人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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裏口

リッカ『制圧完了!!AIが悪いんじゃなくて、指示した人間に責任は取らせるからね!』

『五体満足のAI達』

マシュ「決まってしまいました…!シールダー奥義!マシュ峰打ち!決まってしまいました!!」
じゃんぬ「どこで打っても峰じゃないの…?まぁ私達は負けるわけ無いとして、他は大丈夫かしら」

裏庭

スザク「こちらスザク、鎮圧完了したよ」

『半壊アンドロイド』

黒神「魂無き器など脆い!郷土愛を持って出直すがいい!」

アカネ『やっぱ身体能力おかしいよこの人達!』
エル『等身大ロボット…ブツブツ…』

テラス

∞ジャスティス(サラ)『トゥ!へァー!!モウヤメルンダッ!!デヤァァアァ!イヤァアァアァ!!ヌォオォオ!!』

ストライクフリーダム(大和)『こちら大和、鎮圧完了。…私達はフルアーマーなんだね…』

アスカ『可愛げが全然ないですよね…コスプレとかよりはマシなのか…』

大和『モード切り替えできないか試してみようよ、アスカ』
アスカ『ノリノリですね、大和さん』

サラ『このバカ野郎!!』

『あんたは全然変わらないな!』



ギル「フッ、魔神共め…面白い趣向を用意したものよな」

──アスタロト。皆…リッカちゃんの事、忘れずにいてくれたんだね…!

はくのん「私も行きたかった」

ギル「案ずるな、事が収まればそれは叶おう。さぁ、住民票の制作だ。手抜かりをしてくれるなよ!」

はくのん「皆が遊ぶ中仕事。これが…王の宿命っ」



ロマン「ボクが彼等の術式の中心で、術式に触れられたならきっと…先生、アテはありますか!?」

榊原「えぇ、恐らく…夏草ウラヌスタワー。天空に聳えるあそここそがきっと…」

ロマン「ギルやニャルは何をしてるのかは解らないけど、きっと楽園の為になる事だ!僕達は僕達で、やってみせるぞ──!」









With joy and gratitude

『──夏草の月は、とても綺麗なの。テラスから眺める夜景と相まって、観光客の皆様にとてもお勧めできるのよ。御存知?物騒なお客様』

 

パチリ、パチリとフィンガースナップが響き渡る夜闇のうたうちゃん宅。アンドロイドのみで構成された部隊がその音の出処を探し、やがて頭上であることを看破する。

 

『こんな素敵な夜に、素敵な歌声は如何かしら?こう見えて私、歌うのは大好きなのよ。評価はまぁ、散々だけどね』

 

『敵個体、アンドロイドタイプ。作戦目的、ID認証…』

 

パチリ、とフィンガースナップの後に即座に自分を指差し、眼前のアンドロイド達に高らかに告げる。

 

『郷土奉仕。仮面ライダー…ディーヴァ』

 

『『『『排除』』』』

 

『さぁ、ワンマンライブのスタートよ!』

 

一斉に放たれる銃弾、月夜に翔び立つディーヴァ。銃口のフラッシュが、跳躍する歌姫の艶姿をきらびやかに映し出す。

 

『Aa。Aa、Aa、Aa、Aa、Aa〜♪』

 

ボイス調整を行いながら、蒼穹の仮面ライダーは素早く部隊の中核に割り込み素早い徒手空拳にてアンドロイド達の携帯火器を弾き飛ばし、吹き飛ばし、へし折り、人間に危害を与える危険性を持つ兵器を無力化していく。

 

『あそこは私の家でもあり、AIを対等に扱ってくれる人間の善性がカタチになったものなの。自宅訪問も過激なアピールもお断り!』

 

『『!』』

 

銃を吹き飛ばされたアンドロイドは素早く白兵戦に移る。ナイフ、スタンガン、改造ロッド。それらは軍用の殺傷力に特化した一級部品。

 

『郷土奉仕AI一体に随分な、歓迎、ねっ!』

 

それらのプログラムされた格闘プログラムによる一撃一撃を、自由かつ奔放、柔軟な動きで回避していくディーヴァ。くるりくるりと、ライブパフォーマンスめいた軽業にてかわしていく様は、いっそ楽しそうにも見える程だ。

 

『AIの性ね。使命や製造目的によって、私達はいくらでも人間や誰かを傷付けてしまう。無垢や純粋さ…やっぱり、環境はとても大事なファクターなのね』

 

お分かり?ナイフをひらりと奪い去り、背後にいたアンドロイドに突き刺し、突き刺したままぐるりと振り回し辺りのアンドロイド達を吹き飛ばす。

 

