人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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大江山

リッカ「あかしの譲渡!?」

酒呑童子「そ。なんやキャスターはんがやったほうがええて言いはるんよ」

パラケルスス「あなたは源氏の陣営、手ぶらで帰ればあらぬ疑いをかけられましょう。ここは私を討伐せしめたと見せかける戦利品として、あかしを」

リッカ「でも、パラケルススは…」

パラケルスス「御安心を。令呪がなくとも、私は彼女のサーヴァントです。一度盤面から離れたからこそ、出来ることも見えましょう」

リッカ「…うん!よろしくね!」

茨木「変化があれば参じよう。心待ちにしておけよ」

リッカ「お願いね!鬼の皆!」

ロマン『じゃ、その作業はボクがやるよ。ところでメイちゃんはどこ行ったのかな…?』



道満「晴明殿。どうか気をつけなされ。リンボなる声、かすかに聞き届けた言葉に、これが」

メイ「うん?」

「──【大魔縁】と」



メイ「…杞憂であってほしいものだが」


激突!源氏会議!!

「では──僭越ながら。我等源氏棟梁、即ち頼光様のお許しを得て、諸々を確かめさせていただく。一同宜しいか。異あれば疾く申されよ」

 

源氏、即ち源頼光の屋敷に戻ったリッカ達を迎え入れ、受け入れし源氏の郎党たち。最強の武者の群れの厳かにして厳つき雰囲気に、桃子とマシュは肩を寄せ合い縮こまる。リッカは頼光の傍にて正座を要し、無言を以て了承となす。

 

「では──天覧聖杯戦争の儀にあたり、京の都に喚ばれたる異境異界の術者、残るは四騎。頼光四天王筆頭、渡辺綱殿を天覧武者とするメディア・リリィ殿」

 

「はい」

 

「源氏棟梁、源頼光様を天覧武者とするナーサリー・ライム殿」

 

「……」

 

(カルデアにいるライムちゃんとは違う姿なんですね)

(はい、オリエンタルです!)

『正確には、ナーサリー・ライムはお伽話だから決まった姿を持たないんだけどね。ボクらが見慣れたゴシック幼女は、彼女の数少ない決まった姿なんだよ。いつかに契約したマスターの影響なのかなぁ』

 

(へぇ〜。リッカも戦うときに姿を変えるって話だからよ、サーヴァントってのは綺羅びやかで衣装持ちって奴だな!)

 

ひそひそ声で話をするマシュ達。しかし水面の凪の如くに静まり返った空間では、十分過ぎるほどの喧騒なれば。穏やかなれど確かな諫言が飛ぶ。

 

「あー、金時殿にお連れの方。口をつぐまれよ。聞こえておりますぞ。常であれば首を刎ねる部分。お控えなされ、各々方」

 

「「ごめんなさい!」」

 

「悪い悪い。皆黙ってる最中にゃ内緒話も喧騒ってな!」

 

「ダメですよ。娘の前で母に貴方の首を刎ねさせないでくださいな」

 

「へーい…」

 

「御返事はもう少し…」

 

「はい承知!」

 

「ぷっ…やっぱり兄ぃ、形無しなんだね」

 

リッカの、見慣れた風景。金時がやんちゃし母が嗜める。そんな関係は生前からも続いていることを知り、心が浮き立つ。

 

「あー、おほん!続けまするぞ!よろしいか!」

 

話の腰を折られし郎党、ペースを取り戻す咳払い。再び沈黙が辺りを包む。

 

「無言を以て了承とみなす。改めて──一騎目、メディア・リリィ殿。ニ騎目、ナーサリー・ライム殿。三騎目、チャールズ・バベッジ殿。そして四騎目。坂田金時殿を天覧武者とする…」

 

「「「「「藤丸龍華!此処にあり!!」」」」」

 

「何そのノリ!?」

 

「お控えなされ!お控えなされ!以上の四騎が、都に残る最後の術者となる。以上の事柄、いずれ相違ないか?」

 

一同は沈黙する。リッカはサーヴァントではないのだが、今ここに至って青筋立てて否定する道理も無く。そして──

 

「そして、藤丸龍華殿は術者でありながら、未来に生きる源氏の棟梁、その写し身となられし客人としても此処にあり。その言は安倍晴明殿が文にて保証し、その来歴は誉れ高き童子切安綱を佩く事からも明々白々。その由来、その来歴。疑う余地は他に無し!」

 

ここに来て、様々な助けをくれた皆の善行が結実する。彼女の身柄の正しさは彼女ではなく、彼女を取り巻く全てが保証してくれたのだ。

 

「…確かに身元、出自は認める他ない。しかしその言動には危険なものを孕んでいるように見える。先の時金時や棟梁から離れ何をしていた?大江山に向かっていたようだが」

 

綱の言葉に、リッカは上着を投げ捨て背中を見せる。そこには、鬼の顔を模した証が浮かんでいた。それは、酒呑童子がリッカに譲ったマスターの証。

 

「大江山の大鬼、酒呑童子。そのキャスターの誅伐に天覧武者たる『あかし』の回収を」

 

「おぉ…!あの酒呑童子を脱落させたか!」「流石は未来の棟梁よ…」「あの細身で、よくぞ童子切を振るうだけはある」「は、はしたなくはありませぬかな?」

 

