人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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グドーシ『報告は以上にござる。なんというか、真綿で首を絞めるといった様相にござるな』

リッカ「だよねぇ。手頃にブチのめせるラスボスが切に欲しくなるよね…」

グドーシ『ともかく、拙者は獅子王から情報をもう少しいただくことに致します。そちらは藤丸殿とマシュ殿とのお食事でしたな』

リッカ「うん!色々お話してみるよ!対話こそ人類最大の武器だからね!」

グドーシ『では、今度拙者と一緒に参りましょう。のんびりと、食事を堪能致しましょう。もちろん、拙者が奢りでござるよ』

リッカ「えっへへへ…うん!楽しみにしてる!あ、来た!」

『それでは、また自宅にて。待っているでござる』

「うん!また後でねー!」


大人になるということ

「リッカ!大丈夫だったか急用って。まさかまた海外に飛ぶ予定とかそんな感じのやつだったりするのか?」

 

「まさかリッカさん…日帰り海外旅行でしたか!?」

 

とりあえずもっと話を聞こうと二人をサイゼリヤに呼び出したリッカ。誰が鎧の巨人で誰が超大型巨人かなど大切な話を行うくらいに重要な場所であるサイゼリヤなら、将来の進路を話し合うにはピッタリの場所である事は間違い無い。先に来てじゃんぬのスイーツ店に星5レビューを飛ばしていた際、投げ掛けられた言葉がそれであり麦茶を吹き出しかける。

 

「んっふっ!!い、いや違うよ!?確かに私冒険家かロイヤルニートかどっちかだけどそんなノリで海外にいったりしないよー。アルテミス神殿参拝とかはしてみたいけどさ。今日二人共休み?」

 

「まぁね。休みを合わせて出来るだけ会おうって決めてるからさ」

「はいっ。リツカさんとの時間は、どれだけあっても困りませんから!」

 

砂糖いらないなぁ相変わらず…甘い雰囲気のまま同じ席に隣り合う二人に間違えて麦茶にミルクを入れてしまいまたむせるリッカ。本題に切り込む準備は出来たが…その前に。

 

「ピザでも食べよっか。とりあえず、腹拵え腹拵え!」

 

夢の中でも美味しいものを食べる贅沢を無下にするのも勿体ない。まだまだ色気より食い気な少女に、笑顔で付き合う恋人以上夫婦未満な二人であった──

 

 

「さて、と。今日呼び出したのは他でもない。二人の進路…将来設計のお話を聞きたくてですね。ぶっちゃけ私そういうのにまだ縁がないから、二人の答えを聞いてみたいなぁと思ってこの席を設けさせていただいた訳なんですよ」

 

対話は得意といっても、絶対的に経験諸々が不足している話題に前フリは無用と判断し、ピザカッターの如くに本題に切り込んでいくリッカ。二人は婚姻、今の関係、未来の展望についてどう思っているのかを尋ねる。

 

「特にマシュ。婚約者がいるんだよね?藤丸君との今の関係は…その…思い出作り、とか?」

 

そう、先にグドーシから仕入れた情報から鑑みれば、相手がいるのを内密に不義理を働くマシュではないと信頼している。婚約者がいながら今の関係を続け、周知できる程のイチャラブぶり…即ちそれは、終わりを意識した思い出作りとリッカは睨んだ。そしてその見解は、見事的中していたのである。

 

「…流石です、リッカさん。はい、私には婚約者がいること、そして婚約者と添い遂げる事はリツカさんに話しています。話した上で…この関係を続けています。正式に婚約するその瞬間まで、出来るだけ」

 

「藤丸君の事が大好きなのは変わらない、けれど婚約は受け入れる。それは…育ててもらった恩義からかな?」

 

「なんでもお見通しですね、リッカさんは。はい。私は家柄に、お父さんに何不自由なく育ててもらいました。学費も、養育費も、日頃の食費や、進路を決める際も自由に、何不自由なく。そんな生活や人生を送らせてもらったお父さんに、家柄に、深く感謝しています。だから…私は、お父さんが初めて示してくれた道筋を進もうと決めました。それが、今まで育てて来てくれたお父さんへの親孝行になると信じて」

 

「マシュとは高校生からの付き合いで、縁談は社会人になってからの話。相手もあの獅子王様の養子だっていうし、何にも不安は無いって思ってるよ」

 

「藤丸君…マシュ…」

 

それは、本心からの言葉だと理解する。マシュは育ててくれた父への想いに、藤丸はマシュが幸せであるのなら隣にいるのは自分でなくてもいい。それは、方向性は違えど、善意によって決められた進路に他ならなかった。

 

「でも、私はリツカさんが好きです。大好きです。こんなに好きになる人はもういないでしょうし、こんなに好きになった人も誰もいません。私の心は…リツカさんだけのものです。だから私は、私に許された自由の時間を全て、リツカさんに捧げているんです」

 

「俺もマシュの事が大好きだ。それはずっと、一生変わらない。だからこそ、俺はマシュに持ちかけられた縁談を全力で応援する。マシュが何不自由なく一生を過ごせるなら、それが一番だ。ギャラハッドさんとはまだ、会った事も無いけど…ランスロットさんが選んだ人だ。絶対悪い人じゃないって信じてる」

 

 

エア『リッカちゃーん。お〜い。こっちですよ〜』

 

リッカ「あっ…姫様…はっ!?」

 

ウォフ・マナフ『あちらに逝くにはまだ、プレシャスちからが足りない』

 

 

(…………───はっ!?いけない、姫様が手を振ってた!ありがとうアジーカちゃん!)

