桃子「どうされました?」
「桃色に輝いているっ!!」
鬼「確か桃って魔除けじゃん?」
鬼「それに入れてりゃそらそうよ」
鬼「茨木清潔。エンガチョー」
茨木「貴様らぁ!!ぐぬぬ、なんだか肌がすべすべだぞ…」
マシュ「美肌ですね!!」
茨木「なんだ貴様は!?」
鬼「しかし同盟か。茨木様見たく上手くやれるか?」
鬼「とりあえず突撃、とりあえず破壊だもんな」
鬼「統率とか自信ないわ」
パラケルスス「心配ありません。私が皆様の賢さを上げる薬をこちらに。これを飲めば…」
〜
インテリ鬼「であるからして、九九は81となるわけです」
インテリ鬼「さみだれを あつめてはやし もがみがわ」
インテリ鬼「支点力点、作用点」
イヌヌワン『頭が良くなった!』
フワイサム『知能ドーピングとは』
アンク『えぇ…?これ良くなってる…?』
パラケルスス「少なくとも、意思疎通はスムーズかと」
ロマン『…酒吞に選ばれた理由、なんとなく解るよ…』
オルガマリー『魔術師ってえげつないわよね』
ゴルドルフ(君も人のことは…ゲフンゲフン)
桃子「しかし温羅、何をリッちゃんに渡したのかな」
マシュ「鬼のぱんつなどでしょうか?」
桃子「せくしー…」
ゴルドルフ(ツッコミ不在…!リッカ君!早く帰ってきたまえよ!)
オーマジオウ【ロマン。そなたは仮面ライダーになる資格を得た】
ロマン「いきなり!?」
「うふふっ。そない強張らんくてもええんよ?温羅はんの知り合い、悪いようにはせんよって。ほら、隣座り?」
酒吞に連れられ、リッカが訪れた場所。そこは御殿の屋根上、空と星、月を一望できる天然の展望台とも言える絶景スポットであった。此処がお気に入りなんやわぁ、と悪戯げに微笑んでみせる。
「その腰に付けた刀、あんたはんの中におる魔性神性。あんたはんがあの牛女の縁者なのは読めとったけど…まさか温羅はんとまで仲良しだったのは予想外やったわぁ。アレやね?あんたはん、縁結びのキャスターはんなんやろ?」
「あっ、それいい!素敵な解釈…!流石酒吞、風流!」
「あははっ、褒めとるんそれ?怖がりもせんと、鬼にこうして会いに来るなんて…頼光の娘はいけん子やわぁ」
楽しげに会話を弾ませる酒吞、そしてリッカ。通常の人間は鬼を見れば気が触れる。故に酒吞がまともに話した人間など数えるほどしかいない。一秒後に襲いかかる危険あれど、酒吞は確かにこの瞬間を楽しんでいた。
「温羅ネキと知り合いなんだよね、酒吞。どういった出会いをしたの?」
「ん〜?せやねぇ。うちが日本を離れてふらーっと大陸の方まで行ってた時、ひろぉい荒野でばったりと。ちょうど行くあてもないって言い張った温羅はんに、大江山を紹介しようと一緒に海を渡ったりしはったんよ。そんでその間、温羅はんと酒盛りしたりしながらこっちの鬼が何かを教えたりしたのが、うちなんや」
大陸のどこぞにて、温羅と出会い汎人類史における鬼の在り方を温羅へと伝えた。長い長い大陸の旅を徒歩で共に渡り、海を渡りながら日本に帰り、大江山に至る。言うなれば酒吞は、温羅の先輩や盟友にあたる存在なのだ。互いの対等の関係は、そこにある。
「で、力を貸す話やけど。ええよ、貸してあげるさかい。よろしゅうな?」
「勿論ただでとは…ってあれ!?いいの!?」
リッカが口火を切ろうとした瞬間にはOKを出していた酒呑童子。よもや鬼の中の鬼たる彼女があっさりと首を縦に振った事実に驚愕するリッカ。酒呑童子を図り、御せるものは誰一人としていないのだ。
