人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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どっちが主人公なんだい・・・?


比翼の意地

「そらそらそらっ!!」

 

 

 

小柄のメアリーが縦横無尽に動き、こちらをカトラスで打ちのめす

 

 

「フン」

 

鎧の部分で手傷を負わぬように牽制しながら、財を選別していく

 

 

「どれ――」

「アン!」

 

メアリーの僅かな隙を完璧にカバーする射撃。跳弾、予測射撃などを織り混ぜた予測困難かつ自由奔放な弾道がこちらを襲う

 

「どうしました?受け手な男は嫌われますわよ?」

 

「口の減らぬ女よ。声はよいがな」

 

「余所見は厳禁っ!」

 

カトラスが最上段から叩きつけられ、空いた脇腹を銃弾が襲い来る

 

 

僅かに動き、軌道から逃れる

 

「鬱陶しい童よ。品がない剣筋だ、セイバーを見習え」

 

「海賊に品なんか求めないでほしいなぁ!」

 

そのまま乱舞にてカトラスが縦横無尽に振るわれる。メアリーに当てず此方を完璧に撃ち抜かんとする精密な射撃

 

まるで一対の翼、もとから1つであったかのような完璧なコンビネーション

 

これが、アン・ボニー、そしてメアリー・リード・・・!

 

 

「「舐めるなよ、海賊を――!!」」

 

 

鎧が銃弾にて凹み、手甲がカトラスにてびしりとひび割れる

 

 

「ほう――我が鎧に傷を入れるか。賊にしては上出来だ」

 

「――気に入らないね、その余裕ぶり。自分の状況解ってる?」

 

「解っているとも。――王が賊に苦戦するなど沽券に関わる」

 

――財の選別が、終わる

 

「では、幕と行くか」

 

――さぁ、反撃だ

 

 

「がはっ――!?」

 

突如血を吐き、カトラスが真っ二つに切り裂かれるメアリー

 

 

「メアリー!?」

 

腹に突き刺さる、黄金の光の剣

 

 

――剣術という点では、メアリーの方が上手だ

 

ならば、『打ち合えず』『防げない』剣を用意するまで

 

「此は未来の剣、光の粒子にて形成された刀身を振るう剣よ。フォトンソード・・・いや、ゴージャスソードか?まぁなんでもよい」

 

「ぐっ、は――!」

 

「貴様の剣術に付き合えば分が悪い。悪いが一太刀で終わらせてもらうぞ」

 

腹に、剣を押し込み戦闘不能に追い込む

 

 

「メアリー!!英雄王!その手を離しなさい!!」

 

「離してやるとも、そら」

 

無造作にメアリーをアン目掛けて放り投げる

 

「あっ――!」

 

「貴様に真の射撃を教えてやろう。その身に刻み、地に伏し赦しを乞うがいい」

 

黄金の砲門を展開。選別したのはガトリング、マシンガンなどの連発宝具

 

――アーチャーにも通じるであろう腕前の彼女と撃ち合いもまた、活路は見出だせない。メアリーを消滅させなかったのはこの為だ

 

――彼女はけして、相棒を見捨てまい・・・!

 

「では、死ね」

 

放たれる一斉掃射。唸りを上げる死の咆哮

 

「くっ――!!」

 

マスケット銃を投げ捨て、メアリーを抱き締め砲撃から彼女を庇う

 

「アン・・・!」

 

「うっ、くぅ――!ぁあぁあぁあ・・・!!」

 

放たれ、穿たれ、鮮血が甲板を染めていく

 

身体中を、血の赤が彩り上げていく

 

「――とまぁ。これが王たる我の戦い方よ。技量は貴様らが上、戦術も貴様らが上。しかし――量はこちらが上。であれば此方が勝つは自明の理」

 

――これ以上の追撃は無用だ。彼女たちは最早、現界を保つので精一杯だろう

 

 

「理解したか?これが王の誅罰だ。血化粧で少しは見れる姿になったではないか」

 

 

「・・・ここまで、格が、違うなんて・・・」

「まるで、海の嵐そのものですわ・・・」

 

へし折れたカトラス、粉砕されたマスケット銃

 

――最早、勝負はついた。これ以上の戦闘は無用だろう

 

 

「貴様らの敗北は確定した。・・・が」

 

――意地悪く、器が笑う

 

「一つ、挽回の機会を与えようではないか」

 

「ば」

「挽回、だって・・・?」

 

 

――口をつぐむ。王の言葉を邪魔すまい

 

 

「女海賊。黒髭を裏切り我が傘下に就け」

 

「!?」

 

「貴様らはあの道化紛いに仕えるのに随分と不満があると見える。どうだ?命惜しさに我に尻尾を振ってみるか?」

 

「――僕達に、鞍替えしろっていう、のかい?」

 

 

「然り。貴様らの戦術と曲芸はそれなりに見応えがあった。さぞかし貴様らなら良き人員になろうよ。あのような汚物を見捨て、我が威光に預かるがよい」

 

――器の真意は読み取れる。自分は次に備えるのみだ

 

