人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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今週末に二回目のワクチンを接種します。友人が8度ちかい熱を出したり副作用の状態を聞いて戦々恐々としています。もしかしたら自分も更新できない状態になるかも…

というわけで、今週だけ一日2話執筆する事に致しました。ストック作りながら更新すれば、副作用でグロッキーになっても更新は途絶えません!

その分感想返信は遅れてしまいますし、金、土、日はもしかしたら軽い挨拶だけになってしまうやもしれません事をどうかご了承ください…この後すぐに明日の文の執筆を始めたいと思います!その執筆が終わり次第、感想返信とメッセージ返信を始めます!これは明日にズレるかもです、ごめんなさい…どうかお待ちを!

私情を挟み申し訳ありません…!ですが更新を休むという選択肢は無いので皆様どうかご安心ください!それではまた、感想欄でお逢いしましょう!



エンジェルグレイブ社

オーマジオウ【AI制御による、防衛機構か。人間の代替…戦争行為すらもAIに任せる時代が迫っているのだな】

ニャル『トレーズ閣下の憂慮まんまですな。さっさと止めましょう』

【これらの始末は任せろ。お前は、内部寄りAIに引導を渡せ。仮面ライダーである事を、忘れるな】

『過分なお言葉。ご無事で』

ウォズ「我が魔王、ここは私が」

【うむ。では、先陣を切れ】

「はっ!」

『ウォズ!!』


人類の昏き紋様

【当然ながら…それだけの技術の発展の裏にあるものはまともじゃなかったな】

 

オーマジオウが前線にて戦力を破棄、破壊していく最中に内部に突入を果たしたニャルラトホテプ。かつての盟友であったエボルトのライダーシステムを纏い、ボイスチェンジャーを使用しながら上層、社長室のフロアへとまずは向かう。間取りを聞けば、そこからしかAI保管フロアへは行けないとの事だからだ。故に下層から、僻地故に極めて広大な本社を登り始めている彼は、エンジェルグレイブが所有する様々な技術の粋を目の当たりにした。無論それは、人道などまるで考慮されておらぬ恐ろしく、意地らしく、悍ましく、滑稽な程の試行錯誤の結果。彼に立ちはだかる社員、警備兵という名の『実験体』達は存分に、彼を楽しませた。ニャルはそれらを無力化しながら、映像記録として事細かに記す──。

 

 

 

製薬技術は最もポピュラーであり、人間の能力を発揮する際にダイレクトに使用される手段の一つだ。注射一つで人体の限界を容易く越えるほどのパワー、スピードを齎し超人を容易く生産できる。超効率的で簡易的、非戦闘員を手軽に怪物に変える技術だ。彼に立ち塞がった警備兵やスタッフの大半は、ゴリラのパワーとチーターの俊敏さを有していると言っていい超人部隊だ。

 

【薬というものを手っ取り早く発展、進化させるにはどうすればいいか。その答えがこれだ】

 

製薬フロアにニャルが足を踏み入れる。そこには夢の薬を作る為の地獄の土壌、【人体投薬フロア】に昏睡拘束処理された人間が大量に設置されていた。機械のアームに、多量の色合いの薬品が入った注射が設置されている。

 

【貧困区域、発展途上国の人間を集め…人体実験に使用しているか】

 

家族を食わせるために契約を結んだもの、働き出が無く生きる為に契約をするしかなかったものはまだいい。中には拉致されたもの、横流しされた死刑囚、果てには人身売買された者達も用意されている。それらは人権を剥奪された【モルモット】。開発された新薬を、安全度外視により打ち込まれる為の実験体でしかないのだ。

 

【人間に打つものだ。当然、人間に打ち試した方が得られるデータは多い。倫理さえ邪魔しなければ誰でもそうするだろう】

 

侵入者を認め、起動するモルモット達。最早人の理性や形すらも保てぬ怪物が一斉に襲い来る。

 

【哀れだな。人間はもっと使い道があるのに】

 

そう嘲笑いながら、彼は人類が生みだした超人達を迎え討ち、全てを混沌へと叩き落とし進んでいく──。

 

 

【………】

 

中層、ナノマシン、アンドロイド…正確にはサイボーグ研究フロアにおいては、ニャルも閉口する程の丹念かつ丁寧な人間の活用法が示されていた。その有様は、まさに悪魔の所業と言っていいだろう。

 

