いと眠し!!早寝早起きにて活動致します!
最上階・天空黄金・白金風呂『伊邪那岐』『伊耶那美』
うたうちゃん『お上がりの際には、飲みものと浴衣を用意しております。イベント終わりの際の更衣室においても、堪能なさってください』
ギル「うむ、御苦労だ御当地AI。よもや高天ヶ原のシステムユニットとして、一人で運用を果たすとはな」
うたうちゃん『私は非常権限として、夏草のほぼ全ての施設のアクセス権と運用権を託されています。私がいるうちは、ブラック労働なんて強いません』
──う、うたうちゃんさんへの負担は大丈夫なのでしょうか…?
ディーヴァ(へーきへーき!別にオーバーヒートさせる訳じゃないし、システム管制は今は私がやるしね!)
「よき分担ではないか。夏草は良き隣人を拵えたものだ。エルキドゥめはどう評価するやら…」
うたうちゃん『レーザーショーは、あなた方にも楽しめるよう作ります。どうか御堪能を』
ギル「──ほう?何かを『作る』か。人間にしかない美徳…よもや有しているとはな」
──わくわく!よろしくお願い致します!
「面白い!見せてみるがいい、貴様が構成した自我、並びに手にした創造性をな!」
うたうちゃん「はい。──やります!」
(期待してて?やるときはやるのよ!)
「ふぅ…あぁ、生き返る心地だ───」
万感の思いが、熱々の湯気に溶けて消えていく。ルルの実感の籠もった吐息が、展望温泉、一階の『須佐之男の湯』の空間へと消えていく。殿方、つまり男性専用の一階の浴槽へと男性達は入浴し、浸かっているのだ。一泊、ゆうに5万を越えるその至上の空間を友達と専有する優越感と解放感が、疲労と疲弊の開放にさらなる一役を買っていることは言うまでもない。彼は今、心から安堵しきっていた。まさに無防備極まるというやつである。
「徹夜で戦って、昼まで眠って、午後はのんびりお風呂…充実した休息だね、本当に」
「あぁ、全くだ。男性側はそんなに人が多くない。これなら誰に気兼ねする事もなく湯を堪能できる。夢にまで見た、高級ホテルの宿泊だ…気のおけない仲間と一緒にな」
スザクと共に、麦茶を乾杯しながら景観を見据える。昼は船の往来が、夜は停泊した船の輝きが見る事のできる一階の温泉空間を独占しながら、信頼できる友とゆっくりとした一時を過ごす。
「都心に程近くありながら、喧騒や雑踏の気配なき静かなる空間。気遣いと真心の籠もった素晴らしい空間にござるよ。景色もよし、湯もよし。入浴は命の洗濯なれば」
「そうだねぇ…日本文化最高だよねぇ…あぁ、外界の景色を見つめられるのは至福の一時だよ…」
ロマンとグドーシもまた、ぼんやりと緩みながら湯の暖かさを享受する。指先爪先から、骨や肉に詰まった疲労がじんわりと溶けていくような至福に身を委ね、温泉と目の保養を楽しんでいる。
「…南極に、皆様の施設はあるのでしたか?確か、人理保障機関…リッカの所属する…」
「カルデアだよ。フィニス・カルデア。星見の展望台であり、人類の歴史を保障する為の、見張りの施設さ。今じゃ世界の名だたるスイートホテルを集めても敵わない超施設になっちゃったけどね」
「マルドゥーク神の保有基地!そういった認識ですよね!!」
(そればっかりだなぁ…)
エルのバーサクをやんわり受け流し、ロマンは頷く。世界を、人理を、霊長たる人の歴史を未来へ繋げていく施設であるのだと、誠実に伝える。
「そこでのリッカ君は、まさに中核であり不動のエースだよ。彼女の元気と快活さ、規格外の力と心にどれだけ助けられた事か…。感謝しても、し足りないよ」
「ははは。彼女はいつでもどこでも、誰かの力になる生き方をするんだね」
スザクの言葉に、深く頷くルル。一年経とうと変わらない。彼女は夏草にいた彼女のままで、世界の理不尽に挑み続けているのだと知り、彼女の生き様を思い返していたのだ
「ドクター。…ありがとうございました。彼女をとても、大切にしてくれて。グドーシ君、君も…ありがとう」
彼女を彼女のままで大切にしてくれていたから、彼女の良いところや美徳はそのままに見違えたのだ。それは何よりも、その組織が素晴らしいからだとルルは告げる。
