人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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生徒「リッカちゃん!ごめんノート見せてー!」

「マスター訓練付き合ってほしいんだけど…!」

「次のテスト範囲教えてー!」




サッカー部「リッカー!助っ人頼むわー!」

バスケ部「悪い!欠員対応頼めるか!」

野球部「チアガールが足りねぇ!頼むリッカ!」



「リッカ!ばいばーい!」

「またねー!」

「あ、そうそう先生が呼んでたよー!」

リッカ「や…」

(やることが…やることが多い…!!)

レスリング部

悪魔将軍【来たか。待っていたぞ】

「将軍先生!」

【私には無い、貴様の持つ感情の起伏。使い魔風情にも心を砕くその情こそが世界を変える力。より研ぎ澄まし、私の授けた技を昇華させてみせろ。さぁ、リングに上がれ】

「は、はいっ!」

【3ラウンドだ。殺す気で行くぞ】

リッカ「お、お願いしますっ!!」

下校時間いっぱいまで、リッカは学園を奔走し続けた──



学園生活に殺されるぞ!byウェイバー

「た、ただい…まふっ」

 

夕焼け小焼けで日が暮れて。リッカがマイホームにて玄関に倒れ伏す。学校初日と言うべき日を無事に終えた彼女は最早、疲労困憊としか言い様のないレベルでぐったりしていた。精魂は当然の様に使い果たし、忙殺された思春期の翼といった妙なポエムすら浮かぶ程の疲れ果てっぷりに、先んじて帰ってきていた弟のリクが飛んでくる。

 

「うわっ、姉ちゃんどうしたの!?凄い疲れてるように見えるけど!」

 

「まさしく疲れ果ててるんだよプロ…いや、エネミーエンカウントみたいなノリでイベントが乱立するとか凄い事だよ…」

 

そう、それは学園生活のあまりのイベントの多さ。歩けば一般生徒に頼み事をされ、行事の運用の為の雑用を任され、不良の仲裁を任され、サーヴァントとの付き合い方をレクチャーしなければならなくなり、帰る際に沢山のファンレターに一通一通目を通し、通り過ぎる皆に一人一人挨拶を交わして帰路を歩く。グドーシとじゃんぬがいなければ途中で倒れていたやもしれない過密スケジュールぶり。本当に人生とは自由度の高いゲームであるが、そんなところを完璧に再現しなくても…と、言わざるを得ないギャルゲー主人公スケジュールだったのだ。

 

「よ、よくわかんないけどお疲れ様。父さんと母さんがご飯作ってくれてるよ。一緒に食べよう!ほら、起きてよ!」

 

「ありがとうございます、リクくん…ベリアルパパも浄化される光っぷりが眩しい…」

 

リクに起こされ、リビングへと向かうリッカ。楽園では皆がどれほど自身を気遣ってくれていたのかが解るイベント盛り沢山ぶり。プライベートの時間はじゃんぬと話した時間が最後という壮絶さにも挫けず、ご飯を食す覚悟を行う。

 

「どんなに疲れていても…!両親が自分を想って作ってくれた料理なんて宝物を見逃すなんて私は絶対にしない!してたまるもんかぁ!」

 

「大袈裟だなぁ。親が御飯を作ってくれるなんて当たり前じゃないか」

 

「ふふふ…リク君もきっと解る日が来るよ。その当たり前が、どれほど素晴らしい事かってことをね…!」

 

当たり前の幸せこそ至上の宝。リッカの言葉に、最後まで不思議そうに首を傾げるリクであった──

 

〜団欒の時

 

「はい、あなた。あーん」

【すまねぇな、ライコウ。箸が持てねぇからな…】

 

並べられた食事、それはカレーを始めとしてコロッケ、メンチカツ、豚汁、シーザーサラダ、野菜ジュース、チョコケーキなどといったちょっとした外食クラスの品揃え。手が大きすぎる為に頼光にあーんされながら食べているベリアルを微笑ましく見つめながら、リクとリッカは極上の晩御飯にがっついていた。

 

「美味しい!美味しい!うめぇ!うめぇ!」

 

【相当気張ってたみたいだからな。精のつくものを重点的に作ってやった。残さない程度にキチンと食えよ】

 

「ありがとう、父さん母さん!でも僕、食べてすぐ寝れるかなぁ…」

 

【当然このあとは俺と訓練だ。食わねぇと身がもたねぇぞ。俺様のように立派なヒーローになりたいんだろう?】

 

「父さんは目付きが悪いからやだ!なりたくない!」

 

【コイツ…贅沢を言いやがる…!】

 

「まぁまぁ。リッカ、あなたは成績も素行も完璧な自慢の娘です。でも、だからといってその肩書きに囚われすぎてはいけませんよ。適度な息抜き、犯罪でなければやんちゃにも目をつぶります。貴重な学生の時間、悔いのないように過ごしなさいね?」

 

成績や素行を褒めつつも、一番大事なものは娘であるあなた。だからどうか無茶をしすぎないように。優しく暖かな肯定の言葉に、リッカの心は意志を無視した涙を流す。

 

【お、おい。何故泣く。俺様が味付けを間違ったか?だが、リクが食える程度だ。問題無い筈だぞ】

 

