桜「見てください、先輩。あれ…リッカさんが何かをしようとしています」
士郎「…走り高跳びか?陸上部の助っ人でもやるのか?リッカ」
ウェイバー「非合理的だな。体力なんて魔術に関係無いだろって」
シンジ「いいじゃないか。皆で笑いものにしてやろうぜ?元気なヤツがグズグズになるのは楽しいしさぁ」
凜「性根が実に小悪党で大変結構。…でも、どこまでやれるのかしら」
シンジ「あ、そうだ。せっかくだから学園の奴等にも教えてやるか。リッカの泣き顔なんてレアなの見れるぞ、っと」
カドック「さて…そう思い通りに行くかな?」
キリシュタリア「オフェリア達はもう帰った!?いけない、動画に残さなくては!」
ジーク「できる事、それは…応援だな。頑張れ、皆!」
「準備できたわよ、リッカ!後はあなたが跳ぶだけ!そう、なんかこう…!ハトのように!」
「実に平和的なイメージで拙者ほっこりでござる。いつでも参られよ、リッカ殿」
グドーシ、じゃんぬに準備を手伝ってもらい走り高跳びの準備が完了する。リッカも体操着に着替え終わり、入念な準備運動にて身体を慣らし跳躍の準備を完遂しながら距離を取る。
「胸とお尻がキツいような気がする…!ま、まぁそれはいいや。けど本当にどうなってるんだろうね…?ヒロイン攻略と走り高跳びはどうやって結びついてるんだろう…」
「拙者も正直眉唾ではこざいますが、ここはエミヤ先生を信じると致しましょう。目指せ自己ベスト、戦う相手はいつだって自分にござる」
「日本記録を塗り替えましょう!リッカならできるわ!」
「そ、それはどうかなぁ?楽園に来た私をどれくらい再現されてるかによるけど…よぉし!行くぞぉ!!」
気合一閃、頬を叩き今駆け抜ける。距離を測る一二歩の小刻みの後、全身を使ったダッシュのフォームを取り、過不足なく力とスピードを脚に乗せる。そして聳え立つバーを一直線に睨み付け──
「とぁぁあーっ!!!」
地面をえぐり込むように踏み込み、そのままの勢いで大跳躍。小手調べとして設定された高さのバーに引っかかるどころかふたり分程の距離を開ける程の大ジャンプにて、マットに着地するリッカ。
「お見事!その身体のキレがあらゆる武具と武術を使いこなす土壌ですな、リッカ殿」
「そんなに跳べるものなのね…!凄いわ!ぴょーんと行ったわ、ぴょーんと!」
「う、うん!身体のキレは悪くない…!全然行けそう!行けるよふたりとも!ガンガン高さ上げちゃって!」
自身の鍛え抜かれた一年半、今に至るまでの軌跡は決して無駄になっていない確信に至る。未だ真意や真理に至らないというのなら、念入りに目の前の困難に挑むまで。苦難など飛び越えるまで。
「自己ベスト、行ける!高跳びリッカの称号、手に入れちゃうからね!」
その意志を形に、今より高跳びに挑む。何処かで見ている、紫の後輩に届くと信じて。
「ばっちこーい!!」
リッカは今、自らに生えた翼を感じ跳び続ける──!
〜一方そのころ
「す…凄い…!」
エミヤに言われた通り、校庭にて何が起こるかを注目し、そして捉えた先輩と呼ぶリッカの挑戦、それは走り高跳び。設立されたバーを軽々と飛び越えていくリッカの姿を見ていくにつれ、初めは怪訝に、後にそれは驚愕となって釘付けとなる事となった。マシュは今、校庭の片隅の挑戦に目が離せず釘付けとなっていたのだ。
(飛び越えていく…。設立されたバーを、どんなに高くなっても諦めず、挫けずに挑んで…先輩は乗り越えていきます…!)
簡単で単純な高さはあっという間に乗り越え、自身の腰の高さ、腹の高さ、胸の高さとハードルは高くなっていく。ともすれば自身の頭の上、身長の2倍は飛び上がらなくてはならない領域にまであっという間に到達し、瞬時に限界に誂むというレベルにまで到達する。
(それでも、先輩は諦めずに挑んで、向かって、跳び立って…乗り越えていく…!凄い…!)
