人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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なのは「大変です!温泉旅館周辺に怪しい人影多数!恐らく、獅子王様方を狙った輩と予測されます!」

ギャラハッド「なんですって!?」

ランスロット「…恐らく、ピクトカンパニー製のバイオノイドだろう」

獅子王『世界に侵略と戦火、混乱をもたらす死の商人…ピクトカンパニー。私達の居所を嗅ぎ付けたか』

ギャラハッド「ランスロット卿!ここは危険だ、マシュ嬢と藤丸君に退避を!」

ランスロット「いや、既に囲まれているならば迂闊に動くのはまずい。そして我々も、不用意な戦闘行為はマスコミに不要な餌を与えることになるだろう」

ギャラハッド「ではどうすれば…!」

藤丸「大丈夫です、ギャラハッドさん。マシュは…俺が傍で護ります」

獅子王『…対処を誤れば、貴様も死ぬぞ』

藤丸「保身で態度を変えるほど、薄っぺらい想いで彼女を好きと言っていません!」
マシュ「私もです。足手まといにならないよう…皆様の支持に従います」

獅子王『…窮地においてなお、他者を思う…』

ギル「不条理かつ面倒だが、それが貴様に足りぬものだ。獅子王」

『…番頭か』

「そう慌てるな。襲撃の一つや二つ──」



雪泉「忍、転身──」

早苗「奇跡を起こす、神の力!」

響「バルウィシャル ネスケル ガングニール トローン──」

なのは「行くよ、レイジングハート!」
レイジングハート『I,don't like returning on holidays』

リッカ【グドーシ、いってきます!】
グドーシ「えぇ、お気をつけて。待っておりまする」



「とうの昔に、把握している。そこで見ているがいい、獅子王」

獅子王『…』

「困難であろうと、離れもしない酔狂者の実態をな」

藤丸「大丈夫だよ、マシュ…!」
マシュ「はい、リツカさん…!」

獅子王『…』



撃退!温泉旅館に特殊部隊!

【目標、滞在地点を視認。抹殺指令を遂行。関わる全ても同じく処理せよ】

 

【【【【【了解】】】】】

 

ピクトカンパニー…世界に兵器、バイオノイド、サイボーグ、戦闘アンドロイドといった兵器需要をもたらし売りさばく死の商会。表向きは介護、ヒューマノイド企業といった顔を持っているが、人体を強靭に引き上げるパワードスーツや、人体をパーツとして扱った非人道的なバイオノイドを生成する、ラウンドナイツ・コンツェルンと理念を対極に懐く世界を混乱の戦火に包む邪悪なる企業である。

 

【ギャラハッド、ランスロット、獅子王…要人たる存在は今護衛を排している。物量で押し潰せ】

 

【どこからか】もたらされし映像記録と音声データを基に、抹殺計画を遂行する為に集結せし特殊作戦遂行バイオノイド【ピクト】。緑の肌と青色の血液、1つ目や口が裂けた様相の異形たち。それらは全て、世界の安寧という停滞に沈めんとする獅子王の排除、並びにラウンドナイツ・コンツェルンの崩壊に通じている。此度はその絶好の機会に集結したというのがこの戦力の正体である。

 

【各員、目標施設へ一斉射撃用意。完全破壊を達成せよ】

 

【【【【了解】】】】

 

徹底的な破壊殲滅作戦。包囲よりの破滅が、ゴージャス旅館へともたらされんとする。誰一人逃しはしない、無慈悲の焼却。その指令が果たされんとした時──

 

【【【【作戦、開───】】】】

 

「──始めさせるもんかぁあぁあぁあぁッ!!!」

 

天空より降る、槍が如き必殺の一撃。修練と決意の一挙一動が、真っ正面より最短、最速一直線に舞い降り、射撃体勢のピクト達を吹き飛ばす。

 

【敵性反応。データ、ギア装着者】

 

「御明察ッ!私が通りすがりの、お節介だッ!!」

 

高らかに名乗りを上げる響。即座に戦闘プログラムに移ったピクト達は近接戦闘用の超高振動コンバットナイフを構え、響に殺到する。クロスレンジによる多勢に無勢、不利ではあるのだろうが彼女は怯まない。