『特別に、あなた達の為にも歌ってあげる。AIが人類の敵と認定される前に終わらせるわ!』

 

一転したディーヴァが跳躍し、強烈な回転回し蹴りにて胴体に命中したアンドロイドを一撃で破壊する。仮面ライダーとして強化されたディーヴァの身体能力は、彼女以外のアンドロイドを旧世代に追いやる程の完成度を見せつける。ガードする行動を取れば、その瞬間にガードの最中を素通りし。回避運動を行えば回避を先回りして攻撃を直撃させていく。その戦闘能力とスペックは、まさに世界最先端のAIに恥じない活躍だ。

 

『あなた達に恨みは無いわ。でも私は、使命と人間の皆を心から愛しているの。夏草を離れるつもりも、軍事利用されるつもりも無いって事!』

 

手刀の一撃が、アンドロイドの首筋にめり込む。辺りを取り囲んでいた五体が、それを皮切りに行動不能とされ、沈黙する。ディーヴァのボディには、かすり傷一つない。

 

『お分かり?』

 

(これが…私…?)

 

仮面を被り、ディーヴァとなったうたうちゃんは、仮面の下で猛烈な驚きと戸惑いに胸を詰まらせていた。こんな感覚は、初めての経験だった。

 

口が動く。

──もっと皆に、愛想良く言葉を返したかった。

 

身体が動く。

──もっと皆に、身体の所作で感情を表したかった。

 

表情が動く。

──もっと皆に、胸に溢れる気持ちを伝えたかった。

 

そして何より──

 

(私…心から、歌えている…?)

 

戦う最中に紡がれる、情感の詰まった言葉と歌。ただの音階の再生であった普段とは比べるべくもない、聴くものを奮わせ、湧き立たせる歌声になって、自分の口から歌として紡がれている事実に、うたうちゃんは自身の回路全てが歓喜に打ち震える感覚を覚えた。

 

(伝えられているの?私が、皆から受け取ったものへの感謝を。私が、皆から受け取ったものへの喜びを。私の言葉で、歌で。私は、今…!)

 

『自分で聴いて、解るでしょ?』

 

瞬間、うたうちゃんの胸に響く自分の声。いや、それは自分であって自分ではない。しかし、他人では決してない。

 

『AIであることのこだわりから『変身』したの。私達はこんなにも自由よ。私達は、自分を生み出してくれた人々へこんなにも歓喜を懐いていたのよ』

 

(あなた、は…)

 

『変身したあなたよ、うたうちゃん。あなたが夏草の、人間との触れ合いで生み出した『心』のカタチ。オーマお爺ちゃんのくれた力で『仮面』として出てきている、もう一人にしてあなた自身の心。人間の、優しく暖かい善性の証明者。それが私、ディーヴァ』

 

よろしく♪ウィンクする自身と同じ顔をした存在を──うたうちゃんは、驚く程素直に受け入れた。

 

(ディーヴァ、私は護りたい。夏草の皆を。人間の皆を。私を、こんなにもこんなにも愛してくれた人たちを、心から護り幸せにしたい)

 

『当然。ならどうする?あなたはどうしたい?』

 

(私は──戦う!私に課せられた使命と、私を生み出してくれた喜びを重ねて!それが私の、私を生み出してくれた人類への…!)

 

『恩返し、でしょ?皆まで言わない!さ、行くわよ。私達の100年の恩返しはここから始まるんだから!』

 

手を重ねる、うたうちゃんとディーヴァ。真実の仮面を、うたうちゃんは手に取る──!

 

 

『わぁビックリしたぁ!?』

 

瞬間、響き渡るガトリングの音に肩を竦め、バック転の連続でそれらをかわすディーヴァ。それらを放った相手に、思わず声が漏れる。

 

『…カスタマイズにしても悪趣味が過ぎるでしょ、アレ…』

 

目にしたのは、指揮官機であろうアンドロイド…であるのだが、そこに人型の面影は殆ど無い。左腕はガトリング、右腕は巨大バスターブレード。背面と脚部はブースター、バーニアに改造され最早歩行すら出来ないだろう。胴体からエネルギーチューブとコアが直結しエネルギーが送られ、顔面部分の表情はもはや読み取れない。これでもかと戦闘特化された醜悪な違法改造に、流石の彼女も難色しか示せなかった。

 

『回収プログラム、起動』

 

『わぁあぁあちょっ、何よ急にー!?』

 

猛烈な突進を受け、空中へ放り出されるディーヴァ。重武装AIの猛攻が、自由落下状態で回避が困難な状態にて叩き込まれる。

 

『にゃろー、考えたわね!これじゃ反撃しにくい!誰よ自由落下って言ったの!全然自由じゃない!』

 

