人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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先刻

晴明式神『かといっていつまでもヒラヒラするのもよくないな。手頃なバ美肉素材あればいいが…』

にとり「出来たぜぇ!見ろオーマのおっちゃん!これが令和の次世代マシン!ヒューマギアじゃい!」

『夢に向かって翔べ』

【ほう…ライドウォッチから設計図を出したが、これが令和のロボットか…】

にとり「ロボットって言い方がもう古いぞおっちゃん!夢のマシンなんだぜこれ!まぁなんで戦闘形態あるのか知らんが!」

【よし、起動するぞ】

『アレを使わせてもらおう(ヒラリ)』

にとり「よーし!てんし、ファ!?」

メイ『同期完了。素体、お借りします』

「おっちゃんのヒューマギアがー!!」

オーマジオウ【むぅ…やはり覇道は孤独なものか…】



メイ「これが経緯」

ゴルドルフ「悪い事言わないから後で一緒にごめんなさいしようね!ね!?」


舞うよ魍魎平安京

「全員、第二種警戒態勢を維持したままで聞いて頂戴。端的に言って、夏休み前の宿題が如くに特異点反応がやって来たわ。人類史を侵す黒い淀み…我々楽園カルデアの本懐にしてギル専用の金脈と言うわけよ」

 

マスター、職員たちを集めオルガマリーが号令をかける。マスター達は即日出動が出来る訓練と心構えを行っているが、職員たちはその本音を隠すのがやや不得手。

 

(なんで今なんだ)(夏休み前の期末テストか)(ぜってぇ許さねぇ!)(黒幕お前、死にたいんだってなぁ…)

 

(一つになっている…かつてない程に職員みんなが一つになっているよ…!)

(そりゃまあ、突発出勤や残業要請なんて楽園は絶対やらないからねぇ…黒幕相手に殺意も湧くというものさ)

 

ロマン、ダ・ヴィンチちゃんがうなずきあう。皮肉にも彼等の士気は極限まで高まっている。空気読めないどこぞの陰陽師のせいで。

 

「うんうん、大体私のせいだがその結束さえあれば黒幕…アルターエゴリンボなど一捻りだろう。道満から分かたれた側面などささっと血祭りにあげておくれよ諸君」

 

こちらはスマホでスタートダッシュガチャを引いている、ダ・ヴィンチちゃんとにとり、オーマジオウが作った楽園ヒューマギアタイプ占い美少女に乗り移った晴明、自称メイがヒラヒラと手を降振っている。黑長髪にSLENDERボディ、中学生程のクール美少女に転生した闇黒イケモンは特に悪びれていない。何故ならわたしじゃない、リンボがやった。しってた。すませようの精神だからである。

 

「では説明するか。アルターエゴ・リンボは道満の私へのコンプレックスの一面を誇大化させた道満であり道満でない存在。それに私が嫌がらせで式神と不死を封印した訳だ。リンボブチキれにより計画前倒しで特異点生成、以上」

 

「資料で見たわよぉ、外道だったわよねぇ。確か使ってた術はアレよね?式神に自身を転写するやつ。無力化できちゃったわけ?」

 

「私から見たら雑だもん。というか道満のやることなすこと私がやろうとしたことかやってみようとしたけどめんどくさいからやらなかっただけの事しかないから、特に頭使わなくても対処なんて楽勝なのよ。希代の陰陽師と道満は違うから。スパゲッティくん」

 

ペペロンチーノよー!そんなズタボロの評価を下しながら、リセマラを続ける晴明。

 

「あ、やったマルゼンスキー出た。そんな私の下位互換であれ、そこそこできる陰陽師な事には変わりない。特異点の一つや二つ作れるだろう。人理を崩壊させるきっかけくらいはね。申し訳ないが、君たちには解決してもらわなくては困るんだ。未来…2021年くらいに全てのソシャゲを過去にする素晴らしいゲームをやってもらうためにも」

 

「…うさんくさいことこの上ないが、僕達の力が必要なら断る理由はない。僕は乗る、この話に」

「燃えているねカドック!無論私もだ!燃えすぎて属性が炎になってしまうね!」

「とりあえず海パンとアロハシャツはキメ過ぎだから辞めてくれキリシュタリア…」

 

「(見てはダメよ、見てはダメよオフェリア…あれは辛かった日曜日に見ていた幻覚的なアレよ…)」

 

『リッカしか勝たないから任せるわ ぐびじん』

 

「陰陽師の乱心、そして道満の活躍となれば…場所と時期は日本平安だろうか、ロマニ」

 

「流石だねデイビッド!具体的に言えば寛弘五年、西暦1008年、十一世紀初頭、当時で言う京!或いは都!禍肚の決戦の地にもなった!鳴くよウグイス!」

 

「「「平安京!」」」←カドック抜きの男マスター

 

「そう。私のいた時代であり、平安の武士達が怪異や妖怪を切った張ったしていた魔境の時代だ。それはもう神秘山盛りで神やあやかしもそこらにいたタイムリー、陰陽師はたまに気が向いた天気にいじり、武士達は鬼や妖怪の血糊でベッタベタなヴァイオレンスジャパン。そこが今回の舞台だよ諸君」