「リッカ、もう少しやわりと見せて良いのですよ?そのように、風呂に入る金時のような豪快な投げ捨てぶり…いえ愛らしいですが」

 

「大将!?」

 

「ともかく。我が未来の愛娘の言はまこと。なればこそ、彼女の言葉は我等都と天下の平安を道長様より預かる我ら源氏。耳を傾けるに値します。──そう。天覧聖杯戦争の儀、大悪の企てであるとの故」

 

その場を取り仕切る大将、頼光の言に静まる一行。異議など挟まるはずもない。彼女こそは、一騎当千の武者達の棟梁、頂点であるのだから。

 

(かっこいいなぁ。お母さん…)

 

リッカはその様子を見やる。誇らしげに。そして源氏の棟梁として、彼女は場を仕切り制する。

 

「大悪の企て、これを知らぬ存ぜぬと決め込んだとして、まこと企て成されたならば。我等源氏、龍華の時代に至るまでの恥。摂津の領地すら如何な処分となろうか。──我等の時代にやってきた未来の棟梁、我が娘リッカ。ならばあなたに問いましょう」

 

「!」

 

「大悪の企て、阻むには何を成すが最善と見ますか?指針として、我等源氏にお伝えくださいますか?」

 

リッカ、母の無茶ぶりに生唾を飲み込む。彼女は今、未来の源氏の棟梁として平安の行末を問われたのだ。守護する際の一手は、如何に打つものなるやと。ギルが請け負うべき立場に立たされつつも、リッカは気合を以て告げる。

 

「──今いるキャスター、そして武者。全員の力を合わせて儀式自体を破算にするのが肝要かと。その為には勿論、綱さんとメディア・リリィの力も必要になると考えます。死合を止め、皆の心を以て天覧聖杯戦争に否を叩きつける。それが最善だと私は思います」

 

「……」

 

(…?あれ…?)

 

「ありがとう、我が娘。綱、あなたはどう考えます?」

 

綱はリッカの目線に微塵も臆することなく見やる。リッカはそこに、『決意』を見た。それは…義務、或いは使命とも違う。強烈な『自負』。綱は知ってか知らずか、淡々と応える。

 

「是なる天覧の死合への参加、紛うことなく左大臣より下された命。然らば、左大臣殿の新たなる命なき以上、天覧聖杯戦争は滞りなく進めるが筋。俺は左様に心得る」

 

あくまでも、それは武者の義務にして責務。しかしリッカは、或いはリッカの龍は見抜いた。綱の熱は、綱の決心は『都の守護』にも『義務』にもないと。

 

「結構。……我等源氏、最強の武者の群れ。言の葉交わして尚二つの意が残るとき、如何にして決めるかは云わずと知れましょう」

 

──正直のところ、リッカはそれを知っていた。母の事を聞く中で、彼女はそれを聞いていたからだ。

 

「各々の意。──刃にて押し通すべし。己が意を通すため、刃に懸ける。己が意を護る為、刃で受ける。先代までのやり方とは些か違えど、これぞ我等の源氏会議なれば」

 

そう。それこそ武者が本懐を遂げるに行う対話の要。刃にて意志を載せる源氏のコミュニケーション。綱は静かに、金時は膝を叩き立ち上がる。

 

「…致し方あるまい。未来の棟梁、待ちわびた娘を切り捨てるとあるのは心苦しいが…」

 

「ヘッ。悪いな綱の兄貴。そうはさせねぇし、オレらは負けねぇ。未来の頼光サンの娘であり、オレの妹でもあり、何より──」

 

「……」

 

「我等源氏が一粒種!未来に至る子々孫々、我等が狩るは道理に非ずってな!我が術者、縁結びの龍!この生護らぬは源氏の名折れ!リッカの命、心意気!オレは預かり応えるともさ!!」

 

「金時兄ィ…!」

 

リッカへの全幅の信頼、そして未来に至るまでの源氏の戦いの証。それを護らんと立つ金時。綱との火花は、見えずともぶつかり合っている。

 

「綱、金時。異議は?」

 

「「異議、なし!」」

 

「ならば汝。四天王、主馬佑坂田金時」

 

「おうさ!!」

 

「ならば汝。四天王、内舎人渡辺綱」

 

「はっ」

 

「己が意を、刃と変えて。八幡神の御前たるこの場にて!いざ、披露せよ!!」

 

棟梁の言葉が響く。そう、此よりは己の意志を通さんがゆえの天覧死合なり──!!




リッカ「…!」

源頼光「…綱…金時…」

(…平気な訳、無いよね。大事な息子たちだもん)

金時「安心しなよ兄貴。そっちの術者は狙わねぇ。リンボの野郎にくれてやるのはもったいねぇからな」

綱「加減の効く相手と侮るか」

金時「逆だぜ兄ィ!味方は皆で破顔一笑!敵にはまとめて閻魔沙汰!それが俺らの!リッカの懐く旗印よ!!」

リッカ(──なら、あの二人の行末を見届ける人を招く!)

二人が果てず、しかし全力で戦える『御前』。

マシュ「先輩!もしや!」
桃子「呼ばれるのですか。かの守護神たるおじいさまを…!」

リッカ「うん!久々に──!いざ!!」

リッカは高々と、『勾玉』を掲げ──

『──平将門の名の下に!!』

日ノ本が守護神に、願い奉る──!

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