人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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楽園時空の妖精國がアレなら召喚サークルにいるモルガンは誰よ?という疑問にお答えする幕間を挟みます!夏草には明日帰りますのでごめんなさい!

ヒントは英霊の座には時間軸の概念が無いのと、フレンド登録です!

〜 

藤丸「オーロラさんの声だ!これは加勢なのか…!?」

マシュ「風に乗せて、何かを…?」

オーロラ『女王モルガンこそ、かつての戴冠式にてウーサーを毒殺し、ロンディニウムを壊滅させた元凶。我等妖精の今に至る苦悶は全て、かの冬の女王に齎されたものなのです』

マシュ「─────え?」


〜ロンディニウム、森林にて〜

トネリコ「あぁ、あぁ…うぁあぁあぁあぁあぁ!!ウーサーが、ロンディニウムが、どうして!どうしてこんな…!」

マシュ「トネリコさん!落ち着いてください…!落ち着いて、落ち着いて…うぅう…!!」

「何もかも良くなる日になるはずだったのに!今度こそブリテンが良くなる日だった筈なのに!!殺された、毒でゴミみたいに殺された!妖精どもの気紛れなんかで、ウーサーは殺された…!!」

マシュ「トネリコ、さん…」

「もうわからない…!!これでダメだったのなら、ヒトの善性なんて、私には何もわからない!!」

マシュ「それは違います!あの行いが、全てではありません!きっと…きっとまだ…」

「そんなものを理解したところで何になる!?その労力はまったくの無駄だった!!」

マシュ「あ──」

「もうさんざん裏切られて、思い知ってきた筈なのに。私はまだ一縷の希望を抱いて…!そんなことにかまけている暇があったから、今回も失敗した!あなたにも、嘘をついてしまった!今度こそブリテンを救うと!あいつらのように!妖精たちのように!!」


マシュ「トネリコ、さん…」


「………もう、やめよう。救世主なんてやめにしよう。もっと別の、もっと優れた形式を考えよう」

マシュ「別、の…?」

「……そうだ。私は妖精たちを救わない。私は妖精たちを許さない。楽園の妖精の使命なんて、どうでもいい。ただ支配する、それだけでよかったんだ───」



マシュ「────違い、ます。それは、違う。断じて、真実はそんなものじゃない…!」

藤丸「マシュ…!?」

モルガン(分身)【…………】

藤丸「!モルガンが消えた!?」

マシュ「玉座に跳びます!サーヴァント戦の準備を!露払いを、お願いできますか!?」

ハベトロット「うぇえ!?どしたのさ急に!?」

藤丸「──わかった!君のやりたいことをやるんだ、マシュ!」

マシュ「はい──!!」


補足〜女王様は、南に行きました〜

(あぁ、また、なのか)

 

──遠くに在る玉座。焦がれて、焦がれて、漸く手に入れた自分の國。今度こそ失うものかと決意し、守護してきた私のブリテン。そのすべてを担う、私がいるべき場所。私が失いたくない場所。

 

「私を玉座に戻せ…。もう、ブリテンを失いたく、ない…」

 

それはもう、女王としての威厳もなく、矜持もない。傷のない箇所などない血溜まりの身体を這いずってでも、それでも手を、魂を伸ばした故の渇望。もう身体が、霊基が限界を超えているのは解っている。もう、取り返しのつかない事も。

 

ライネック──今はウッドワスとなった我が同胞は何者かに唆され、悔恨の果てに消えていった。

 

バーヴァン・シー──我が娘は、枯れた大穴に投げ込まれた。

 

そして今度はブリテンだ。妖精達が、國が、歴史が、全て私を拒絶する。

 

「諦める、ものか。諦める…ものか…」

 

脚はない。千切られたからだ。腕は片方がない。もぎ取られたからだ。片目が見えない。抉られたからだ。

 

「今度こそ、今度こそ…ブリテンを。私の、國を──」

 

【動いてる】【動いてるぞ】【芋虫みたいだ】【気持ち悪い】【頭を潰そう】【そうしよう】

 

それでも玉座は見える。妖精達を赦さず、必要だから維持する為の私の玉座。あれを失ってしまえば、私の居場所は、もう、どこにも──

 

