リッカ「マスター科?」
エミヤ「あぁ。マスターとして、サーヴァント達と卒業後バディを組む為の技能を鍛え学ぶクラスだ。君はマスターランクEX…評価規格外ゆえに授業免除も許されてはいるが、今日はどうするかね?」
グドーシ(物凄い評価でござるな、リッカ殿)
リッカ(マシュの中の私どうなってるのぅ?)
エミヤ「グドーシ君、君はエクストラ科だったね。いつもの通り、サーヴァント生徒達の争いの執り成し、見回りをお願いできるかな」
グドーシ「おや、承知致しました。別クラスですな、リッカ殿」
リッカ「ふぐぅ。でもエクストラクラス科なら…マシュはエクストラクラス科ですか!?」
エミヤ「あぁ、グドーシと一緒のクラスだ。昼休みなどで会えるだろう」
リッカ「なら安心!それじゃ、また後でねー!」
グドーシ「楽しまれよ、リッカ殿」
エミヤ「…マスター科は個性者揃いだ。彼女も足下を掬われなければいいが」
「おはようございます!!」
案内通りに勢いよく扉を開け、マネージャー経験で培った発声で挨拶を行うリッカ。マスター科と言われるだけあり、いや、或いはマシュが考えた学園生活故の…ギスギスしていない平和な空間がリッカを出迎える。
「おはよう、リッカ。授業免除されてるのに来るなんて、流石は規格外だな」
「!衛宮くんだ!」
衛宮士郎。記念すべきすべての始まりのマスター。彼はマスターとしてはイマイチだが、人類を超越した力を発揮し始める大器晩成型の人物である。彼がマスターとして再現されているのはある程度確信に近いものがある。無論、それだけではない。
「おやおや、我等が規格外マスターにご挨拶とは優等生じゃないか衛宮ぁ。僕はスルーしておいてさ。悪いとか思わないワケ?」
「あぁごめん、忘れてた」
「というか、アンタずっと声かけてもらうの待ってただけじゃないシンジ。めんどくさい彼女かっつの」
「ごめんなさい…兄さんは性根が腐ったところがありますが、プライドだけは一人前なんです。許してあげてください」
「辞めろ暴露とフォローに見せかけたトドメ!ふん、いい気になるなよお前達。僕より上でいられるのは、今だけなんだからな!」
遠坂凛、間桐慎二、そして妹の桜。stay night組のメインマスター達がしっかりと再現されている事実に、リッカは感動に内頬を噛んだ。マシュ、ナイスと心からガッツポーズである。
「ま、そこは私も同意見。Aランクは貰ってるけど満足する筈ない。いつか私もあなたみたいに、ランキングを飛び越えてやるから覚悟なさい?」
「二人は凄いよなぁ。俺はE、桜はDだから雲の上だ。でも無理はするなよな」
「はい。私は兄さんに負けさえしなければ何でも大丈夫ですから」
「聞こえてるぞ桜!そういう黒い発言は聞こえない風に言え!」
(シンジくんが…歪んでない…!)
士郎、凛、桜は納得として、シンジは鼻持ちならないイケメン程度にアクが取られている。原作の彼は魔術の家に生まれながら魔術の才能が無く、桜に憐れまれたと感じ暴走したが、この時空で争うのはマスターの職業適性。努力次第でどうとでもなる優しい補正がかかっている故か彼は桜や周りと良好な関係を築けているようだ。
「おい、朝からうるさいぞ。凡人はこれだからいけない。タイプムーン学園に選ばれたエリートの自覚を持ってだな」
「仲がいいことはいいことだ。オレはリッカの誰とでも仲良くなれるところを見習いたい」
「ウェイバーくん!ジーク君!」
エルメロイ二世の黒歴史、ウェイバー。そして聖杯大戦の奇跡、ジーク。彼等もマスターとして学生にカウントされている事実にマシュのこだわりを痛感するリッカであった。凝っている。人物再現が非常に凝っている。
「大体、サーヴァントなんて使い魔なのになんでこっちが顔色を伺わなくちゃいけないんだよ。令呪で言うこと聞かせればいいじゃないか」
「それも事実だが…やはりパートナーである以上、そういう上下より対等でありたいんじゃないだろうか。令呪は鎖ではなく、絆であってほしい」
「ロマンチストめ。あぁムカつく!何がムカつくってお前がDで僕がEなところだよ!これじゃまた補修じゃないか…くそぅ!」
(各聖杯戦争の主役クラスの皆が集まってるのかな?だったら…)
「フランシスコー」
珍妙な挨拶と同時にプレミア厶ロールケーキを頬張るクラスで三番目くらいの美少女が現れた瞬間、場の空気が一転する。彼女の評価は、マシュの中でも別格だ。
「岸波白野…!リッカやアイリスフィールと並ぶEXランクマスターの登場だ!」
「相も変わらず自然体だ。見習いたいな、あの泰然自若」
EXランク、評価規格外の称号は当然ながらリッカだけのものではない。恐らくカルデア時空のアイリスフィール、そして月の新王たる白野も格別の評価をされている事は明白だ。クラスメイトのモブマスター達が道を開ける。間違いなく最強クラスの役割を担っているのだろう。