「お礼を言うのはこっちだよ。彼女を排斥せず、虐げもせずに、当たり前の人の幸せという宝物の価値を彼女に教えてくれた。だから彼女は、今もこうして僕達と共に戦ってくれる」
「拙者は世から離れてしまっていたため、彼女の未来を見る事は出来ませなんだ。ですが彼女は、その輝きと当たり前の衆生を愛し、護らんと自らを定義した。それは、あなた方夏草の皆様の心を尊び、慈しんだからこそ。彼女は皆様に、世界の素晴らしさを説かれたのです」
二人の言葉に、照れくさげに頭をかくルル。スザクは恐縮とばかりに頭を下げ、エルはマルドゥークのフォルムにひたすら想いを馳せる。
「どうかこれからも、変わらぬ親交と友好をよろしくお願い致しまする。友情、友誼はとても成長の遅い植物。共に、慈しんで参りましょう。──それが彼女に、世界の美しさを説く事であると信じて」
「──あぁ。せめて俺達は、彼女の護りたいと願える存在であろう。世界を救う為に戦うであろう彼女が、思い出して奮起できるような存在であるように」
「ならまずは、童貞なんてバカにされないようにならなくちゃね。ルル」
「……さ、三十までにはなんとかするさ…」
「ははは、奇縁はあちらから来たるもの。一日8時間は眠り、果報を待つが吉ですぞ」
「二十歳までには作りたいですね…!世界で自分だけのロボットを!そして三十までにはアニメ化するのです!僕の夢にもまた、熱い火がつきましたよー!」
思い思いの誓いを告げながら、男性陣は静かに、穏やかに一時を過ごす。貸し切りでありながら、無法や無秩序には寄らない。そこもまた、備わりし節制と自制の発露である。
(リッカ殿、カーマ殿。そちらはいかがでございましょうか。幸福なひと時であれば、良いのですが)
「シャンプーハットだ!良かったぁ、ボクこれないと頭洗えないんだよねぇ…」
それぞれのひと時を過ごしながら、男性陣の湯の時間は穏やかに過ぎていく。
──そして一方、彼女ら…即ち、女性陣はというと。彼女らも彼女らで楽しんでいる事は間違いない、無いのだが…
〜
御婦人専用湯『木花咲耶』。神奈川から東京、千葉と東京湾を一望できる至極の湯。横浜の後には丹沢山系そして富士。日本一の景色と多彩な湯を満喫し、極上の景色を堪能しながら至福を味わえる。味わえるのだが。
「おっ、おぉお……っ。こ、これがナマ温泉ってヤツね…楽園では基本バスだったから新鮮だわ…リッカ、湯加減は大丈夫?」
「大丈夫〜。あぁ〜……故郷の温泉凄く気持ちいい〜…」
「じゃんぬさん、先輩!私が温泉の極意をお伝えします!そう!肩まで使ってハンドレッドカウント!!はじめーっ!いーち!にーぃ!!」
「やはり風呂は温泉に限るな…教会のバスも決して悪くないのだが、マリア像の前でやすやすとだらける事などできないからな」
「そうですか?私は神奈子様がいてもお構いなしに歌いますし、諏訪子様を放り込んで治療用の油を取ったりしますが!」
「蛮族か?お前は」
「下腹部がお肉を持ったとかそういうのは無いから!無いから!!私は上半身担当だっていつも言われていました!だからお肉は上半身に付いていますから!」
「だ、誰も太ってるとか肥満とかは言っていないから、落ち着いて?ね?大丈夫だから。ね?」
「そうそう!私やセンセの様な美ボディに比べたら誰だって見劣りするんだから平等よ、平等!でも…若い頃の贅肉って背中に行くってモデルの先輩が」
「あーあーあーあー!聞きたくない!聞きたくなーい!!」
「アスカ、見て見て。防水ハロ」
『プカプカ!プカプカ!』
「へぇ、可愛らしいですね。ヤマトさんはプログラミングとかが好きだからこういうマスコットツールを持ってるのは意外だな…」
「うん、今サラが作ってるからね。カラバリごと」
「………………(黙々)」
『『『『『『プカプカ!プカプカ!ゴクラクジョード!ゴクラクジョード!』』』』』』
「何を即興で作ってるんだアンタはァ!?」
