はくのん「そんな恐ろしい妖怪がいたというのかっ」
アルトリア「大丈夫、なんでしょうか」
霊夢「かなりヤバイと言うしか無いわね。機嫌を損ねたら・・・二人の首を跳ねて身体を植物の苗床にするかも・・・!ヤバイやつよ!」
はくのん「発想がヤバすぎて草も生えない」
霊夢「こうしちゃいられないわ!ごはん食べて掃除終わらせて、賽銭数えたらすぐ助けにいきましょう!力では、ここら一帯の妖怪の中で一番のヤツよ!」
はくのん「すぐとは」
ぐっちゃん「何よ、なんの話?朝からうるさいわね~」
霊夢「あんたじゃなくてよかったって話よ」
「はぁ!?」
アルトリア「・・・大丈夫でしょうか・・・」
「ウフフフ、エヘヘ、ウフフフ・・・美しいものと美しいものを合わせれば、それはもっともっと嬉しいものが産まれる予感・・・!ゴッホ融合・・・ゴッホフュージョン!ウフフフ・・・エヘヘ・・・」
太陽の畑にて、軽快な筆の音と若干不気味な笑い声が木霊する幻想郷の一幕。緑髪の美女が黄金の花畑を背にする光景を、ゴッホは興奮を露にキャンパスに描いていく。
「・・・なんだか危ない薬でも決めていそうな雰囲気だけど。大丈夫なの?あれ・・・」
「問題ない。誰しも理想の存在が目の前にあれば興奮するというもの。理想のモデルがいた場合、ああもなるだろうと予想される。言うなればトランス状態・・・最高にハイ、というヤツだ」
勿論その不気味な光景にツッコミを入れるモデルこと風見幽香。困惑気味の疑問をデイビッドに受け持たれながら、静かにモデルへと徹し続けている。
「そういうモノかしら・・・まぁいいわ。描くといって私はモデルを引き受けた。そしてあなたたちは私を描く。それが終わるまでは大人しくさせていただくわ。それからどうなるかは、あなたたち次第だけれど」
彼女の雰囲気、そして強者特有の自信と威風堂々たる佇まいに、デイビッドは人間以上の力と風格を垣間見た。傍に立ちながら、彼女に問う。
「妖怪の中でも、相当な強者だな。この地一帯を牛耳る支配者といった・・・八雲紫クラスの妖怪か」
その問いに、持ち上げ過ぎよと笑いながら傘を回す。風見幽香とは、太陽の畑を根城とする幻想郷最強クラスの妖怪と名高いのだが、彼等にも、彼女にも、そんな肩書きと呼び名にはさほど固執する理由は見当たらないタイプの人種である。
「そうね、いつの間にかそんな風に呼ばれていたわね・・・めっきり誰かと話すことも少なくなっていたから、割と新鮮な経験ね。これ」
「話さなくなった・・・?」
「そう。力がそれなりに強くて、ちょっとだけ容赦が無かったから・・・人間も妖怪も、私に近付かなくなっちゃった。久しぶりに話したのよ。他人と」
その力と圧倒的な攻撃性、能力により余りにも恐れられた結果、自身の周りには妖怪も人間もいなくなっていたのだという。特に寂しい訳ではないけれど、と補足を加えながらも、彼女は空を見上げる。
「私は植物と心を通わせる力を持っているから、特に寂しいって事は無いけれど・・・やっぱりある程度の知性を持っている生物って、他人がいないといけない様な生態しているのね。独り言が多くなったり、ずっとぼんやりしていたりが多くなって・・・よくないわね、こういうの」
力はあり、それに違わぬ気品と実力はある。だが・・・結果的に、自身は孤立と孤独と縁深くなったと世間話の様に語る幽香。強者であり、誰に憚る事もない妖怪であるからこその、孤高の味を語りゆく。
「あなたたちにはいないかしら。周りに力が強くなりすぎて近寄りがたい・・・なんてイメージのある人は。もしいたら、しっかり構ってあげる事ね。そういうヤツほど、孤独には弱かったりするものなのよ。意外とね」
「ふむ・・・」
デイビッドはそれを問われ思い返す。仲間達の姿を。・・・だが。
「・・・大丈夫だ。誰も孤独や、孤立とは無縁だ。思い当たる節が二人ほどいたが、俺たちが孤独にはさせないさ」
リッカ、そしてキリシュタリア。力が強く凄まじいが故に、畏怖や孤立を味わいそうな者を知っていても尚、デイビッドは心配ない、大丈夫と答えた。彼女や彼は確かに他とは隔絶した力を持っているが・・・それ以上に、善き仲間達に恵まれたと記憶している。自身を含めた誰もが、共に歩み同じ未来を見ていると返す。
「心配してもらい痛み入る。だがこれまでも、これからも。皆が独りになることはないだろう」
「・・・ふふっ。それならいいわ。精々一緒にいてあげなさい」
その記憶の中には孤独なる強者は存在していなかった。そんな問いを返された幽香もまた、楽しげに頷く。人は自身よりずっと繊細で脆い生き物であるからこその気紛れの助言であったのだが、それを確信に満ちた返答を毅然と返され、愉快げに頷いた様子である。
