人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ガンバライジング社前

ウォズ「プロップ展示、スーツ改修品展示、バイクコーナーにバーチャルシミュレーションコーナー。それぞれのライダーの解説空間に写真を撮れる場所…一日では回りきれないかもしれませんね、我が魔王」

オーマジオウ(ソウゴ)「……」

ウォズ「我が魔王?」

『旧一号の銅像』

「…間もなく50周年を迎えるであろう、仮面ライダーの歴史。未来ある者たちに歴史は継がれたが、一度は停滞させた私のなんと罪深き事か」

「我が魔王…」

「フ、だが肩の荷も降りた。去るのみの老害として、歴史をただ、懐かしむとしよう。共をせよ、お前達」

ウォズ「はっ!」

ニャル【おーい、我等が魔王ー】

「む。邪神か」

ディーヴァ「ガンバライジング社へようこそ。よろしければ、ガイドは如何ですか?」

ウォズ「フットワークが、軽い…」

「はははは、では頼むとしよう。邪神、伴するか?」

【もちろん。マイサンやナイアにお土産いっぱい買いたいですからね】

ウォズ「よろしく頼む、うたうちゃん」

ディーヴァ「お任せください。行くぜ行くぜ行くぜー」

ニャル【あ、ライダー風の言動もできるんだ。多芸〜】


たまに分身して料理を作る人〜問題ない!!25人前までなら!!〜

昼下り、昇陽学園にて迎える昼休憩。テラス、外の空間に繋がる日当たりのいい間取りたる食堂。大人数のテーブル、カップル、友達向けの丸いテーブル、座敷などといった開放的な空間はなんと常に営業しており、食べたいときに美味しいものをお腹いっぱい、というのがモットーとして掲げられている。若者はお腹いっぱい食べるべしとの格言と共に設立されたその空間に、リッカは約一年ぶりに足を踏み入れる事となる。彼女が知るままの食堂、理念であればそれは食事と言う名の闘争であったのだが──

 

「いらっしゃいッッッッ」

 

リッカ達を迎え入れたのは、髪を後ろに辮髪として縛りまとめた、『美食』と書かれたエプロンを着用する気骨溢れる中華風の男だった。ルルは彼を、里帰り組に向けて紹介する。

 

「彼は新学期と一緒に転入してきた、一般食事コーナーのチーフ…小山烈さんだ。食べたいものを好きなだけ作ってやるさと、優しい接客と絶品料理が早くも生徒先生共に大人気の傑物だよ」

 

「紹介に預かった、烈と申す者。未だ食の道を極めざる半端者なれど、育ち盛りの皆にぴったりな食事メニューを提供する所存だッ」

 

生真面目で、深々と頭を下げる烈チーフ。その人当たりは、リッカが知る『あの』料理長とは一線を画す好漢だ。

 

「アカネッッッ!!また君は食事をカロリーメイトやカップラーメンで済ませたなッッ!!」

 

「ひぃい!?すみませんついつい癖で!あとなんか急に食べたくなっちゃって!」

 

「美味しくする『だけ』の成分の満載した食品、手軽な栄養食。摂るなとは言わんッ。しかしッッッッ!!健やかな成長という点では【邪道】ッッ!!」

 

風を切る音と共に差し出されたもの、それは今日のメニューと定食の献立。右には生産メーカーと烈チーフのにっこり笑顔が添付されている。

 

「皆食べていきなさい。噂に聞いていた藤丸リッカ以下お友達も一緒に」

 

「だ、大丈夫?割と大人数ですが…」

 

「私は一向に構わんッッ!!」

 

力強く背中を押される一同。その言葉を信じ、一同は席へと着席し料理を注文する───

 

 

強くなりたくば 喰らえ ! !(標語)

 

 

「「「「おいし~い!!!」」」」

 

リッカ、早苗、じゃんぬ、アカネらが一様に称賛し舌鼓を打つ。極上の定食料理…バランスとクオリティを両立させたラーメン定食にステーキ定食を頼んだ者達の腹と心を満たす至極の一時を、烈チーフは提供してくれた。

 

「肉美味しいわ!スープも絶品!これが学食とか嘘でしょ!?」

「580円!?価格破壊だよこれはッッ!!」

 

肉は焼き立て、焼き加減を肉に合わせて。野菜、サブメニューもしっかりと両立しガッツリと腹を満たし栄養をもたらす骨太な出来栄え。噛み切るたびに飛び散る肉汁が、自身の食欲という本能と満腹中枢を狂しく満たす。リッカ、じゃんぬ、実に御満悦にて肉に齧り付く。それ程までに肉との戦いは甘美なる時間であるのだ。立てられた旗もお茶目でこにくい。

 

「この担々麺だって絶品ですよ!絶妙なピリ辛で、啜る手と汗が止まりません!辛いのに無限に食べたくなっちゃいます!」

「ギョーザ、チャーハン…サブメニューだって美味すぎぃ…!」

 

早苗とアカネが感涙のままに咽び食べる担々麺定食は、一口食べればマグマのような熱さと電撃のようなピリ辛が口の中を襲う。しかしそれらは不思議と次の一口を招くスパイスと代わり、スープの絡んだ太麺を口に運ぶ手が止まらなくなる魔性の味わい。もっちりとした中身の詰まった特製ギョーザに、盤石な味付けのチャーハン。食にもたらす時間を至福のものとするその神妙極まる味わいに、早苗とアカネもまた虜になり味わい尽くす。

 

「相変わらずの出来栄えだな、烈チーフ。ピザも美味いし優秀だよ」

「すみません、本来なら先んじて頼んでおくのがマナーなのに…」

 

