「引っ張るなちぎれるぅ!!ていうか触媒あんのに何引いてんだお前!?」
「運命を感じたかったの!」
「はぁ!?」
「通るがよい」
「しゃあ当たったぁ!!通してもらうぜ山のじいさん!!」
「通るがよい」
「待ってろよ、英雄王ッ!お前との縁に従い!アキレウスが推して参るッ!!」
「走るな」
「ぐおぁあッ!!マントは踏まないでくれ――ッ!!」
「・・・」
(当選しましたか。・・・しかし、何の縁の無い私が、あちらに招かれてよいものか・・・)
「大賢者よ」
「・・・山の、翁・・・」
「汝の叡智、先達として授けるがよい。――往け」
「・・・解りました。感謝を」
(オジサンは外れたか。ま、アイツがいくなら大丈夫でしょ)
「⬛⬛⬛⬛⬛――――!!!!」
「まずこっちを止めないとなぁ!!」
召喚サークルの光が広がり、また収まる
「気の進まぬ召喚よな・・・」
溜め息と共に頬杖をつく英雄王
「ギリシャなど神々と最も近い集団ではないか・・・」
「ま、まぁまぁそう言わず・・・ね?」
「・・・趣味嗜好と、裁定の結果は別の結果、か」
――気分が悪くなったなら、最悪自分が支えます、王
「よい。巻きで行け、巻きで」
現れたのは・・・
「はーい!リッカお待たせ!アルテミスとオリオンでーす!」
「どーも、おりべぇでーす」
熊っぽい何かを抱えた、純潔の恋愛脳。アルテミスが現れた。器はオリオンの変則召喚だ
「やほー!久しぶりー!」
「久しぶりー!会いたかったよリッカ!来ちゃった♪」
「すんません。お世話になりますすんません」
「・・・・・・・・・・・・」
「ぎ、ギル?落ち着いて、ね?」
「・・・何も言うことはない。手綱を握るはマスターよ。我には関わりのない話だ。次」
「あー!つれない反応ー!ダーリン私達受けがよくないみたいだから夫婦漫才でもやる?」
「お願いだから王様の不興を買わないで!?」
――これで触媒は総て使用した。後はランダムかつ縁の召喚だ
「失礼する。休憩にスイーツと飲みものを用意した」
大きなトレイと共に、召喚室に入室するヘラクレス
「召喚の片手間につまむといい。ジャンヌ先輩の計らいだ」
「うわぁい!スイーツだ!ギルも食べなよ!ストレスには甘味が効くよ?」
「次」
もぐもぐと頬張る器
「もう食べてる!?」
召喚サークルが回り、輝きが部屋を満たす。
「丁度よい。貴様も同席せよヘラクレス。ギリシャの顔馴染みに出逢えるやもしれぬぞ?」
「――そうか。今回はギリシャか。ギルガメッシュ、心労をかけるな」
「よい。大抵の不祥事は神々の愚行であろう。貴様が頭を下げるモノではないわ」
「・・・お互い苦労するな」
「全くだ」
――ヘラクレスに対しては、器も幾分砕けているような気がする。やはり半神半人同士、気が合うのだろうか
「そら来るぞ。誰が参ずるのやら」
輝きが収まる
現れたのは・・・
「――我が名はアキレウス!父ペーレウス、母に女神テティスを持つ、俊足と勇猛の大英雄!一足『速く』馳せ参じてやったぜ!」
軽鎧と、勇猛さを表す逆立つ頭髪
「ほう。わざわざカルデアにまで参ずるとはな」
――来てくれたのか、アキレウス・・・!
「おう!英雄王、お前の旅路の先陣を切り開きにな。出逢った縁を手繰り寄せてちょちょいときてやった!嬉しいだろ?」
「フッ、落ち着きの無い
「そう言うな。俺もこれから世話んなるぜ」
「解ったぞ!君がいっていたはぐれサーヴァントって・・・!」
――そう。今にして思えば、ヘラクレスに対するカウンター召喚にて招かれていた、彼の事だ
「にしても・・・俺のマスターは」
キョロキョロと辺りを見渡す
「は、はい!藤丸リッカです!」
「ほう。で、こっちは」
「マシュ・キリエライトです」
「ほうほう。で、こっちは」
「カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアです」
「ほぉ~う・・・なるほどなるほど・・・ほぉ~~う」
くしゃっと破顔するアキレウス
「成る程。いい女の雛が三人もいるたぁな。こいつは楽園だ!」
「いい女!!やったよマシュ!女扱いされた!!」
「そこですか!?」
「よろしく頼むぜ?俺の勇猛さに、惚れるなよ?」
パチリ、とウィンクを飛ばす
――本当にギリシャの英雄なんだな
「好色は自重しろ、アキレウス」
「――ヘラクレス・・・!!」
「貴様は逢っていなかったな。理性を取り戻したアーチャーとしてのヘラクレスだ。どうだ?貴様を上回る大英雄の本領だぞ?」
「――おもしれぇ・・・!一丁やるか!!」
「ここでは止めてくれ!シミュレーションを後で起動するから!!」
「ロマン殿の言う通りだ。・・・どの道、俺は逃げも隠れもしない」
「忘れるなよ、ヘラクレス。――まぁ、宜しく頼むぜ!英雄王と愉快な仲間たち!」
「うん!よろしくね、アキレウス!」
「おう!」
コツン、と拳を合わせるリッカとアキレウス
「フハハハハハハハハハ!貴様はましな方であったな!さぁ、次に行くとしよう!」
機嫌を良くした器。――無理もない。彼は肩を並べ、ヘラクレスと戦った大英雄なのだから
「次だ!さぁ誰が来るのやら!」
召喚サークルが輝き、光が広がる
「君アキレウスと一緒だったのか・・・」
「成る程、我が身を11度殺し尽くせるも道理」
「倒すに苦労したがな。――まぁ話は後だ」
召喚の光が収まり
現れたのは――
「――アーチャー、ケイローン。教え子たちの引率、目附として顕現いたしました」
理知的かつ、穏やかな雰囲気を漂わせる、賢者のごとき立ち振舞いのアーチャーが現れた
「――ケイローン、先生・・・!?」
「久しぶりですね、ヘラクレス。キャストオフは気持ちよかったですか?」
「・・・・・・!!」
「ケイローン!?そんな、まさか・・・!?」
愕然とするオルガマリー
「ど、どうしたの?誰?」
「ケイローン!神の父と母を持つ、伝説の大賢者!ヘラクレス、アキレウス、カストールに叡智を授けた、ギリシャ最高の教導者――!!」
「うぇえ!?そんなに凄い人なの!?」
「空に輝く射手座があろう。それがそのケイローンよ」
――星座の原型・・・!?それはもしや、世界で一番有名な弓兵なのでは――!?