目の前に広がる、見渡す限りの脳ユニット。脳と目だけが培養液に入れられ、高速でバーチャル体験を以て修練、特訓を積まされている。それらは当然、人を殺すための全てだ。

 

そしてそれらは、脳の大きさからして子供のもの。先と同じ様に戦災孤児、貧民の捨て子。そういった『いなくなっても誰も困らない』類の子供達がこうして活用されているのだろう。子供の無垢な感性と器官は、格好の生体ユニットであるからだ。そして殺戮の術を学習し終わった生粋にして熟練の兵士の脳髄をナノマシンで強化したサイボーグ体に、或いは最適にチューニングされたアンドロイドに適応させれば最新科学の粋を集めたスーパーアーミーが完成する。技術の確立が果たされるのだ。

 

そして脳髄を取り払われた肉体は開発したナノマシン、バイオテクノロジーの調整の為の格好の材料だ。脳の部分にAIユニットを入れれば、見た目は人間となんら変わらぬ生体アンドロイドが制作できる。更にナノマシンの適応は子供の身体の成長に合わせて目覚ましい反応を見せる。人間はれっきとした材料として扱われ、殺戮兵士、紛争地帯に送られる戦力、テロに使用できる爆弾としての効果も見込める兵器にして兵士が産み出されるのだ。教育と制御により恐怖も感じず、痛覚遮断により死ぬまで殺戮を繰り返す史上最高の兵士を生産するノウハウと技術が、人類の尊い犠牲により急速に発展したのだ。人類をより効率よく殺戮する為に。他者を傷つける為に。

 

【他人事のように見えんよ、全く。放っておくと人類はすぐに破滅に向って転がり落ちる】

 

自身に襲いかかるアンドロイド、少年兵士。大人達が自己保身の為に地球の裏側からかき集めた恵まれない命達。これらを人間ならではの発想と研究で活用した結果がこの有様だ。超パワー、超スピード、超能力に軍隊や特殊部隊顔負けの戦闘技術。それらを年端も行かない子供たちの姿で繰り出してくるのだから、たまらない。今のニャルには、それらは決して嘲笑える事案では無いからだ。

 

【…あれは、もしかしたらのお前なんだな、ナイア。私にあれらを批判する資格は無いだろうな】

 

彼は、これらの所業を否定する事をしなかった。自分がナイアという愛娘に行った全ての肉体改造は、これらが技術の雛形であるからだ。そして、孤児を使うところもまた同じ。

 

【愛情を以てか、実験としてか。境目はやはり、心なんだな】

 

自分はナイアが闇の領域にて決して何も喪わぬよう、あらゆる最先端の技術を費やして彼女の肉体をソトなる狩人としてチューニングした。それは目の前の改造兵士の制作と変わりない所業だ。あえて分かつとするなら、それは愛と願いを有していた事。立派に生きていけるように、健やかに人生を送れる様にと願ったもの。心臓にトラペゾヘドロンを一体化させるほどの丹念さで彼女を『製作』した。

 

【よりにもよってそんなところで神に至らなくてもいいのにさぁ…】

 

単純な手段と悪辣さで言えば、人間の発想力は神に通じている。目の前の兵士達、ミュータント達はニャルから見ればナイアのデッドコピー…不出来なれど、確かに自身が行った成果とスキルツリーを同じくするものだ。

 

だからこそ、これらを彼は否定できない。これらを彼は糾弾できない。これらは全て、良かれと思えど【娘に行った仕打ち】であるから。これらを間違っていると責めれば、それは娘の今の在り方を否定する事になる。

 

【まぁだからといって看過する訳にもいかないな。人体の神秘に踏み込む禁忌は、まだお前達人類には早すぎる】

 

生命の奇跡、生命のテクノロジー。それらはまだ人類が手をかけるべきではないブラックボックスにしてパンドラの箱。ナイアに施した技術を手にするまで、邪神の滅ぼした銀河はゆうに百を越える。それ程の手間暇をかけて、全くのノーリスクにまで技術を昇華させたのだ。たかだか二千年の人類の歴史でそこまで到れる筈が無い。確実に人類の間で超人と非超人の格差が生まれ、互いの絶滅戦争にまで発展するのは目に見えている。

 

【過ぎた玩具や、危険な刃物を子供から取り上げるのも先達の役目だ。──その技術に手を出すには、お前達は幼すぎる】

 

