人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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霊夢「さーて!全部終わったし後は全員でお酒飲んで〆!…だと思ったのに違うわけ?」

紫「未曾有の大異変だったわけだし、行方不明者、或いは結界に綻びが無いかを確認するのが先よ。もう少し我慢なさい」

霊夢「はぁ…まぁ、しょうがないか…少しの我慢ね、我慢。やるのは決まってるわけだしね」

紫「大人になったじゃない。ようやく幼年期が終わったのかしら」

霊夢「ふふん。お金があれば心に余裕もできるのよ♪見なさいこの満杯の賽銭箱!博麗も安泰よ!フーゥ!」

紫「…そんなに困窮していたかしら、あなたの処…報酬はきっちり払ってたと思うんだけれど」

霊夢「一人暮らしで何かあったら大変でしょ。そう言う積み立てよ、積み立て。自由に散財できる余裕はいつもないの、私はね」 

紫「巫女なのにリアリストねぇ…じゃあ、どんな贅沢するのかしら」

霊夢「そうねぇ…お茶漬けに明太子乗せるってどう?三食毎日明太子とか贅沢の極みじゃない!?」

紫「……早く相手を見つけて、お腹いっぱい食べさせてもらいなさいね」

霊夢「どういう意味よ!?」

アイリスフィール「お茶漬けであんなに強いのね…」
マストリア「サボテンだけ食べるディアブロスみたいですね」



終わりのあとの片付け準備と始まりの準備

幻想郷を覆った虚無を巡る、虚空大異変。霊夢を筆頭としあらゆる幻想郷の勢力を招いたそれは解決を迎えたと、一人の天狗の新聞により広まる事となった。

 

「皆さんのお陰で幻想郷は救われました!ありがとー!ありがとー!」

 

「まーた文さんがあることないこと書いて、ない!?」

 

「信じらんない…!このスクープ独占とかサイテー!」

 

渦中の中にて取材し、一部始終を細かく纏め上げしかもカルデア文学部や温羅に添削を頼んだ新聞、否報告書は史上最大の大ヒット。天狗社会にて一大センセーションを巻き起こしたのは言うまでもない。

 

「今回は実に素晴らしい隣人達がいてくれたが故のこの勝利でした。だからこそ、皆さんの『これから』の対応に表れているんですねぇ…」

 

文が感慨深く言うように、その後ももうちょっとだけお話は続く。それはお礼と感謝、それとちょっとの見栄の二次会のようなもの。

 

そう──『誰が一番盛大なパーティーを開けるか』という競争。やっぱり力を合わせられたのは一瞬な気難しい幻想郷で、それぞれのグランドマスターズも駆り出されていて──

 

~カドック・紅魔館~

 

レミリア「みんな頑張ったわ…頑張ったのよ!しかしまだ気を抜いてはいけないわ。私達カリスマの者達が真に幻想郷の覇者である事を知らしめる必要が…必要があるのよ!」

 

パチュリー「もう。演説は解ったから手を動かしなさいよレミィ。とびきりのパーティーをやるんでしょう?」

 

レミィ「甘いわねパチュリー。パーティーとは顔が必要よ。カリスマたる私はもうすっごい、立っているだけで仕事を果たしていると言えるのよ。何故なら、それがカリスマだからよ!そうよ!!」

 

美鈴「チャーハン作りますよ!」

咲夜「じゃあ私がチャーハン以外を作るわ」

小悪魔「えっ!?食べ放題でいいんですか!?わーい!労働の後はご褒美ご褒美!」

 

フラン「愚民」 

 

カドック「辛辣過ぎないかフラン…」

 

「形容がそれしかないから仕方無い。勝ってパンツの紐を締めなくては足下を掬われる」

 

「兜じゃないのか…。まぁそれはともかく、ありがとうな、フラン」

 

フラン「う?」

 

「話は聞いたよ。地下室から一番に飛び出して救援に来てくれたって。誰かを助けるために動いてくれて、君は凄く素敵な子なんだなって思った」

 

「…社会復帰の一環。別に誰かの為ではない」

 

「それでも、嬉しかったよ。なんていうのかな…リッカ風に言うなら、絆が応えてくれた、かな」

 

「…。好きに取ればいい。私も否定はしない」

 

「あぁ、そうさせてもらうよ…って」

 

『りれきしょ』

 

「なんだいこれ」

 

「カルデアにしゅーしょくする事に決めた。書くの手伝って。三百歳くらいだから成人。ババァではない。ババァではない」

 

「ほ、本当か!?よ、予想外だなこれ…わ、解ったよ。じゃあ、一緒に書こうか」

 

フラン「社会人フランの活躍に…乞う御期待。カドック。私を養ってくれ」

 

カドック「自炊しないのか!?」

 

 