「金棒持たせるくらいにお気に入りの娘を寄越してきたんやから、よっぽどの事なんやねぇ。温羅はんがおるのに解決できない問題なんてどないごっつい難題なんやろって興味も湧くわぁ。せっかく来てくれたんやもんね。手ぶらで返すのも無粋やわぁ。ね?リッカはん?」
彼女は誰よりも自由。立場、強弱、支配者と奴隷層。人間と鬼だよなどという括りなど意に介さない。やりたいことをやりたいように。それが彼女の理念なのだ。
並びに、鬼は義理堅い。酒呑童子には恩があった。大陸の行脚の際、帰り道の旅路の面倒を見てもらったこと。偉大なる峡谷のキャンプにて、酒を振る舞われながら星を見上げた事。その事実は、彼女の心に残っている。
「酒吞…うん、ありがとう。やっぱりあなたは、誰もが認める鬼の中の鬼だよ」
嘘偽りない称賛。気が向けば、義理があれば助力を即諾してくれる。アルクの言ったとおり、魔や鬼は嘘偽りを行わない。反故にし騙すは人間のみだ。
「ええのええの。日本に残る神秘を、世界の裏側に引っ越させる。そんな面白い事ありえへんやろと思ってたんやけど…あんたはんが産まれた先まで未来があるんは、うまくいったんやろねぇ。流石は温羅はんやわぁ」
酒吞は彼女の理念を笑い、しかし否定せずに覚え続けていた。人の世に未来を託す。それを成し遂げたかつての旧友がもたらした縁を、手を叩いて褒めそやす。
「えへへ…でも、貰いっぱなしじゃないよ。温羅は酒吞に、きっちり誠意を見せてくれたんだから!」
そうしてリッカは本来…正当なる温羅の名代としての証を示す。それは力の金棒ではなく、彼女と過ごした『絆』の証左。桃色の瓢箪。
「!…あらぁ…ほんまに?温羅はん、それ、渡してくれはったん?」
「うん。『契りとして、お前さんに預けるぜ。いくらでも飲んで構わんから、アタシの夢に力を貸してやってくれ』…って」
酒吞に渡したもの、それは温羅が命よりも大切にしている桃源郷の瓢箪。汲めども汲めども湧き上がる絶世の桃の美酒の源泉、奇跡の瓢箪。桃源郷との思い出満ちるその瓢箪を、リッカに預けていたのだ。酒吞は珍しく目を白黒させる。これがどんな意味を示すか、酒吞は知っていたからだ。
(この娘、よっぽど大事なんやね。奪われない、奪わせない為に半身の瓢箪まで寄越すなんて。豪快以外言えへんやないの、温羅はん)
「そして、これは個人的な感謝の気持ち、なんだけど…」
言葉と共に、リッカはそれを示してみせる。それは新品と見まごうばかりに磨かれた、紅い酒器。
「?年代物って訳やないけど…これが、どないしたん?」
「……貰ったものなんだ。いつか成人になったら、これを使ってお酒を飲みなさいって。…酒吞、あなたから」
その言葉に、いよいよ驚きを隠さなくなった酒吞。なぜなら、聞くこと聞くこと全て新鮮極まるものでしかないからだ。
「…温羅はんだけでなく、うちも未来に呼ばれるんやねぇ。うちはどないな風に、あんたはんを助けたん?」
「…死にたくなるくらい痛い時、いたいのいたいのとんでけしてくれたり、人生のアドバイスをしてくれたよ。やりたいことを、やりたいようにやればいいよって。この盃は、彼女を止めた時に貰ったものなんだ」
そう。まだ人間か獣かの境が曖昧だった頃。彼女は…躯になっていようと彼女は告げてくれた。窮屈にならず、やりたいことをやればいい。その言葉は、今も自分の中に生きている。