「…ごめん、嬉しいんだ。嬉しい時も涙が出るって…皆に教えてもらったから」

 

「ふふっ、幸せに飢えているのですか?なら土日は家族で何処かに行きましょう。映画やドライブ、乗馬でも何でも、好きなものを。ね?あなた」

 

「ドンシャインショー!ドンシャインショーに行きたい!」

 

【毎週行ってるだろうが。少しは他のヒーローに興味を持ちやがれ。そう、例えば俺様のような──】

 

「金時兄ちゃんや桃子ねぇがスーツアクターやってるんだよ!姉ちゃんも見たら絶対ハマるからさ!パンフレットには脚本さんやプロデューサー、変身前の役者さんのインタビューも乗るんだ!絶対楽しいよ!」

 

「楽しみ方が…!楽しみ方がディープすぎる…!うん、絶対だよ!絶対…皆で行こうね!」

 

疲れた身体に優しい料理が、心には暖かな優しさが染み渡るのを感じ、リッカは心からマシュの心象に感謝を贈る。

 

(マシュはこんな家庭を築いてほしいって思ってくれてるんだよね。…今度、なんか奢ってあげよう)

 

家庭の和やかな時間、平穏の一時。余すことなく、最も近き理想郷の顕現を痛感するリッカであった──

 

 

〜一日の終わり

 

「おぉ、じゃんぬからライン来てる」

 

『きょうはありがと。大好き。また明日ね(=^・^=)ニャ~』

 

ぬぁぁあぁあぁあぁん!!じゃんぬの可愛らしい返信に心を萌え殺されていると、グドーシからのLINE通知がピコンとリッカの端末に届き彼女を誘う。

 

『本日はお疲れ様でした。頑張り屋さんのリッカ殿は実に解釈一致でございます。して、マシュ殿の攻略をいかが致しましょうか』

 

労りから入り、本題に切り込む会話運びに感謝しながら、リッカはグドーシと作戦を練る。マシュとどう接点を作るかの観点は非常に重要だ。彼女との出会いを手繰り寄せなければ、終わるものも終わらない。

 

『フラグがね?多すぎるんだよぅ!森の中の木を探せとか無理ゲーじゃない!?あと私、フラグ達成条件になってる子に愛着湧いて脇道それまくるタイプだからさー!』

 

『承知しているでござるよ。シンジ殿やウェイバー殿のキャラエピとか気になります故に』

 

『でも時間もかかり過ぎちゃうよね。何より作業感覚で相手と向き合うようになるの絶対やだから…』

 

『どうしてもマシュ殿へ繋がるルートを確保する必要がありますな。チャートの1つも欲しいところではありますが…む?』

 

『どったの?』

 

『こちらに通知でござる。…おぉ、カーマ殿でござる。これは心強い。グループ通話に繋げますかな?』

 

リッカとグドーシからしてみれば、カーマと言えば自身らを強く後押ししてくれる愛の神。こうして接触を求めてくるということは、心強い助力に違いない。即座に頷き、グループ通話を展開する。

 

『あぁ、良かった。繋がりました!リッカさん、グドーシさん、大丈夫ですか?カーマです、楽園のカーマです!』

 

「──楽園のカーマ!?」

 

『えぇ、現実世界のスヤスヤな二人をサポートする為立候補し、夢に割り込んだ内の一人、カーマです。鬱陶しい事に学園生活では役割を徹底するよう強制されているのでコンタクトできませんでした…!いいですか、あと一人から預かってきたアドバイスを伝えます!私にはさっぱりなんですけど、二人の助けになるよう信じていますから!いいですか…!』

 

なんと、楽園からの使者であると自称するカーマは告げる。フラグ乱立のギャルゲーを攻略する、突破口の一助となる伝言を。

 

「いいですか?キーワードは『皆見ている、走り高跳び』です!息詰まったら試してみてください!あと、もし学園生活でリッカさんやグドーシさんに酷い事や態度を取ってしまったら、本当に本当にごめんなさい…!」

 

『『走り高跳び…?』』

 

カーマ、そしてもう一人の協力者がもたらしたとされるそのキーワードに、二人は首を捻る。愛の女神の託した言葉の関連性の意味を問いながら──




リッカ『走り高跳びって、あの?』

グドーシ『あの走り高跳びですな。しかしギャルゲーで走り高跳びするのが鍵とは…もしやバグ挙動ありなのですかなこの夢のカケラは』

リッカ『でも、カーマは絶対適当言わないよ。私はカーマを信じたい。ううん、信じる!』

グドーシ『然り。ならば最終手段と考えるとして…残る一人の協力者ですが』

リッカ『心当たりある?』

グドーシ『恐らく。しかし、昼の間は雌伏している模様でした故、様子を見ているのやも』

リッカ『そっか…じゃああと数日は様子見てみる?』

グドーシ『そうしましょう。どうやらこの学園生活、マシュ殿の意向から優しい世界な様ですからな。明日も頑張りましょうぞ』

リッカ『うん!じゃ、また明日ね!』

楽園が本腰を挙げてサポートをし始めてくれた。その事実に安堵しながら、リッカは眠りにつく。

『なんだっけ…走り高跳びとギャルゲーの関係…』

もたらされたキーワードに、やや頭を悶々させながら。リッカは重くなった瞼を閉じた──

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