しかし、決してリッカは挑戦を投げ出さない。諦めないし、挫けない。無理じゃない?これ無理じゃない?とジェスチャーするも、グドーシとじゃんぬの応援を受け決意を固めて跳躍すれば、力強く無理や不可能といった領域を飛び越えていく。バク転、側転、月面宙返り3回転捻りなどという大技を見たときには思わず息を呑んだ程だ。その決して諦めない意志、実際に飛び越えていく力。其処には、溢れんばかりの情熱と気迫、意志、何より絶対に諦めないし投げ出さないといった決心と勇気が満ち溢れていた。
「あれが…リッカ先輩。どんな困難にも、理不尽にも諦めず乗り越えていく、人間の姿…」
走り高跳びのハードルは、人生の困難を顕しているのだろう。どんなに乗り越えても、どんなに飛び越えても、世界は理不尽で、それでいて新たな目標を設立し飛び越えられないものを篩い落とす。それを飛び越えられないものを蹴落とす為に設置された、世界の困難そのもの。
しかし、それは越えられないハードルなんかじゃない。勇気と決心を以て挑めば、支えてくれる誰かがいてくれれば必ず乗り越えられるものとなる。いや違う、むしろ高いハードルは超えられる為に存在すると言ってもいいのかもしれない。リッカの頑張りは、それを如実に訴えている。そうマシュは感じ取った。困難に誂むという言葉の意味。決して諦めないという鋼の意志。その大切さを、走り高跳びという縮図で教えてくれているのだとマシュは痛感する。
「私は…自分に起こった事を嘆くばかりで、前を向こうともしなかった。失ったものの大きさを嘆いて、後ろを向いているばかりで…」
「──しかし、人生は続いていく。苦難に横たわろうと、理不尽に打ちのめされようと、明日という日はやって来る。ハードルは常に目の前にある。もうダメだと挫けてしまう者もいれば、彼女の様に挑み続ける者もいる。何故彼女が挑むのか。わかるかね、マシュ君」
気付けば、エミヤが隣にてその挑戦を共に見ていた。彼女は何故挑むのか。彼女は何故跳べるのか。それは自身の為であり、結果的に誰かの為になることだという。
「彼女は示しているのさ。『皆で力を合わせれば、越えられない壁など無い』とね。どれだけ高くても、どれだけ理不尽であっても。彼女を支える声が、共に生きる者達がいてくれる限り諦めることはない。彼女は手を取り合い、共に歩む者達の大切さ…マスターとサーヴァントの真理をああやって伝えているんだ」
見れば、備え付けられたハードルギリギリ限界点。それ以上は上げられない領域にまで到達していた。最早見上げるばかりの距離、跳ぶと言うより、最早翼がいるやもしれないレベルの難関である。
「いよいよ彼女も、極限に挑もうとしている。意志や気迫ではどうにもならないかもしれない領域だ。だが彼女は決して諦めないだろう。さぁ、君はどうする?苦難に屈する彼女を見ているだけかね?」
エミヤの言葉の通り、リッカも困惑している様子が見て取れる。そろそろ自主練を飛び越えたレベルの記録と距離だ。それでも、彼女は挑戦自体を諦めることは決してない。跳ぶこと自体を、決して諦めていない。
「例え自分には跳べずとも、例え自分には遠くとも。きっと君の声は何かをもたらす筈だ。なにかを決心し、したいと思う。世界を変えるものはそうして英雄と呼ばれる存在となったのだから」
「先生…私は…!」
エミヤの言葉に、自身が何をすべきか、何を行うべきかを問われるマシュ。期待だけをして、ダメなら失望を顕にする。それはかつて、自身らが行われた事を繰り返すのかと言外に問うエミヤ。
「──私は!」
其処から先の決断は、語るまでもない。彼女は走り出していた。ただ見ているだけではなく、自身なりの何かを、託すために。
「──結局、私は一回も跳べず一日で投げ出した訳だが…時代と共に、主人公に求められる水準は上がっているのだな」
エミヤはその姿に、時代を見る。かつて挑み、そして終えた一度きりの挑戦。
そして───
「…何故あんなに見られていたのか、不思議でならんよ。最早全員に見られていたという錯覚すら起こしかけたのだからな──」
たった一度の挑戦が、まさかよりによって周りの大事な人達に見られていたという赤面ものの事実に、英霊エミヤは苦笑い混じりのため息を吐くのであった──。
リッカ「くっ!!流石に手強い…!!」
じゃんぬ「リッカでも2回の挑戦失敗だなんて!?くっ、もう後がないわ!」
グドーシ「あくまで本番と仮定した話にござる。しかしここまで一発勝利の方が驚きですが…流石はリッカ殿」
リッカ「ふっ、もう高跳びというか羽根生やせレベルで高まったハードル…しかしこれくらいで諦めていたら世界を救うことなんて出来なかった!私は絶対!諦めない!!」
マシュ「先輩ーーーー!!!」
リッカ「!?」
「頑張って!頑張ってくださーーい!!先輩はどんな困難も飛び越える、凄い人だと信じています!!だから、諦めないでください!」
リッカ「マシュ…!」
運動部達「「「「「そうだ!頑張れー!!」」」」」
じゃんぬ「!?」
文化部「「「「頑張って!負けないでー!!」」」」
グドーシ「おぉ…」
ジーク「皆が応援している。そうだろう、グドーシ」
グドーシ「ジーク殿…」
シンジ「僕のクラスメイトなんだ。それくらいやってくれなきゃ釣り合わないよねぇ。ほら、だから負けるなよ!」
ウェイバー「やるならちゃんと!成功させろよな!」
カドック「個人的に、見たくないんだよ。君が諦めるところなんて…!」
キリシュタリア「君なら出来る!君はきっと、世界を変えられる存在だ!」
士郎「オレは出来ないこと、お前は出来るはずだ!その姿は、皆の憧れと夢になるんだ!」
凜「世界を救うなら、アスリートくらいぶっちぎりなさい!」
桜「筋肉痛に気を付けてくださいね!」
リッカ「皆──皆の頭のフラグが、一つになってる…!」
マシュ「頑張れ!頑張ってくださーい!!」
リッカ「──この世の全て、とまではいかないけれど。皆の全てを背負って跳べなきゃ…!」
リッカは走り出す。全身に気迫と──魔力を満たして。
【女が──廃るんだぁあぁあぁあぁーーーッ!!!】
そして──跳ぶ。全身に魔力で編まれた、彼女自身の龍鎧を纏い、飛翔もかくやの勢いで翔び立つ。
じゃんぬ「──」
グドーシ「──」
固唾を呑み、見守る一同。水を打ったように静まり返る学園。
【これが──!!『期待を背負う』ってことだぁあぁあぁあぁあっ!!!!】
そして彼女は──限界を、越えた。マットに叩きつけられた彼女の頭上に、屹立する理不尽の象徴。
「「「「「「うぉおぉおぉおぉ─────!!!!」」」」」」
マシュ「凄い──凄いです、先輩…!!」
突き上げられた拳に、湧き上がる大歓声。その奮闘は確かに皆に──マシュに届いたのだ──
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