ありがとう。フォウ」

「部員の諸先輩方も、本当にいつも、ありがとうございます。頂いた衣服、宝物にします。どうか、ずっとずっと。見守っていてくださいね。」

(・・・・・・)

「・・・フォウ?」

(――嗚呼、本当に・・・ボクは美しい友を得た――)

「フォウ――!?」

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