ギル「顕現するであろうな。此処まで舞台が整っている以上、むしろ出なければ肩透かしと言うものよ」
【でしょうな。私も同じ意見です。ブルトンが現れ、聖杯の欠片がある以上・・・遅いか、速いかの段階でしか無いでしょう。カルデアの情報部、開発部、所長には既にグリーザメダルの解析をお願いしています。──宇宙の針を、なんとかして造れれば最良なんですがね】
「それはそれで磐石に事が運び、言うことはないが・・・どのみち、我等が取り組む異変ならば安牌は切らぬ。封印などとどのつまり、問題の先送りだ。我等が成すべきは見て見ぬふりではなく、後世への押し付けでもない。どのような困難も乗り越え、踏破する姿を魅せつけることよ!」
【──虚無すらも打ち破る、と?】
「痛快であろう?我等なら叶う筈だ。我と、財どもならばな!」
【フフフ・・・全く同感ですな!そうでなくては!】
「河童めに連絡を取れ!邪神!参考資料を寄越せ!今日は徹夜で対策を練るぞ!」
──オールナイト!ですね!わくわくです!
「──やはり適度に休憩を取るぞ!睡眠は12時だ!」
──夜更かしですね!
紫「是非私も入れてもらえますかしら?」
【あ、ゆかりん】
「幻想郷では未知、しかし・・・『楽園』ならば、知っていると確信していましたわ。是非、対策を練らせていただきます」
「良かろう!マスター共に郷土愛を育たせている間──我等は徹底的に対策を練ってくれるわ!!ふははははははは!!」
紫(改めてトップがこんな方なら、士気が最高なのも頷けるわね。──理屈を越えた力・・・幻想郷にあるかしら・・・?)
「そう、私が俗に言うかぐや姫。求婚モテモテ、儚げ切ない別れの物語の先駆けであるかぐや姫の原典。月のお姫様そう・・・かぐや姫その人と言うわけです。あぁかしこまらなくて結構です。今は色々あって御忍びの身、偉ぶるつもりは無いのですから」
十二単がごとき豪奢な装いをしている黒髪のやんごとなき風味な御方、蓬莱山輝夜はその様に皆の前に現れた。自信ありげかつ自身を輝夜姫と名乗るだけあり、平民には出せない風格、オーラと言うものが漂っているのをひしひしと感じる。セレブオーラと言うやつだ。
「まぁ私達、色々あって月を追放されたので偉くもなんとも無いんですがね」
「その情報は今は不要な筈よ永琳・・・!初対面ではセレブマウントを取れば会話のイニシアチブはこちらにあると再三言っているでしょう!」
「成る程、つまり没落貴族と言うヤツですね!恥ずかしがる必要はありません、タケミナカタの系譜を次ぐ神奈子様もそんな感じですから!」
「タケミナカタ神はタケミカヅチ神に敗れ、地方に落ち延びた逸話があるとの事ですね」
「ハッ、今更何を取り繕おうってんだ無様な姫様よぉ!」
「きー!この平民どもムッかつくぅー!いいの!?虚空怪獣の攻略の糸口、教えてあげませんわよ!?本当にいいの!?」
「「「「「虚空怪獣の糸口!」」」」」
一同、価千金の情報の前に顔を見合わせる。なんだか浮世離れ悪く言えばみょうちきりんな姫様からクリティカルワードを引き出せるチャンス、見逃す手はない。ただでさえ、虚無そのものなどと言うよくわからない相手なのだ、当事者の情報は欲しい。
「麗しき姫君!どうかこの哀れな面白外国人に日本語とジャパニーズ・ワザップ(攻略法の意)を教えてはくれませんか・・・!」
「ぐや様の♪ちょっといいとこ見てみたい♪」
(馬鹿かてめぇら!おだてるにももうちょいやりようがだな!)
「えー、本当にぃ?仕方無いわね、しっかり私を敬ってくれるなら教えないことも・・・無いわよ?」
(おう、助かったわ!バカで!)