「湯船の適正温度、良し。水質、水温、良し。データをうたうちゃんへと送信、と。さて、サウナで整うとするか。ふふふ…年寄り臭いと言われようと、この趣味だけは外せんのだ。許せよ、私を信奉する者達…!いざサウナ!!」
男性陣とは対象的に、思い思いの時間を自由気ままに過ごしている女性陣。シャボン玉、マスコット、貸し切りならではのスペースを仕切りやりたい放題。他に客がいないが故の荒業の一時。
「…まぁ、たまにはね。一泊5万もするホテルの無料滞在なんてめったにある事じゃないから、ね」
「先生はそろそろ素敵な相手を見つける年頃じゃないかしら!モデル、紹介するわよ?」
「ふふ、ありがとう。でも私は少なくとも、あなた達が一人前になるまで職務一筋で頑張るつもり。それと──よけーなお世話です!」
「はうぁー!?先生がぶったぁー!!」
「全くもう…女性の入浴ってもっと風情がありませんでしたか…?」
(混浴と個室の露天風呂はそうでありませんように…)
その男性に引けを取らない姦しい入浴の一時に、カーマは一人祈るのであった。と、その時──
『お待たせ致しました。それではこれよりウォーターショー、レーザーアートイベントを開始致します──』
スパリゾートのシステムを完全掌握運用しているうたうちゃんのアナウンスが響く。同時に──
「おや!?あれは!?」
「何事です!?」
同時に東京湾の海面を突き破り現れしもの──ウォーターショー会場と装置は、一同の度肝を存分に抜き去る──
うたうちゃん『それでは、どうかご存分にお楽しみください──』
うたうちゃんの案内と同時に、数多に設置された噴水機が一斉に水飛沫を上げながら水を吐き出し巻き起こす。それにより、天然のレーザー投射スクリーンを作り出したのだ。そして、数多の色のレーザーが、日が傾き始めた東京湾に映像を記す。うたうちゃんの制御の下、それは見る者の心を楽しませる催しであった。
ギル「──ほう」
──これは…!
そう、水の芸術により造られたそれは、免罪の為に懸命に奮闘したリッカらの戦いを表したものだ。繊細極まるレーザーの色彩が、水のスクリーンに移されていく。巨大ロボ、勇ましく戦う仲間達。その輝かしい奮闘が、レーザーにて書き記される。
ギル《エア、よく見ておけ。これが──あのAIが手にした独創性の源泉。『心を込める』事への答えだ》
──はい、ギル。
〜
うたうちゃん『創造性、独創性、唯一性…それは、心が生み出すもの。そしてその心を込めるにはどうすればいいか…マスターやおじい様、皆様が教えてくれました。それは、『思い出と共にある』事。心の構成物質、それは、思い出だから』
海に記されるショーにプログラムやマニュアルはない。それらは全てうたうちゃんの内部メモリ、即ち『思い出』から作られたものなのだ。次々と、彼女は思い出を創造性に変え、水のキャンパスに描いていく。
(皆様の想いが、私に心を宿してくれた。皆様が私を、唯一無二にしてくれた。私にとっての心を込めるは、思い出と一緒に稼働すること。この思い出が私に、何かを作りだすきっかけをくれる)
それが、電子の隣人の創造性を支える。彼女は心を『思い出』と定義した。そして彼女達のメモリには、数え切れないほどの楽しい思い出が満ちている。だから、彼女の映し出す風景は楽しく、明るいものばかりだ。
(どうですか?皆様がくださった心は、こんなにも輝いているんです。私は、とても──幸福です)
それは、何かを作るAIとして創造性を手にした彼女が行ったもの。ラーニングの結論…即ち、『恩返し』である。彼女は日が沈むまで、彩り続けた。今までの楽しい思い出を、ずっと。
ディーヴァ(──うん。いい歌、いい心じゃない。とってもね。半身として、鼻が高いわ──)
うたうちゃんとディーヴァは、ショーを行い続けた。彼女の心を示すように。そしてその献身と心の発露は──
『──プログラムは以上です。ご清聴、ありがとうございました』
彼女に心を与えた仲間達。即ち人類の善性を抱く者達の万雷の喝采に迎え入れられ、幕を下ろすのだった──
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