「リッカー。うぇーい。へいよーかるでらっくす」
「かるでらっくす!」
だが、そんな評価はどこ吹く風。リッカの隣の席にバッグを下ろしいつもの自然体で話し掛けてくれる彼女に安心しながらハイタッチを交わす。白野は決して、立場で相手を踏みつけないと評価したマシュに解釈一致の花丸を贈るリッカ。
「今日は授業に出る気分。お腹空かせて購買に…ダッシュ」
「まだ食べるの?あなた本当に食べるの好きね…」
「美味しいものを食べてこその人生。リンこそキリシュタリアとの模擬戦は大丈夫?」
「当然。A+ランクに昇格して、最高のセイバーと契約を結ぶ為にも負けてられないわ!…まぁ、本人はあんな感じなんだけどね」
「やぁ諸君!今日は道に迷ってしまったよ!なんの道かって?──人生、かな」
「入口で止まらないでくれないかキリシュタリア。せめて脇から抜けられる隙間を開けてくれ」
「キリシュタリア!カドック!」
胸の名札の隣にAランク、B-と記された学生服姿のキリシュタリア、カドックが教室にエントリーする。カドックはもう少し高くてもいいと思うが、だがマイナスをつけちゃうところが実にカドックらしいとリッカは頷くばかりだ。
「キリシュタリア…いつもみたいに余裕ぶれる時間も少ないわよ?私があなたをギャフンと言わせてやるんだからね!」
「ははは、余裕ぶっている訳じゃない。これは本物の余裕だよ、凛ちゃん?ところでいいジュエリーショップを見つけたんだが一緒にどうだい?」
「ライバル口説くな頭ゼウス!ふん!精々首洗って待ってなさい!でも後で場所は教えて!」
(彼がAランク、稀代の天才キリシュタリア・ヴォーダイム。真っ当なランキングでは歴代最強とされる程の超大物だ。成り上がりの叩き上げの遠坂とは対になる相手だな)
(ジーク君のプレーンな視座がありがたぁい)
(ふん、どうだかね。礼装や見た目が立派なだけで本当は大した事ないんじゃないの?少なくとも、品性では僕の勝ちだね)
(シンジくんの皮肉屋な観点がありがたぁい)
「ふん。何が血統と才能だよ。僕や岸波はそんなものにとらわれないタイプだって見せつけるケースになるんだ!見てろよアーチボルトの若ハゲ…!」
「えっ?あの、私も一般枠のマスター候補上がりなんだよ?そもそも私のEXの評価ってどこから…?」
「ほい」
白野から渡された書類、それはタイプムーン学園のサーヴァント達からの、マスター枠スカウト指名の割合グラフ。横並びでグラフが伸びる中、一つだけ紙の端から端に突き抜ける勢いのグラフがある。
「サーヴァントとの相性適性、全クラスオールEX。サーヴァントからの指名数学園史上最多。魔術供給制度、戦術制度、全部最高クラス。特にサーヴァントとの相性適性はリッカだけの記録」
「トップサーヴァントも、非戦闘サーヴァントもリッカと組めば必ず最上の結果を出せるっていう評判だもんな。コミュニケーション能力がそのまま、お前の評価だよ。リッカ」
「だからって自分もメチャクチャ強いのはやり過ぎだぞお前!くそっ、悪魔将軍先生やヘラクレスのマンツーマンコーチとかどうやって…ブツブツ…」
「あ、あはは…」
マシュが自分に向けている評価が非常に高く、重い。サーヴァントとなら誰とでも最高のパフォーマンスを出せると確信され、並みいるマスター達より上にいてしまっているその評価に、リッカは苦笑いを抑えきれなかったとさ──
天草「はい、マスターの皆さん席に付きましょう。授業を始めますよ。おや、マナカさんはまた欠席ですか」
リン「セイバー科に突撃していきました」
天草「ではそのうちつまみ出される事でしょう。それでは授業を…あ、その前にリッカさん」
リッカ「は、はい!」
天草「ジャンヌオルタさんがまた屋上でアンニュイしておられますので、様子を見に行ってあげてください。あの方、あなた以外に懐きませんので」
シンジ「はぁ!?いきなりサボり推奨とか不公平!不公平だぞ!」
天草「サボりたいならあなたもどうぞ。長い人生、困るのはあなたですから」
シンジ「くっ…意地の悪いやつ!」
リッカ「い、いいんですか?」
天草「若者特有の『未来の見えない不安』ですので、ケアが必須です。ぶっちゃけ授業より価値ある悩みなので一緒に答えを見つけてあげてください」
リッカ「──わかりました!」
天草「頼みます。はい、ではリッカさん以外には今日サバリフレでグッドエンドをめざしてもらいますねー」
桜「先生、私メドゥーサルートから出れないんです…」
天草「ゴルゴーンルートも乙ですよー」
士郎「リッカ、気を付けてな」
白野「いってら」
リッカ「うん!──まずはじゃんぬがチュートリアルかな?」
ギャルゲっぽくなってきた!とホクホクで屋上で待つ運命に会いにいくリッカであった──
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