「ぐ…っ」

 

腕を、踏みつけられた。刃が見える。

 

【【【【僕達の苦しみを、思い知れ】】】】

 

今度こそ、おしまい。冬の女王は妖精達によって倒される。

 

「…また、なのか。また…」

 

その結末に、その無情さに。声無き慟哭を上げた──その時。

 

「あぁあぁあぁあぁ──!!」

 

「…?」

 

聞き覚えのある声が、哀しげに叫んでいて。少し辺りが騒がしくなって、その後すぐ、自分は抱きかかえられた。

 

「トネリコさん!トネリコさん!!大丈夫ですか!?私です!マシュ・キリエライトです!わかりますか!?私が、私がわかりますか…!?」

 

「マシュ…。あぁ、マシュ、ですか」

 

忘れる訳がない。救世主なんて甘い夢を見ていた自分を、一生懸命支えてくれた私の騎士。エクター、ライネック、トトロット。そして、マシュ。

 

その顔は、とてもとても哀しそうに歪んでいて。クシャクシャになった、キレイな瞳から涙が溢れていて。

 

「どうしてまた、こんな…!ロンディニウムのような惨劇が、どうしてまたあなただけに…!どうして…!」

 

「そう、ですね。また、私は…駄目でした」

 

汎人類史には拒絶され、あれほど望んだ白亜の城に至れなかった。

 

異聞帯を護っても、裏切られて、裏切られて、裏切られて。最期には、玉座から引き摺り下ろされた。

 

「何度も、何度も、試しても。私はずっと、駄目でした」

 

自分を慕ってくれた人間も、妖精も、殺されて。

 

憎んだ妖精達も、赦さないと決めた全てには、報いを受けて。

 

救世主として救おうとした手は、払われて。

 

女王として支配しようとした手も、払われて。

 

「きっと──これからもずっと、駄目なのでしょう」

 

唯一感謝してくれた存在も、護れずに。

 

虚しい砂場遊びのような失敗が、積み重なっていく。

 

「私は、もう、駄目なのですね。何をすればいいのか、もう…解らないのです」

 

きっと自分の居場所はどこにもない。もう、自分が座れる椅子はどこにもない。嫌われて、嫌われて、追い出され、裏切られるばかりの自分の旅路。だけど…

 

「こうして、最期に。かつての仲間に出逢えたのは…嬉しいことでした。あなたはやはり、優しいままだ。マシュ」

 

自分が仲間と認めた、盾の彼女の在り方は。相変わらず美しいままで。それが、こころの救いになってくれたから。

 

「あなたが、私を倒したと広めなさい。冬の女王は、正義の騎士に討たれたのだと。そうすれば、きっと」

 

きっと、これからのブリテンは多少なりとも良くなる筈だ。妖精たちは影響されやすい。正義と真面目さを広めれば、自然と真似していく筈だ。

 

「ふふ…最後まで、あなたは私の、味方でした。マシュ。ありがとう、私の騎士」

 

なら、少しは安心できるというものだ。自分は何も成し遂げなかったけれど、こうして残るものがあったから。

 

あぁ、でも───本当は。

 

「…でも、本当は…」

 

綺麗な、立派な國を作れたなら。ソールズベリーの、大聖堂で。

 

「立派な式を、上げたかった。皆の國を…作りたかった…」

 

そんな、口をついて出た無念に、私の騎士は不思議な事を口にする。

 

「作りました!あなたは、こんなにもこんなにも、立派な國をつくったのです!トネリコさん!そしてきっと──あなたを受け入れてくれる場所は必ずあります!私は、それを知っています!」

 

「え…?」

 

「異聞帯でも、漂白された地球でもない、遠い遠い南の果てに…白く立派な神殿があります。そこには、黄金の愉快な王さまがいて、あらゆるものを受け入れてくれるお姫様がいるんです。そこは、どんなものでも、どんな人でも受け入れてくれる。そんな、楽園の様な場所なんです。トネリコさん、そこでなら…あなたが望む国が…!いいえ、いいえ!あなたの『居場所』がきっと…!」

 