「ありがとうございます!原典ではなんか悪女にしか見えないかぐや姫様!」
「早苗さん失礼ですよ。何故光った竹から産まれたんですか!目立ちたがりやなのですか!帰るのがいささかスピーディー過ぎるのでは無いのでしょうかかぐや姫様!」
「おほほほよろしいよろしい、気分がよろしい!いいですわ、教えて差し上げます!月の姫、かぐや姫たる私にふかーく!感謝するように!」
(((良かった!騙され上手!)))
とりあえず本当の意味の威厳ある存在はそういないのがこの幻想郷の特色らしい。気を良くしたかぐやがノリノリになり、情報提供の気分になってくれた事にこっそりハイタッチを行う一同。うどんげは先程茶を淹れる様にとの指令にパシりになったので欠席である。
「追放されたといっても、この永琳は月の頭脳、賢者とすら謳われた凄く頭のいい月の凄い人。ちょくちょく月を治めている姉妹二人が此処を訪ねるくらいには彼女は凄く頭がよろしいということ。お分かり?ならば当然、その未曾有の危機の顛末を聞かされていない筈がなく、その話を私は障子に穴を開け聞き及んでいたわ!何故こそこそしていたかって?姫は衆目及ばずがステータスというものだから!」
「引きこもって会話スキルが落ちていたんですね!」
「そこの緑髪!歯に衣を着せなさい!友達出来ないわよ!全く・・・話を戻します。詳しい状況は見ていないので知りませんが、月の危機に現れたとされる光の使者と、月の賢者の生き残りは力を合わせてグリーザ・・・いえ、【宇宙の孔】を塞いだとされています。よろしくて?怪獣退治ではなく、宇宙の現象としてグリーザなるものを塞ぎ、封じたと言えるでしょう。そしてその際、宇宙の孔を塞ぐ為に『針』・・・即ち、神器に当たるものが使われたとの事。賢者が用意したとされるそれを用いて、光の使者は虚無を塞ぐ事ができた。そう月の姉妹は伝えてきました。永琳に」
「輝夜様の仰る通り、月の賢者が用意したとされる『針』・・・それが虚無を塞ぐ鍵、針となる事に間違いは無いと思われます。現状、万が一幻想郷にグリーザが現れてしまったならばこの手段こそが最適解と言えるでしょう。その月の賢者が用意したとされる宇宙の針ですが・・・」
「わぁ!流石へるぷみーえーりん!その所在や制作方法なんかも既に把握理解済みだったりするのですねっ!」
「流石いけすかない潔癖症の温床月の賢者!其処に痺れる憧れるぅ!で、何処に針はあるんですか?製造法は?現存していたりするんですか!?」
「私にも解りません」
「「匙投げたーー!!Σ(´□`;)Σ(゚Д゚;)」」
スピーディーな会話運びから投げ付けられるスプーン。本当に申し訳ないとでも言われそうな会話運びと共に、永琳は目を伏せる。
「だって・・・『現れた虚無に対し光の使者と協力し頑張りましたがダメでした。しかし月の賢者は『針』を用意し光の使者に託し、ついに虚無を塞ぐ事が出来たのでした』なんて粗筋だけ伝承されたものを読み解けなんてハードルが高いんですもの・・・薬学は考古学に転用しきれないわ・・・」
(賢者にだって解らないことくらいある・・・キバヤシさんみたいなものなんだねえーりん・・・)
「まぁ世の中に完璧なんて無いと言うことよね。月が満ち欠けするように何事も真月満円と言うことではないの」
「のーばでーず、ぱーふぇくと!ですね!」
「早苗さん、アホを際限なく露呈するのは止めましょう・・・それでは現状、その針を探すのが課題ですかね?」
「そうなるわね。・・・これはあくまで予測なのだけど、相手が存在しない『無』だというのなら、もし退治するのなら理屈や常識に囚われない、理屈を越えた『有』の力が必要なのだと私は思うわ」