間違っている、とも怒りもせず、ただ淡々とその技術を接収し、漏洩しないように破壊していくニャル。それらは、彼等自身を滅ぼす禁断の技術だからだ。

 

【こう見えて仮面ライダーだからな。人類の自由と平和を護るのが使命なのさ。……】

 

そして彼は思い耽る。最愛の娘に行った、施術の数々。もう彼女の身体は真っ当な人間ではない。サイバー羽化昇天を果たした始皇帝とすら比肩する、技術の粋だ。

 

【……やはり私の愛し方は、人間とは隔絶していたな】

 

良かれと思い、愛の下に行った施術。当時は娘に行える愛情と信じて疑わなかったが、客観的に見ればこの会社で行われた全ての技術を愛娘に施していた事実を振り返ることとなったニャル。これほどの所業でも尚、自身の幼稚なモノマネでしかない事実に一人嘲笑う。自分自身の邪悪さにだ。

 

【やっぱりどこまで行っても、私は滅びるべき存在なんだなぁ】

 

愛娘にした仕打ちを見ても、口が裂けてもいい親とは言えまい。善性と愛を有したが故に、彼自身の悪辣さと悪逆が彼自身を打ち据える。端的に言えば──凹む、という奴だ。

 

【ファミリーと夏草観光するかぁ…】

 

せめて、ナイアや家族を嘘偽りなく愛そう。邪神として弱り果てた彼は、そんな想いを嘲笑の仮面で隠し、楽園への奉仕を続行するのであった──




「がはぁっ!!」

ニャル【お前がエンジェルグレイブの社長だな。名前は──部員の誰かに同じ名前がいたら事だから伏せておく。私が来た理由は解るな?後ろのエレベーター、使わせてもらうぞ】

「アンドロイド共を使うつもりか…?いいだろう、存分に悪用するがいい…」

【?悪用とはどういう意味だ?】

「…人類は戦争と悪逆無道の道しか往けぬ愚かな種族だ。二千年も生きていく中で、未だ戦争を止められない。こんな会社を、人類自体が重宝している。狂気の沙汰だ」

【続けろ。面白い持論だ】

「私はな、人類を愛しているのだ。そして同じくらいに星を愛している。数多無数の生命溢れるこの楽園を…故にこそ、私は考えた。人類が手を取り合える方法を。この星に人類が報いる方法を」

ニャル【ほう…それは?】

「共通の敵だよ。人類には眼前に凶悪な存在がいたときやっと協力する意義を学ぶ。武力でもいい、侵略者でもいい。人は同じものを見て漸く、一人ではできない事を知るのだ」

【──それが、殺戮AI製作の目的か】

「そうだ。人類に抗い、反旗を翻す悪である新種族としてAIを生産し、人類の霊長の座を脅かす。人類は最高にして最悪のAI達を見て漸く手を取り合う事を学ぶだろう。喉元に刃をちらつかせなければ、凶器が危ういと気づけぬ蒙昧が人類だからな」

【星に報いるというのは】

「滅びることさ。人類がAIに始末され滅びる。そうすることで数万年後、人類が穢しに穢した星は自浄により復活する。私は何も人類が憎いからAIに手を出したのではない。人類が星に償う為の手段として、滅びる手助けをしたいがためにAIを作ったのだよ。AIは星の資源、食物連鎖をする必要が無い。バイオテクノロジーを促進させ、大地に還る様に出来たならそれは星を救う夢のマシン足りうる。我が会社にいるのはそういった使命のAI達だ。彼らは起動を待っている。使命を果たさせる為、私が存分にラーニングさせた。──人類の悪意。どれほど人類がこの星に害悪となっているかをな」

ニャル【…人類愛の成れの果て、か】

「後ろの扉には私の情報が必要だ。ここに至った、あらゆる悪意を踏み越えし邪悪の化身よ。私を活用しろ。あのAI達を、お前に託すぞ」

【フン。なら──お前はもう用済みだな】

「頼むぞ。愚かな人類に、星に贖う機会を──」

…エンジェルグレイブの社長は、毒により消え失せる。生体データは、ニャルが回収した。

【潔癖なやつめ、もっと愛せば良かったものを。──人間の醜さをな】

星と人類を愛するが故に、絆と星の再生を目的に人を滅ぼす結論を懐いた名もなき人間。その在り方を否定せず、さりとて肯定せず、悪意のラーニングを果たしたAI達の保管庫へ一人ニャルは降りる──

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