 

そう、そこはまさに源氏武者の現役時代。大将源頼光とその四天王、或いは酒呑童子に茨木童子の時代である。大江山の鬼退治よりやや前の、日本人最狂伝説の発祥の時代である。そして──

 

「…源頼光や金時くんの『御存命』の時代だ。リッカ君と深く結びついたサーヴァント達の生前、まさにその只中と言うこととなる。皆には是非、頑張ってもらいたい…と、言いたいんだけど…」

 

「日本只中、まだ外国人や南蛮の概念薄めの日本に、君たちのような見目麗しい外人諸君を放るのはまずい。金時くんは青目に金髪で忌み子扱いされていた程だ。必然的に、サブに回ってもらわざるを得なくなる。まかり間違って平安武者に鬼扱いされたらアウトだ。まず、首は繋がっていないだろうね」

 

ロマン、そして晴明の言葉に顔を見合わせるマスター達。確かに、それは非常に懸念されるべきことだ。ペリーしかり、外来人はちょくちょく鬼や天狗扱いされるのが、通例である。

 

「……ん〜…。ん〜」

 

(キャラ的にペペロンチーノで通しているが、アタシ日本人なのよねと言いたい顔だな)

 

「解った。僕達のマスターとしての出撃判断はリッカに任せよう」

 

「おや、リッカ君は躊躇いなく行くことを確信しているねカドック?」

 

「当たり前だ。…彼女には、リンボと並々ならない縁があるんだから」

 

そう、リッカにとってリンボとは宿敵、見敵必殺、一切完勝すべき大敵である。英霊剣豪と成り果てた母、自らを自由にしてあげなさいなとアドバイスを贈った鬼の首魁。纏めて介錯する羽目になったのはリンボの仕業であるのだから。

 

「彼女にはギル直々に作戦の仔細と、今回連れて行くサーヴァントの選抜、並びに突入タイミングが渡されている。彼女は今回の特異点、並々ならぬ決心を懐いているからね。ギルはそれを汲んだんだ」

 

「…気負いすぎなければいいが」

 

デイビッドの言葉に、キリシュタリアは笑顔で答える。心配はないと。

 

「復讐の仇を前にして暴走するかもしれない、かい?私見だが、それは無用の心配というものだよデイビッド。私は彼女を信じている。そして彼女もまた、信じている筈さ」

 

「何をだ?」

 

「なんの為に特異点を是正するのか、なんの為にリンボを討ち果たすのか。我等がグランドマスター筆頭の彼女が、そんな解りきった問いに曇るはずがない。ね、オルガマリー?」

 

オルガマリーも頷く。彼女は最早、悪や怒りに呑まれる程未熟ではないのだと信じている。

 

「──リッカの準備が終わり次第、総員特異点攻略準備に入りなさい。ロマニとメイさんはレイシフトのサポートを。紫さんにも助力を頼み、リッカが選ぶメインサーヴァントを完全同期させるのよ。いいわね」

 

「了解です!」

 

「それとは別に、皆さんはちょっと高天原で湯治してきてください。八百万の神達の祝福で、リンボの小細工を跳ね除けましょう。イザナミ様もおわすとかなにここ怖い」

 

「夏のプールの前に温泉か!ふふっ、激しくも楽しい攻略法になりそうだね!」

 

「リッカの集中の邪魔はしないようにしないとな。さぁ皆、行こう。僕達はいつだって、あの女の子の形をしたドラゴンを支える為に奮闘しなくちゃなんだから」

 

カドックの言葉に頷くマスター達。その様子を頷きながら、晴明は思案に耽る。

 

(ビーストif…愛を知り、獣の資格を有した存在を指す言葉。前例は既にあるという。ならば…)

 

リッカに対するリンボの執着。それが『愛』と定義されるかのみが見通せない未来。晴明はそれを危惧し、油断なく護符や御守をアプリで制作するのであった──。




王の間

ギル「お前にとっての怨敵が現れたな、我等が龍よ。随分と時計の針が早まったが…」

リッカ「──うん。突然だけど、覚悟はしてた。だから、大丈夫」

──リッカちゃん…

「あはは、そんな不安そうな顔しないでよ姫様!大丈夫。私がやるべきこと、解ってるから!」

──うん。信じているよ…って、あれっ!?

「これは驚きだ。我が至宝が視えるか、マスター」

リッカ「うん。ちゃんと見える。尊いものが、ちゃんと見えてるし、解るよ。…でも、ちょっと皆から、改めて勇気とか色々分けてもらいにいっていい?」

ギル「──任せよう。今まで貴様が紡いだものが如何なるものか、その魂に今一度宿すがいい」

──準備が出来たら教えてね!リッカちゃん!
 
「ありがとう!ギル、お姫様!行ってきます!」

──リッカちゃんとお話できましたぁ…!

ギル「人類愛への孵化は成っていたか。ならば──心配は無用よな」

王と姫は静かに、自らのマスターの魂と背中を見つめていた──

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