人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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グドーシ「それではリッカ殿、マシュ殿と藤丸殿の気持ちを聞き出してくだされ」

リッカ「オッケー!グドーシはどうする?」

グドーシ「拙者はギャラハッド殿へ話を聞いてみるでござるよ。結婚、婚姻について如何なる考えをお持ちなのか。対話が一番にござる」

リッカ「同感!でも、気をつけてね。騎士王じゃなくて獅子王、って呼び方がなんか嫌な感じするからさ」

グドーシ「心配御無用、帰ってくるでござる。そなたの下へ」

リッカ「ん!行ってらっしゃい!」

グドーシ「そちらも、お気を付けて。…ん?」

犬「わん!」

「これは幸先のいい。御案内を頼めますかな?」

「わん!」


秩序と清廉の獅子の城

「ほう…これが噂のラウンドナイツ・コンツェルン。確か、世界的に有名な民間警備会社、多種多様の防犯、防災、或いは治安維持に敏い会社…でありましたな。いやはやいやはや」

 

地図と、犬の案内を頼りに足を踏み入れたグドーシを迎え入れるのは、獅子の彫像に天にも届かん城の様相を構える本社キャッスル。白亜の円卓の城を再現した厳かな場であり、正門である長大な関所は、見るものを声無き咆哮で圧倒するばかりだ。悪しき者は、近づく事すら容易ではない圧巻の迫力である。世界に誇りし秩序の護り手の称号、けして伊達ではない。グドーシは静かに、泰然と門を開く。

 

(流石に約束も無しに重役に会えるとは思えませぬが、駄目で元々。リッカ殿に最大限のリスペクトを払い、真正面から参る事に致しましょう)

 

そう、グドーシの目標はギャラハッド。流石に面談や縁談な踏み込んだ話は聞かせてはもらえないだろうが、一目見て、話をすれば掴める人となりというものはある。自分達の知る存在と近しいギャラハッド氏であれば良いのですが、と敷居を跨ぐ。その時──。

 

「何者か!」

「お客様、大変不躾でありますがアポイントメントはお持ちでしょうか!」

 

瞬間、グドーシを阻む騎士の末端社員達。彼等は受付であり、邪悪なる者の入場を阻む輩であると目星をつける。もちろん、何も悪巧みや探られて痛い腹は持っていないのでいつもの様にグドーシは穏やかな声を上げる。

 

「弛まぬ責務の執行、大変お疲れ様でござる。拙者はグドーシと申すもの。拙者、通りすがりのカウンセリングの名手でありまして、日々労働に挑み苦難に苛まれる皆様を少しでも癒やしたいと足を運んだ次第であります」

 

「えっ…カウンセリング?あっ…(察し)」

「アグラヴェイン卿に獅子王が差し向けられたのかもな。ランスロット卿、また女性と勘違いされがちな行動取ってたって噂だし」

「皺がそろそろ取れなくなるんじゃないかって獅子王が心配なされたに違いない。…悪い人ではなさそうだ。通してみてもいいんじゃないか?『悪意なき者は拒まない』というのが獅子王の理念であらせられるし」

 

ヒソヒソと話している二人を前に、ぼんやりと空を眺めるグドーシ。結論が出るのとリッカに似た雲を見つけたのは同時だった。

 

「解りました。我等ラウンドナイツ・コンツェルンはすべての善、秩序を歓迎致します。気遣い、誠に感謝を」

「それではグドーシ殿、こちらへ。念の為『聖抜』を受けていただきます。大丈夫、あなたなら必ずパス出来ますよ」

 

(聖抜…なにやら不穏な響きですが…)

 

そこはかとなく不安に感じながらも、逆らうことなくグドーシは後をついていく。その頭と肩には沢山の鳥達が止まっていた──

 

 

「こちらへどうぞ。こちらが『聖抜の間』でございます。楽にして、そこにお立ちください」

 

グドーシが案内されたのは、遥か天空まで伸びるエレベーター、その足場。王の持つ聖槍の内部構造をエレベーターに改良された装いの、一階である。

 

「これはまた、なんとも聖なる気が満ちておられますな」

 

「えぇ、そうでしょう。完璧な善、清く正しきラウンドナイツ・コンツェルン。その真髄は獅子王による入社した者達の聖なる選別から始まるのです。どの様な悪心を持つ者も、悪そのものも。我が獅子王は裁きになられる。さぁ、御声を賜りましょう」

 

騎士達が離れ、跪く。ぽんやりと上を見上げるグドーシに、気高く清廉な、それでいて威厳に満ちた王の玉音が届く。

 

『──我が白亜の居、秩序と清廉に満ちたラウンドナイツ・コンツェルンに足を踏み入れたるものよ。誇りを持ってその名を明かすがいい』

 

「こんにちは、獅子王殿。拙者はグドーシ。好きなものはサブカルチャー全般、嫌いなものは先入観でござるよ」

 

((軽っ!))

