人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マテリアル読み返そうとしたらメンテだった・・・


仕方無いので箸休めに、リッカの過去の追憶書きます


ゆるくお楽しみください


過去

――私が生きるのが面倒になったその日からのことは、まぁよくある話だと思う

 

 

 

上履きに画鋲が入っていたり

 

 

机に落書きされていたり

 

 

席がなかったり

 

女の人の体に自分の顔がつけられていたり

 

 

まぁ考えられるイジメは一通り受けたと思う

 

 

先生に相談してみたけど、まぁ効果なし。面倒だったんだろう

 

 

一応両親にも相談してみた

 

「そう。自分で何とかしなさい」

「私達は忙しいんだ」

 

まぁそんな感じで、私はいないもの扱いされていた

 

 

・・・まぁ、仕方なかったと思う

 

期待に応えられなかった私が、悪かったんだし

 

 

・・・死んでしまおうとも、何度か考えたけど、後始末とか迷惑かけるだろうから止めておいた

 

 

このまま、いじめられていれば、まぁ。辛いと感じる心が先に死んでくれるだろう

 

 

そうなれば、なんとなく生きていられて楽だろうなぁと。私はそう考えて生きていた

 

イジメが始まって、一年くらい経っただろうか

 

 

三年生になった私の環境は、何も変わらなかった

 

 

まぁ期待はしてなかったけど。人間なんてそんなものだし

 

それより、皆受験とか大丈夫なんだろうか。成績落としたらそれなりに苦労するだろう

 

私はなんの価値も無い点数だけは取れていたので、学年で一位はまぁ保てていたんだけど

 

 

・・・別にやりたいこともなくて。サクッと死ねたら楽なのになぁと空を見る日々

 

 

――そんな日々が続くと思っていた矢先

 

 

「突然の声かけをお許しくだされ、フジマル殿w」

 

――久しぶりに、私に声をかけてくる人がいた

 

「――、ぁ」

 

喋るのも久しぶりだったので、なまった声帯からは声が出なかったけど

 

「最近転校してきたゆえに無礼は赦されよ!我が名は・・・あぁ、求道師と呼んでくだされ!そなたが、フジマルリッカ殿で相違ないですかな?」

 

「――ぅん」

 

「噂に違わぬ美少女ぶり・・・!しかし凡俗のやっかみを受け、大層曇っておられる!嘆かわしいですなww」

 

やけにハイテンションなグドーシとかいう男の子は・・・ブ男だった

 

身体はでっぷりしていて脂ぎっていて汗臭く、また汗っかきなのか脂汗が滲んでいた

 

「見たところ、学校生活が退屈なご様子。いけません、いけませんぞフジマル殿、貴重な人生を浪費してはいけませぬ!」

 

――でも、瞳は。スゴくきれいだと思った

 

「どうですかな?今日一日、騙されたと思って拙者に付き合ってみては?不快な思いはさせてしまうかもしれませんが退屈はさせませんぞ!あ、拙者のヴィジュアル的な意味で不快というわけでチョメチョメな意味ではありませんが」

 

「いいよ」

 

「本当ですかな!?」

 

――別に、学校にいてもいじめられるだけだし

 

外見が整って中身が腐ってる人なんてイヤというほど見てきた。今更外見なんかで人を判断なんかしない

 

「デュフww労せずダイヤの原石ゲッツwではでは参りましょうぞリッカ殿!」

 

「うん」

 

今更私がサボったくらいで、気にする必要はあるまい

 

 

 

 

案内された場所は、立派なお屋敷だった

 

 

「・・・」

 

「驚きましたかな?拙者中学にて独り暮らし!何故なら宝くじ当たった勝ち組でありますゆえ!」

 

 

「・・・」

 

「デュフww塩対応wwまぁ致し方なしおすし。上がるでござるよ、フジマル殿」

 

「うん」

 

・・・声がうまく出せないだけなんだけど。一年ぶりだし

 

 

「拙者の誘いによくぞ乗ってくださった!拙者、リッカ殿をみてピン!ときたでござる!貴方は!磨けば輝く逸材であると!」

 

「・・・うそ」

 

「うそではござらぬよぅ。拙者、とある一つを除いて大体のことは出来ますゆえに!人を見る目もあるのでござるよ」

 

「・・・ふぅん」

 

汗臭いけど、人を騙そうとしてる感じじゃない。――そういうのは、一目で解るし

 

 

「で・・・何をするの?私は多分、なにも出来ないけど」

 

「構わぬでござる。フジマル殿には『触れて』いただくのでござるよ」

 

 

「・・・触れる?」

 

「そう!!『文化』というカルチャーでござるよ!あ、これ今日のノルマで」

 

 

どっさりと置かれるDVDの山。それらすべてがアニメーションのDVDであり、次から次へと持ってこられる

 

「・・・アニメ?」

 

 

「馴染みがないですかな?ですが生きている上でサブカルに触れぬというのは人生の九割を損しているでござる!フジマル殿のような美人であれど、それは同じ!」

 

「・・・へぇ・・・」

 

アニメ、か・・・習い事が忙しすぎてまともに見てなかったな。中学では見る気にもなれなかったし

 

「では早速・・・といいたい所でござるが・・・」

 

「?」

 

「酷い顔つきでござるよフジマル殿~。せっかくの恵まれた美少女フェイスが台無しでござる。特に髪!髪が酷い!傷みまくってオレンジがくすんでいるでござる!女を捨てるには早すぎるでござる!と言うわけで風呂にはいられよ、早急に」

 