「尊敬、してるんだ。酒吞や、温羅ネキ、茨木。鬼ってすっごい豪快で、痛快で、自由だって。だから…私は、皆の力も借りたいの。自由と、強さを誇るきままな鬼達の力も借りて、私は掴み取りたいんだ。皆の未来を」
「……」
リッカに見せられた酒器を眺める。飲み干す際に当たる牙がつける傷の形は、紛れもなく自分が付けたもの。つまり…
(気に入ったのは、未来のうちも同じなんやねぇ…)
敵意で鬼を睨む輩は数多無数。悪鬼滅殺の気概で刃を振るうもまた無数。されど──感謝御礼を懐き見据える人間は、今ここにいる娘が初めてだ。
「──あはは!勿体ないことしたわぁ。即決せんでごねてれば、この瓢箪と器、貰えたのになぁ。うふふ、お話上手やね。リッカはん?」
「あ、温羅ネキはそれを渡すって言ったけど!それは温羅ネキの大切なものだから代わりに…!」
「ええよええよ。うちもこれを貰うんは気が引けるわぁ。持って帰ってええよって」
この状況でも、決して物怖じせぬ娘に、返礼としての提案を残す。
「じゃあ、こないしよか。うちとあんたはん、一緒にこれで一杯呑んで、契約成立。仲良しこよしで手を取り合って、頑張るさかい」
「──うん。解った。未成年だけど、この場所だけ、ね」
「あははっ!ほんに悪い子やわぁ。でもまぁ──」
その気概溢れる少女に向けて、彼女は告げる。愉快げに、そして楽しげに。
「温羅はんはともかく。うちらみたいな鬼に憧れとったら…ろくな大人になれへんよ?」
「いいの。良いか悪いかを自分で決めて、やりたいようにやる。それが私の生き方だから!」
「ふふっ。そう──なら、傍でじっくり、見させてもらうさかい。よろしゅうな──」
…そうして酒吞とリッカは、同盟の契りの盃を交わした。桃のような甘さと酒気が満ちる仙酒に、うっとりと微笑む酒吞。
(──ありがとう。酒吞。それと…ウラネキ)
お酒の味を美味しくしてくれる絆の品。酒吞がくれた酒器、そして未成年飲酒を乗り越える、温羅の厚い気遣い。
そう──この瓢箪は、ノンアルコールの仙酒やピーチジュースも出る優れ物であり。万が一にもリッカに飲酒をさせないための温羅の気遣いであったのだ。
「リッカはん」
「ん?」
「酒の味、はよう解るようになるとええなぁ」
「…お見通しかぁ…」
そして此処に──鬼との契りが結ばれる──。
マシュ「無事で何よりです、先輩!」
桃子「酒吞とは、何を?」
リッカ「他愛のないお話だよ。うん。本当…些細で、他愛のない…ね」
晴明『お疲れ様、リッカ殿ら諸君』
マシュ「メイちゃんさん!」
リッカ「同盟、結べたよ。しっかり助けに来てくれるって!」
『それは何より。では残るは、綱のみか。そこのあたりは、あの親子がやってくれるようだ。早急に屋敷に戻りたまえ。始まるようだ』
リッカ「始まる?」
メイ『あぁ。『源氏会議』がね──』
〜
茨木「温羅のやつめ…自らでは飽き足らずあんな娘まで用意するとは。そっくり過ぎて驚いたぞ!」
酒吞「うんうん。そやね、本当にねぇ」
茨木「酒吞?その器は…」
酒吞「ん〜?返してくれたんよ。同盟の証って。ふふっ──ほんまに律儀。誰に似たんやろか?」
(ねぇ、温羅はん?また会えるんやろか。楽しみにしとくさかい、また飲ませてや──)
内裏・屋根
温羅「──また、一杯やろうや。なぁ、酒吞よ──」
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