 

「開発部のシオンさんから託された、AI特効SONGプログラム!試してみよっと!」

 

装者の内から浮かび上がる歌を参考にした、全周囲作用音響攻撃。それを自身にインストールし、響は世にも奇怪な戦法を開始する。そう、歌い、戦うのだ。

 

「(YO!)そこの道行く兄ちゃん 姉ちゃん突き進むスタイル 確率、独立 時代の反響 一人の絶叫!」

 

【【【【!?】】】】

 

響が心のままに歌い上げる──ラップ。それはセイヴァーズ開発部が製作したアンドロイド特効兵器、人類の生み出した不理解と不条理を顕にした…『LAP・TURTLE』である。手近にいたピクトの頭をリズミカルに叩きながら歌い上げる奇行に、ピクト達の頭脳ユニットは壮絶な負荷を受ける。

 

「この亀社会に生まれたオレ達若者

それでも耐えぬくオレのスピリット、デメリット

これって純情?正常?亀参上(YEAH!)」

 

【【【【【理解不能、理解不能…理解不能…】】】】】

 

「この矛盾の中で生きてる僕たちの苛立ち

許せなく やるせなく 亀助け 人生

さぁ 立ち上がるなら 今

道 進むなら 今

これって純情?正常?亀参上 (YEAH...)」

 

飛び回りながら、亀型のエネルギー球を放ち大量のピクト達を殲滅していく狂人が如き響。その奇行そのものの歌詞と歌唱、行動は数多のバイオノイドの思考回路をショートさせ、破壊していく。人類が生み出した狂気の旋律、共通言語を越える音階を人類は見つけ出してしまった。それは、ピクトカンパニー…否、AI社会に対抗するために制作された人類の可能性である。多分。

 

『隙だらけです。無理もありませんが、悪に容赦は致しません』

 

切り込みは響が担当し、撹乱と混乱に陥れる中、忍転身を行い氷結と冷気を操る忍術を駆使する雪泉が、中距離に銃火器を構えていたバイオノイド達を一瞬で凍結、無力化していく。彼女は潜入、暗殺、そして粛清を担当する忍。こういった夜間や暗闇に潜み大多数を鎮圧するプロフェッショナルである。前線が瓦解している今ならば、もたらす戦果も甚大だ。

 

「響さん。裏に回ってください。こちらは私が」

 

「なんで亀ラップなの!?なんで亀ラップなのッ!?」

 

「さ、さぁ…」

 

「メケメケメケメケメケメケメケメケ…何これッ!?」

 

「私に聞かれても困りま──…!」

 

空に気配を感じ見上げる雪泉。忍びとしての感覚が夜闇の中に飛行する物体を捉える。空中より降下する部隊、突入隊である事を即座に見抜き通信を行う。

 

「領空に敵部隊を視認。なのはさん、早苗さん。よろしく御願いします」

 

『『了解!』』

 

「なんでかなー!なんでだろー!?それはね!それは!?ホントはね!?本当はー!?」

 

瞬間、空中駆け抜ける流星群が降下部隊に向けて突き刺さる。五芒星の奇跡の弾幕…早苗が得意とする対空射撃である。隊列と降下地点を大幅に狂わされ、散り散りになった瞬間──

 

『入墨、泥酔、そして暴力沙汰は…お断りッ!』

 

瞬間、夜空を桃色に染めあげる大エネルギーが放たれ、夜闇の宵を照らし上げる。下から見れば空が塗り替わった様にしか見えない程の大出力。言わずもがなのなのはの砲撃、多少姿は変わろうと、その圧倒的な火力に一切の翳りも無い。

 

『戦闘力は全世界の特殊部隊に匹敵するピクトカンパニー製の戦闘バイオノイド…確かに真正面からの制圧戦か、極秘の隠密作戦であったならやや対処は面倒ではあったわ。でも、情報で行動を単角化させ、対処が可能な日時や範囲を絞れたならば、決して遅れを取るような私達ではないわ』

 

