人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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6周年記念は素晴らしかったですね!個人的には非常に大満足です!
光のコヤンスカヤ!そういうのもあるのか…漂泊して使えそうな可能性が出てきてくれて嬉しいです!あとめっちゃ戴冠式不穏なんですがそれは…

これからも沢山楽しんで参りましょう!ソロモン見て来ました!わりぃ、やっぱロマンロスつれぇわ…

そんな時はこの小説を思い出してくれたなら幸いです!全ての涙を宝石に変えるこの小説、どうかこれからもよろしくお願いします!明日から一週間は昼、午後辺りに更新いたします!返信も明日の朝にて行わせてください!毎度ながら、遅れてしまい申し訳ありません!早く寝て、明日バリバリ返信致しますます!

レストラン街

ウォズ「ここは仮面ライダー世界のレストラン、そして食べ物などを再現したコーナーの様だ。非常に私好みと言わざるを得ない!ポレポレカレーやレストランアギト、デンライナーチャーハンなどを食べ尽くさなくては!」

ニャル【想像以上に食いしん坊だった…魔王は風に当たると屋上に行ってしまったからね。私達だけで食べようか】

ウォズ「よろしく頼みます。おや?うたうちゃんはどこに?」

ニャル【お爺さまが迷わないように、様子を見てくる様ですよ。これはちょうどいいな】

「丁度いい?」

ニャル【私の知る中でトップクラスの年長者ヒーロー…お爺さまとの対話は、きっと彼女に、素晴らしい自信を下さる筈だからね──って】

『忽然』

【いない!?】



誰が英雄を望むのか

「ソウゴお爺さま」

 

ガンバライジング、高層百階の屋上。遥か夏草を見下ろす天空にて佇むソウゴの様子を拝見に来たうたうちゃん。金色の衣装に長髪を風になびかせるままの、魔王の風格を醸し出すソウゴは振り向かずに下界を見据えている。

 

「鋼の乙女か。我が家臣達は楽しんでいるか?」

 

「はい。今は下層の各ライダーの世界を模したレストランフロアにて食べ歩きを。…具合が優れないのでしょうか」

 

「フ、そうではない。この街を…世界を見ていたのだ。平成の時代を生きる者たちが営む、平和の在り方をこの目で見ていた。…彼女達が取り戻した平和をな」

 

その威風は翳らずとも、その雰囲気は柔らかいことを理解したうたうちゃんは、そっとソウゴの後ろ三歩に位置取る。魔王はこの都市を見ていた。世界を良くするため、かつての若き自分が懐いていた夢の体現者の故郷を。

 

「景色を見て、平和かどうかを判断できるのですか?お爺さまは」

 

「解るとも。黒煙も、怒号も、殺意も、叛意も、暗殺の企みも存在しない人の営みと、懸命に生きようとする活力。王となれば、それらを読み取れなくては話にならぬからな。随分と、私にとっては、かつて遠くにあった懐かしいものだ。それがこうして…」

 

それがこうして、確かな形となり存在している事実を、独り静かに噛み締めている。彼の覇道には、敵と風評しか存在していなかった。最低最悪の魔王という風評と、自身を脅かす敵。

 

「老害の隠居先にはちょうどよい。全てが終わったなら、夏草にて時計屋を開くのも余生の使い道としては上質かもしれんな」

 

「その際は、是非とも私にご相談ください。絶好の立地と、物件を紹介致します」

 

「フ…多芸かつ、勤勉な事だ。その時は、声をかけるとしよう」

 

その言葉に頷くうたうちゃん。彼と彼女は言葉無く、眼下に広がる夏草の都市を見据えている。聞こえるのは、穏やかな風の音のみ。

 

「……あの、お爺さま。ガンバライジング社にて務める最中、生まれた疑問があるのですが…御意見を伺ってもよろしいでしょうか」

 

うたうちゃんが口火を切ったのは、自身の悩みを吐露するという形での問い掛けだった。この場にいるのは二人のみ。聞き耳を立てる者はいない。

 

