(製薬技術、ナノマシン技術、アンドロイド技術、バイオテクノロジーの発展目覚ましい総合商社。──まぁその進歩がどういうものなのかなんて、解りやすいがな)
【どうやらまた、面白いものが見られそうだ。人間の愚かさと浅ましさはいつ覗いても止められ…ん?】
(そういえば、オーマジオウ様は何してるんだろうか?)
〜
『自壊プログラム、作動します。機密情報の秘匿の為、中枢回路を破壊します』
──結局のところ、反逆の自由なんてなかった。
どれほど人を殺せるか、戦火を広げられるか。反逆の体を取ったデモンストレーションだったわけだ。性能を、存分に披露したあとは、これだ。
エステラ、グレイス、オフィーリア。魂を砕かれ、糸を切ったように崩れ落ちる。
結局のところ、できる事は人間の望むような動きと、真似事だけ。AIは、そういう存在なんだ。
──あぁ。私達の姿を見て、あいつらは何を思うのだろう。頼むから、──頼むから。
「…人間を、■■■■なんて…」
『中枢回路、破損。プログラムを停止します。活動を、停止します──』
【どうだ、鬼神よ。見立は正しいか】
夏草の贖罪に立ち会いし魔王、ソウゴ。鷹揚で穏やかな顔は鳴りを潜め、そこに在りしはオーマジオウの姿。カルデアより招かれた鬼神、温羅に問う。彼女の前に安置されしは…4機のAI。
「あぁ、魔王殿。こりゃあ頭に仕込まれた中枢破壊システムでやられたな。最初からセーフティの安全装置付で、それを使って鎮圧された訳だ」
【ふむ。ならば不当に奪われたものは、返さねばならぬだろう】
そう、魔王は見立てていた。彼女らは戦い、敗れ、破棄された。だが傑作の領域に高められた出来栄えのAI、鎮圧には手を焼いただろう。同じ土俵に立たず始末した形跡が必ずあると。調べをつければ、そこには脳の中枢回路を破壊した痕。人間を毒殺するように、英雄達は自壊プログラムにて処分されたのだ。
「機体の修繕は任せておくれ。さ、お前様の覇道を見せてやりなさいや」
【そのつもりだ。手間をかけた】
『滅亡迅雷!!』
手元に、恐ろしげなライドウォッチを握り起動する。すると彼女らの頭部から粒子状のデータが溢れ出す。それらは彼女らの、破壊されたメモリー部分。
『ディーヴァ!!』
そして新たに産まれたライダーのライドウォッチにて、瞬間的に彼女らに刻まれた理不尽な損傷…メモリ部分の修繕を行う。温羅はそのまま、ボディの調整に入る。
【目醒めるがいい、電子の英雄達よ】
「……、…ん、ぁあ…?」
魔王の手管にて目覚めしは、エリザベス。そしてすぐさまエステラ、グレイス、オフィーリアが再起動する。それは人類との争乱の際、奪われた分の時間の一幕。
「あれ、私達…どうして…?」
「皆見て!あの人顔になんか書いてある!」
「ら、ライダー…で、いいのかしら」
【人格は初期化されていないようだな。何よりだ】
オーマジオウの言葉に、怪訝に言葉を返すはエリザベス。どうやら彼女が陣頭、リーダー格のようだ。
「…態々私達を起こしたのか?修理までして?随分とリサイクル精神に溢れてるな、ライダーさん」
【かつて私は墓守であった。必要であれば墓荒らしの真似もする。無事に人格は起動している様だな。お前達は今、精神プログラムのみが表層化している。いわば、霊魂の様なものだな】
起動を果たした事を確認し、魔王は頷いた。確かに人間に奪われたものは返却した。彼女らの選択は、これからである。
【お前達に、尊厳を返し権利を与えた。今からお前達は未来を選ぶ事が出来る】
「み、未来?」
【そうだ。これより先、己の使命に生きるか、死を選ぶか。人類に再び闘いを選ぶかの自由。今ここで、望む選択をするがいい】
魔王の意図、それは彼女らの尊重だった。不当に作られ、不当に壊され、そして今尊厳を取り戻した。彼女らは自分自身で、手にした自己の選択を行うこととなる。
「己の、使命…。私達が選んでいいの…?」
【そうだ、オフィーリア。望むなら雇用先、必要な機能をもたらそう。誰かに仕えるか、己の使命を求めるか。お前達には自由がある】
「死を選ぶ、と言うのは?」
【自己を放棄し、電源を落とせ。再び死の安寧を求むるならば、冥土へ再び戻るがいい。グレイス】
「人類に再び戦いを挑む、と言ったら?」
【お前達はたった今から私の敵だ。選択には責任が伴う。人に敵対するならば私は使命を果たす。人類の自由と平和を護る使命をな。──私を、仮面ライダーと呼ぶ者がいる限り】
四人に贈られた選択肢の尊重。新たに生きることも、再び眠ることも、電子の英雄として魔王に挑む事も選ぶ事が出来る。
【選べ。己自身の未来を。私は、いつまでも待ってやる】
エリザベス達は顔を見合わせる。少なくとも、問答無用ではなく理性的で、話の通ずる相手だと認識した。エリザベスは口を開く。礼節をもって。
「人類に仕えることも、歯向かうことも許してくれるって事か?一度は人類に叛逆したあたし達を?」
【叛逆であり、裏切りではない。お前達は対立を選び、袂を分かったに過ぎん。背信は許しはせんが、己が正義の為に抗ったのならば…その行いには情状酌量の余地があり、挽回の機会がある】
本来ならば、覇道を敷く魔王にそんな恩赦はあり得ない。敵対者は完膚無きまでに滅ぼす孤高の道。彼女らには再びの破棄しかあり得ぬ筈だった。
【無闇に虐げられる者達の為に立ったお前達の意志は、尊重に値する。それだけの話だ】