オルガマリーの言う通り、この襲撃を見越して配置していた護衛メンバー達は、奇襲の更に裏をかくといった戦況を作り出し、戦闘用バイオノイドの実力を発揮させずに処理していく。戦いとは、火蓋を切る前から何を行うかで決まる。それが、急遽頭角を現してきた企業への性急な暗殺任務であるならば尚更だ。

 

「しかし、よろしいのでしょうか?私達の攻撃規模では、何者からの襲撃なのか、型番といった情報を残せるほどの損壊を調整するのは難しいのでは…」

 

「はっちゃけろーぉ!はっちゃけろーぉ!!」

 

『なのはさん!その調子です!オールデストラクション!キルゼムオール!サーチアンドデストローイ!!』

 

『怖いよ!?早苗ちゃん発想が怖いよ!で、でも大丈夫!?確か、敵対企業への牽制材料が欲しいからいくつか素体が欲しいんじゃなかった…?』

 

今回、個別の弱小企業が目論むには規模が大きい。確実に、獅子王を疎ましく感じている企業、敵対組織の思惑が絡んでいる。そう睨んだオルガマリーは、相手バイオノイドの素体の確保を念頭に入れていた。

 

『あぁ、そちらはもう大丈夫よ。ややリスクの高い2面作戦の一つを、彼女に担当してもらったわ』

 

「パラレルやっちゃってー!パラレルやっちゃってー!!」

 

『リスクの高い、2面作戦…?』

 

「うれしいでございまーす!うれしいでございまーす!!」

 

雪泉はオルガマリーの告げた意味の言葉を数瞬思案し…そして、思い至る。

 

『オルガマリー、要望通り裏口の護りと戸締まりは手緩にしておいたぞ。──フッ。らしくもない大雑把さよな』

 

『無礼者に敷居を跨がせる事をお許し下さい。しかし、これで大方の目標は達成されます。どうか御容赦を』

 

「…リッカさんに任せたのですね。なら、安心です」

 

リッカに任せた。その意味を把握した雪泉は、引き続き自身の戦線を維持する判断を下す。

 

「響さん、このまま防衛線を維持します。引き続き白兵戦は…」

 

「おひらき!!」

 

「しないでください。そのまま、その精神汚染をよろしく御願いしますね」

 

その全容を深く追求せずに、AIショートワードを撒き散らす響をサポートする雪泉であった。その防衛線を維持し、夜明けに向けて要人を守護する善を貫く──。




裏口

バイオノイド【侵入完了。速やかに対象を見つけ、暗殺を行う。捜索を開始せよ】

【【【【了解、散開する】】】】

物音一つしない、旅館の廊下を疾走する暗殺部隊。やがて隊長格の通信回路にコールがかかる。

【こちらリーダー、どうした】

?【──ひとーつ。人の生き血を吸い】

リーダーの耳に飛び込んできた声…それは部下の声でなく、低い唸り声の様な声音。瞬間、何かが踏み潰されたような音と、倒れ込む音が聞こえてくる。

【どうした、何があった】

更にコールが届く。部下の数名から立て続けにコーリングされ、展開される通話からは、全て同じ声と音。

【ふたーつ。不埒な悪行三昧】

【みーっつ。この世に蔓延る、死の運び手を残らずこの手で叩き潰す】

尋常では無い事を悟ったリーダーは素早く辺りを警戒し息を殺す。判断材料からして、数名いた部下の末路を把握しながら。

【敵性勢力を確認。接敵し排除を──】
【誰をお探し?】

行動に移そうとした瞬間──頭部と首を、凄まじい力にて掴まれる。

【!!?】

いつの間に──。そう思う暇もなく、頭部と首にかけられた手に剛力が込められる。耐久限界を遥かに越えた力の、力強くの引き抜き。

【よーっつ。人の恋路を邪魔する無粋な輩を地獄に落としてあげよう】

【──!?】

何者か──そう思考を巡らせたが、最後。

【こんばんは。プリティドラゴンです】

その言葉を最期に──リーダーバイオノイドは、脊髄ユニット毎頭部を胴体より引き抜かれたのであった──。

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