人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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正邪「あいつが奢ってくれるとは、全く気持ちいいな!もう二度とやらないでほしい!(もぐもぐ)」

ヒロインXX「ブラックカードで食べ放題だなんて、どういう風の吹き回しなんですかね?」

ナイア「いつもなら一緒に食べようといってくださるのですが…どうしたのでしょう?」

エキドナ「あー…ほら、多分アイツも一人になりたいときもあるんでしょ。邪神や男の子ってそういうもんでしょ?」

ナイア「そう、だといいんですが…」

(…お父さん、また厄介事をもたらさなければいいのですが…)


ニャルは他者を弄ぶ異星の神に激怒した〜前編〜

【さて、では我々楽園の暗部…例えて言うなら影の部隊が取り組むべき問題について整理するとしようか。我々の時空でこれから起こるもの、…ええっと、なんだったか】

 

「藤丸立香、ですよ。うろ覚えとか失礼に当たるんじゃないですかね?ま、私が社交性についてとやかく言えたものでは無いですけど」

 

シオンに促され、わざとらしく咳払いをしてみせるニャル。彼は基本、楽園かそれ以外かでものを考えているため楽園に抵触しないものに関心は薄いのである。

 

【そうだったそうだった。そのリッカちゃんモドキの世界に侵攻してきたエイリアンだかインベーダー…それが【異星の神】という名目だったな。これは最新情報ではビーストⅦであるという推測も立っているが…せっかくの機会だ。Fateに明るくない部員の方にも分かりやすく、噛み砕いてお教えしよう。今年の末に起きる、割と他人事ではない大事件だからね。私達も、頑張って対処を考えていかなきゃだし?】

 

始まり始まり〜♪と指をひと鳴らしし、全設備を自動アクティブにする規格外さと気楽さに、ため息を抑えるのも飽き始めたシオンであった──

 

〜人理漂白とは?

 

【異星の神…未だ謎の多いこの存在が地球上に行った文明クラスの大攻撃だ。別時空のカルデアでは、今年の12月…ちょうど6ヶ月後に起きることが想定される大災厄だな。地球上の文明は一掃され、何もかもが真っ白で味気ない世界にされてしまったとの資料が届いている。まぁ言わせてもらえば完全敗北だな。あちらのカルデアは懸命に抗ってはいるようだが、反抗というよりただの死に体の悪あがきだな。文明圏を有する動物が文明を維持できる個体数は全体の4割は必要だ。空想樹に心臓を丁寧に丁寧に、一匹ずつ貫かれ滅ぼされたとあっては…まぁ、人類は終わっただろうな。クソッ!なんてことだ!】

 

シオン「そりゃあ、アトラスも引きこもりますね…宇宙からの侵略者への対処とか流石の合衆国も無理ゲーでしたか…そしてニャルさん、義憤に燃える心もあったんですね?」

 

【一匹一匹味わって殺すとかなんて贅沢な事を…!私は許せない!人の命をもてあそぶこの神の所業が!】

 

「……本気で言ってるか判断に困るんですけど…?」

 

〜異聞帯とは?

 

【まぁそれはともかく話を続けよう。私の心のように真っ白になった地球に、異星の神は新たな歴史の種をばらまいた。これが異聞帯…異なる歴史、何も間違ってはいないが、それ以上の発展を望めないという理由で切り捨てられた無常な歴史の巻物さ。…正邪や娘の為に、もうちょい詳しく説明しようかな】

 

「ホント、身内には甘いですよねぇ…。異聞帯って言うのは特異点とは似て非なるもの。『正しいものが狂った歴史』が特異点で、『何も間違っていないが不要となったもの』。転換点を過ぎ、発展の可能性が無くなった停滞の帯。それが異聞帯…ロストベルトです」

 

【そうそう。この停滞というのが実に面倒臭くてね。漫画で言う打ち切りは勿論、『世界は平和になりました、めでたしめでたし』でも剪定案件になる。打ち切りのバッドエンドも、恒久平和のハッピーエンドも等しく汎人類史には成り得ないと結論が出ている。要するにあちらのカルデアはそういう世界を破壊して回る戦いを余儀なくされている訳だな。報われん話だ。苦労して手に入れた自分たちの未来を文字通り白紙に戻され、やりたくもない世界の伐採とそこにいた人類を纏めて皆殺しの旅を彼等は今も続けているということになる】

 

「これ、シンドいですよね…そもそも全部終わった後、人理が戻る保証も無いですし…」

 

【多感な少年が背負うには重すぎる荷物だ。だがその少年は、その荷物の重さを我々に示してくれた。…なんとしても、そんな重さを彼女達に背負わせるわけにはいかないな】

 

「えぇ、もちろん!今の内に準備をすれば、抵抗戦から全面戦争に持ち込めるデータが出てます!頑張りましょう!そして、この失われた歴史を固定している『根』となるのが空想樹と呼ばれている存在。最果ての塔と似た役割を果たす、世界に根を下ろした空想の根幹です」

 

空想樹とは?