「あ、あのぅ・・・差し出がましいのですが・・・幽香さん、ゴッホ挙手します・・・」
「?どうかしたかしら」
「もし、もし・・・あなたが独りを『寂しい』と思っていらっしゃるなら・・・ゴッホやマスターさまと、お友達になってみてはいかがでしょうか?ゴッホとしても、向日葵に映えるお方とお友達になれば、絵のモデルとして最大限の重宝ができますので・・・!ウフフフ・・・ゴッホWinWin・・・!」
「・・・寂しい?私が?あのね、言ったでしょう?私は植物と・・・」
「ほ、本当に寂しくない人は自分のこと『寂しくない』と言ったりしないとゴッホは思います。ゴッホには解るんです。毎日毎日絵が売れなくて、結果が出せなくて。その度に言っていたんです。『大丈夫』『いつかきっと』って。・・・本当は全然、大丈夫なんかじゃなくても、です。だから解るんです。幽香さん、ひょっとしたら・・・お友達がいないんじゃないかと・・・」
「・・・ストレートに言ってくるわね」
「ででで、ですので・・・!勇気を出して、お友達をつくってみませんか・・・今ならマスターさまとお友達になれば、おまけでゴッホもお友達についてきますです、はい。毎日あなたをお絵描きしちゃうキャンペーンもやります、ハイ・・・あなたが寂しくならないように、毎日描きます。というか正直、こんなにお花と絵になる女性には二度と会えない予感があると言いますか、だから逃したくないというか・・・ウフフフ、ゴッホ打算・・・友達いないのこういうところですねわたし・・・」
「───くすっ。変なの」
自身に対峙した相手は、退治に来た巫女か、無知の妖怪か、愚かな侵入者かのどれかであったが。まさか絵描きのモデルと友達を申し出てくる相手がいたのは予想外だった。そんな変わり種の存在に、彼女は思わず笑いを溢す。
「・・・そうね。長生きしてるんだもの、たまには酔狂な真似をしてみるのも一興かしら」
「ハウッ!それでは・・・!」
「いいわ、友達になってあげる。言ったからには私の望む絵を、私が望む時に描いてもらうから覚悟なさい。下手な絵だったり気合いの入ってない絵だったら許さないわよ。いいわね?」
気紛れであっても、身の程を知らない提案であっても。確かに二人は彼女に歩み寄った。常に先頭を駆け抜けるマスターの少女の理念を、彼と彼女は二人で実現してみせたのだ。
「ウフフフ、エヘヘ!優良美女モデルゲットしました・・・!ゴッホ、これでゴッホ展覧会の夢がぐぐっと近づきましたよデイビッドさま!」
「あぁ。ゴッホが力を振るえる原動力を得られて何よりだ。俺も芸術はさっぱりな故、色々とデッサンや人物画の練習に付き合ってもらうとしよう。これから宜しく頼む、風見」
「えぇ。・・・あぁ、それと。私をモデルにするのは構わないけれど・・・」
「?」
「もし私が認められないような下手な絵を描いたら、くびり殺すからそのつもりでね?肖像権の侵害の罪は重いわよ?ふふっ」
「ハウッ!?わ、わたしの筆にマスターさまの命が!?ゴッホ、ゴッホプレッシャー・・・!」
「問題ない。お前の腕を信頼しているからな」
「ゴッホジョイ!!(喜びの意)」
「うふふっ。あー、おかしい。久しぶりね、こんな感覚」
随分と久しい他者との関わり、他者との触れあい。とりとめのないその一時を、悪くないと感じる幽香であった──。
ゴッホ「出来ました!題材は、『向日葵と緑髪の妖精』です!」
其処には、空を見上げ脚を組み、頬杖をつく物憂げな美女と向日葵、広がる青空が鮮烈に描かれている。目付きは鋭いながらも、優しく暖かなタッチが冷たさを感じさせない。
幽香「へぇ・・・悪くないわね。いいわ、合格よ。なにもしないで帰してあげるわ」
デイビッド「やったな」
ゴッホ「はい!で、では明日もまた来ますね、ハイ・・・向日葵大好きゴッホです、ウフフ・・・」
幽香「期待しないで待ってるわ。・・・あ、じゃあこれ、持っていきなさい」
『黄金の植木鉢』
デイビッド「これは・・・」
「私に刃向かってきたヤツを返り討ちにした時、持ってたヤツが変化したものよ。種もいくつかあげるから、頑張って育ててみなさい。友好の証ってやつね」
ゴッホ「ハウッ・・・」
幽香「じゃあまたね。物好きなお友達さん?」
太陽の畑に消えていく幽香と、顔を見合わせる二人。
ゴッホ「・・・抜け駆け、してしまったのでしょうか・・・」
デイビッド「うまく説明できたらいいが」
絵を描いていたら本懐を果たした事に、喜びよりも困惑を現す二人であったとさ──
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