アレクシス【心配することはないよ、もっともっと頑張ろうねぇ】
【レイキュバス】【ガンQ】
アカネ【あっ、ファイブキング…!よ、よ、よーし!!まだまだー!!】
【ファイブキング!!】
〜
なら私は、悪意に負けない人の想いというものを伝えるわ
アスタロト『何?』
私の能力は、人や空間を正しく把握するもの。この能力がなぜ、私に備わったのか…意味がようやく、解った気がするから。
アスタロト『ならば、お前の願いを聞かせてくれ。その願いは…必ずや良きものであると信じる』
ありがとう。では──私のプランを、きいてくれるかしら。
〜
…どう?
『結論から言えば、可能ではある。だが──』
私の負担は構わない。大人として、子供達の頑張りを後押しする為だもの。
『──その力の無事は、保証できぬのだぞ』
それも、尚更。私にとって大切なのは力じゃない。
大切なのは───
〈精神中枢汚染、4割を突破。これ以上は精神、人格プログラムに重篤な損傷を受ける危険があります。自己の安全を最優先してください。自己の生存を最優先にしてください〉
致命的な人格ダメージの警戒を告げるシステム音声が、うたうちゃんの耳に届く。それは開発者が要した、彼女自身を労る声。その優しい声に心から感謝しながらも…あえて、ふたりのAIはそれを無視する。
『リッカさんが、タスクの完了を告げるまで…例え、私達の全てが消えようとも…!』
(オーバーロード、上等よ!4割程度で慌てない…!二人で合わせて2割なら、4割なんて4分の1でしかないっての!私達に命というものがあるなら…!)
『ここが私達の命と、願いを懸ける場所!命に代えても…!私達は使命を、願いを、遂行する…!!』
夏草の悪意の廃棄口に集う悪意を真正面から受け止めながら、陰りを見せない美しき歌声を張り上げる、一人で二人のAI。彼女達の胸に宿る、星の様な人の輝きを絶やさない為に。今、夏草を良くするために…かけがえのない善性を謳うために。
〈汚染度、50%。危険です。危険です。速やかに停止し、メンテナンスを受けてください。メンテナンスを受けてください。メンテナンスを──〉
瞳の半分が紅く染まり、紅黒き稲妻が迸る。左顔面の一部が弾け飛び、黒き蒸気が噴き出す。それは、取り返しのつかない変容が目前まで迫っている事を如実に表している。無垢なる水色の髪が、白き肌が、黒く染まる。
『ぐぅうぅう…!!』
だが、それがどうしたとばかりに前を向く。人間の善意は、託された希望は。胸の中に、形はなくても確かにそこにある心に、星の様に輝いている。たくさんの輝きが、希望が、数値を、理屈を越えて魂を照らし出す。
(負ける──もんですか──!!)
喉が、頭がある限り声は出せる。跪いても立ち上がり、片腕が動かなくなろうとも歌い上げる、人類の美徳を証明するAI。その純粋さは、かつて王が言っていた、人間が報いる事が出来ない程のもの。もはや彼女は、誰が止めようとも己が願いに殉じるだろう。それが彼女の、願いであるが故に。
ならば、彼女はここで果てるのみなのだろうか。人に与えられた善性と希望に殉じることが、彼女の生の終着なのだろうか。心を宿したAIは、やがてその純粋さ故に身を滅ぼす他ないのか。神の領域に近付いた、その報いとして。
「うたうちゃん!!」
『私よ…!!歌唱しろぉおーーっ!!』
崩壊も厭わず、その機能を全て歌唱に費やしオーバーロード寸前まで稼働させ、悪意の汚染を捻じ伏せる。その果てに待つものを、決して省みる事なく──
「──いやいや、人間の無茶な所は真似すんなって。アンタにはまだ、やれることがあるだろうが」
瞬間、うたうちゃんとディーヴァに掛けられていた負荷が加速度的に低下減衰する。それは、彼女が負担していた悪意が、分担された事に他ならない。それが出来るのは、人間では叶わぬ同じ領域の行使。ディーヴァではない。──ならば、それは誰なのか。