「・・・いいの?」

 

「問題ないですぞw大体独り暮らしにはでかすぎる家でござるゆえもて余しぎみw豚に真珠的なww」

 

「・・・解った」

 

「ゆっくりなされよ!一日は長いでござるからな!あ、日用品は自由に使ってくだされ」

 

 

「ありがとう・・・」

 

・・・久しぶりだな、とぼんやり思った

 

人と話すの、何年ぶりだろ

 

 

 

 

お風呂から上がった私を観るなり、テンションマックスで大広間のソファに座るグドーシ君。

 

 

「待ちわびましたぞ!シャンプーのよいかおり!拙者の臭いも打ち消されぬものか!え、だめ?」

 

「ありがとう、さっぱりした」

 

・・・どういうわけか、シャンプーやボディーソープで洗ったからだの汚れや痛みがすうっと消えたのだ

 

なんだろう。特注品なんだろうか

 

「まぁ拙者の臭いはどうでもよろしい。ささ、アニメアニメ!カルチャーですぞ!」

 

「・・・私、アニメとかよく・・・」

 

「心配はござらぬ。拙者がチョイスした特選ものですぞ!ささ、始めますぞ!」

 

慌ただしくリモコンをいじるグドーシ

 

・・・まぁ、アニメくらい。いいか・・・

 

 

 

――始まったのは子供向け番組の、素朴な内容のアニメだった

 

わんにゃん王国とか、何パンマンとか、そんな感じのやつ

 

「――・・・」

 

構成は単純で、子供にも解りやすいようなシンプルな内容

 

でも、変に捻ったりしない、心にまっすぐ、ストンと落ちる内容

 

 

手と手を繋ぎ、力を合わせて戦うみたいな。単純で、長く愛される内容

 

「・・・」

 

――それが、無邪気に遊んでいた平和なかつてを思い出させて

 

固まった心が、また、解されていくようで

 

「・・・――――」

 

気がつけば、涙が止まらなくなっていた。溢れて溢れて止まらない、感情の高まり

 

「いかがでござるか?フジマル殿」

 

「・・・うん」

 

「冷えた心に、荒んだ心に。カルチャーは響くでござろ?」

 

「うん・・・」

 

「アニメ、よいでござろ?」

 

「うん・・・!」

 

 

涙と鼻水で、顔をぐちゃぐちゃにしながら、心暖まる物語を堪能し続けた

 

 

――気がつけば、もう夕方で。一日アニメを見ていたようだ

 

「神・・・まさに、神のみわざ・・・いや、もはや人間なんてちっぽけに感じるアニメーターの芸術品・・・」

 

「ずっ、ずびっ。ずびっ。ずごがっだ」

 

気がつけば私は泣いていた。今までの感情が吹き出たみたいに泣いていた

 

 

「気に入ってもらえましたかな?」

 

「うん・・・!ごれ、なんで?」

 

「フフフ、これ実は、フジマル殿の為にチョイスしたのでござるよ」

 

「・・・え?」

 

「転校してきてすぐ、フジマル殿の噂を聞いたでござる。ビッチだの泥棒猫だの、凡俗どもに散々な言われようだったフジマル殿を一目見たかったのでござるよ」

 

「・・・」

 

「そしたらば・・・陰と闇に呑まれてしまいかねない輝かしいダイヤの原石ではござらぬか!そして拙者は噂の真意を理解した!価値なき凡俗は、価値ある輝きを食い物にするアントニー!フジマル殿の輝きを貶めんとする下朗が流した根も葉もない妄言と理解するに十秒しかかかりませんでしたぞ!え、かかりすぎ?」

 

「――」

 

「拙者は許せぬ!価値あるものが価値なき者にダメにされるなどという現実に義憤を持って立ち向かいたかったので、拙者はそなたに声をかけたのですぞ。何より、まず拙者はフジマル殿の心を何とかしたかった。今にも死に絶えて生きる屍となりかねないその心を、まずは」

 

 

「・・・どう、して」

 

どうして・・・そんなに、私のことを

 

 

「?いやぁ当たり前ではござらぬか。フジマル殿、あのままではずっと下を向いて生きていかねばならなかったでありましょう」

 

「・・・!」

 

「人間の一生などあまりにも短い。そんな短い人生を、誰かに歪められ生きていくなどあまりにもあんまりではありませぬか?」

 

「――グドーシさん・・・」

 

「フジマル殿の価値は、曇ったままではあまりにも勿体無い。自信を持つでござるよ」

 

「・・・でも、私、そんな・・・」

 

「――いいえ、フジマル殿は価値ある方ですぞ。何故ならば。――こんな見てくれの拙者を、避けずに接してくれたではありませぬか」

 

――それは・・・

 

「それと同じ。食わず嫌いせず、先入観を持たなければ、人生はいくらでも楽しくなるでござる。そも!たかが人間の先入観で物事を決めるなど愚の骨頂!・・・笑うでござるよ、フジマル殿。アニメキャラのように、画面の向こうの世界の登場人物ように。人生を楽しくするのは、誰でもない自分なのですから!」

 

 

「・・・うん、うん・・・!うん・・・!!」

 

「今日はもう遅いでござる。学校終わりでもまた来てくだされ!次はもっともっとディープな世界に旅立ちましょうぞ!」

 

「うん!!」

 

 

 

――それが、私のはじめての友達との出逢い

 

 

 

ここから私は、毎日のように彼の家に通い、ひたすらにアニメを見漁った

 

 

――中学の、大切な思い出

 

 

 




続く、かも?

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