 

一般人であるならば、即座に魂を砕かれるような高みから下される玉音に些かも怯むことなく、グドーシは静かに答えてみせる。恐れも、偽りも無いその返答に、獅子王の声音は暫し沈黙する。

 

『──他企業のスパイでないことも、はたまた浮かれた研修生の狼藉で無いことも理解した。そしてグドーシ…その名には覚えがある』

 

「おや、拙者はどの様な立場であるのでしょうか?」

 

『世界を旅する二人の少年少女…食べログ、エッセイ、自己啓発等で結果を出したカリスマブロガー…そういった情報は目にしている。確か、そのハンドルネームが求道師であった』

 

(成程、拙者は文と説法で地位を築いている設定でしたか。天職ですな)

 

リッカが秘密に突撃し、グドーシが説き、描く。どうやらマシュの中では比翼、阿吽の呼吸であると認識され心が浮き立つ覚者少年。首にコブラが巻き付いた。

 

『その者と、貴様がどのような関係かは知らぬが…その魂は紛れもなく善であることを認識した。我が間…玉座へと至ることを許可しよう。さぁ、上がってくるがいい』

 

瞬間、目の前にコンソールが展開する。それはエレベーターを動かす捜査版であることは明白だ。

 

「おめでとうございます!獅子王への謁見が許されましたね!」

「どうか粗相の無いように。円卓の騎士達は一様に疲労を抱え込みやすい方々、カウンセリングやセラピーをお願いします。特にギャラハッド殿は縁談の話を受けてからというものふさぎ込みがちで…」

 

『騎士達よ。過度な無駄口は減俸、サボりは裁きの対象となる。新たな刺激に触れど、惑わされないよう』

 

「「は、はっ!失礼致します!」」

 

獅子王に諌められた騎士達は、速やかに職務に戻る。グドーシは一人残され、エレベーターは動き出す。ヤギが服の袖を噛んでいた。

 

「それでは、お邪魔致します。獅子王殿」

 

『こちらこそ。我が城は、美しき魂を歓迎致します。カウンセリング、セラピー…期待していますよ』

 

意外と話の通じる方で良かったでございますなぁ。猛烈な勢いで上昇していくエレベーターに揺られるグドーシ。鹿がスヤスヤと寝始めた。

 

「…待機モーション的に、動物達を招いてしまうのはセーフであってほしいですな。しかし…」

 

(本当に善を見抜くのであれば、リッカ殿を弾くような真似をしてほしくはないのでござるが…それはいずれ解る事でござるな)

 

獅子王との面談を前に、羊のモフモフに包まれながら相棒の善性を祈るグドーシ。思惑を懐き、獅子の王に見える刻に至る。

 

「───ここは…」

 

そこは、全天型の玉座。何も阻む者無き、天空の蒼穹、純白の雲海を下天に望む至極の間。獅子の玉座に、円卓を有する遥か天の頂。

 

『よくぞ来た。善良なる魂よ。私は獅子王。世界に誇るラウンドナイツ・コンツェルン…そのすべてを統括する王である』

 

其処に鎮座する──獅子の面を被りし王。楽園の穏やかな騎士王とは真逆の、張り詰めた獅子の王。

 

「お初にお目にかかります。改めて、拙者はグドーシ。迷える一を救うが本望のブロガーにござるよ」

 

圧倒的な威圧感と、柔和な柔軟さ。互いに邂逅し、互いの意志を示す場が設けられる──。




獅子王『カウンセリングが主と聞いた。丁度、それに預かるべきものを抱えていた。貴様に預ける』


グドーシ「話の早い。その者の名はなんと?」

『ギャラハッド。一代ながらもその清廉さと有能ぶりは、円卓の一席に並ぶ成績を残す。その者には縁談の話を持ちかけたが、まだ呑み込めていないようなのでな』

「それはそれは。悩みを軽くするに全力を尽くしましょう」

獅子王『席を用意しよう。暫し待て。…一度も会った事のないものを愛せるか解らぬなど繊細な悩み、私には理解できぬ故な。力になってやれ』

獅子王は告げ、席を外す。その様子に一抹の寂しさを覚えながら、グドーシは動物達と戯れていた──。

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