 

【汎人類史が33ー4してしまい、空白になった地球に新たな歴史として異聞帯が使用されたのがさっきのお話。しかし異聞帯なんて所詮打ち捨てられた敗北者の歴史。それ単体ではどうしょうもないため用意されたのが空想樹だ。これも中々に謎が多くてな。まだ全容を掴めきっていないのが現状らしい。だが判明している情報はとにかくデカい。太さは数百メートル、長さは数百キロメートルレベルのとんでもない大樹木だ。物理的な伐採となれば、本格的に我々にはマルドゥーク神で力任せかトラペゾヘドロンで存在を昇華するかぐらいしか手がないな】

 

「阪神ファンに怒られません?」

 

【それぐらい惨敗なんだもん、しょうがないじゃん。地脈から魔力を貰い成長し、発芽には90日を要する。成長発育が良好な場合種子を飛ばし、発芽環境を整える習性があるようだ。そして──内部には『銀河』を有すると言われている】 

 

「銀河って…あのギャラクシーですよね?スペーススケールの?」

 

【その銀河だ。どうやら内部には独自の次元を保有している様でね。発育が一定レベルを越えると【開花】現象が起こり、内部保有次元を露出する様だ。判明呼称はオロチ、ソンブレロ、メイオール、スパイラル、セイファート、マゼラン…どれも銀河の名前を有していることが情報には開示されている。まぁ言わずもがな人智を越えたスケールだ。マジに宇宙を内包していると真顔で言われると、外宇宙出身の私もお、おうとならざるを得ない。とんだインフレだよシオン君】

 

「逆に、向こうのカルデアはどんな風に伐採したのか非常に気になるところですが…それ以上に驚くべきは、なんとこの空想樹には意志らしきものがあるという事なんです!」

 

【原始的な生存欲求に終始はしているようだがね。『生きたい』『死なない』『伐採は嫌だ』『許さない』…波長パターンとしてはこんな所だが、どういう訳か、全世界に根付いたとされる一際巨大な空想樹マゼランは、先に言った通り世界を覆った後、その末端の触手で汎人類史の生命体を一匹一匹、心臓を貫いて抹殺していったらしいぜ?そんな手の込んだ殺戮に走る輩に感情や意志がないというのはありえないな。間違いない、異星の神連中は人類史全体に対して強い意志を持っている。これは間違いないだろう】

 

「…憎しみ、でしょうか?」

 

【さて、どうだろうな?私的には自業自得の匂いがするね。地球に飛来した末端端末か何かを、人類が必要以上に痛めつけでもしたんじゃないかと睨んでいる。そしてそれを苦痛と受け取ったか、或いは『人類の意思疎通手段として受け取ったか』…だ】

 

「…人間は知識欲と好奇心の獣性を持つとヒナコさんが仰っていましたが…正真正銘の宇宙外生命体なんて見つけたら喜々としてやりますよね、解剖に実験に薬物投与エトセトラ…」

 

【人間の行動をコミュニケーション、意思疎通と受け取った例は金属生命体でも確認されている。…案外、人理漂白の実態は人類の自業自得。来たるべき対話の大チョンボの可能性もあるわけだ。いいよね、人類が破滅に自分達で全力疾走する姿…】

 

「ニャルさん…」

 

【こほん。どちらにせよ、6月に飛来したとされる宇宙外生命体を人類が確保してから全てが始まったとされる。我々に残された時間はあと6ヶ月と言った所だ。──人類が敗北した理由は、宇宙からの侵略者に対するノウハウ不足と準備不足、これに尽きる】

 

「空想樹伐採手段である『英雄神』【トラペゾヘドロン】の確保、空想樹発育阻止の為のロマニ・アーキマンによる地球地脈の掌握、汎人類史テクスチャ防御『人理金箔』…文字通りの全力準備が楽園では進行中ですからね…!」

 

【いくら楽園とはいえ、私がやったように地球全土を停止させる際想定されている限界は90日…その90日の間に、一つの異聞帯を根付かせている空想樹の切除、そしてレイシフトによる『異聞帯発生の要因』を排除する事による異聞帯の特異点化並びに、汎人類史への迎合…世界を救う工程を一度に2回、それを7セットやらなくてはならない。つまり3ヶ月の間に世界を14回救わなきゃならない訳だからね、我々は。準備はやりすぎなんて事は無いだろう】

 

「ら、楽園を疑うわけではないですが…ハードスケジュールですね…!」

 

【大丈夫さ。リッカちゃんも、エアちゃんももう一人じゃない。皆で一丸になれば、必ずなんとかなる】

 

「言い切りましたね、珍しく!」

 

【私が信じたのは──そういう人達だからね。──そうだろう?諸君】




ニャル【さぁて、私も布石を打ちに行くとしようかな。シオン君、外出許可出しといて】

シオン「えっ?まだ5月の終わりですよ?」

ニャル【まぁ確かにちょっと早いが、それでも全ての始まり…異星の生命体を拾った地は解っているんだ。間違い無く最初のやらかしはそこだ。抑えておくに限る。余計な事をやらかす前に、職員全員には人体解剖キットになってもらう事にする。目標は、アメリカ合衆国、ネバダ州…エリア51だ】

シオン「今から行くんですか!?」

『エボルドライバー!!』

【思い立ったが、って言うだろう?──】

「…?」

【──味わわせるものか。楽園(かれら)に、敗北の苦渋など】

【オーバー・ザ・エボリューション!!コブラ!ライダーシステム!】

「ニャルさん…」

【すぐ戻る。向こうの端末を使って連絡するからね。待っててね〜】

ブラックホールの中に消えていくニャルを、シオンは見送る。彼は単身、アメリカ最新鋭空軍基地へと向かう──

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