 

「――だってさ、アン」

 

「――えぇ、そんなの、決まっていますわ」

 

よろよろと、二人が支え合い立ち上がる

 

 

「では、返答を聞こうではないか」

 

 

「行きますわよ、メアリー」

「うん。せーの」

 

返答は・・・

 

「「お断りだ!趣味の悪い成金ヤロ―!!!」」

 

矜持をかけた、罵倒であった

 

「――――フッ」

 

「僕たちを舐めるなよ、英雄王!!確かに僕達の船長は最低最悪、一緒にいるだけで死にたくなる汚物さ!」

 

「だけど!!」

 

「ええ!例えドブネズミの方がマシでも、私達は彼を船長と認め!船に乗り込み、命を預けた仲間ですもの!!」

 

「この最低限の矜持まで捨ててしまっては、私達はソレ以下になりますわ!貴方の方が何倍も素敵なのは間違いありませんけれど!」

 

 

「「海賊の誇りにかけて、裏切るなんてあり得ない!二度とふざけた口を利くな、この金ぴか!!」」

 

「――そうか。では、交渉は決裂だな」

 

愉快そうに笑う器

 

――・・・彼女たちの覚悟と矜持を、自分はしかと見届けた

 

 

・・・海賊は・・・何て自由で、誇り高い生き物なのだろう

 

 

 

「では、別れの刻だ。貴様らの首、船首に飾ってやるとしよう」

 

「やってみなよ!そして覚えていた方がいい!」

 

折れたカトラスを拾い、メアリーが迫る!

 

 

「えぇ!海賊は、生き汚くしぶといものですのよ――!!」

 

船員が落とした銃を拾い、狙いを定める

 

「それで?その壊れた武器で何ができる?」

 

――最後の財を選別する

 

これが、決着だ

 

「もちろん!オマエを倒すんだ――!!」

 

「メアリー!カトラスを!!」

 

撃ち放たれる銃弾

 

「――」

 

「――この角度!!」

 

 

折れたメアリーのカトラスに『反射』し、意識の外より弾が迫る――

 

「はぁああぁあぁあ!!!」

 

続けて振るわれる、全霊の剣の一撃――!!

 

 

「――よくぞ抗った。海賊どもよ」

 

――翼は、届かなかった

 

弾かれた銃弾を『掴み取り』

 

「――ちぇっ。駄目だったか」

 

メアリーの身体をくまなく、財が突き刺していた

 

「――・・・最後の最期までよくぞ我を愉しませた。我の提案を蹴り示した反骨の意地、見事であったぞ」

 

「・・・本当にずるいや。奇策も正道も踏み潰していくなんて。嵐の夜がまだ優しいよ」

 

「当然だ。我より苛烈な者なぞいるはずがあるまい。特に敵にはな」

 

「――届かなかった、か」

 

「えぇ。完敗ですわ」

 

ー消滅が始まる。二人が時代から退去する

 

「敗者は身ぐるみを剥がされるのが決まりですが、生憎こちらはサーヴァントですので。中指立て代わりに突きだしたその銃弾しか差し上げられませんの。ごめんなさいね」

 

「構わぬ。奪うが常の卑しい賊などに期待などしていない」

 

「む。僕はともかく、アンはいいとこ育ちなんだぞー」

 

「貴様も、次はもう少しマシな姿で喚ばれるのだな」

 

「あら。次を許してくださるの?」

 

「フッ。覚悟があらば楽園の門を叩け。案ずるな、所詮貴様らは星4。我が召喚に支障はない」

 

――また息を吐くようにフラグを・・・

 

「ふふっ。寛大ですのね。では、機会があれば――」

「うん。その時はよろしくね」

 

「うむ。では、御苦労であった。迷うなよ」

 

「はい。ではいずれまた、ごきげんよう――」

「頑張ってね、英雄王。こんなにあっさり僕たちを倒したんだから。負けたら、許さないからな――」

 

――笑いながら、二人のライダーは消えていった

 

 

「・・・――我ながら酔狂なものよ。労いに別れの言葉、あまつさえ勧誘すらするとはな」

 

――左手の銃弾を握りしめる

 

――美しく、華麗に戦った二人の美しき海賊

 

・・・きっと、マスターと仲良くなれるだろう。また、逢えるといいな――




「本当は僕達はアイアンメイデン&心臓潰しで退場の予定だったんだけど、皆の暖かい声をコメント欄で見た作者が「こんな愛された二人を残酷に殺めるなんてとんでもない!」と慌てて路線変更したのが今回のお話なんだ」

「無様でみっともない死に様を期待した皆様、ごめんなさい。責めるなら、日和った作者を責めてくださいね?」

「じゃあ、バイバイ!」

「ぶっちゃけ私と黒髭たちは前座です。これからも、駄文にお付き合いくださいな♪」

「これからも、アンとメアリーを、よろしくね!聖杯や宝具を上げてくれた皆、ありがとう!」

「ごきげんよう。それでは(ちゅっ♥)」

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