~オフェリア・湖

 

チルノ「久しぶりだな、青じそのマスター!あたいの子分の夫は元気か!」

 

オフェリア「お陰様で。…単刀直入にいうわ、チルノちゃん。楽園で働かない?」

 

チルノ「なんだと!?」

 

オフェリア「いつもいるわけではないわ。非常時のマスターとして呼んだら来てほしいの。ブリュンヒルデとの関係も良好だし、戦力はあるだけあればいいものね。どうかしら」

 

ブリュンヒルデ「マスター、スカウトです。やりましたね」

 

チルノ「ワールドだな!良いだろう…!あたいが力になってやる!サイキョーマスターチルノがな!」

 

オフェリア「助かるわ。ありがとう」

 

シグルド(心遣い、感謝する。マスター)

 

(これで楽園で血なまぐさい殺し合いは起きなさそうね。あとは少しずつ対応していきましょう)

 

チルノ「いいかブリ、殺したくなったら深呼吸するんだぞ。殺すのは最後だ!いいな!」

 

ブリュンヒルデ「はい…最後に殺します…」

 

シグルド(幼子と戯れる我が愛。至極の光景である)

 

(燃え上がる愛って強いわね…)

 

~デイビッド・太陽の畑~

 

ゴッホ「出来ました!ウフフ、緑の見返り美人…!どうぞどうぞ、お納めください…!」

 

幽香「へぇ…素敵じゃない。腕前かしら、モデルが良いのかしら」

 

デイビッド「どちらもだろう。オレはそう思う」

 

幽香「同感ね。ゴッホ、やるじゃない。褒めてあげる」

 

ゴッホ「エヘヘへそんな畏れ多いゴッホのゴッホなんてエヘヘへウフッ、ウフフ、ウフフフフフ…!」

 

幽香「黙ってれば可愛いのに、なんで喋るとキモいのかしらこいつ…」

 

デイビッド「我々は似た者同士だな。オレも黙っていればイケメンと何度も言われる。そして幽香、君も黙っていれば神秘的な美女だ」

 

幽香「ふーん…なら、黙ってましょうか?」

 

デイビッド「いや、オレは何にも媚びないその孤高さが好きだ」

ゴッホ「ゴッホも好きです!ウフフ、女性の強さは貴重です、どうか大切に…!ゴッホアドバイス…!」

 

幽香「…。夏にまた来なさい。その頃が一番、向日葵がきれいに咲く頃よ」

 

デイビッド「了解した」

ゴッホ「必ず行きますです!はい!エヘヘへ、美女と専属契約…栄転…ゴッホ栄転…!」

 

幽香「…ふふ。変な奴等ね、本当」

 

 

~ペペロンチーノ・地霊スパ~

 

さとり「無事に収まって、何よりだったわ。皆無事でほっとしました」

 

ペペロンチーノ「本当の危機に陥った時、その本性が垣間見れる。性悪ばかりと聞いていたけれど、そんなコト無かったわ。皆素敵な人達だったじゃない?ねぇ?ミコトちゃん?」

 

さとり「そう思ってもらえたなら…嬉しいわね。やっぱり旅人にはリピーターになってほしいもの。毎年来たくなる魅力が幻想郷には必要なのよ。何にも無いけど。次は郷起こしね…」

 

ペペロンチーノ「あら、ここにしかないものちゃんとあるわよ。安心なさいな。ピンチの時、誰かを助けようとするステキな心…『人情』ってヤツ。アタシ、それを教えてもらったわ」

 

さとり「人情…」

 

「盆と正月はここでも過ごしたいわぁー!スパもランドもこれからよこれから!さとりちゃん、一緒に地霊を大人気スポットに仕立てていきましょう!アタシ達、友達だものね!」

 

さとり「…えぇ。友達…一生の友達だものね…」

 

こいし(重いよ、お姉ちゃん…)

空(友情ニュークリアフュージョン!)

燐(良かった、良かったですねぇ…)

 

 

ぐっちゃん・人里

 

こころ「帰ってきたか!どうだった私の舞は!」

 

ぐっちゃん「なんでサンバ!?ポールダンスはどうしたのよ!?」

 

こころ「ダメだった。応援なら行けるかと思ったんだが…ハレンチだった。お前も人前で踊るのは辞めような」

 

ぐっちゃん「項羽様の前でしか踊らないわよ馬鹿!しかもよりによってなんであのダンサーなワケ!?私だって凄かったでしょーが!」

 

こころ「確かに凄いが、あらゆる面でズレズレだぞ。自分の認識が間違っているかもと客観的に見る癖をつけよう!つけような!」

 

ぐっちゃん「何を上から語っているかコイツはー!仮面割ってやるから貸しなさい!」

 