輝夜は姫であり、また聡明である。虚無たる相手の特性を見破り、見極めつつ助言を協力者へと託す。
「虚無を縫う針が見つかるのが一番ではあるけれど、それがもし無かったのなら。もう理屈や道理なんて考えずに力尽くというのもアリなのではないかしら。地上のゲームでもあるでしょう?困った時は!練度を上げて物理で殴ればいいの!」
(コイツ本当に姫なのかよ・・・エウロペの婆さんとは偉い違いだぜ)
「・・・私達が提供できる情報はこんなものかしら。勿論、薬剤や怪我の治療といった本業での協力は惜しまないわ。・・・」
告げると同時に、永琳は言葉を切る。その目には、嘗てとは言え自身が愛した故郷を、半分も滅ぼした相手への・・・畏怖と脅威が宿っていた。
「・・・かつての月の二の舞に、この美しい幻想郷を陥らせたくはないの。世界に満ちる神秘が消え失せている今、此処は妖怪の賢者が用意した、最後の神秘の集う場所だから」
「・・・・・・」
「お願いします、世界を救う崇高なる方々。その完全無欠の旅路の光を、この幻想郷にもたらしていただきたいのです」
その返答に対するリッカ達の答えなど、最早語る必要もなし。
「「──お任せください!!」」
力強く返答し、現地の協力者と頷き合うリッカ、そしてキリシュタリア。
「・・・へっ。これが本当に、テメェのやりたかった事なんだな。イキイキしやがって、ったく」
『カイニス・・・?』
その様子を、傍らから何処か嬉しげに見守るカイニス。まるでそれは、長年連れ添った相棒の様に──
「お茶できましたよー!・・・あ、飲みますか?」
「おう。・・・にげぇ!!テメェ!毒かこりゃぁ!!」
「ひぇえぇえ!?」
それはそれとして、日本茶は嫌いなカイニスであった。
キリシュタリア「方針は定まったね。リッカ君、私はカドック達と共に残りの聖杯の欠片を回収し、同時に何処かにある『針』を探す」
リッカ「キリシュタリア・・・」
「虚無と相対するには、理屈と常識を越えた力が必要・・・聞いて瞬時に理解した。今までのように、最後の切り札は君だよ、リッカ君。君は、君たちは理屈や理不尽を何度だって蹴散らし、捩じ伏せて来た。そうだろう?なら──此度もできない道理はない筈だ」
リッカ「──言われてみればそうだね!うん!何もやることは変わらない。立ち塞がるなら、皆の為に!私の為に戦うだけだもんね!」
キリシュタリア「あぁ!君が君である限り、私達は決して負けないさ!・・・その為にも、私達にフォローとサポートは任せてくれ。我々で掴み取ろう・・・完全無欠の勝利を!」
リッカ「うんっ!!」
早苗「おーーい!リッちゃーーん!にとりちゃんがラボに来てほしいみたいですよー!」
文「ニトライザーのアップデートがしたいんですって!行ってみませんかー!」
リッカ「はーい!!キリシュタリア、よろしくね!」
キリシュタリア「あぁ!行ってらっしゃい、リッカ君!」
カイニス「ヘッ、いい空気吸いやがって」
キリシュタリア「カイニス!・・・イニスはいるよね、大丈夫だよね?」
カイニス「心配すんな『大丈夫ですよ、マスター』」
キリシュタリア「良かった・・・」
カイニス「オラ、カドックどもと会うんだろ。もたもたすんな!後、時間あったら顔貸せ」
キリシュタリア「あ、あぁ!」
カイニス「・・・良かったじゃねぇか」
「?」
「なんでもねぇよ!」
「蹴りっ!?」
『もう・・・乱暴すぎるわ、カイニス・・・心の傷を、私はこんな形で発散する事を選んだのね・・・』
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