ルルとゆかなの言葉に、フッとニヒルに笑う烈チーフ。

 

「未来ある若者を笑顔にできた。これに勝る喜びを私は知らない。若きうちは気ままに、そして悠然と食べることこそが肝要なのだからッ。そうだ福山くん。部室に篭ってばかりの高橋くんに、これを」

 

それは、エルに個人的に作っていた烈チーフ特製のキャラ弁ならぬロボ弁。日替わりにて芸術的、それは見事なロボットをモチーフにしたお弁当が作られている。ほっとくと部室内で餓死しかねないエルに、彼が善意で作っているのである。今日は鉄人28号だ。

 

「わかりました。エルのヤツ、これを楽しみにするあまりいっつも昼御飯を抜いてるらしいんですよ。楽しみなのは解るんですが…」

 

「あそこまで行くと狂人の所業だな。一日三食ピザを食べる私の食生活を見習うがいい」

「…身近過ぎて気にかけなかったが、そんな食生活でよくそんな細さとスタイルを維持できるなお前は…」

「坊やとは身体の出来が違うのさ。お前はもう少し筋肉をつけたほうがいいぞ、もやし君」

 

俺は頭脳派なんだ…!とヤケクソ気味にピザを頬張る様を微笑ましげに見ながら、グドーシは烈チーフに問いかける。

 

「いやはや見事な腕前、感服いたしました。夏草の学園は食事処も絶品とは。心より感謝致します」

 

「謝謝ッッ!!私こそ、作った料理を美味しいと食べてもらえるのは何よりもの喜びだ。昨今では、写真を上げるためだけに分不相応な食品を注文する不届きものも増えてきた。君達の快活な食への向き合いに救われた気分だよ」

 

真面目にグドーシの言葉に礼を返し、サービスとしてプリプリのプリンを皆に配る烈チーフ。もちろん手作りである。

 

「好きなだけ食べていけばいいさ…!お帰り、夏草へ!」

 

「……顔に似合わず、素敵なスイーツを作るんですね、あなた。同じスイーツを作るものとして、あなたは優しくいい人だと分かります。このプリンみたいに」

 

じゃんぬの言葉に、みるみる内に顔が真っ赤になっていく烈チーフ。プリンにはさくらんぼとクリーム、旗が添えられている点が非常に可愛らしく芸術点が高い。

 

「ありがとう、烈チーフ!私の思ってた食堂と大分違ったよ!」「リピーターになります!」「ツケとか、大丈夫ですかね…?怪獣費用で苦しいときとか…」

 

「く…食うんだッッ」

 

照れ隠しにプイッとそっぽを向く烈チーフに一同は暖かく可愛らしい想いを共有しながら、プリンを余すことなく口に運ぶ。

 

「完食ッッッッ!!一同完食ッッッッ!!ありがとう、食材達は血肉となって君達を形作るだろうッッ。それでは、我々の糧となってくださった命達に手を合わせ、食事の締めとしようッ」

 

烈の言葉に、一同はなんら躊躇う事なく手を合わせる。烈チーフの理念は一つ。真摯であれ。いただいた命に誠実であれ。

 

「せーのッッッッッッ!!」

 

「「「「「「御馳走様でしたッッッッ!!」」」」」」

 

食堂いっぱいに響き渡る感謝の挨拶。烈チーフは真っ直ぐ健やかに育った生徒達の心に安堵し…──

 

「またのご利用、心よりお待ちしておりますッッ」

 

ニッコリと、太陽の様に笑みを浮かべるのであった──




早苗「上の上でした…!まさか学食がこんなにパワーアップしていたなんて!転校したのを後悔しきりの日々を思い出しましたよ!」

グドーシ「これでやくワンコイン近いとは、実に素晴らしい。健やかに育つでしょうなぁ…」

じゃんぬ「リッカにアカネ、凄く警戒してたように見えたけど…どうしたの?」

アカネ「わ、私はその日頃から非常に不摂生でして、いつチーフに怒られるかなとビクビクしていただけで…先輩はどうしたんですか?」

リッカ「いや、そのね?今日は学校自体お休みだからそんなでも無かったけど、平日のこの時間には…」

彼女が何故、恐怖…いや、畏怖していたのかを語らんとした時。

?【腹ァ空かせた盛りの雄共が、我先にと俺の馳走を喰らいに来やがる。ソイツの滾りが忘れられねぇんだろう?藤丸】

リッカ「!!!」

圧倒的な『強者』。圧倒的な『雄』。誰もが理解する絶対的存在のオーラが、眼前より迫りくる。

【帰ってきたんなら言え、アホウが】

上半身の鋼の如き筋肉に『勇ちゃん』と書かれたエプロン。ニヤリと鬼の如き風貌、逆巻く怒髪の大男。

「ゆ、勇次郎料理長ッッッッ!!御無沙汰しておりますッッ!!」

勇次郎──大塚勇次郎。運動部を始めとした食らいたがりの『雄』にのみ向けられた料理を作る、地上最強の料理人。夏草に居を構える、校長に並ぶ学校の頂点だ。最敬礼にて迎えるリッカ。彼女にとっての『食』とは、彼に教わり、彼が叩き込んだものだからだ。

【イイ女に育ちやがって。余程外国で美味い飯を喰らってるみてェだな…】

じゃんぬ(さ、サーヴァント!?違うわよね…料理長なの!?)

【帰郷祝いだ。面ァ貸せ】

「えッッ!?」

【特別だ。拵えてやるぜ。──握り飯をな】

リッカ「はっ、ハイッッッッッッ!!」

一同に激震走る。彼が料理を『創造(つく)る』という意味を、リッカは一年ぶりに思い出す事となる──。


次回に続くッッッ!!

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