こころ「辞めろー!メンタルブレイクってこんなんじゃな、やめっ、辞めろー!」

 

蘭「あはは…。まぁ、気安げな友人が無事できたと言うことで」

項羽「蘭よ。我が妻への献身、平に感謝する。我が妻のそなたへの評価は極めて高い。口にはしないが…」

 

蘭「良いのですよ項羽殿。荒みきっていたあの御方が、こうして元気にはしゃいでいる」

 

ぐっちゃん「紐?これ紐なのこれ?紐?」

 

こころ「やーめーろ!辞めろー!」

 

蘭「それだけで、私は良いのですよ…」

 

項羽「…見守り隊と言うものか。納得である」

 

キリシュタリア・人里

 

子供達「「「「「桐之助ー!!」」」」」

 

キリシュタリア「やぁみんな!ただい」

 

「途中どこ行ってたんだよ!」「心配させやがって!」「先生に謝れ!」「みんなやっちまえー!」

 

キリシュタリア「うわぁあぁあー!?洗礼が手厚いなぁー!?」

 

慧音「良かった、皆が無事で…」

 

イニス「皆様が諦めなかったからこそ掴んだ勝利だと、思います。本当に、素敵な人達で…」

 

慧音「そう言ってもらえると嬉しい。だが…それは彼の力もあってこそだ」

 

「マスターの?」

 

キリシュタリア「ストンピング!ストンピングはやめておくれ!この着物気に入ってるんだ!一張羅なんだ!」

 

「あのとき、彼は戦いの中で不安な心を癒やしてくれた。敵を倒すより、彼は我々に寄り添ってくれたんだ。あの災厄で、パニックが起きなかったことは驚くべき事だ。カルデアという組織の皆、そして彼等マスター。まさに彼等こそが、人類の多様性という美徳の体現者ではないかと思う」

 

イニス「多様性…」

カイニス『ハッ。…楽しそうに笑うじゃねぇか』

 

キリシュタリア「すまない!本当にすまないねみんな!そろそろ許してほしい!あぁズボン!ズボンは許しておくれ!」

 

カイニス『…話すのは、もうちょい後にしてやらぁ。まだまだ甘っちょろい日々を過ごしやがれ、マスター』

「…いつか必ず話してくださいね。約束ですよ?」

『そのうちな!』

 

慧音「サーヴァントにマスターか。…不思議な主従もあるものだな…妹紅と一緒にやれるかな…」




???

ニャル【限界集落であるほど、コソコソしぶとく生きているものだ。村長以外は実に有用に仕入れさせてもらったよ】

『宇宙人にも解る!人体構造解剖キット!』

【骨髄と、角膜と腎臓と各種臓器…タダで仕入れられて良かった良かった。これでカルデアスタッフの急病にも安心だし、宇宙人に人体の説明をしながら解剖が出来る。ねぇ村長】

村長「…!…!」

【スカフィズムって知ってる?知らないなら今から堪能する事になるからごゆっくり。君に恨みはないんだけど、ほら先祖の業ってあるじゃない?清算してもらわなきゃ私の大事な人が前に進めないからさ、ね?私達を助けると思って】

「!!」

【それじゃ、蛆虫達とごゆっくり。ミルクが恋しくなったらまた来るからね~】




正邪「これは…」

『少女の墓』

ニャル【残念だ…村長達にも声をかけたんだが、天邪鬼の娘の一族はムラハチにされて、名前すらも禁忌とされ失伝されていたよ。…酷い話だ。だから私はせいぜい、私財を擲ち彼女の墓を作るしかできなかった。ごめんね、正邪ちゃん】

正邪「…立派な墓だ…貴族や大名が入るような、立派な墓だ…」

【古墳作ろうかなと思ったけど止められたんだよね。お香炊く?】

「うん。…なぁ、邪神。なんで人は冥福を祈るんだ?」

【…あの世に行った者の人徳を知らせるのさ。天国に行きやすく、地獄の刑罰はより軽く。だから、人は祈るんだよ。それも優しさだな】

「…妖怪が手を合わせるのに、意味はあるかな?」

【あるさ。無いとは私が言わせんよ】

「…じゃあ、合わせるよ。名前も聞けなくて、何も残せなかった彼女が、ちゃんといたと伝わるように」

【それでいい。無意味に意味を持たせられるのが…この世界の素晴らしさだからな】

「邪神」

【ニャル?】

「…ありがとうな。これから、世話になってやる」

ニャル【…こちらこそ。頼りにしているよ。墓の世話は、私達家族に任せておくれ】

(天国に行ってくれ。虹の向こうにあるような、奇麗な虹の向こうへ──)

パーティーに参加できない邪神と天邪鬼は、人知れず復讐と冥福を果たし、祈り続けた。かつての、細やかな日々へと向けて──

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