「バカな!ケイローンは紛れもない神霊、ステンノやエウリュアレとは訳が違う!召喚が叶うはずは――!」
「ははは、よく知っていますね。・・・その疑問の答えは私の末路に関わっています」
「末路に?」
「・・・大賢者、ケイローンはヒュドラの毒に侵され、死して尚生き返り、死に続けると言う地獄を味わった。それを見かねた神々が・・・」
「私から不死を奪い、介錯を行った・・・故に私は、ランクダウンした英霊として現界が叶うのです」
――不死を、返還して、介錯をした・・・?
「噂に違わぬ効力よな、ヒュドラの毒とは。成る程、今度イシュタルめに試すとするか」
「・・・先生、その節は」
「良いのです。私は、貴方を責めるために召喚に応じたのではありません」
ゆっくりと、マスターとマシュ、オルガマリーに向き直る
「未来を取り戻さんとする貴方達の、お力添えをするために参ったのです。・・・マスター」
「はいっ!」
「貴方の抱えた闇と、其処から生まれる光・・・どうか私にも、それに照らされる許しを与えてくださいますか?」
「は、はいっ!もちろんです!!」
「ありがとう。マシュ・キリエライト」
「は、はい」
「貴女は、今行っている旅路の総てが。貴女の願いの答えになる。迷いを抱えながら、揺るぎなく進むことです」
「は、はいっ」
「期待していますよ。そして、オルガマリー・アニムスフィア」
「は、はい・・・」
「・・・貴女は、特に私が教えを授けたい相手だ。後に、ゆっくり御話をいたしましょう」
「は・・・はい!こ、光栄です!」
「よろしくお願いいたします。・・・では、英雄王。私はカルデアを見回ってきますが、宜しいですか?」
「許すぞ、大賢者。ヘラクレス、案内してやれ」
「あぁ。――こちらです。ケイローン先生」
「ありがとう、ヘラクレス。・・・では皆様、また今度」
穏やかな笑顔を浮かべ、二人は退出していった
「――大賢者、ケイローン・・・」
「詳しかったね、マリー」
「・・・子供の頃、よく空を見上げて星を眺めていたもの。良く見えたのが、射手座。だから、伝承も調べたりしたもの」
「成る程な。お前の好きなクラスがアーチャーなのはそれが理由か?」
「・・・それだけ、ではないですよ。ギル」
――こちらを見つめるオルガマリーと、目が合った
「そうか。――少し休憩を挟むとするか」
玉座から立ち上がる
「そろそろ決めるとしよう!風呂と食事にて身体を整え!再びここに参ずるがよい!!」
――いよいよ、か
「――セイバーを召喚し!!我の戦いに決着をつけるのだ!!」
――恐らくこれが、王の本懐を果たす戦いとなる――!!
「リッカちゃん、信仰する神様は決まった?」
「ん~。アルテミスにしようと思ったんだけど、皆がヘスティアやハデスがいいって」
「ガーン!(゜ロ゜;どーしーてー!?」
「いやぁ猪差し向けないし、病気撒き散らさないし恋人撃ち殺さないしいででででで!!!」
「事実だけど納得いかな~い!!」
「じゃあさ、アルテミス」
「?」
「・・・友達じゃ、ダメ?私、アルテミスとオリオンの話をたくさん、隣で聞きたいな」
「――――」
「いっぱい聞かせて?オリオンとアルテミスの出逢いとか、のろけとか、色んな話!私、アルテミスをもっともっと好きになりたい!応援したいの!」
「――リ」
「リ?」
「リッカ大好き――――!!うん!聞いて聞いて!私とダーリンのお話いっぱい聞いて!もう沢山祝福あげちゃうから――!!」
「やった!よろしくね、アルテミス!」
「うん!人間の友達、初めて作っちゃった!やったよダーリーン!」
(・・・リッカちゃんが男じゃなくて助かった・・・確実に俺よりタチの悪い女神たらしになってた筈だ・・・!)
「ジャンヌ先輩、新しい希望者を連れてきました」
「イリアス出身、アキレウスです。手先はそんなに器用じゃないんで配達志望です(折檻された跡)」
「ケイローンです。接客には自信があります」
「ご一考を」
「えっ、あの、その・・・わ、私のお店でいいんですか・・・?」
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