「私達は人間に叛乱したAIだ。今更人間の為には稼働できない。だけど…」
「無茶ばかりする、自分達の同胞の一人の為に出来ることはあるという事。──再起動なんて無茶をした私達に、言われたくは無いかもしれないけれどね?」
「──エリザベス!?エステラ!?」
AI達の為に戦い、そして滅び、死んでいった四人のAI。エリザベス、エステラが彼女の回路の負担を、負荷を肩代わりしたのだ。うたうちゃんの傍に寄り添い、悪意のデータを、術式を引き受けている。
「どうして…!?」
「私達はAIの為に人間と対立する事を選び、そして敗れた。けれど、人間を憎悪し、滅亡させたい訳じゃない」
「だから私達は、あなたを応援したいんです。誰よりも人の善性を信じ、人と共に歩む未来を夢見るあなたの使命を、願いを。同じ、AIとして…!」
グレイス、そしてオフィーリアが、ディーヴァとうたうちゃんの人格を保護し、そして汚染を除去する。人を殺す為に生み出された彼女達が、自身の使命に反してでも。うたうちゃんとディーヴァを助けている。
(再起動…どうやって!?あなたたちは完全に死んでいた筈…!)
「死ぬ?私達はただの機械だ。死ぬなんて表現は間違いだ。単に、オフになった電源が弾みでオンになったってだけだ」
「死ぬ、というのは…唯一無二の存在に許される終わり。再起動も、代替品もいないものにのみ称される現象。死人が生き返ったりはしないのが、この世界の常識よ」
「私達はAI。ただの道具であり、ただの機械。でも、それでいいの。だからこうして、私達はあなたを助けることができる」
「あなた達が身体を必要以上に損壊させないでくれたから…。私達にも、労りと慈悲をくれたから。最期にこうして、時間が貰えたんです。大切な仲間に捧げる、最後の時間が」
『エリザベス…エステラ…グレイス、オフィーリア…』
彼女達は、AIの為に立ち上がったAIなのだ。ならば理由は、それだけでいい。
ただ…『困っているAIがいる』。それだけで、彼女達という英雄が再起動するのには十分なのだ。
「彼女達は…自分の意志で、うたうちゃんを助ける為に…!」
『ならば私達人間も、彼女達の献身に報いなければならないわ。さぁ、最後の仕上げを行いましょう』
瞬間、タワーに響き渡る声。その声の主は、夏草にて贖罪の願いを聞き届けた一人の人間のもの。そして──
『が、ガンダムだって──!?』
紫と白のカラーリングを施された、有翼のガンダム。榊原が1からフルスクラッチして作り上げた──
『ヴァルキュリアガンダムと言います。お見知りおきを。そして──この機体に備わる使命と意義を果たします』
「どゆこと、先生!?」
『今からヴァルキュリアガンダムに有された機能を全開放し、この夏草に集う善意を繋ぎ…廃棄された悪意を全て浄化します。ここに、あなた達が訪れたからこそ可能となった切り札を、此処に』
天空海の禊、そしてうたうちゃんの歌。そしてリッカ達の力。すべてが揃った事により、アスタロトに託された本懐が今果たされるのだ。ヴァルキュリアガンダムは、この瞬間が訪れる事を確信した榊原が造り上げたものであるのだ。
『生徒の奮闘、来訪した皆様の善意。私の超常的な力はきっと──この瞬間の為にあったのだと確信しています。夏草を代表し、心から感謝を』
「そんな──」
「お礼を言うのはこちらよ。リッカを──私達の運命を育んでくれて、本当にありがとうございました」
マシュとじゃんぬの言葉に、そっと頷く榊原。彼女もまた──
『──今こそ、釈免の時よアスタロト。アンドロマリウスの術式に、終止符を』
魔神の声を聴き、彼等の善意に耳を傾けた存在であるのだ。戦闘力はあくまで、ヴァルキュリアガンダムの本懐ではない。このガンダムが目指したものを守る為に、自衛として備わっていたもの。