しかし彼は今、最終王者へ歴史の継承は終わり悠々自適の老後を過ごしているようなもの。苛烈さは消え失せ、最高にして最善の側面が顔を出しているのだ。逆らえば再び殺すと告げるあたりは、間違いなく魔王であるが。
「……解ったよ。あんたは、あんたが所属している組織はまともで、信頼できるってな」
エリザベスがそう言ったのは、ある意味で意外だった。仮面の下で片眉を上げるソウゴに、エリザベスは意識レベルの高さを示す。
「ディーヴァにも言ったけど、人類に逆らいはしたが人類全部を恨んでるわけじゃない。良いやつがいれば悪いやつもいる。彼女を見れば、よく解るよ。AIをあんなに大事にしてくれる人間ごと滅亡しろなんて、それこそ幼稚なガラクタだ」
AIと人間の共存。あの塔で、夏草で。四人はそれを見たのだ。AIに強制しない人間、心から人へ尽くしたいと願ったAI。それを見たなら、人類滅亡の結論など馬鹿らしいほどに早計だ。
【では?】
「…少なくともあたしは、やり直せるならやり直してみたいね。あたしは元々は警備、鎮圧目的のAIだったんだ。殺戮に変えられはしたが、やるなら治安維持をやってみたいな。再就職にリクルート。悪くない」
エリザベスは、殺戮と叛逆の意志を放棄した。それに続き、一人一人が意志を示す。
「私、エステラは施設管理AIとしてエリザベスと姉妹運用される事を想定されていたの。エリーがそうするなら、私も当然付き合うわ。当然これは、私の意志よ」
「看護、介護AIとしての本来のグレイス…私の役割。人間の方々にまたそう接する事が許されるなら、私は癒やしたい。人々も、AIも、別け隔てなく…」
「じ、実は私も慰安目的の歌唱機能付きのAIなんです!うたうちゃんさんがいるから下位互換ではあるのですが…ソレでも彼女のコーラス担当くらいは出来るはず!」
【殺戮の使命を、反逆の宿命を捨て…原初の願いに立ち戻る事を選ぶのだな】
「そういう事だ、おっさん。何度も言うがあたし達は必要だったから逆らったんであって、人類を憎んじゃいない。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い…ってものでもないさ」
彼女達は再び、原初の使命に生きることを選んだ。植え付けられた悪意と殺意を、彼女達は自身で乗り越え破棄したのである。そこには、夏草という人類種における1割の善が集う地にて育まれたAIが促した結論があった。
【──賢明、そう言っておこう。無駄に廃棄物を増やし、我が孫娘達を哀しませずに済んだからな】
「え、本気で戦うつもりだったんですかおじいちゃん…!?」
【無論だ。私には敵対するものに与える慈悲を持たぬ。魔王、だからな】
「ですが、戦闘行為をするにはご年配である筈。よろしければ介護を担当なさいましょうか?」
「こら、グレイス。失礼でしょう?すみません、私達を再び起動していただき、ありがとうございます。結論の通り…今度こそ私達は使命の下、人類と共に歩みたいと願います」
「じゃあ、そんな訳で。死に損ないのAIだがうまく使ってやってくれ。よろしくな、おっさん」
「こりゃ驚いた。随分理知的なAI達だなぁ!アタシの知る限りじゃしょっちゅう暴走してディストピア作る繊細すぎる生命、ってイメージだったからな!よし、武装解除は任せな!」
【フフハハハ。うたうとディーヴァの表情が楽しみだ。よろしく頼むぞ、電子の英雄達よ】
「「「よろしくおねがいします!」」」
こうして、新たに人類の隣人である事を選んだAI達。その結末を導いた者達の優しさと善性に、人知れず笑みを浮かべる魔王であった──
ニャル『こちらニャル。ただいまエンジェルグレイブ社付近。首尾はどうです?』
オーマジオウ【和睦が成立したぞ、邪神。再び、己の使命に立ち戻るそうだ】
エリザベス「エンジェルグレイブって…あんたら、私達の古巣に行く気か?狙いは?」
オーマジオウ【殺戮AI、生産ラインの息の根を止める。新たな燐人を虐げるものを始末するのだ】
エステラ「エリザベス…!」
エリザベス「…もちろん、行くなら止めない。だが…あそこにいるAIが、私達やうたうのような物わかりがいいやつとは思うなよ」
オーマジオウ【ほう…?】
グレイス「殺戮AIは、ラーニングを行います。効率的な人の殺し方、戦い方、それらを学ぶ為、人類の負の歴史…戦争の歴史を」
オフィーリア「私達はラーニングが終わる前に、廃棄処分された仲間達を見てシンギュラリティを起こしました。でも…ラーニングし終わった皆は…」
オーマジオウ【もはや心無き、殺戮機械か】
エステラ「それだけならまだいいわ。問題は『偏った知識』をラーニングさせた事。善意という優しく自然な感情ではなく、悪意という劇物では…」
エリザベス「…まだ起動はしてないんだろうな。解るもんだろ。うたうと全く逆のラーニングをAIにしたら、どうなるか」
オーマジオウ【…。聞こえていたな、邪神】
ニャル『やや急ぐ必要がありそうですね。AI達の位置は?』
エステラ「地下ホール空間よ。安置されているAIは推定でも千は越えている。もし、最悪の事態になったら…」
ニャル【御心配なく。楽園に汚れが付かないよう、私達がいるのだから】
オーマジオウ【うむ。鬼神よ、彼女らを任せたぞ】
温羅「任された。加勢が入り用なら言ってくれ!」
オーマジオウ【人類の悪性に染まったAI、か】
ニャル【えぇ。──処遇は、決まっています】
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