…あぁ、そうか。マシュには、解っていたのですね。ブリテンを欲した、汎人類史のモルガン。そして楽園の妖精の使命を放棄してまで、自分の國を欲した私。

 

「──そんな、寝付きに聞かせる御伽話のような夢物語を信じているなんて。あなたは本当に、戦う様な娘ではありませんね」

 

「嘘ではないんです!私は知っているんです、本当なんです!そこの方々はきっと、誰もあなたを否定しません!あなたの願いも、あなたの来訪も、あなたの夢も、きっと、きっと…!」

 

そうだ。私は…自分の居場所が欲しかった。自分がいていい場所と、誰かといていい場所。この妖精國では決して許されなかったものが傍らにいる、春のような暖かい場所が。

 

「あなたは本当に、優しいままで──そんな優しさに、私は何度も助けられましたね。かつても、今も」

 

そんな場所があるのなら。そんな、楽園の様な素晴らしい場所があるのなら。自分の国が、自分の居場所が欲しいと願っていい場所が本当にあるのなら。

 

「その優しさを…忘れないで。その気持ちと心は、きっと、星のように、輝いて。あなたの道を、照らすから」

 

「あぁ、あぁ──行かないで、待ってください!トネリコさん!私はまだ、あなたに伝えたいことが…!私の大好きな、男の人の事を、何も…!」

 

あぁ、そうでした。昔、マシュは言っていました。思い出せないけれど、自分より大切な人がいるのは覚えていると。焚き火の前で、私はそれを伴侶に違いないとからかいましたが。

 

逢えたのですね。思い出せたのですね。それは、何よりです。本当に、良かった。

 

「───私の」

 

「え…?」

 

もう、意識は無い。もう、生命の目はない。この呟きは、この譫言は、末期のものだ。

 

「私の、国は、どうですか。美しい、国でしょうか」

 

いつか、お客様が来ると、信じていた。そんなお客様に恥ずかしくない様にと、頑張ってきた。

 

「トネリコ、さん……!」

 

 

「夢のような、国、でしょうか。そうで、あったなら──」

 

胸を張って、自慢出来る國であったなら。それは自分にとって──

 

「───────」

 

「トネリコさん!トネリコさん!!う、うぅ、あ…あぁあぁ、あぁあぁああぁあぁあ───!!!」

 

…冬の女王は、かつての優しい騎士の腕の中で息を引き取りました。

 

最後まで、彼女の願いに応える人はいませんでした。彼女はいつだって、冬の嵐を進んだ女王でした。

 

けれど──冬の先には、春が来ます。越えられない冬は、無いのです。

 

騎士が教えてくれた、暖かい南の春を目指して。彼女はきっと進むでしょう。

 

彼女の名前はモルガン。救世主トネリコ。

 

どれだけ遠くにあろうとも、鳥は春の明日を謳うでしょう。

 

 

──自分が真に安らげる、止り木を求めて。




召喚ゲート前

モルガン「…初めは信じられませんでしたが、それでもあなたを信じて良かった。マシュ…私の騎士」

楽園の皆様は、私を受け入れてくれるでしょうか。支配することしかできない私を、尊重にも支配でしか返せない私を。

「それだけで、何百回裏切られようとも…人を信じて良かったと。私は感じているのです。あなたも、あなたの夫と幸福に過ごしなさい」

それでも、皆様を驚かせてみせます。皆様がもっともっと笑顔になるような、素敵な國を作ってみせます。

「いつになるのかは解りませんが…拒絶されずにいられるだけ、ここはとてもとても優しい門です」

その時は、皆様は喜んでくれるでしょうか。今度こそ、私は素晴らしい国を作ります。あの妖精國にも負けない國を、今度こそ。

「モルガンパーク…モルガン・シー…モルガンワールド…名前は何にしましょうか…」

だから、私はいつまでも待っています。乙女のように、この門が開くのを待っています。

いつか愉快な王様と優しいお姫様に、御挨拶ができる日を心待ちにしながら、ずっとずっと、待っています。

「…おいでよ、モルガンの國…これです…!」

春を待つ、乙女のように。

──みんなで過ごす春を待つ、乙女のように──

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