「口にしてみろ。ただ、AIならではの高尚な話題などは力になってはやれんが」

 

ソウゴはあまり勉強が得意ではない。それは、歳を経てもあまり変わらなかった側面でもある。うたうちゃんは、その質問を敢えて問うた。

 

「ヒーロー、と呼ばれる方は…何故生まれるのでしょうか。仮面ライダーと呼ばれるヒーローを始め、ヒーローという矛盾した存在は何故生まれるのでしょう」

 

「ほう…。ヒーローの在り方と意義を問うか。データアーカイブの記録ではなく、存在そのものを認めた上での疑問なのだな?」

 

頷くうたうちゃん。彼の水色の瞳は難解を前にして収縮を繰り返す。

 

「仮面ライダーの作品は、データ媒体を借りて一話から拝見いたしました。自宅のプレイヤーで」

 

「自宅もプレイヤーも有しているのだな」

 

「戸籍もあります。職業、AIとして夏草民として正式に認められているんですよ。…様々なヒーローを見て、人の為に戦う彼等を見て、私の記憶媒体には疑問が湧き上がりました。彼等には、矛盾が多いと」

 

うたうちゃんはAIだ。自分もあまりに不便と矛盾が介在しているが、だからこそヒーローとして戦う者たちの在り方の是非を問う程に思考と自問自答を繰り返していたのだ。

 

「ヒーローと名乗る方は、傷付き、辛い目に多く遭遇するパターンが多かったと記録されています。中には、涙を流し傷だらけになりながら拳を振るう方もおりました」

 

「笑顔を護るために戦うライダーか。なるほど、しっかりと履修している」

 

「誰かを護るために、自分は傷付く。心という揺らぎを持つ繊細な人間という存在が、平和を掴むために暴力を振るい傷付き悲しむ。その様を見て、私も…辛い、哀しいという状態に精神グラフが突入した事がありました」

 

つまり、彼女はヒーローという存在を励ましたのではなく、共感し労ったと言える。そして彼女はこう疑問を懐いた。

 

「暴力という手段を行使し、不特定多数の方を護るために傷付き、それでも心は哀しみにくれる。人間の心は極めて難解で数値化できないものですが、ヒーローと呼ばれる方の心は崇高でありながら、自傷を厭わない危うさに満ちていると感じます。それは、自己保存の法則という摂理にも反するものとも」

 

「傷付くことを厭わない在り方が、生物としては不合理で矛盾している。人ならざる機械の乙女には、そう映ったのだな」

 

頷くうたうちゃん。人は繊細で傷つきやすいという事は、夏草の民達への奉仕と皆の触れ合いで理解できていたつもりだった。そしてそんな役割が、時代を越えて襲名されていく事実に彼女は細やかな疑問を覚えたのだ。

 

「自己の生命を危機に晒し、他者の安全を護る。それは、あまりにも危機的で、恐ろしい判断だと思います。私のようなAIが欠損するのとは理由が違う。でも、彼等は自己よりも必ず他者の為の奉仕を選択する。…何故、そこまでするのでしょうか。仮面ライダーとは、ヒーローとは何故生まれるのでしょう。傷付く事を定められた、幸せを投げ捨てる様な方が何故現れてしまうのでしょうか」

 

…皆を幸せにしたい。広義的な意味の使命を持つ彼女はそう定義した。何故、ヒーローは…自身を犠牲にする者は生まれるのかと、彼女はその在り方に疑問を持ったのだ。

 

「…夏草の皆には、誰にも。そんな役割を負ってほしくない。それが、私が仮面ライダーを拝見し終わった感想でした。ですから知りたいのです。ヒーローは、どうして傷付く事を恐れず。人はヒーローを求めるのでしょう。ガンバライジング社にて飾られているライダー記念資料は、沢山の人に好評をいただいています。だからこそ…」

 

何故、人はヒーローを望み求めるのか。人はヒーローの痛みを容認するのか。ソウゴ…この人物ならば教えてくれる。そんなぼんやりとした予測を立て、うたうちゃんは告げたのだ。