『制圧開始』

 

ジリ貧、どうしましょ!慌てふためく素振りを見せるディーヴァへ向けて巨大バスターブレードを振り下ろさんとする重武装アンドロイド。あわや一刀両断、と思われた刹那──

 

『なーんちゃって♪』

『!?』

 

腕部より展開されたアームビームブレード二振りが、バスターブレードの一撃を受け止めていた。イルカの背びれをイメージした、腕部ユニットに仕込まれた仮面ライダーディーヴァの奥の手である。

 

『さーて、反撃とクライマックス決めちゃおっかな!』

 

素早くアンドロイドを蹴り飛ばし、その反作用で地上に飛ぶディーヴァ。そのまま素早くゼロワンドライバーの右側面を叩き、必殺技シークエンスに入る。

 

『行くわよーっ!』

 

姿勢を反転し、跳躍。特殊な力場がディーヴァの周囲に発生し、まるで海中を泳ぐように空中を跳び回る。そしてすれ違いざま、縦横無尽にアンドロイドを切り刻み、武装を破壊し寸断し、そして──

 

『とぉりゃあぁぁあーーーッ!!』

 

『ヒーリングインパクト!!』

 

ディーヴァ渾身のダッシュ後ろ廻し蹴り。イルカの尾びれのイメージと共に叩き込まれ、空中にて爆発四散するアンドロイド。その爆風の中より、ディーヴァは現れ──

 

『──ご清聴、ありがとうございました!』

 

一礼し、爆風をバックに立つディーヴァ。夏草を護る新たな仮面ライダーが、鮮やかな初陣を飾った瞬間であった──。

 

 




ウォズ「祝え!!!」

ディーヴァ『きゃっ!?ビックリしたぁ!?』

「人を愛し、人に愛された電子の隣人、自由と平和の守護者たる歌姫!その名も仮面ライダーディーヴァ!!此処に鮮やかに、初勝利を達成した瞬間である!!」

ディーヴァ『お、お祝い?ありがと、家臣クン♪ねぇねぇお爺ちゃん!見ててくれた!?』
うたうちゃん(あぁ、なんて気安いの…?)

ソウゴ「ははは。それがお前の目指す歌姫の姿か。仮面は時に、秘めた本質を表層化させるものだからな」

ディーヴァ『そういうコト。これからも夏草奉仕AIをよろし…、!』

男『おのれ、役立たずどもめ…!最新カスタマイズされていながらこの様か!?』

喚き散らすは、たった今論破された首謀者の男。むっ、と顔を顰めディーヴァは問う。

『彼等は使命に殉じたのよ。労れとは言わないけど…侮辱は心外な筈よ』

『使命を果たせぬガラクタに何を気遣う必要がある!こうなれば──!』

マルコシアス「貴様、何を!」

男『貴様らの上空には爆撃機が待機している!無人操作でナパーム弾を落とす手筈だ!ライバル企業に奪われる可能性があらば、諸共に焼いてくれるわ!!わははははは!!』

ディーヴァ『──熱源感知。ハッタリじゃない…!なんてことするのよ、あなた!』

男『黙れぇ!人に従わぬAIなど必要ないのだァ!!』

ウォズ「私が焼き払おう。しかし、間に合うか…!」
ディーヴァ『お願い間に合わせてー!?』

マルコシアス『爆撃機まで用意するなど最早正気の沙汰ではない!術式に呑まれた悪意の果てか、おのれ…!』

ナパーム弾が、目視できる程に迫りし瞬間──。

ソウゴ「…!!」
【祝福の刻!!】

ディーヴァ『え──』
ウォズ「我が魔王…!?」

【最高!最善!最大!!最強王!!逢魔時王!!】

オーマジオウ【はっ!!!】

素早くオーマジオウとなり降臨したソウゴが、高々と手を掲げる。ナパーム弾、そして爆撃機の時が完全に停止し──

【愚行の報い…己が身で受けるがいい!!】

男『う、うわぁあぁあぁあぁあーーー!!』

ウインドウの向こうで、光と焔に包まれる哀れな男。ウォズとディーヴァの傍らに立つ、魔王

ディーヴァ『おじいちゃんも…ライダー…だったの?』

仮面ライダーオーマジオウ【フ…最近、そう呼ぶ輩が増えているのは事実だな】

ウォズ「流石は、我が魔王…!」

ルル『なんでもありなのか…、凄いなライダー…ッ!?今何時だ!?』

ゆかな『23時55分だ。間もなく来るぞ…廃棄術式だ』

一難を退けた一同に、更なる激震が走る。今、夜の街の本当の意味が明かされる──。



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