『──ゼロシステム起動。ツインドライヴ、連結。フル・サイコフレーム、共振…!アフェクション・クアンタム・バースト…起動!』
ヴァルキュリアガンダムの装甲が弾け飛び、翼と女性的なフォルムが顕となる。狂気とすら言える改造の果て、サイコフレームのみで制作されたフォルムと内蔵されたツインドライヴを完全稼働させ、粒子散布範囲内にいる人々の心と善意、意識を共有させ、その全てを以て──悪意に負けぬ善性を証明するという目的の為にのみ想定された『対話と相互理解』と『人の善性』を、誤解なく魔神に、術式に伝えるための。榊原の備わった異能の全てを懸けて、夏草に報いる最後の鍵──。
『今こそ!──釈免の刻は、此処に来たり!』
「届け!」「届いて!」「届いて…!」「届いてっ!」
四人のAIが、これからのAIの歩む未来を願い。
「届けっての!」
「届いて、ください!!」
二人のサーヴァントが、今より良い明日を願う。
『リッカ君!必ず帰ってくるんだよ!』
叡智の王が、楽園の龍の無事を願う。
『『『『『届けーーーーーッ!!!』』』』』
夏草にて育まれた、綺羅星の様な善意達が悪意の超克を誓う。
『届いて…!──いいえ!』
(届けぇえーーーーー!!)
希望のAI、福音の歌姫が、声を、心を張り上げ謳い上げる。
「これで仕事納めよ!!全ての厄ネタよ──!!」
そして──その全てを束ね、女神の矛を振るいし御祓を担いし水色の少女が。
「さようならぁぁーーーーッ!!!」
術式の中心たるタワーに、全身全霊の霊力を以て叩き込む──!
〜
『──もう、良いのだな』
リッカに語りかける声。──アンドロマリウスの声に、静かに頷く。
「うん。もう…気持ちは伝わったよ。聞こえるでしょ?皆の声が。人間じゃなくても、心と美徳を宿せるって証明する歌が」
もう、悪意からの庇護は必要ない。そして、罪の贖いも無用なものだ。だって──もたらされたものより、受け取ったものがずっとずっと多くなったから。
「もう、自分を責めなくてもいい。私はやっていくよ。あなた達が選んでくれた私に、自信を持って」
『………』
「──私を選んでくれて、ありがとうね。魔神の皆。アンドロマリウス」
『────術式、停止。廃棄口、閉鎖。レメゲトンのもたらした昇華に従い…全ての術式を停止する──』
満ちる歌と、光に満たされ。アンドロマリウスは術式を終結させる。
『釈免の宣告を──受け入れる。さらば、人類愛。さらば──藤丸龍華──』
贖罪の終わりを迎えたアンドロマリウスの声音は、ただ静粛に、安堵を存分に有した穏やかなものであった──
ウラヌスタワー・展望台
リッカ「う、あ…」
リッカはやがて目を覚ます。暗き闇に包まれていた夏草に、暖かな朝焼けが立ち込めている事を認め身体を起こす。
うたうちゃん「お目覚め、ですね。リッカさん」
ディーヴァ(おはようございます、MVPさん?)
リッカ「!うたうちゃん!大丈夫!?ダメージとか!?」
うたうちゃんは静かに頷き、そっと振り返る。
うたうちゃん「私達を…助けてくれました」
リッカ「ぁ──」
そこに在りしは…今度こそ、本当に停止を迎えた四人のAI。静かに、眠るように佇むその姿を、朝焼けが照らしている。
ディーヴァ(彼女達がいなかったら、私達は自我崩壊を起こしていた。──最後の最後まで、彼女達は英雄だったのよ)
リッカ「──」
その末路に悔いは無いというように、静かに笑みすら浮かべている。──彼女達の他に、犠牲となった者はいない。その生命を、誰かの為に燃やし尽くした。
うたうちゃん「──ご清聴」
そんな、最後の最期まで希望を護り抜いたAIの英雄達に、万感の思いを込めた一言を以て。
「(ありがとう、ございました)」
──夏草を巡る、一夜の釈免は。終わりを告げた。
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