 

「感受性の高い事だ。極限まで高まったAIの感性は、人とそう変わらんな」

 

その、AIの枠組の限界に挑むかのような悩みを無下にせず、迷わず、彼は自身の覇道を省み、告げる。

 

「私なりで良いのなら、その答えを教えよう。何故ヒーローは傷付く事を容認するのかと問うたが、逆なのだ。誰かの為に傷付く事を恐れぬ者、それがヒーローたる者の資格なのだ」

 

例えどれ程傷付こうとも、悪から何かを守るためには迷わず、躊躇わない。そう言った者たちをこそ、ヒーローと呼ぶのだと、ソウゴは口にした

 

「傷付く事を、恐れない…」

 

「そして、ヒーローを求めるのかという問いは難しいが、私なりの答えがある。聞きたいか?」

 

「…はい」

 

「時代だ。時代が痛みを、嘆きを、人々の想いを受け取った時にヒーローは生まれ、自由と平和を護る。何かに望まれたから戦うのではない。人々が見世物のスタントマンを求めるのではない。平穏あれと願った時代が、ヒーロー…いや。英雄を求めるのだ」

 

時代に生きる数多の平和を願う心、想い。それこそが、ヒーローが生まれる願いであり決意だと、ソウゴはうたうちゃんに告げる。例え最低最悪と蔑まれようと、彼の願いは変わらない。曲がることはない。

 

「世界を良くするために、時代を駆け抜ける。理屈など不要。ヒーローとは、仮面ライダーとはそのようなものだ。少しは参考になったか?鋼の乙女よ」

 

「…はい。ならば、仮面ライダーは…時代が求め、現れたヒーローなのですね。そして…きっと、あの方たちや、お爺さまも」

 

「フ…。いつもならば否定するものだが、家臣や私を慮る者を蔑ろにするわけにはいかん。今回だけ、その賛辞を受け取ろう」

 

うたうちゃんの問いを返したソウゴは、再び都市を見やる。

 

「…例え、世界の全てが焼き尽くされようと。時代が望む限り、ヒーローは必ず現れるものなのだ」

 

それは、未来を取り戻す為に戦った彼等、彼女らへの彼の忌憚なき評価にして、最大限の賛辞──。

 

 

 

 

 




うたうちゃん「…それでは、もう一つだけ」

ソウゴ「良いだろう。歳を取ると話が弾むものだ」

うたうちゃん「…夏草には、ヒーローは現れるでしょうか。夏草の皆を幸せにする、幸せにできるような存在が…夏草の皆が望むような存在が、いつか現れるでしょうか」

ソウゴ「…生まれながらの王がいないように、ヒーローは突然現れるものではない。仮面ライダーが現れるかどうかは、予想がかなわぬ命題だ。…だが」

うたうちゃん「だが…?」

ソウゴ「近い内に現れると、私は見ているぞ。人を助けるために痛みを恐れず、悪を許さぬ夏草を護る使命を懐くもの。私の見立てでは、いずれ必ず現れよう」

うたうちゃん「…!良かった。ではどうか、現れたなら教えてください。私は、そんな方を支えたい。夏草の皆の幸せこそ、私の使命。夏草の為に戦う方を、私は応援したいのです」

ソウゴ「ふははは…。ならば存分に励み、存分に奮起するのだな。そろそろ戻るぞ。家臣達が気を揉もう」

うたうちゃん「はい。…不思議です」

ソウゴ「?」

「魔王や、邪神。そう自称するあなた方と単語のイメージが一致しません。お爺さまは優しき御方で、マスターは私を導く頼もしい御方と、私は感じていますから」

ソウゴ「…お前が高次の精神性を獲得するAIならば伝えておこう。この世に絶対的な正義と、不変の悪は存在しない。忘れぬ事だ」

うたうちゃん「…はい」

ソウゴ「ではいくぞ。閉館まで、存分に楽しませてもらう」

愉快かつ、真摯に問いに答えるソウゴ。彼の瞳に映る、ヒーローを導きながら──

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