 

プラトニックの極み、互いの肉欲や情欲、独占欲など微塵も感じさせない無償に近い愛情にエアを想起し召されかけるリッカ。今回はとことんリッカに不得手な問題である。異性関係、そして婚約、縁談。二つとも、高校2年のリッカにはあまりにも重い問題だ。おまけにプレシャスの暴力ではほわる以外に無い。虹の雲海マスで体力が一秒に100削られて行くような感覚に堪え、会話を続けていく。

 

「…。藤丸君はいいの?どれだけ信頼できる人であろうと、マシュが君以外の男の人に抱かれる事実は変わらないよ?」

 

しかしそれでは「良かったね!結婚式に呼んでね!」で御祝儀包んで終わってしまう。ならば悪意、あえて悪意をもった質問で本心に切り込む他ない。リッカは心を鬼にし、憎まれる覚悟で現実問題で揺さぶりをかける事にした。

 

「マシュもそう。家名や恩返しも大事だけど、それだと事あるごとに藤丸君とギャラハッドさんを比べる事になるかもしれないよ?それは本当に、誠実な関係って言えるかな?ギャラハッドさんへの、ランスロットさんへ誠実って言えるかな?」

 

「「…それは…」」

 

(…ごめんね、二人共…)

 

納得済みの二人に、あえてそれを掘り返し、蒸し返す。紛れもなく性悪の振る舞いにリッカ自身の心が翳る。曇らせが見たいというのがギャラハマスクの願いなら、リッカ相手には果たされたと言える。リッカ自身の言葉が、彼女を曇らせたのだから。

 

「…俺は知っての通り、取り柄のない一般人だ。正直、一人で生きていくだけで精一杯だ。そんなヤツが無責任に世帯を持って、マシュや生まれてくる子供に迷惑をかけながら生きていくのが正しいのか?それは、もっと嫌なんだ」

 

「…立場を捨てて、逃げることが出来たらと考える事も何度もありました。リツカさんと別れるくらいなら、死んだ方がましだと。でも…何もかもを捨てて、ひたすら逃げて。──逃げた先に、幸福なんか待っている筈が無いんです」

 

「──!!」

 

──それは、マシュの心に根付いていた…彼女が先輩と呼ぶ者の、生き様そのものだった。彼女の意識には、鮮烈に刻まれていたのだ。

 

「リツカさんに犯罪者の汚名を着せて、お父さんと家名に泥を塗って、そんな愛を誰に誇れるでしょう?胸を張ってヴァージンロードを歩けなくさせてしまう独り善がりをどうして認められるでしょう?…私は、そんな不義理を働く気にはなれません。私が、この気持ちを秘めて歩むだけで、全て上手く回るんです。リッカさん。私は──自分であることから、逃げたくないんです。かつて貴女が、私に言ったように。私も貴女のように、強く気高く生きていきたいんです」

 

二人の決意と、決心。そして互いを思いやる心は紛れもなく本物だった。それが、痛い程伝わってきた。

 

「…大人だね。本当に…立派な大人だよ、二人共」

 

これが、夢である事が惜しまれる程に。自身の決断を示す二人に、リッカは静かに頷くのだった──。

 




リッカ「──でも!!やっぱり納得できない!!」

リツカ「えっ!?」
マシュ「リッカさん…!?」

リッカ「好きな人を想うのもいい!幸せを願うのもいい!!でも──その為に別れるのを容認する結末!私はなんかやだ!!」

大人、そして社会人の観点では二人は、この現実は崩せそうにない。リッカは判断した。理屈では、分が悪い。ならば──

リッカ「私は二人が幸せになってほしい!それは二人が離れて今の関係を幸せな思い出にする事じゃない!沢山の孫や子供に囲まれて老衰で大往生する人生の幸せでてぇてぇしたい!!」

「リッカ…」

「誰も悪くないのは解ってるし、誰もが善だって解った!なら私は悪になる!自分のエゴ、貫く事にする!マシュ!藤丸君!私は…私は!!」

力の限りに机を叩きつけ、宣誓する。そう──彼女は誰にも、何にも屈しない。それが、幸せをもたらし優しい妥協をもたらす運命でさえも。

「私は二人の赤ちゃんを抱き上げたいっ!!二人の仲人になりたいんだぁっ!!!」

マシュ「え、えぇえぇえっ!?」

リッカ「よーし吹っ切ったー!待ってて二人共、誰も哀しまないハッピーエンドに進撃してみせるからね!!不幸や理不尽なんて片っ端から地均しじゃー!!ザックレー総統!見ててね!!」

リツカ「リッカ!?おーい!?」

リッカ「釣りはいらないから!!」

二人で仲良くと2万円を叩きつけ、店を後にする。進撃を決意したリッカの足取りが、帰路を踏み潰して行くのであった──。

リッカ(といっても、私だけじゃコマンドー式解決しかできなさそう…グドーシに負担かけたくないし、協力者がほしい!組織絡みの!)

そう思案していた、その時──。

リッカ「ライン?」

ライン通知に目を通す。そこには…

オルガマリー『仕事よ、リッカ。基地に顔を出しなさい』
ビッキー『40秒で支度しよーっ!』
早苗『レッツラゴーゴー!です!』
雪泉『プリィ…』

「──なんか、行けそうな気がする!」

連絡をくれた者達の頼もしさに、小さくない確信と希望を覚えるリッカであった──。

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